1人と1匹   作:takoyaki

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百四話です


せっかくなので遠出してみたら混んでてたので、何もせずに帰りました。



てなわけで、どうぞ


種明かしをしてはならない

「─────ッカハ!」

ホームズは、這いつくばりながら血を吐き出す。

「ホームズ!!」

エリーゼの声が響く。

「終わりじゃ」

「守護方陣!」

ホームズは、無理矢理立ち上がって踏み込んだ。

ホームズの足を軸にして巨大な光の陣が展開され、エリーゼとジャオを拘束する。

「!!」

身動きが取れなくなり、ジャオは驚くが直ぐに力を込め、陣を吹き飛ばす。

「─────?!」

その馬鹿力にホームズは、目を向くが直ぐにトントンと足を踏み替え、

そして、

「連牙弾!」

連続の蹴りを放つ。

三散華より威力は、落ちるものの三散華とは比べものにならない蹴りの連続にジャオは、防戦一方だ。

ホームズは、直ぐに右足を一歩後ろに下げ、闘気を纏う。

「獅子……」

歯を食いしばって連牙弾が終わると同時に打ち込む。

「……戦哮!!」

獅子の形を纏った闘気がジャオに襲いかかる。

「ぬぅうん!!」

ジャオは、堪らず吹き飛ばされた。

しかし、ジャオは、鎧を着た兵士を沈めた獅子戦哮を喰らっても普通に立っていた。

「マジかい…………」

「それはこっちのセリフじゃ。

お主何で平気なんじゃ?」

ジャオの言葉に、ホームズはポンチョの中を見せる。

そこには黒い紐、ヨルの尻尾がきっちりと隙間無く巻きつけられていた。

「なるほど」

ジャオは、納得した。

ホームズは、両腕を使えない以上、攻撃をガードする事は出来ない。

だから尻尾を鎧代わりにしたのだ。

先程、ジャオを拘束したのが前足だったのは、そう言う訳だ。

「ま、ダメージを誤魔化すのが関の山ですけどね」

ホームズは、肩をすくめる。

ボロボロになっているところを見るともうこの手は使えそうにない。

降りしきる雨に紛れてホームズの頬を脂汗が一つ落ちる。

何せ、拘束ついでに回復に使おうとした守護方陣を破られたのだ。

満足に回復なんかする訳がない。

「……それより、お主。

先程の守護方陣、ムスメっこも拘束していたぞ」

「知ってます」

ジャオの言葉にホームズは、適当に返す。

 

そして、更に言葉を続ける。

 

 

 

 

 

「エリーゼが動けようと動けまいと関係ないでしょう?」

 

 

 

 

 

その言葉は、二人の空気をしんと静まり返らせた。

聞こえるのは、周りの戦闘音と雨のみ。

戦闘において動けなくなると言う事は、あってはならない。

それは、無抵抗と同義語だ。

例えジャオが攻撃出来なくとも他の連中が攻撃するかもしれない。

だというのに、ホームズはなんて事の無いように、まるで「明日は、カレーだ」とでも言うようにどうでも良さそうに言い切ったのだ。

確かにホームズは、ジャオの攻撃から身を守ることが出来た。

しかし、エリーゼはどうだ?

「……お主」

ジャオは、静かに怒りをこらえる。

「最低じゃな」

「よく言われます」

「褒められる方が少ないよな」

ジャオの言葉を聞き、ヨルは面白そうに肩で笑う。

「うるさいなぁ……おれだって褒められた事ぐらいあるよ」

「覚えていられるぐらいだろ」

グゥの音も出ない。

何も詫びれていないホームズとヨルを見て怒りが、ふつふつと湧き上がってくるが、ジャオは、努めて冷静であろうとする。

ホームズ相手に激昂するのは、まずい。

今のホームズは、両腕が使えないため、攻撃を防ぐ事ができない。

そして、尻尾の鎧も使えない。

つまり、一撃さえ入れれば勝ちなのだ。

勿論時間制限がある。

(タイムリミットは、十分)

ジャオは、戦う前に言っていた言葉を思い出す。

(……確実に五分は立っておる)

ジャオは、そこまで考えると槌を肩に担ぎ、ホームズに向かっていく。

(この残り五分が勝負!!)

