1人と1匹   作:takoyaki

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百八話です



意地っ張りの真骨頂です!!


てなわけで、どうぞ!


女の一念岩をも貫く

『待て』

ローズは、比較的早く意識を取り戻し、直ぐに戦いに加わろうとした。

しかし、倒れているホームズの側でヨルは、ローズをそう止めた。

『何でよ!今行かないと完全に全滅よ』

『今行けば確実に全滅だ』

ヨルは、そう言って周りを確認する。

一向は、一人また一人と倒れていく。

ヨルは、舌打ちをしてローズを見る。

『時間がない。簡潔にそして、一度しか言わんから、よく聞け!いいか、今から言うのは必勝法なんかじゃない!

けれども、これしかない!お前は、これを成功させる事だけ考えろ』

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

「ハァアア!!」

先に仕掛けたのはローズだ。

マーロウは、ローズの一刀を防ぐともう一方の刀をローズに向ける。

ローズは、余ったもう一刀を地面に突き刺し防ぐ。

キィンと高い音が鳴り響く。

ローズは、マーロウの足を踏んで、動き止めるとそのまま頭突きをかます。

マーロウの方が背が高い為、額には届かない代わりに、胸に思い切り思い切り当てる。

「─────っ!!」

突然の衝撃に息がつまり、動きが止まる。

『いいぞー!ローズ!!』

ティポは、ノリノリで声を上げる。

その声でレイアが起きる。

「………何、今、どうなってるの?」

「ローズが、戦っています。レイア、私たちは治療を」

「わかった」

レイアは、エリーゼの言葉に頷いた。頷いた。

レイアが意識を取り戻している間にローズは、刀を引き抜くと同時に動きの止まったマーロウに斬り上げていた。

マーロウは、その拍子にローズの足が退けられたのを見計らうとそのまま後ろに下がる。

しかしかわしきること叶わず、少し刀をもらってしまう。

「ぐっ!!」

ローズは、その隙を逃さない。

「瞬迅剣!!」

刀を突き出し、マーロウに向かう。

マーロウは、刀で防ぐ。

しかし、

「散沙雨!」

無数の突きがマーロウを襲う。

「秋沙雨!!」

そこにローズは、踏み込む足を代え更に攻撃を足す。

突きの雨が止む事はない。

(実力が足りなければ手数でどうにかするしかない!)

ローズは、マーロウを押しているこの間に、更に剣撃を加えようと足を踏み込む。

「とか、思ってんじゃねーだろーな」

マーロウは、そう言って更に攻撃を仕掛けようとするローズの額に刀を突きつける。

「浅いな、考えが」

肌に触れてはいない。

しかし下手に動けばローズの命は、そこで切り取られる。

そんな恐怖で、ローズを縛られていた。

しかし、ここで恐怖していては何も始まらない。

ローズは、ぐっと恐怖を飲み込む。

「……マーロウさん、貴方のその精霊術初めて見ましたよ……隠してたんですね」

「当然だろ。こんな奥の手知ってんのは、ホームズとヨル、そんでホームズの母親ぐらいだ」

「逆になんで、その面子が知っているのか聞きたいですね……」

ローズは、頬を引きつらせながら、そう言う。

マーロウは、ニヤリと笑う。

「まあ、勝負が着いたら教えてやるよ」

「そりゃあ、是非とも勝って高笑いしながら聞きたいですね」

ローズは、そう言って横に身体をずらしマーロウの中心から外れ、刀を振るう。

捉えた。

確かにそう思った。

しかし、マーロウは、眉ひとつ動かさず、刀で防ぐ。

「それで、とったつもりか……」

マーロウは、そのままローズの腹を蹴って距離を空け、刀を後ろに弾き飛ばされるローズに構える。

 

 

 

 

「馬鹿弟子」

 

 

 

 

 

 

そのままマーロウは、瞬迅剣を放った。

(─────っつう!重い!)

