1人と1匹   作:takoyaki

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百三話です



ゴールデンウィーク!!



去年のようにはしませんよ……えぇ、しませんとも!


てなわけで、どうぞ


繰り返してはならない

『『ホームズ!!』』

「やっほー」

ホームズは、ひらひらと手を振って返す。

とても気楽な風だが、ポンチョの至る所に泥が付いており、顔も泥に塗れている。

肩にいるヨルも疲れ切っている。

「どうして、ここに?」

エリーゼは、とても不思議そうに尋ねた。

ホームズは、ニヤッと笑って尻餅をついているエリーゼにポンチョの裾を差し出す。

「お姫様を助けるのが、騎士(ナイト)の役目だろう?」

キザったらしい台詞にティポとエリーゼは、ファイザバード沼野の湿度に負けないぐらいのじとっとした目を向ける。

『調子乗るなよー、ホームズなんて精々兵士(ポーン)がいいところだぞー』

「ぐさっと来た。覚えてろよこのムラサキダルマ」

馬鹿な事を言っているホームズに呆れながらエリーゼは、ため息を吐くと、差し出されたポンチョを掴んで立ち上がる。

「………どうやってここに来た、ですか?」

霊勢がめちゃくちゃなファイザバード沼野を行くなんて無茶なんてレベルじゃない。

そう言っていたのは、ヨルだ。

エリーゼの質問にホームズは、肩をすくめる。

「勘と運」

「は?」

「つまりねぇ………っと、ここまでだエリーゼ」

ホームズは、そう言って言葉を途中で切ってジャオを指差す。

ジャオは、蹴られた顔を抑えながら立ち上がる。

「やはり、お前さんか………」

「どうも」

ジャオの言葉に軽く返す。

ジャオは、大きくため息を吐く。

「陛下を裏切った時、正直な事を言うとやはりと思った」

ホームズは、黙ってジャオの言葉を聞く。

「何度か見かけたが、彼奴らと居るお主はとても楽しそうだった。

一時とは比べものにならないのお」

「楽しい?いつもぐさぐさ来る言葉を言われるのが殆どです」

「だが、お前はそいつらと居ることを取ったのだろう?」

ホームズは、ぴたりと言葉を止める。

「お主が、そう言った奴らと出会えた事は儂としても嬉しい」

「そんなにあの時のおれは、塞ぎ込んでました?」

「まあの」

そう言ってジャオは、槌を肩に乗せる。

「だが、それとここを通すのは、また別の話じゃ」

目に力が込められる。

ホームズは、ぐっと足に力を込める。

「それと、エリーゼ、お主とは戦いとうない。

下がってくれんか?」

エリーゼは、構えようとした杖を下ろす。

「随分とジャリに甘いじゃないか」

「色々あるんじゃよ」

ヨルとジャオの会話を聞きながらホームズは、頭の中で算段をまとめていた。

エリーゼが戦いに参加しない場合、精霊術という後ろ盾を失うことになるが、その代わり詠唱を援護しなくてもいいという側面がある。

ジャオ自身何かエリーゼに思うところもある様なので、そうなれば攻撃はしないだろう。

(ふむ………)

ホームズが考えをまとめている間にエリーゼがホームズの前に一歩歩み出る。

「ジャオさん、私が戦わなかったら、ホームズとも戦いませんか?」

「いや。さっきも言ったろう、別の話だと」

「だったら!」

エリーゼは、杖を構える。

「私も戦います!」

「………えっ?ちょ、エリーゼ?」

ホームズは、考えていた作戦が音を立てて崩れ落ちていくのを感じた。

そんなホームズを無視してエリーゼは、言葉を続ける。

「ホームズは、胡散臭くて、裏切り者で、残念で、子供で、本当のことを言わなくて、イカサマ師で、デリカシーなくて、言うこと聞かなくて、コーヒー飲めなくて、船酔いして、モテないですけど……」

「言われたい放題だな、お前」

エリーゼの言いようにヨルがポツリと呟く。

ホームズは、引きつり笑いを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

「それでも、私の友達です!

