1人と1匹   作:takoyaki

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百六話です



GW終わってしまいましたね、ハァ……



てなわけで、どうぞ


案中模索

「………が……ハッ」

ウィンガルは、そう言って膝を着く。

そんなウィガルにローエンは、急いで駆けつける。

「ウィンガルさん!あなたの増霊極(ブースター)は、何処に?」

ウィンガルは、ローエンの質問にトントンと頭を叩く。

「ここ……だよ……」

そう言って、ウィンガルは意識を失った。

「頭の中………」

ローズは、思わず息を呑む。

「そこまでしてガイアスに使えるのですね」

アルヴィンは、プレザに銃を構える。

「悪りい。遺言聞くつもりないから」

地面に倒れこみなんとか上半身を起こしているプレザにアルヴィンは、そう告げる。

「アルヴィン!もう決着はついてるじゃない!!」

ジュードの言葉にアルヴィンは、銃を下げる。

「……わーったよ。お前がそういうならそうするよ」

そんなアルヴィンを見てプレザは、笑う。

「怖い怖い。そうやって生きていくのよね」

自嘲する様に言うとプレザは、ジュードに視線を向ける。

「ボーヤ。そうやって、弄ばれて、最後は捨てられるのよ」

「……けど、アルヴィンは僕の気持ちを分かってくれると思う」

ジュードが返すとアルヴィンはそれっきり何も言わなかった。

エリーゼは、意識を取り戻したジャオに尋ねる。

「あの……どうして………わたしを心配して……してくれるんですか?」

『わけをいえー!!』

 

ジャオは、その言葉に俯く。

 