刀を交差し何とか防ぐ。

先程自分が放ったのとは、比べ物にならない重さの一撃だ。

男女の差、体格の差、それを差し引いたとしても埋まらない、及ばない実力。

自分と同じ技。

だからこそ全てをローズは、実力の差を悟ってしまった。

「おい、へばるなよ」

そう言ってマーロウは、刀を構える。

「まだまだ、行くぜ」

そう言って刀の突きを無数に繰り出す。

「散沙雨!!」

連続のローズを上回る突きの速さと量、そして、威力。

「ぐっ!」

何とか捌き、防ごうとするが、マーロウの突きの速さと量がそれを許さない。

防げども、捌けども一向に減らない突き。

既に何発もローズの身体をかすっている。

しかし、マーロウは、攻撃の手を緩めない。

「秋沙雨!」

それどころか寧ろ突きの量が増えた。

「──────ぐっ!」

遂にローズの防げる量を完全に超えた。

かするどころでは済まない刀傷がローズに刻まれていく。

羽織は、切り傷だらけになっており辛うじて羽織という形を保っている。

マーロウは、突きを繰り出し終えると刀を持ち変える。

そして、

「鳴時雨!!」

先程ローズが出そうとした技をマーロウは、放った。

この技は、突きだけではない。

無数の横薙ぎも混ざる。

「──────っゔぁあ!!」

マーロウの斬撃がローズを襲う。

辛うじて羽織のだったものは、布切れと代わり、ローズは、至る所から血が流れでる。

「ローズ!!」

エリーゼは、思わず叫んだ。

レイアがその声で振り返るとそこには、

 

 

 

 

技を喰らうと前のめりに倒れていくローズの姿があった。

 

 

 

「ローズ!!」

 

 

近づく地面を見ながら、ローズは思い返していたを

瞬迅剣を食らった時、いや、もっと言えば最初からこうなる事ぐらい分かっていた。

自分がマーロウより強いわけがないのだ。

仮にも自分の師匠だ。

手合わせだって、何度したか分からないし、その度に数え切れない程負けている。

だからこそわかる。

(勝てるわけがない………)

そしてローズは、歯を食いしばり、前にダンっと強く踏み込んで倒れないよう耐える。

倒れなかったローズにマーロウは、少なからず驚く。

「でも……それがなんだっ!なんだって言うんだっ!!」

ローズは、そう言って刀が手から落ちないよう力を込め、マーロウの腹を蹴る。

思いがけない攻撃にマーロウは、思わず後ろに下がる。

 

 

 

 

 

 

「女にだって、負けると分かっていてもやらねばならない時がある!!」

 

 

 

ローズは、そこで顔を上げ、キッとマーロウを睨む。

 

 

 

 

とても瀕死とは、思えない迫力にマーロウは、思わずこんな時だというのに弟子の成長を喜んだ。

 

 

ローズは、言うだけ言うと刀を二本仕舞う。

 

 

 

 

 

 

 

マーロウは、眉を潜める。

「抜刀術か………なけなしの速さにかけるって訳だな」

そう言うとマーロウは、ローズを指差す。

「だがよ、お前、その満身創痍で、満足のいく速度が出せんのか?」

ローズは、身体から血が流れ、ほぼ意地だけで立っている。

「出すわ。その為に、私はここにいる」

迷いなくローズは、そうマーロウに告げ、剛照来をする。

マーロウは、その言葉を聞くと二刀を構え、そしてローズに向かって駆け出した。

ローズは、静かにマーロウを待つ。

本来なら、ローズも走って迎え撃つ所だが、生憎満身創痍の為そんな事に回せる力はない。

だが、それでもローズに迷いはない。

自分のやるべき事が分かっているのだ。

だからこそ、不安はあれど迷いはない。

 

 

 

 

マーロウがローズの間合いに入り刀を振り被る。

ローズは、それを見切ると刀の鯉口を切る。

 

 

 

 

 

 

抜刀されたローズの刀は、キィンと高い音を立ててマーロウの二刀の内一つを捉える。

そして、ローズの刀はマーロウの刀を折って進む。

「っはぁああああ!」

ローズの刀は、マーロウの二刀目を捉えた。

 

 

 

 

 

しかし、マーロウの二刀目は、折れることはなく、逆にローズの刀が真っ二つに折れた。

 

 

 

 

 

一刀目を折るのに全ての速さと力を注ぎ込み、遂にもう一刀折ることは、叶わず、逆にローズの刀が折れてしまった。

無情な結果を見届けるとマーロウは、刀を返す。

「うっ!」

それによりローズは、姿勢を崩し膝をつく。

マーロウは、折れて柄だけになっている刀を捨てる。

そして、俯くローズにもう片方の手にある刀を構える。

ローズは、刀を全て破壊する事叶わず、満身創痍。

もう一度抜刀するには、抜きづらい右腰の刀。

おまけに、ローズの右手にあるのは刃の折れた刀。

どうやっても間に合わない。

 

