1人と1匹   作:takoyaki

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百十九話です。


何とか日曜日にあげたぞー!



てなわけでどうぞ


口は災いの元凶

「………今から二千年前。このリーゼ・マクシアは、私の施した精霊術、断界殻(シェル)によって閉ざされた世界として生まれた」

 

 

 

 

 

ミラから発せられた言葉にエリーゼ達は息を飲む。

「………この世界が、ミラに作られた……?」

『神様みたーい』

レイアとティポの言葉にホームズは、肩をすくめる。

「まあ、実際マクスウェル様なんだけどねぇ……」

ミラは言葉を続ける。

「全ては人と精霊を守るためだった」

レイアは、近くにいるヨルに尋ねる。

「知ってた?」

「まぁ、ある程度は」

そんなヨルとレイアの会話に構わず、ガイアスは口を開く。

「閉ざされたと言っていたな……では、外にはまだ世界が広がっているのか?」

「あぁ。その世界をエレンピオスと言う」

その言葉で、ウィンガルがホームズの方を見る。

いや、ウィンガルだけではない。

この空気は、全てホームズに尋ねている。

ホームズは、肩をすくめる。

「そうだよ。みんなの想像通り、おれの両親はエレンピオス人だ。

だから、必然的におれもアルクノアと同じって事になるかな?」

「ホームズ………」

ホームズは、ローズの声を背中で感じながらも無視をする。

「それで、結局クルスニクの槍ってのは、なんなんだ?兵器と言うには使い方がおかしい」

ヨルは、重くなった空気を無視して続ける。

「あぁ。クルスニクの槍は兵器などではない。

アルクノアは、ナハティガルに兵器と謀り、断界殻(シェル)を打ち消す装置を作っていたのだ」

断界殻(シェル)を打ち消す?一体何の為に?」

ガイアスの言葉にミラは首を振る。

「……わからない。マナを還元する算段でもついたか……」

「違う」

ここで初めてずっと黙っていたアルヴィンが口を開いた。

「アルクノアは、帰りたかっただけだ。自分の生まれ故郷に……」

アルヴィンは、とても悲しそうにそういった。

「生まれ故郷って……エレンピオスに?」

ローズの言葉にアルヴィンは、静かに頷く。

「……リーゼ・マクシアに閉じ込められて二十年余り……それだけを考えて生きてきた」

アルヴィンは、腕を組んだまま続ける。

断界殻(シェル)をぶち破るか、消す方法を探してな……」

その言葉を聞くとミラは俯く。

「だが、断界殻(シェル)を消すには、私を殺さなくてはならない」

ミラのその言葉にレイアは、納得した顔をする。

「そうか。だから、アルクノアはミラを狙っていたんだ……」

その言葉と共に視線は、ホームズに集まる。

何せ、両親の故郷の行き方が最悪な形で分かったのだ。

ホームズは、辺りを見回して口を開く。

「まあ、知ってたよ。とある情報からね、その事にたどり着いた」

とある情報というのは、ジュードの父親の事なのだが。

「しかし、ホームズは、その方法を拒み、別の方法はないかと問いかけてきた」

ミラがそれを引き継ぐ。

「私も幾つか提案はしたのだが、どれも実現不可能でな。

だが、私が知らなくても捕らえられている四大が何か知っているかもしれない………」

「それが………」

ジュードの言葉にミラが頷く。

「あぁ。それが、今回ホームズに支払われるべき報酬だ」

ホームズは、ひらひらと手を振る。

「……うして……」

「ん?」

ボソボソと言ったエリーゼにホームズは尋ね返す。

「どうして、言ってくれなかったんですか!」

エリーゼの言葉は、ジュード達の代弁だった。

しかし、ホームズは薄く笑う。

「言えるわけないだろう?この箱庭の世界の秘密だゼ?やすやすといっていいものじゃあない」

エリーゼは、グゥの音も出ない。

「……もし、四大が知らなかったら、ホームズはどうするつもりなの?」

レイアの言葉にホームズは、肩をすくめる。

「また、別の方法を探すさ。言ったろう?箱を一つ一つ開けて、潰してくしかないんだよ」

レイアは、カラハ・シャールでの出来事を思い出した。

「なるほど……隠してる事を知れば、色々と行動に納得がでるね」

ル・ロンドの港での事、そしてホームズの裏切りにミラがあれ程狼狽した事も。

この報酬はミラでなければ払えない。

だというのに、ホームズはミラを裏切った。

だから、信じられなかったのだろう。

そして、ホームズの両親の故郷探し。

物心ついた時から探していて見つからないと言っていた。

そりゃあそうだ。

この世界にはないのだから、当たり前だ。

「嘘は言ってないだろう?」

ホームズのニヤリとした笑いにレイアは、苦笑いをする。

そんな中、ジュードが口を開く。

「ホームズ、確か、十八歳だったよね?」

「うん」

ホームズは、ジュードの言葉に頷く。

「つまり、ホームズは、両親がこっちに来てしばらくしてから生まれたってこと?」

「そういうこと」

ホームズが決してアルクノアと一緒ではない。

リーゼ・マクシアで生まれた人間なのだ。

そう皆が思った時、アグリアが口を開く。

「なぁ、聞いていいか?」

「なんなりと」

「お前どうしてその女についてる?