「どうして!!」

エリーゼの再度の言葉にもジャオは、答えない。

「エリーゼ」

レイアがエリーゼに近づく。

「答えたくないんだよ。そんな人に聞いてもなかなか答えてくれないのは、君もよく知ってるだろう?」

ホームズは、自分を指差しながらエリーゼにそう言う。

エリーゼが諦めたのを見届けるとジャオを見る。

「おれのことも心配して下さってありがとうございます」

ジャオは、ホームズの言葉に静かに笑って答える。

「クルスニクの槍までもう少しだ。

皆思うところもあるだろうが、先に行かせてくれ」

ミラの言葉に一行は頷き走り始めた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「……ホームズ」

「なんだい?」

エリーゼからの質問にホームズは、首をかしげる。

「どうやってここまで来た……ですか?」

「私も聞きたいわ。だって、増霊極(ブースター)なんて絶対手に入らなかったでしょう?まあ、手に入ったところで使えないでしょうけど……」

隣で聞いていたローズも不思議そうに尋ねる。

ホームズは、走りながら手短に答える。

「勘と運」

「それは、聞きました。もっと具体的なものです」

エリーゼに言われホームズは、肩をすくめる。

「……少し、考えれば簡単な事だよ」

そう言ってホームズは、説明をした。

「兵士のみんなは増霊極(ブースター)の恩恵にあるわけだろう?。

つまりだ、単純に考えてその人の周りは地場(ラノーム)になっているわけだ」

「……まさか」

ジュードは、頬が引きつるのを感じる。

「そ。兵隊さんがたくさんいる道を通ってきた。あ、勿論、両腕は使わなかったよ」

つまり、両腕が使えない状態で戦場のど真ん中を突きってきたのだ。

「ヨルが、地場(ラノーム)になっているところを大まかに見つけて、そこを通ってきたんだ」

「なるほどね。そりゃ、そのとお………大まか?」

ローズが首を傾げると、ヨルが思い出したくという風にに顔をしかめる。

「仕方ないだろ。こんな事やった事ないんだから。

なんとなく、そうっぽいところをホームズに指示して走ってきたんだ」

「………何回か外したよね」

ホームズは、顔を暗くして言った。

「……あぁ。何度辞世の句を詠んだか分かったもんじゃない」

ヨルのミスでホームズが死ねばヨルが殺した事になる。

そうなって仕舞えば、ヨルも死ぬ羽目になる。

まあ、霊勢が無茶苦茶な中に放り込まれて仕舞えばそれだけで死に直結するのだが……

「……なるほど、泥だらけなのは、そのせいか……」

レイアは、隣で聞いてため息を吐く。

「よく生きてたな、おたくら」

「だから、言ったろう?勘と運だって」

ホームズは、やれやれと言った風にそう言った。

「まあ、無事で良かったよ」

ジュードは、そう言ってにっこりと笑う。

「いや、死にかけたし、そこまで無事じゃなかったんだけど……」

ホームズは、顔暗くしながらそう返す。

「まあ、合流できたんだからいいじゃん!」

レイアがそう言うとホームズは、ため息を吐く。

「まあね」

『こっちだって、大変だったんだぞー!!