 

 

 

勝敗は、決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

 

 

 

 

ローズは、雨に打たれ、今にも消えそうだった姿から一変した。

キッと顔を上げると左手に折れた刀の刃を素手で持ち、マーロウに突進する。

「っあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」

 

 

 

 

精一杯叫ぶと、ローズは、そのままマーロウの右手に刀を突き刺し、崖の壁に叩きつける。

「ぐっ!!」

マーロウもこの攻撃は、予想外だったようだ。

驚いて目を開く。

「………ヨルが言ってた」

ローズは、マーロウの右手を見ながら言葉を出す。

マーロウの掌には、何らかの文字の入れ墨があった。

「………掌に精霊術の詠唱を書いてあるって。

片手じゃたりないから、両手にある。それをマナを込めながら合わせて精霊術を発動させて、マーロウさんの家にある武器を引っ張り出してるって……。

まあ、代わりに一つの(その)精霊術しか出せないそうですけど」

マーロウは、それを聞くとニヤリと笑う。

「なるほど、お前は最初からそれが狙いで負けると決まっている勝負を挑んできたのか」

「言ったでしょう。『女にだって、負けると分かっていてもやらねばならない時がある』って」

「なるほど……」

マーロウは、そう言って自分の弟子を見る。

よくやったものだと褒めたくなる。

だが、残念ながら、まだ足りない。

肝心の事をローズは、忘れているのだ。

 

 

「………そう。お前の言う通り。

俺はこいつのおかげでこんな無茶苦茶な精霊術が出せる。

ま、代わりに他の精霊術は、使えないんだがな」

 

 

 

 

 

 

マーロウは、そう告げるとローズの腹を蹴りローズを後方に下げる。

 

 

 

 

ローズは、内側に響く鈍い痛みと刀傷を抉られた鋭い痛みが襲う。

 

 

「─────っ!!」

 

耐えながらマーロウを睨む。

 

 

 

マーロウは、刀を引き抜き無表情で血だらけの右手を見せる。

 

 

 

 

 

「そう、こいつがあったせい(・・・・・)で、な?」

 

 

そう告げるとマーロウから、マナが溢れ出た。

 

 

 

(ヤバイ!!)

 

 

 

 

ローズは、マーロウの言葉の意味に気づいたが、遅かった。

 

 

 

 

ローズの足元に風の陣が出来上がっている。

 

 

 

 

 

「ぶっ飛べ……アリーヴェデルチ!!」

 

 

忘れていること、すなわち、誰がローズに精霊術を教えたか(・・・・・・・・・・・・・・)、という事だ。

 

 

 

 

突風が、上空に向かって吹きローズの身体は宙に舞いがった。

 

 

 

 

そう、マーロウは、あの精霊術を使える代わりに他の精霊術が一切使えなかった。

当たり前と言えば当たり前である。

常に別の精霊術の詠唱をしているというのに、他の精霊術を使えるわけがない。

しかし、ローズの捨て身の攻撃のおかげで両手にあったマーロウの精霊術は、終わった。

代わりに、今まで何一つ発動が許されなかった精霊術に発動の許しを与えてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

ローズを襲った浮遊感。

 

 

 

宙を舞ったら次に待つのは重力による落下のみ。

 

 

 

 

ローズは、目を閉じて落下の衝撃に備える。

 

 

 

 

しかし、その衝撃は自分の想像していたものより遥かに柔らかいものだった。

優しく何かに包まれる感覚と言ってもいい。

 

 

 

不思議に思い目を開けると、そこには、ホームズの顔があった。

二つの碧い瞳が印象的だ。

 

 

 

 

 

「よくやった、ローズ……後は、任せたまえ」

 

 

 

 

ホームズは、抱きかかえているローズに言葉をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 












最後のお姫様抱っこは、負けはしたけど、頑張って役目を果たした意地っ張りローズへのプレゼント(笑)ヒューヒュー!



てなわけで、また百九話で( ´ ▽ ` )ノ

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