1人と1匹   作:takoyaki

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百十二話です



日刊ランキング2位だと……?
そんな馬鹿な!
と思って家に帰ってもう一度見たら圏外に消えてました。


けれども一瞬とはいえランキングに入ったことは事実!
これもそれも皆さんのおかげです!!
本当にありがとうございます!!


もうこんな事になってしまえば必ず完結させてみせます!!




てなわけでどうぞ




槍でつついて蛇を出す

「ねぇ、ホームズ聞いてもいい?」

「四つ目の理由以外なら」

「いつまで、言ってんのよ……」

ローズは、ぷいと顔をそらしているホームズにため息を吐く。

「じゃなくて、貴方どれだけ回復したのよ?

傷は治っても体力全部って訳にはいかないでしょ?」

ホームズは、罰が悪そうな顔をする。

体力が回復したばかりのホームズの代わりに荷物を背負っているジュードは、無言で頷く。

「まあ、良くて約四割ぐらいかな」

「……『良くて』で、『約』で、『ぐらい』か、とことん頼りない事この上ないな」

ミラの最もな言葉にホームズは、返す言葉がない。

「しかも、そこまで言って結局四割だもんね……」

レイアもため息を吐く。

「まあ、四象刃(フォーブ)レベルが来ると辛いかなぁ……」

ホームズは、正直に自分の状態を言う。

「マーロウさん相手に勝とうなんて考えるからよ」

ローズは、声を鋭くして言う。

「君も応援してくれたじゃないか」

「頑張れとは言ったけど、死にかけろと言った覚えはないわ」

「君にだけ(・・)は言われたくないね。

目を覚ましたらズタボロになって空から落ちてきてくせに」

ホームズの言葉にミラは首を傾げる。

「なんだ?そんな事あったのか?」

『うん!ホームズがお姫様抱っこしたんだよー!』

「おお!本で読んだ事があるぞ!ホームズ、お前にも出来るんだな!」

「どういう意味だい?」

心底驚いたように言うミラにホームズは、ジロリと睨む。

そんな二人に構わずティポの言葉にローズは、カッと顔を赤くして、拳を握る。

そんなローズを慌ててレイアが、後ろから羽交い締めにして止める。

ジュードとローエンは、やれやれとため息を吐いた。

そんな中、アルヴィンは、全く動じていないホームズを見て首を傾げる。

「あれ?おたくはなんの反応もないの?」

「ないね」

ホームズは、心底どうでも良さそうに返す。

流石にその反応は、ローズもカチンと来たようだ。

振り上げようとする拳を必死で押さえる。

仮にも怪我人。

そして、自分を一応助けてくれたのだ。

 

 

 

 

 

「つーか、むしろどうして、ローズがあんなに照れてるのか不思議なくらいだよ」

 

 

 

そんな決意は、一瞬で崩れ去った。

「なっ!?」

(あぁ、せっかく落ち着いたのに………)

レイアは、再びハラハラする。

何せ、ホームズがこの後気の利いた事を言う訳がないのだ。

 

 

 

 

 

「君、別れ際におれに何したか忘れたわけじゃないだろう?それに比べればどうって事ないじゃないか」

 

 

 

 

 

 

冷たい雨が、一瞬だけ氷になった気がした。

 

 

 

 

 

 