クルスニクの槍を使えば簡単にエレンピオスとやらに行けるじゃねーか」

そうクルスニクの槍は断界殻(シェル)を打ち破って見せた。

ミラを殺すことなく。

だったらホームズがここにいる理由はない。

さっさとジランドの元へ行けばいいのだ。

そうすればホームズの望む通りの結末を迎えられる筈だ。

しかし、

 

 

 

 

 

 

「アグリア」

 

 

 

 

 

 

ゾッとする冷たい声が響き渡った。

辺りを埋め尽くす殺気に教会の温度が下がる。

皆が戸惑っている間に轟音と共に長椅子が一つ崩れ去った。

その椅子の近くにいるホームズを見て、ミラ達は、ようやくさっきの言葉がホームズのものだと気付いた。

「口は災いの門だ。おれが言うんだから間違いない。せいぜい気をつけることだね」

その殺気と説得力にアグリアは、思わず口を噤んだ。

それを見るとホームズから殺気が消えた。

「いい子だね。聞き分けのいいところもあるじゃないか」

ホームズは、馬鹿にしたように言う。

アグリアは、思わず武器に手をかける。

ヨルがそれを睨みつける。

「やめておけ。お前、ホームズに一度負けているだろ」

ヨルの言葉にアグリアは更にいきり立つが、ガイアスが止める。

「にしてもだ」

ホームズは、それを歯牙にもかけず考える。

「せっかく断界殻(シェル)に穴を開けたっていうのに、どうして彼ら出て行かず、わざわざ入ってきたんだい?」

アルヴィンは、首を横に振る。

「わからない。俺たちはリーゼ・マクシア統一なんて望んじゃいない」

忌々しそうにアルヴィンは、吐き捨てた。

「俺たち……か」

ヨルは、誰に聞こえるでもなくポツリと呟いた。

もう自分で自分の正体をばらしている。

ウィンガルが顎に手を当てて考える。

「ジランドは、断界殻(シェル)のある今の状況を利用しようとしてるのかもしれないな」

「ふむ。なら、その女を殺さないと言うのにも納得がいくな」

ヨルもウィンガルの言葉に頷く。

アルヴィンは、そんなヨルとウィンガルの言葉で何か気付いたように立ち上がる。

「そうか!異界炉計画だ!」

「あぁ?なんだそれ?」

アグリアが不思議そうに尋ねる。

アルヴィンは腕組みを解き続ける。

「通称、精霊燃料計画。黒匣(ジン)の燃料になる精霊を捕まえようって計画がある事を昔向こうにいた頃、従兄弟が話していた」

「でも、それ変だよ!精霊を捕まえるだけならこんな事する必要ない」

ジュードは、こめかみから指を離す。

「ジランドは霊力野(ゲート)のある僕たちも閉じ込めるつもりだよ!」

ローズは、顔を青くする。

「………そんな……」

「ま、つり目のガキの言う通りだな」

ヨルの言葉にホームズは、歯をくいしばる。

「あぁ……分かってるさ…………」

ガイアスは、腹立たしそうに顔をしかめる。

「リーゼ・マクシアの民を資源とするつもりか………馬鹿げた事を……」

「多分ジランドは、海上にある本拠地に戻ってる……エレンピオス軍も来てるんだ、近づくのは厳しいぜ」

アルヴィンの言葉を聞きウィンガルは、考える。

「ならば、カン・バルクにある連中の空駆ける船を奪うというのは、どうでしょう?」

レイアは、それを聞いて、エリーゼに耳打ちをする。

「あの人、さらっと凄い事言ってない?」

「しかし、それしか手はないでしょう」

ローエンは頷いている。

ガイアスは、すっと顔を真っ直ぐ前に向ける。

「よし、明日決行するぞ」

そう言ってガイアス達は奥へと歩みを進めていった。

「待って!ガイアス!」

それをジュードが止める。

「一緒に戦ってくれるんでしょ?」

ジュードの言葉に少し歩みを止める。

「目的は、一緒でしょ?だったら、協力出来ない……かな?」

「冗談ではない」

ガイアスは、一言で切り捨てた。

「勘違いしてんじゃねーよ!」

アグリアも照れ隠しではなく、心底嫌そうに言う。

「マクスウェルが断界殻(シェル)を作り、我々を閉じ込めていたと言うのもまた事実。

いずれ、お前たちとはまた争うかもしれん」

ガイアスの言葉にジュードは、二の句か続かない。

「そんな人達と必要以上に馴れ合う必要はないわ」

プレザがそう言い残すとウィンガル以外奥へと消えていった。

「お前たちは、勝手にやるがいい。

だが、一つ条件がある」

ウィンガルは、そこで言葉を切るとホームズを冷たい目で見る。

 