特にローズ!!』

ティポの言葉にローズは、直ぐに真っ赤になる。

「………ローズが?」

ホームズは、小首を傾げる。

「もしかして、前みたいに心配してたの?」

ホームズの言葉にローズは、否定しようとするが、ぐっとこらえる。

「もしかしてって何よ。心配したわ」

若干優しくない言い回しが入っていたが。

ホームズは、ぽりぽりと頬を人差し指でかく。

「………そ。心配してくれてありがとう」

そっぽを向きながらホームズは、そうお礼を言った。

その後直ぐにローズの方に向き直る。

「そう言う君達は、どうだったんだい?」

「別にどうって事なかったわよ」

調子に乗って大技を出してこけた事を遠い彼方にはふっ飛ばしてローズは、そう言った。

「………心配した?」

ローズは、おずおずとホームズにそう尋ねる。

「馬鹿言え。状況が知りたいんだよ」

しかし、ホームズは、そう素っ気なく返す。

ローズは、カチンと来たようだ。

拳をぶつけようとするが、理性をもって抑える。

「あぁそう」

ローズは、そう言ってこの会話を終わらせた。

一部始終見ていたレイアとエリーゼは、深くため息を吐く。

そんなレイアの肩にヨルがぴょんと乗る。

「言わなくてもいいと思うが」

「うん。分かってるよ、ヨル」

レイアは、そう言ってホームズの頭をスパンと叩く。

「本当のことも言おうね、ホームズ」

「………気が向いたらね」

ホームズは、そう言って肩をすくめた。

レイアとエリーゼは、もう一度深いため息を吐いた。

ホームズ達がそんなやりとりをしている中ローエンは、顎髭を触っている。

「どうしたんだい?ローエン?」

「……ホームズさんは、逃げ出したんですよね」

「まあね。痺れ薬入りの紅茶を飲まされかけたよ。

お返しにテント潰してきたけど」

「何してるのよ、貴方……」

隣で聞いていてローズは、我慢出来ずにため息を吐く。

心配してた自分が馬鹿みたいだ。

「ウィンガルさんの話によると、ホームズさんを殺さず捕らえるよう指示が出ていたそうですが」

ローエンは、そんなローズに構わず続ける。

「その通りだけど……なんでそんな事まで知ってるんだい、あの人?」

ホームズは、頬が引きつる。

「それよりも私は、ホームズさんに聞きたいことがあります。

本拠地を抜け出してから、私達の所に来るまでにラ・シュガル兵に殺されそうになりましたか?」

「いや、別に。普通にみんな生け捕りにしようとしてたけど。

それがどうしたん………」

だい?と言おうとしてホームズは、途中で気付いた。

「おかしい……妙だ」

ホームズは、真剣な顔で悩む。

「何がよ」

ローズは、訳が分からない顔をする。

そんなローズにホームズは、どう説明しようか考えると指を一本立てる。

「少し立場を変えて考えてみよう。

いいかい、君はラ・シュガル軍の大将だ。想像できるかい?」

「まあ、なんとか」

「さて、では、ラ・シュガル軍としては、当たり前だけど戦争に勝ちたいよね?」

「そりゃあね。負けたいと思って戦争なんてしないでしょ」

ローズは、ホームズの質問にこくりと頷く。

「そんな時、降って湧いた最高の武器、それが……」

「クルスニクの槍?」

「これから君の事を暫くアホの子って呼んであげる」

「貴方に言われる程屈辱的な事はないわね」

「だったら、おれにそう言われないように賢くなりたまえ」

「喧嘩しないで。続きは?」

険悪な雰囲気になり始めた二人をレイアが止める。

続きを促されたホームズは、こくりと頷き先を続ける。

「さて、アホの子が言ったクルスニクの槍は、降って湧いた武器じゃない、最初から用意してあった武器だ。

そのために前から準備をしていたんだ。アホの子も聞いていたはずだろう?」

強靭な精神力でローズは、湧き上がる殺意を抑える。

(あ、あんなに心配したのに……こんな言い草ってある?)

ホームズは、そんなローズを無視して更に話を続ける。

「降って湧いた武器は、おれ達。もっと正確に言うならヨルなんだけどね」

「あ、精霊術の無効化」

「流石、ジュード君。アホの子より頭いいね」

「ローズ、落ち着いて。黙って話を聞こうよ」

レイアがどうどうと抑える。

エリーゼは、ローズを煽るホームズに半眼を向けている。

「さて、精霊術を無効化できるおれ達を戦力に加えたい。

ところが、作戦は失敗しおれ達に逃げられてしまった………さて、どうする?」

「どうするって、捕まえ………いや」

ローズは、表情を険しくさせる。

「殺すわね。敵の手に渡るぐらいなら」

「正解。その通りだよ、ローズ」

ようやく名前で呼ばれ少し嬉しくなったが、そもそもそれがおかしいと思い直し、余分な気持ちを追い払う。

段々とホームズとローエンの言いたい事が分かってきた。

ホームズを仲間として考えれば、まず出ないと答えだが、ジランドはそうは見ていない。

ラ・シュガルにとって所詮ホームズは、戦力でしかない。

そして、精霊術を使うのはア・ジュールだけではない、ラ・シュガルだって使うのだ。

もし、ラ・シュガル軍がホームズを捕まえられず、ア・ジュール軍がホームズという戦力を確保すれば……

「降って湧いた武器は、自軍を滅ぼす凶器になる……そういう事ね」

「そ。リスクをとって敵を倒すか?

それともリスクを取らず味方の損害を減らすか?」

「ま、わざわざ武器を相手に渡す理由はないわな」

ヨルは、ふむふむと頷く。

話がひと段落すると、ホームズが指をもう一本立てる。

「さて、ここで問題になってくるのが、さっきの話だ。

おれが逃げ出したことは伝わったはずだ。

何せ、戦場を突きってるんだから。

でも、討伐命令は出ていなかった。

妙だと思わないかい?」

一同は、ホームズの言葉に黙り込む。

その沈黙をミラが破る。

「とりあえず、出来ること、分かっていることから片付けていこう。

勿論、先程の話を念頭においてだ」

「まあ、結局そうするしかないよねぇ」

ホームズは、そう頷く。

「さて、クルスニクの槍まで、もうすぐだ」

ミラがそう言って曲がり角を曲がろうとした瞬間、目の前をラ・シュガル兵が音を立てて飛んで行った。

突然の光景に一同は、息を飲む。

 

 

 

 

 

 

 

「よう」

 

 

 

 

聞き覚えのある声に特にホームズとローズは、驚きで一瞬声が出なかった。

しかし、ホームズは直ぐに息を飲み、声が震えるのを必死で隠し、できる限りいつも通りの調子で言葉を紡ぐ。

 

 

 

「……まさか、あなたにこんな所で会うとは思わなかったなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

ホームズ達はゆっくりと声のした方に顔を向ける。

 

 

 

そこには、積み上げられたラ・シュガル兵の上に腰掛けている男がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか?俺はこうなると思ってたぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男………マーロウは煙管を咥えながらそう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








マーロウ、久々の登場です。
長かったなぁ………



では、また百七話で( ´ ▽ ` )ノ

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