ローズは、赤くなった顔を更に赤くし、直ぐに元の色に戻り、そしてゴミを見るような目でホームズを見る。

「貴方はそんなだから、モテないのよ」

「なんて目でおれを見るんだ……」

ホームズは、思わずたじろいだ。

そして、同意を求める様にミラ達を見るが、全員呆れ返った目でホームズを見ている。

「はぁ、行くわよ」

そう言ってローズは、先を歩いて行った。

「ねぇ?今のおれが悪いの?」

「おたく以外誰が悪いんだよ」

アルヴィンは、やれやれと肩をすくめる。

「もったいないね、ホームズ」

レイアは、苦笑いをしながらホームズにそういった。

対するアルヴィンは、不思議そうな顔をしている。

「もったいない?」

「いやね、凄かったんだよ。ホームズ。

治療が終わって目を覚ました瞬間にローズを助けに行ってさ」

『しかも、ローズを僕たちに渡した時の顔は普段からは、想像できないくらい真剣な顔だったんだよー』

「マジ?」

気絶していたアルヴィンは、何も見ていない。

エリーゼは、不本意そうに渋々頷く。

「恐ろしいね。おたくが二人にここまで褒められるなんて……雨でも降るんじゃ………いや、もう降ってるか」

「君、喧嘩売ってるだろう?」

しとしと雨に濡れたホームズは、頬を人差し指でかきながら半眼で睨む。

「いや、事実だろ?」

ヨルは、肩で頷いている。

ホームズは、パンと手を叩く。

「あぁ、もう!この話は終わり」

これ以上話題を広げても得るものなどないと判断したホームズは、話を打ち切る。

そんなホームズにエリーゼが尋ねる。

「だったら、別の話をしてもいいですか?」

「四つ目の理由以外なら」

エリーゼは、直ぐに目をそらした。

「君………」

ホームズは、エリーゼの予想通りの反応に頭痛を堪えるように頭を押さえる。

「教えてください」

「やだよ」

『何でだー!いいから、教えろ!だからモテないんだ、お前は!』

ティポの言葉にホームズは、顔をしかめる。

「しつこい男は、モテないけど、しつこい女も持てないよ」

「……ホームズが言うと説得力が違いますね」

二人は、お互いを罵り合う。

イーッと歯を見せて威嚇をする二人を見てヨルは、肩で呆れ返っていた。

「そこまで言うなら、別にいいです」

諦めた?そんな訳はない。

エリーゼには、とっておきの切り札があるのだ。

ローズ以外既に周知の事実だが、ホームズの弱味の一つだ。

「ホームズの初こ…………」

い、と言おうとするエリーゼの口にホームズは、人差し指を持っていき黙らせる。

「おふざけはここまでだ、エリーゼ」

そう言ってホームズは、エリーゼから、前方に視線を移動させた。

そこには、一人の男が佇んでいる。

ホームズは、顔が引きつるのを感じていた。

 

 

 

 

 

『世の中には、『しぼうふらぐ』というものがあるらしいな?』

 

 

 

 

 

 

ヨルの言葉が脳裏をよぎる。

 

 

 

 

 

四象刃(フォーブ)レベルが相手だとキツイかな……』

 

 

 

 

 

「ばっちり回収しちゃったよ……」

ホームズは、目の前の男に改めて目を向ける。

「会いたくなかったなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

「ガイアス王」

 

 

 

 

 

そこには、ア・ジュールの王が静かに佇んでいた。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

ガイアスは、ホームズの言葉を背中で受ける

 

 

 

 

 

 

 

相変わらずの迫力にローズは、肩を押さえる。

「そうか、ウィンガル達とマーロウは、破れたか……」

ガイアスは、静かに目を閉じる。

「やはり貴方も戦場に赴いていましたか……」

「無論。これは、俺の道だからな」

ガイアスは、ローエンの言葉にそう返した。

ミラはジュードに向かって静かに頷くとガイアスに向かって歩みを進めた。

ジュードも後を追おうとするが、ローエンに止められる。

「答えろ、ガイアス。何故、クルスニクの槍を手に入れようとする?」

「全ては民を守るためだ。力は全て俺に集約させ管理する」

ミラの質問に瞬時に返す所がガイアスの強い信念を物語っている。

「それは、ただの独占にすぎない。

結果、お前も、守るべき民も槍の力が災いし身を滅ぼすだろう」

「俺は滅びぬ。弱きを導く意志がある限りな」

 

 

 

「(すっごい自信だねぇ……)」

ホームズは、肩にいるヨルに小声で話す。

ヨルは、ガイアスを見る。

「(まあ、いるんだよな、たま(・・)にああ言う奴が)」

 