ホームズに向かって行ったジャオは、ぎゅっと槌を握った。

 

 

 

 

 

 

ホームズは、ペっと唾を吐き捨ててジャオが来るのを待つ。

 

 

 

 

 

 

 

そして、槌を振るわれる前にその槌を持つ手を掴んだ(・・・)

 

 

 

 

 

「は?!」

 

 

 

 

 

遠くから見ていたジュードは、目を見開いた。

 

 

 

 

対するホームズは、手加減抜きでジャオの両腕を握るのに力を込める。

 

 

 

間違いない。

 

 

 

 

ホームズは、腕に最大の力を込めている。

 

 

 

 

 

「お主、腕は、使えないはずじゃ?」

目を丸くしているジャオに構わず、ホームズは、ニヤリと笑う。

「さっきまでは、ね?」

そう言うとヨルがホームズの懐から懐中時計を取り出し時間を見せる。

案の定、先程見せてもらったところから五分しか進んでいない。

「終わっておらんぞ、十分経ってないではないか」

ジャオは、そう言って動かそうとするが動けない。

それぐらい半端じゃない握力で掴まれている。

「四捨五入って知ってます?」

突然ホームズから、数学の言葉が出る。

「四以下は切り捨て、五以上は切り上げる。商人が使わない日はありません」

「まさか………」

「そのまさかですよ」

ホームズは、意地の悪い笑みを浮かべる。

「制限時間、正確に言うなら残り五分でした。

なので、四捨五入して、約十分にしました」

ホームズは、ジャオをジリジリと押していく。

「そうすれば、勝ちを急ごうとするあなたがこんな風に来てくれるだろうと思ったのでねぇ」

そう言って更にホームズは、力を込める。

ジャオは、少し顔をしかめる。

そんなジャオに構わずホームズは、意地の悪い顔で更に続ける。

「……分かってるとは思いますが、おれは嘘は言ってませんよ?

ちゃんと言いましたからね、()十分と」

四捨五入されたものは、勿論正確な数字ではない。

だから、ホームズは約をつけた。

確かに嘘は言っていない。

かなりギリギリではあるが……

何せ、普通は一桁しかない数字を四捨五入なんてしないのだ。

イカサマ、騙し討ち、ルールギリギリの反則技。

ホームズの真骨頂だ。

いつの間にやら、包帯も解けて始めていた。

 

 

 

 

「力比べだ」

 

 

 

 

 

 

ホームズは、片手をジャオの腕から離し手で胸ぐらを掴む。

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉおおおらっ!!」

そのまま背負うように投げ飛ばした。

投げ飛ばされたジャオは、壁に叩きつけられる。

「グゥっ!!」

ジャオは、思わず衝撃で吐き出す。

「嘘、ジャオさんを?!」

『どうなんてんだー、お前ー!!」

エリーゼは、驚きの声を上げる。

何せホームズよりも一回りもふた回り大きい男をホームズは、投げ飛ばしたのだ。

信じられるわけがない。

「いや………ホームズならやってもおかしくない」

治療を受け復活したミラは、それを見ながらそう呟いた。

「あいつは、私を片手で投げ飛ばしたんだぞ」

「あぁ、そう言えば」

アルヴィンも初めてホームズと出会った事を思い出していた。

ミラを投げ飛ばすと同時にヨルも投げていた。

つまり、片手で約169cmの女を投げていたことになる。

「それに、ホームズのカバン凄く重かった」

ジュードも思い出したようだ。

 

 

 

そんな会話をよそにジャオは、むくりと起き上がる。

 

 

 

 

 

 

「くくくくくく」

ジャオは、面白そうに笑う。

「ガーハッハッハッハッ!!」

性格は最悪でもここまで見事に嘘一つつく事なく、騙し切ったホームズには、笑いが止まらない。

ひたすら大笑いをした後、ジャオはホームズの方を見る。

「一応、聞いといてやる。

……騙したのか?」

「一応、言っといてあげますよ。

……勝手に勘違いしたんでしょう?」

ホームズは、緩くなった包帯を投げ捨てる。

ホームズは、肩幅に足を開き構える。

「ヨル」

ヨルは呼ばれると、地面に置いてあるホームズのカバンを肩にいる状態で尻尾を使い漁る。

そして、隠し引き出しから、いつもの丸い円盤上の盾を引っ張り出す。

「ホームズ、それ……」

ジュードが驚いた様に尋ねる。

「予備。金も隠し引き出し(こっち)に入れときゃ良かった」

そう言って腕にはめ、いつものスタイルになる。

アホ毛が雨でしなっているのはご愛嬌だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあて……ここからだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 












《紳士に騙されるのであれば悪い気はしないものだ》



とある有名なマジシャンの台詞らしいです




紳士なら、ね…………(−_−;)







さてさて、戦闘は、ホームズ&ヨル&エリーゼVSジャオだけの予定です。
他の面子をどうしようか悩みましたが、下手に書くとテンポが悪くなるのでやめました。


物事はテンポ!
てなわけで、話は出来ているので明日中にでも!



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