だから、ホームズだけを……!友達だけを戦わせたりしませんっ!」

 

 

 

 

 

 

その言葉がエリーゼの口から発せられた時、ホームズは、一瞬驚いた後とても嬉しそうに微笑む。

ジャオも驚いたようだ。

「ふふふ、涙が出るほど嬉しいねぇ(・・・・・・・・・・・・)

本当に嬉しそうにそう言うとホームズは、一歩前に出てエリーゼと並び立ち、腕の包帯と懐中時計を見る。

「さて、そんな訳だよ、皆の衆。

ジャオさんは、おれとエリーゼに任せて他は君達で頑張っておくれ」

ホームズの張り上げた声を聞くと、一同はこくりと頷く。

しかし、ジュードが心配そうに尋ねる。

「ホームズ、残り時間は?!大丈夫なの?」

「あぁ、大丈夫大丈夫。だから、そっちはそっちで、どうにかしたまえ。

はっきり言って、四象刃(フォーブ)二人以上相手取るのは、無理だからね」

そう言ってホームズは、ジャオを見る。

「時間とは、なんじゃ?」

「あぁ、今おれ、色々あって両腕使えないんです。

残り時間は、約十分」

そう言って懐中時計をしまう。

「まあ、丁度いいハンデです。

何せこちらには、最強の精霊術使い………いや」

ホームズは、言葉をきる。

「友人がいるからねぇ……任せていいんだろう?」

「当たり前です!」

『どんとこい!』

ホームズは、隣のエリーゼを見るとニヤリと笑う。

ジャオは、黙って見つめていたが、直ぐに大笑いをする。

「よかろう、そこまで言っている奴ら相手に遠慮することもなかろう」

そう言って、ジャオは少し腰を落とす。

「不動のジャオ、参る」

そう言って、ジャオはホームズに向かって横薙ぎに槌を振る。

当たる、そう思われた瞬間、槌はホームズによって大きく上に蹴り上げられた。

予想外の槌の動きに、ジャオは驚く。

 

 

 

 

 

 

「マクスウェル一行が一人、ホームズ・ヴォルマーノ、押して参る」

 

 

 

 

 

ホームズは、そう言うとそのまま回し蹴りを放つ。

ジャオは、慌てて下がろうとする。

「─────っ!!」

しかし、一瞬ジャオの動きがが止まった。

止まった原因は、身体に巻き付いたヨルの前足だ。

 

 

 

「俺を忘れんなよ」

 

 

ヨルはがニヤリと笑うとホームズが回し蹴りを喰らわせ、直ぐに距離を取り、エリーゼの元へもどる。

ホームズは、エリーゼの元に戻るとエリーゼに幾つか耳打ちをする。

「エリーゼ、いいね」

「分かりました」

エリーゼに確認を取るとホームズは、そのまま下がったジャオに向かって走り出す。

そして、勢いを乗せた回し蹴りを叩き込む。

「ぬぅっ!!」

がんっと言う音が鳴り響く。

ジャオは、槌で防ぐ。

防がれるや否やホームズは、直ぐにその場から立ち退く。

「『ネガティブ・ゲート!!』」

ホームズがその場から離れた瞬間エリーゼの精霊術がジャオを襲う。

「ぬぅうん!!」

ジャオは、それを槌を一振りして消し飛ばした。

精霊術を力技で消しとばしたジャオにホームズの追撃を仕掛ける。

「輪舞旋風!!」

旋風のような回し蹴りは、ジャオの腹を捉えた。

しかし、

(手応えが……)

 

「惜しかったのぉ。

儂が後ろに下がっていなければ、な?」

 

 

 