 

 

 

 

 

「……お前は、一つの重要な事実から目を背けている」

「なんだと?」

初めてガイアスの声に同様が走った。

「お前が幾ら力のある者であっても、いつかは必ず死ぬ。その後はどうなる?」

ヨルやミラと違いガイアスは、人間だ。

時間には限りがある。

「人の系譜の中で再びお前のような人間が現れるのだろうか?」

「………?!」

ガイアスは、ミラの言いたいことがわかったようだ。

そうヨルの言っている通りガイアスの様な人間はたまにしか現れない。

「残された人間達は過ぎたる力を持て余し、そして、自らを滅ぼす選択をする」

ミラは、ガイアスを睨みつける

「それが、人だ。歴史がそれを証明している」

ミラの話を聞くとガイアスは、ようやく振り返る。

「……ならば、俺がその歴史に新たに道を示そう」

迷いも躊躇いもない真っ直ぐな目を見てミラは静かに目を伏せる。

「………ガイアス。やはりお前も人間だな」

落胆を隠しきれないミラの言葉にガイアスは、不敵に笑う。

「人間だからこそ俺には、リーゼ・マクシア平定という野望がある。

お前は、ただの欲望と言うだろうがな」

「別に欲望(それ)が悪いとは言わないがな」

ミラはそう言って目線だけでホームズを確認し、片手剣に手をかける。

「最後だ、ガイアス。槍を渡さない。どうしても退かないのか?」

ガイアスは、身の丈もある長刀を構える。

「退かん」

静かにしかし確かな闘気を感じる佇まいだ。

ジュードは、背中の荷物を降ろし、静かにミラの隣りに立つ。

「……あなたなら、もしかしたらって、思ってた。

でも、クルスニクの槍だけは壊さなくちゃダメだと思う」

籠手をはめジュードは、構えながらそう言った。

「えぇ、クルスニクの槍は悲しみしか生み出しませんから」

ローエンは、先ほど拾った細剣を構え、指揮をとる。

「悲しいのは、終わらせないといけないんだから!」

レイアは、棍をくるくると回して構えた。

「そうです!ミラはいつも正しいんです!」

『僕たちはミラの味方だもんねー!』

エリーゼは、杖を構える。

「ガイアス王。刀を向けるご無礼、申し訳ありません」

ローズは、そう言って両刀に手を掛け、引き抜く。

「……それでも私は、クルスニクの槍を壊してみせる」

「ま、そういうことらしいぜ」

アルヴィンは、大剣を肩に乗せ銃を構える。

「軽いねぇ、アルヴィン君」

ホームズは、そう言って肩をすくめ、ガイアス王の奥にそびえる槍を睨みつける。

「……おれとしてもそいつが、ここにあるのは我慢ならないねぇ」

「いつの世も不幸になる力を選ぶ……人間は本当に愚かだな」

ヨルは、肩で馬鹿にした様に笑った。

 

 

 

 

 

「行くぞ!!」

ミラは力強くそう告げる。

長刀を持つ手に力を込めた。

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「ハァアア!」

ジュードは、ガイアスの長刀を掻い潜って拳をぶつける。

しかし、ガイアスは間合いが近い間合いを直ぐに放し長刀で防ぐ。

そして、長刀を返しジュードに向かって薙ぐ。

ジュードは、拳を問答無用で長刀に向かって放ち防ぐ。

「っつう!」

予想以上の重さにジュードは、歯をくいしばる。

横薙ぎを弾かれたガイアスは、そのまま上段に構え、振り下ろした。

迫り来る白刃にジュードは直ぐに手を交差させて受け止める。

しかし、横薙ぎの一撃と同じように一撃の重さが尋常ではない。

「………ぐっ!」

(やばい!)

