1人と1匹   作:takoyaki

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百十五話です


前回の前書きの続き。

きっと爽やかイケメンが気に食わないのは、自分がそうではないからでしょう……
少年漫画なら別にいいのになぁ……なんでだろう……

てなわけでどうぞ


三十六計逃げるに限る

「………うわぁ!!」

砲撃が地面を抉る。

ローズは、砲撃に驚き思わず頭を抱える。

ミラに肩を貸しながらローズは、走っている。

そして、レイアが側を走る。

「敵が少なくてどうにかなりそうね」

「ミラさんを殺すつもりがない事が、最大の要因でしょう」

今や狙いは、完全にエリーゼとホームズだ。

「……結局、ホームズという戦力が欲しかったのは、ラ・シュガルではなくてジランドだった……だからなのね」

ローズは、ジランドの事を思い出しながらそう言った。

ローズの言葉にローエンが頷く。

「えぇ、恐らく」

「ホームズ……大丈夫かしら?」

ローズは、後ろを振り返りながらそう呟く。

「大丈夫だよ。ジュードもいるし、アルヴィン君もいるんだもん」

レイアの言葉にローズは、少し顔を俯かせる。

「ローズ?」

「……アルヴィンのことだけど……」

その沈んだ言葉にレイアが首を傾げる。

「アルヴィン君がどうかした?」

「……うん、ミラに銃を向けてたのよ……」

ローズの言葉を聞き、レイアも少し顔を伏せる。

「………信用してもいいのかしら?」

ローズのその言葉は雨の中に静かに響いた。

誰もが何となく思っていた事だ。

しかし、それを口に出す事は憚れた。

言ってしまえば、取り繕ってきたアルヴィンとの関係を断ち切ってしまう、そう誰もが感じていた。

しかし、もう目を背けることは許されないレベルのところまで話は進んでいる。

「………信じるしかないでしょう……でないと、ホームズさんやエリーゼの事が不安です」

ローエンの言葉は最もだ。

けれどもそれでローズの不安が晴れるわけではない。

ガイアスとの戦いホームズは、勝手に膝を付いていた。

「ローズさん、今はホームズさんのことより、私達が生き残る事を考えましょう。

ホームズさん達が無事だったとき、私達が合流出来ないなんて事になってしまえば元も子もありません」

その言葉にローズは、少し迷ってから頷く。

「……それも……そうね」

「大丈夫だよ!ホームズは、いつも死にかけてるけど、最後にはフラフラになって戻ってくるじゃん!」

「…………励まそうという気概だけは買うわ」

レイアの言葉にローズはため息を吐く。

励ましてくれるのは、素直に嬉しいし、その通りだと思う。

気を失ったミラを連れて戦場を抜けるというのは、なかなかの荒行だ。

他の事に気を取られている場合ではない。

しかし、胸騒ぎが収まらない。

「…………なんで、こっちに兵士がいないんだっけ?」

そこでローズは、口を開く。

「ミラさんを殺すつもりがないからでしょう」

ローエンは、先程と同じ事をいう。

「…………なら、奴らは誰を狙っているの?」

ローエンは、静かに言う。

「…………ホームズさんとエリーゼさんですね」

「それって!」

レイアが声を上げる。

敵は、完全にそちらに集中してしまうだろう。

しかし、ここまではまだ予想通りだ。

分かっていた事態だ。

問題は、その後だ。

目を離した隙に平気で無茶をするホームズ。

ローズは、ようやく納得が言った。 これが、胸騒ぎの正体だ。

「………逃げ切るには、敵を分断するに限るわよね?」

ローズは、声が震えるのを感じていた。

レイアもローエンもローズの言いたい事が分かった。

「…………ホームズ、一人で戦っているんじゃない?」

標的を一ずつに分ける事で、敵の量は単純に考えれば二分の一になる。

なら、あの四人を二人に分けるか?