ジャオの言葉にホームズは、はぁとため息を吐いて、馬鹿にしたように笑う。

「お喋りしてていいんです?」

「なに?」

「『ブラック・ガイド!!』」

死神の鎌が現れ、ジャオを後ろから切り刻みにかかる。

「─────っ!魔王地顎陣!!」

ジャオは、槌で地面を爆破させ、精霊術をかき消す。

「──────っ!!」

ホームズは、爆発に巻き込まれ宙に舞いがる。

ジャオは、先程と同じように空中で身動きの取れない相手(ホームズ)に向かって槌を横薙ぎにふる。

「ティポ戦哮っ!!」

しかし、それが届く前にティポから放たれたマナの砲弾がジャオの手を襲った。

「ぐっ!」

痛みに一瞬動きが止まる。

その一瞬の隙にホームズは、地面に落ち、距離を開ける。

「助かったよ、エリーゼ!」

エリーゼは、こくりと頷いて返す。

ジャオは、そんな二人を見ながら考える。

「やはりのぉ………」

ジャオは、そう呟き走り出した。

実はジャオは、というより、四象刃(フォーブ)(アグリア以外)は、ここに来る前にウィンガルに言われていた。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

『いいか、もし、ホームズと戦う事になったら、いつも以上に神経を張り詰めろ』

ホームズがウィンガルに頭突きをかまし勝敗を決した後の作戦会議だ。

『なぜ?あの子がそこまで強いとは思えないんだけど?』

プレザの言葉にウィンガルは、静かに頷く。

『だからだ。あいつは、それを逆手に取る。

相手を油断させたところに渾身の一撃を入れる』

三人は知らないのだが、アグリアはバッチリその策に嵌りホームズに敗北している。

『なら、油断しなければいいのか?』

『ところが、そうとも言えない』

ジャオの言葉にウィンガルは、首を横に振る。

『あいつの手はそれだけじゃない』

ウィンガルは、思い出した様に頭に手を当てる。

『手品師相手の台詞でこんなのがある。

『手品師が右手を見せたら左手を見ろ』とな』

『どういうこと?』

プレザは、訳が分からず頭をひねる。

『今回のホームズとの戦い……私は、強化された右足にばかり注意していた。

結果、私は予想もしていなかったホームズの頭突きを食らい敗北した』

『……何と無く言いたい事は分かってきたわ』

プレザは、ふふふと笑う。

『ホームズは、目立つものを引けひらかして、視線を集め、そしてそれに疎かになった所から、追撃の一手を放つ』

ウィンガルは、そこで言葉を切る。

『つまり、ホームズが何かしらの目立つものを見せてきたら、それ以外にも注意を向けるようにしろ、いいな?』

『『了解』』

二人の返事を聞くとウィンガルは、頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『タネを晒した手品師には、舞台から降りてもらおう』

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

今この戦いにおいて目立っているのは?

包帯を巻いたホームズ?

ボロボロ状態で駆けつけたホームズ?

腕が使えないホームズ?

いや、違う。

先程から、ジャオはそれを基準に戦闘を組み立てていた。

ジャオは、エリーゼに向かっていく。

 

 

 

 

エリーゼに向かってジャオは、槌を振り下ろそうとする。

このまま行けば確実にエリーゼを倒せる。

その瞬間、ピタリと槌を振り下ろすのをやめる。

(目立っていたのは、ムスメっこ!その影に隠れていたのは……)

そのまま後ろに向かって、振り回す。

 

 

 

 

 

 

「ホームズ、お主じゃ」

 

 

 

 

 

 

その振り回された先には、ホームズが今まさに蹴り放とうとしていた。

攻撃態勢に入ったホームズは、もう他に出来ることがない。

驚きに目を向いたまま、ホームズはモロにジャオの槌を喰らった。

「──────っ!!!」

声にならない声をあげ、ホームズは吹き飛ばされる。

「ホームズ!!」

突然の事に思わず、エリーゼは詠唱を止めてしまった。

「甘かったのお……ホームズ。二度も三度も同じ手品をするからこうなるんじゃ」

しまったと思った時には、もう遅い。

ジャオは、そう言うと吹き飛ばされた、ホームズに向かって歩みを進める。

 

 

 

止めをさす為に。

 










大分後書きに書く事も無くなってきたなぁ………





この連休中は、『目指せ!三話更新!』を目標に頑張っていきたいと思います!!




ではまた百四話で( ´ ▽ ` )ノ

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