「「飛燕連月華!!」」

そんなガイアスにレイアの棍を踏み台にしたホームズが回転踵落としを放った。

「────っ」

ガイアスは、ホームズの踵落としを喰らうと直ぐにホームズに向かって手をかざす。

「獅子戦哮!!」

そう言って放たれた闘気の獅子はホームズとは、比べ物にならないくらいの大きさだった。

「嘘だろう……」

闘気の獅子は、頬を引きつらせるホームズに襲いかかった。

盾で防ぐが間に合わない。

闘気に押されホームズは、そのまま地面に転がる。

マーロウの獅子戦哮と同じかそれ以上の大きさにホームズは、歯噛みしかでない。

「覇道滅封!!」

長刀から砲撃のようなマナと闘気の光線が出され、ホームズに襲いかかる。

ホームズは、それに押し流され、詠唱中のローエンとエリーゼを巻き込んで倒れた。

「っつう!」

『どけーホームズ!邪魔なんだよ!』

「ティポから、その言葉がでるとつくづく泣きたくなるねぇ……」

ホームズは、そう言って立ち上がると巻き込んでしまったエリーゼとローエンに手を差し出し、立ち上がらせる。

「優しい言葉でもかけて欲しいですか?」

「遠慮しとく。雷が降られても困るからね」

エリーゼの悪態にそう返すと、ホームズは、クルスニクの槍を見てガイアスを見る。

ホームズは、そう言って立ち上がる。

「本当は槍を壊す為に取っておきたかったんだけど……」

そう言って肩にいるヨルを見る。

「ま、ここで負けたら元も子もないしな」

ヨルは、そう言ってホームズに向かって黒球を吐き出す。

マーロウの精霊術の残りが現れた。

ホームズは、それを回し蹴りで弾けさせ黒霞を左足にまとう。

「ガツンと行くゼ!ローエン!」

「お任せを」

そう言って調律をし終わる。

「フリーズランサー!!」

氷の矢がガイアスに襲いかかる。

「獅子戦哮!」

しかし、ガイアスの獅子はそんな氷の矢を喰らい尽くした。

獅子が消えると、そこにはホームズがガイアスの眼前にいた。

ホームズは、右足をガイアスの顎に向かって蹴り上げる。

ガイアスは、僅かに後ろに下がりかわす。

ホームズは、そのまま勢いで宙返りをして右足で着地をし、そのまま身体を反転させ、ガイアスに左足の回し蹴りを放つ。

防げば刀を折り、防がなくては、あばらを折る。

ガイアスは、前者を選んだようだ。

上段に構えたまま長刀の切っ先を下にする。

ホームズの破壊の左足がそれを捉えた、かのように見えた。

 

 

 

 

しかし、ホームズの左足は、ガイアスの長刀を破壊する事なく水しぶきを立てて地面に着く。

「おいおい、なんだあれ?」

アルヴィンは、信じられないという風に今の光景を見ている。

「妙だ。ホームズのあの状態で壊せないものなどないはずだが……」

ミラも首を傾げている。

ジュードは顔をしかめる。

「今のは、受け流しだよ。

ガイアスは、自分の武器ホームズの力が伝わらないようにそのまま受け流したんだよ」

どんなに、強大な力であっても力が伝わらなければ意味はない。

暖簾に腕押し、ぬかに釘状態だ。

手応えが存在しない。

ホームズは、受け流され態勢が崩れそうになるが、何とか踏ん張ってもう一度、左足で蹴りを放つ。

しかし、ガイアスはそれを再び受け流す。

「……んのぉっ!」

ホームズは、崩れそうになりながら何とか空中でくるりと回って着地する。

その瞬間をガイアスが長刀で突く。

きぃんと高い音が鳴り響きホームズの盾とガイアスの長刀がぶつかり合う。

盾で防ぐが、勢いを殺す事叶わず、ガイアスから、大きく離される。

「………ナイス時間稼ぎ!」

ローズは、そう言って刀を構える。

「ディバインストリーク!!」

詠唱を完成させたローズのディバインストリークがガイアスに向かって放たれた。

「覇道滅封!!」

しかし、ガイアスは、闘気の光線を放ちディバインストリークをかき消した。

「嘘でしょ?!」

ローズは、自分の現時点での切り札に近い術をかき消され、驚くばかりだ。

ホームズは、立ち上がりもう一度、ガイアスに挑もうとする。

「あれ?」

しかし、立った瞬間バランスを崩して膝をついた。

「ホームズ!」

レイアは、ホームズの先ほどの言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

─────まあ、良くて約四割ぐらいかな─────

 