否である。

エリーゼという精霊術師を守るのに人は多いほうがいいに決まっている。

ホームズは、自分のそばに人が残る事を嫌がるだろう。

ローエンは、顔を俯かせる。

「杞憂……で、済ます事が出来ませんね」

ローズは、思わず戻ろうとした。しかし、肩に感じるミラの重さになんとか冷静になる。

「…………どうしよう」

「……しかし、我々にできることはミラさんを安全な所まで運ぶだけです」

ローエンの重苦しい声にローズは、思わず歯をくいしばる。

ホームズがマーロウと決着をつけた時のあのボロボロの状態は今でも蘇る。

もう、あんなのは見たくない。

いや、下手すればもう二度と見ることはなくなってしまうかもしれない。

思わず足を止めてしまったローズ。

「ローズ!それでも今は……」

そう言って目を前に向け、目を剥く。

目の前には、アルクノアが立ちはだかっていた。

「そんな!なんで!?」

「マクスウェルをよこせ!」

ローズは、ミラを背負い直し左手で支え、右手で刀を構える。

「随分とモテるわね……流石、ミラ」

ローズは、軽口を叩きながら面々を見る。

「なんで、私達を襲うのかしら?ジランドから、そんな命令は出ていないはずだけれど?」

寧ろ逆の命令が出ている。

「そんなの我々の知ったことではない!我々の目的はマクスウェルだ!」

ローズは、刀を向けながらハッと鼻で笑う。

どうやら統率は完全に取れているわけではないようだ。

ジランドの暴挙に焦らされたローズからしてみればいい気味だというところだろう。

少しだけ溜飲が下がった。

そうは言っても状況は変わらない。

人の失敗を心の中で馬鹿にして笑ったところで事態は全く好転していない。

目の前には詠唱無しで精霊術レベルの攻撃を放つ奴らがズラリだ。

「………まずいよね、これ……」

「そうね。ラッキーとは言えそうにないわ……」

レイアの言葉に返しながらローズの握りこぶしは震える。

せめてミラが起きてくれれば大分違うだろうが、ミラに起きる気配はない。

「………ミラを背負って闘うのは厳しいわね……」

「そう考えると、ホームズよくやったよね……」

レイアは、シャン・ドゥで気絶したローズを背負って来たことを思い出した。

「それもそうね……」

(って、あ!まだ、お礼言ってないじゃない……)

ローズが心の中でため息を吐く頃、ローエンがナイフを取り出す。

「みなさん私が、一瞬足止めをします。そしたら、一気に仕掛けて今度は皆さんが精霊術までの時間を稼ぎをお願いします」

ローズは、刀を突きつけたまま頷いた。

レイアも棍を掴む手をぎゅっと握る。

準備は出来た。

ローエンがナイフを投げようと振り被った、

 

 

 

 

その時、空から槍がアルクノア目掛けて二本降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

二本の槍はアルクノアを貫き、そして、空から声が一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「爆砕…………」

 

 

 

 

 

 

 

影がアルクノアの真上に落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

「陣!!」

 

 

 

 

 

 

振り下ろされたハンマーは、周りの地面をえぐって弾け飛んだ。

 

 

 

 

「ふーむ……俺の勘も捨てたもんじゃないな」

 

 

 

 

 

 

空から落ちてきた男、マーロウはハンマーを肩に担いで言った。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「マーロウさん?」