 

 

 

 

結局、四割だって回復していないのだ。

 

 

 

 

ホームズの攻撃が通じず、ローズの精霊術は、かき消され、ジュード達の攻撃は届かない。

マーロウという敵と戦ったばかりの面子にこの相手は厳しすぎる。

ガイアスの長刀が膝をついたホームズに襲いかかる。

「蒼破・追蓮!!」

ローズから放たれた二つの斬撃が空を切ってガイアスに襲いかかる。

ガイアスが長刀を振るってそれを打ち消している間にジュードがレストアでホームズを回復させ、ガイアスから離れる。

「結構自信あったんだけれども……」

儚く消えた斬撃を見てローズは、頬を冷や汗が流れるのを感じていた。

規格外過ぎる。

そう思っているところにガイアスは、一行に向かって魔神剣を放つ。

地面を這う剣戟をかわしたが、風圧が一行を襲う。

「……う!」

ホームズのポンチョがたなびく。

「く……なんて、強さだ」

ミラは思わず呟く。

「お前達も流石と言っておこう」

ガイアスは、そう言うと身体から赤いマナが現れる。

長刀にもマナと闘気が混ざり合ったものが纏われている。

「だが!クルスニクの槍は、必ず手に入れる!」

ガイアスを中心に渦巻くさながら、炎のような赤い闘気とマナの迫力は尋常ではない。

「ちょ、ヤバくない?」

レイアは、思わず声に出した。

「ヨル、食える?あれ?」

「……不純物が混じてるから、無理だな」

ヨルは、悔しそうに呟く。

「……どうするんだい、これ?」

もう、後は技の発生を見極めて避けるしかない。

上手くいくとは思えないが。

「ち、まだかよ!」

アルヴィンは、小声で何かを確認するように辺りを見回す。

「さらばだ!」

ガイアスは、そう言って刀を振るおうとした。

 

 

 

 

 

 

 

それをどこからともなく飛んできた双剣が止めた。

 

 

 

 

 

 

振おうとする長刀を止め飛んでくる双剣を弾き飛ばす。

「誰だ!?」

飛んできた方をガイアスは、睨む。

すると、上空から一人の男が降りてきた。

「この霊力野(ゲート)の気配は……」

ヨルは、一人の男の顔を思い浮かべていた。

(間違いない、あのテンションの高い男だ)

男は、クルスニクの槍の前に着陸した。

「そこまでだ!」

「……イバル?」

ミラは、不思議そうに男、巫女イバルを見ている。

何せ、何故ここにいるのか、さっぱりわからないのだ。

「何だかよくわからないけど助かった………」

ホームズは、ホッと一息吐く。

そして不思議そうな顔をしているミラに構わず、イバルは懐から円盤状のものを取り出す。

「ミラ様!本来の力を取り戻し、そのものを打ち倒してください」

そう言って上空に円盤を掲げると、それは展開し筒状になった。

「貴様!」

ガイアスが怒鳴りつけるが、イバルは聞く耳を持たず高笑いをしている。

ホームズは、その隙に先ほど貰った残りの回復道具を食べながらたずねる。

「ねぇ、ミラ。おれはよく知らないんだけど、あの不思議蚊取り線香みたいなのなに?」

「クルスニクの槍を起動させる鍵だ」

ミラは頭抑えながら答える。

「…………何だって?」

ホームズの時間が止まった。

そんな事をしているうちにイバルは、それをクルスニクの槍に差し込んだ。

クルスニクの槍に光が通い、徐々に展開されていく。

「どうだ!ジュード!俺こそが本物の巫女だ!」

そして槍の先が開かれた。

「今、四大様の力が蘇る!!」

 

 

 

 

 

 

その言葉と同時に槍は完全に槍は起動し、戦場一帯の人間からマナを吸い上げ始めた。

吸い上げられたマナは、槍の銃口へと集まっていく。

 

 

 

 

「……うっ……ぐ……」

「ローズ!?」

 

 

 

 

ホームズは、苦しそうなローズを見て声を上げる。

いや、ローズだけではない。

眼に映る人々は、例外なく苦しそうだ。

「………っつ」

そして、御多分に洩れずホームズにも症状が現れた。

「あれ?なんで?おれも?」

若干震えている手を見ながらホームズは不思議そうだ。

他の面子と比べれば格段に症状が軽い。

とはいえ、症状が現れた事にホームズは戸惑いを隠せなかった。

「マナは……霊力野(ゲート)の有無に関わらず……存在する……勿論……俺にもな」

ヨルも歯ぎしりをしながら堪える。

クルスニクの槍は、戦場という戦場の人間から、マナを吸い上げ、銃口に収束させていく。

 

 

 

 

 

臨界点まで集まるとソレは、戦場ではなく、どんよりと雲が敷き詰められた空へと放たれた。

 

 

 

 

 

そして、あっという間に上空に到達し、空に穴を開けた(・・・・・・・)

 

 

 

 

一行は、突然の事に何が起こったか理解できない。

ホームズは、軽くなった頭を捻る。

空に穴が開くというこの事象に心当たりがある気がするのだ。

 

 

 

 

 

 

────「少なくともお前達が通れるだけの穴は作り出せるだろう」─────

 

 

 

 

 

(なんだっけ……確か)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────「断界殻(シェル)て何処にあるだい?」

 ミラはホームズの質問に指を上に向かって指す。

「上空、そして、海の向こう」────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………まさか!?」

ホームズは、顔を険しくさせ、ミラを見る。

ミラは、滅多に見せない絶望に打ちひしがれた顔をしながら、声を絞り出す。

「……あぁ……そのまさかだ。

クルスニクの槍は、兵器なんかではなかった」

ミラは、顔を伏せる。

断界殻(シェル)が壊されてしまった」

ホームズは、ミラに言葉をかける余裕はない。

空に空いた穴から目が離せないのだ。

予感がある、いや、悪寒がするといったほうが正しいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

『覚えておきたまえ、ホームズ。予感があった時より、悪寒を感じた時こそ用心したまえ』

 

 

 

 

 

 

 

ホームズの脳裏に母の言葉が過った、その時だった。

 

 

 

 

 

空の穴から、宙に浮かぶ、戦艦が無数に出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

無機質なその船に纏われるているのは、純粋な敵意とそして、殺意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故かって?決まってるだろう?予感は外れる事はあっても悪寒は、外れる事はないんだから。

風邪にしろ、恐怖にしろ、殺意にしろ、悪寒が運ぶのは不幸のみ。用心するのが、当然だろう?』

 

 

 

「…………頼もしい助言だよ」

震える声でだれにきこえるともなくホームズは、呟いた。

 

 

 

 

 

 

「嬉しくて涙が出そうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦隊から砲弾が戦場に向かって発射された。

砲弾は、業火となり戦場に色を添える。

人々に災いをもたらすクルスニクの槍。

その意味を湾曲してではあるものの、一行は、確かに感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 








エクシリア最大のどんでん返しです。







クルスニクの槍起動シーン、アニメーションで、見るとアルヴィンも苦しそうなんですよね………
迷いましたが、色々調べてこの様な事にしました。





書きたいシーンもセリフも話もまだまだ終わりはなさそうです!もうしばらくお付き合い下さい!!




ついでに、まだ企画は進行中です振るってご応募を!!




ではまた百十三話で( ´ ▽ ` )ノ

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