「なんで、疑問形なんだ?」

マーロウは不満げにそう言ってハンマーを振り回す。

それに巻き込まれた兵士達はそのまま吹き飛ばされる。

ローズは、そんなマーロウに言葉を続ける。

「そりゃあなりますよ!聞きたい事だって山のように出てきますよ!何故ここにいるのかとか、どうしてここにいるのか、なんでここにいるのかとか!」

「実質一つじゃねーか。高台に登って位置を確認したんだよ」

マーロウの呆れたような言葉にローズは深呼吸してそれ以外の事を訪ねる。

「あの……その精霊術潰した筈なんですけど、なんで使えるんですか?」

ローズの言葉にマーロウは、右手を見せる。

そこにはローズのつけた刀傷はどこにもなかった。

「あぁ。時間はかかるが、こいつは勝手に復活するんだよ。つーか、質問の変わりようがとんでもないな」

後半のセリフを聞き流し、背中に冷たい汗を走らせる。

「………もしかして、下手すれば私のやったことって……」

「まあ、ホームズの馬鹿が更に手間どえば、分からなかったな……」

マーロウは、そう言ってハンマーをアルクノアに投げつけ、両手を合わせる。

レイアは、そんなマーロウに棍を構えている。

マーロウは、それを見て鼻で笑う。

「安心しろ。お前さん達を攻撃するつもりはねーよ」

そう言って両手を解き、今度は巨大ブーメランを出現させる。

「言ったろう?俺は、知り合いが死ぬのはゴメンなんだよ」

マーロウは、その言葉と共に今度はブーメランを投げる。

放たれたブーメランは、曲線を描き残りのアルクノアを吹き飛ばしていった。

ブーメランが、マーロウの手元に戻る頃、立っているアルクノアは何処にもいなかった。

マーロウは、ブーメランとハンマーを手の中に仕舞うと、一行を見る。

「ところで、ホームズ達はどうした?」

ローズは、その言葉を聞くと一瞬顔をしかめる。

「別れたんです」

レイアの言葉にマーロウは、目を丸くする。

そんなマーロウにローズは詰め寄る。

「お願いです、マーロウさん。ホームズを助けて下さい」

そう言ってローズは、そのまま泥水の上に膝をつき、土下座をする。

弟子の土下座にマーロウは、目を白黒させる。

「お、おい」

しかし、それに構わずローズは続ける。

「勝手な事を言っているのは、重々承知です。それでも、ホームズを助けて下さい。あの馬鹿は、確実に自分がしんがりを務めるという提案をしている筈です。なので、どうか……」

ローズは、自分の声が震えているのを感じている。

そんなローズの言葉をマーロウは、遮る。

「わーってるよ。元々お前ら助けたら直ぐにホームズの所に行くつもりだったんだよ」

「……マーロウさん」

マーロウの言葉を聞き、顔を上げる。

その顔は雨で分かりづらいが確かに涙が流れていた。

「だから、とっとと立て、馬鹿弟子」

マーロウは、そう言ってローズの腕を持ち無理矢理立たせる。

そして、少しだけニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。

「お前、よっぽどホームズの事が大事なんだな」

「なっ?!」

マーロウの言葉にローズは、顔を真っ赤にする。

「な、な、何言ってるんでしか!ふ、普通です!そう、普通ですよ!」

「………突っ込んだ方がいいかな?」

「突っ込んだら負けという奴ですよ」

思いっきり噛んだローズにレイアは呆れたように呟く。

マーロウは、懸命に言い訳をするローズを見て面白そうに笑った後、ローズの頭に手を乗せ、くしゃくしゃと撫でる。

「その気持ち、大事にしろよ。この先何があろうとだ」

マーロウに頭を撫でられながらローズは、その言葉に首を傾げる。

「あいつだって、お前の事が大事なんだからな」

「…………?それってどういう……」

「さてな」

「…………マーロウさん、意地悪です」

「優しいだけじゃダメなんだよ」

頬を膨らませ拗ねたように言うローズにマーロウは、軽くデコピンをしローズ達とは逆の方向に歩いていく。

ホームズの居場所もおおよそ見当はついているのだ。

ローズは、くしゃくしゃになった髪を解きながらマーロウの背中に言葉をかける。

「……頼みましたよ」

「頼まれた」

マーロウは、そう言って手を振る。

「元気な嬢ちゃん、えーっと……」

走るローズを追おうとするレイアとローエンをマーロウが呼び止める。

「レイアです」

名前の出てこないマーロウに代わり、レイアが名乗った。

「レイアとローエンは、なんか、言いたい事あるか?」

マーロウの言葉を聞くと二人は、近くにローズがいない事を確認し同時に口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

「「ローズ(さん)が必死にお願いしていた事、伝えておいて下さい」」

 

 

 

マーロウは、クスリと笑うと二人に背を向けひらひらと手を振った。

 

 

 

 

「頼まれた」

 

 

 

その返事を聞き、レイアとローエンも走り出した。

 

 

二人が走り出した時マーロウは手を組み、弓を出現させる。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、行きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

マーロウは、弓を持って走り出す。

 

 

 

 

 

 

弟子の想い人、そして、大事な茶飲み仲間の元へと。








まあ、前書きであんな事書いといてなんですが、少女漫画もちょくちょく読みます。
実は名作と言われる少女漫画を母親と妹に貸しました事があります。


主人公も家事の出来る女の子だし、爽やかイケメンも出るし(生い立ちと過去はドロドロですが)不良っぽい少年(こいつもドロドロ)もいるし好評かな?と思っていたら、さほどでした。
「こんな女の子いない」と言われました(笑)

そんな事を言ってるくせにニセ○イは読むんだよなぁ……単行本が出るたびに必ず。
あ、母親は読みませんよ(笑)
妹の方です。




………なんなんでしょう?





ではまた百十六話で( ´ ▽ ` )ノ


P.S 企画まだやってます。詳しくは活動報告で

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