 

 

 

 

「その男を殺せ。出来ないなら、代わりに私がやる」

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

レイアは、信じられないというふうに声を上げる。

「当然だろ。そいつにはアルクノアと同じ血が流れている。

それだけならまだいい。信用出来ない程度の話だ。そこの男と一緒だ」

そう言ってアルヴィンを顎で示す。

「だが、ホームズは別だ。そいつらは、精霊術を無効化する。ジランド達の目的は、それだ。自分達の敵となる対リーゼ・マクシア用の戦力としてホームズを欲している」

そうだから、ジランドはホームズを欲しがったのだ。

ホームズも先ほどの放送で気づいていた。

ウィンガルは、更に言葉を続ける。

「裏切ったにせよ、捕らえられたにせよ、そいつが奴らの手に渡れば、精霊術を使う我々にどのような影響が出るか………」

ウィンガルは、ミラを見る。

「リーゼ・マクシアの民の命とホームズ一人の命、どちらが重いかなど考えるまでもないだろう」

ミラは、クルスニクの槍を壊すためホームズを助ける事を後回しにした。

その事を考えると、誰もがミラの行動に予想がついてしまう。

「………その通りだ。リーゼ・マクシアの人と精霊の命の方が重い」

ミラはそう口にした。

予想通り、だが、聞きたくなかった言葉がミラの口から発せられ、空気が、しんと冷え切った。

ウィンガルは、それを聞くと刀に手をかける。

 

 

 

 

 

 

 

「だからこそ、殺す必要はない」

 

 

 

 

 

ミラは続けてそう言い切った。

「なんだと?」

「お前の言った通りだ。ウィンガル。リーゼ・マクシアの民と精霊の命の方が、ホームズより重い」

そう言ってミラはホームズを見て微笑む。

「元々、釣り合っていない天秤だ。

ホームズを殺したところで釣り合いはしない。

だから、殺す必要はない」

ホームズは、目を見開き驚く。

ウィンガルは、そんなホームズとミラを見るとため息を吐く。

ミラのその強い瞳が断固断ると語っていた。

「……勝手にしたらいい。ただし、我々は巻き込むな」

そう言ってガイアス達の後を追った。

(そっか、あの時もミラはちゃんと事が終わったら助けに行こうとしてた……)

ジュードは、ミラを見て納得した

「どうするんだい?ウィンガルさんにあんな啖呵切っちゃって……」

そんな中当のホームズは、引きつりながらそんな事を言っている。

「まあ、ああ見えて、結構頼りにしてると思いますよ」

「殺せって言われたんだけど……というか、ミラのそれ、大分詭弁だよねぇ………」

ホームズは、はははと引きつり笑いを浮かべてミラを見る。

「それよりも言うことがあるでしょ、ホームズ」

レイアに言われホームズは、ため息を吐き頬をポリポリと人差し指でかく。

「ありがとね、ミラ。嬉しいよ、そう言ってもらえて」

珍しく素直なホームズの言葉に思わずミラは面食らった。

「……なんとも、妙な気分だな。ホームズに礼を言われるとは」

「普段からそういう行動しないからだろう?」

「いや、そんなのホームズだけだよ」

「なお悪い」

横から口を挟んだレイアの言葉にホームズは、半眼で言う。

「普段のホームズの行いなら、当然……です」

エリーゼにまで言われ、思わず涙が溢れそうになる。

隣で頷いているミラを見て、アルヴィンは苦笑いになる。

「おたく、よくこんなの信用したな。アグリアやウィンガルの言ってること、決して間違ってないぜ」

「君にだけは、言われたくないね」

ホームズは、アルヴィンにそう言い返す。

ミラは腰に片手を当て自信たっぷりに口を開く。

「なにホームズは、信用するポイントさえ押さえておけばいいのだ」

ホームズは、頭痛をこらえるように頭に手を当てる。

「……突っ込まないよ、おれは」

絞り出すような悲壮感漂う言葉にレイアとジュードは、苦笑いをする。

そんな面々を興味深そうに見た後、ミラはホームズを見る。

「そうだ。ホームズ」

「何?」

言葉の端に滲み出る不機嫌さをミラは気にせず言葉を続ける。

「お前の母親と連絡は取れないか?」

「無理だね。けど、何故だい?」

ホームズは、不思議そうに首を傾げる。

「化け物と呼ぶ、お前の母親……一体どれくらい強いんだ?」

「マーロウさんよりも強かったよ。比べるのが馬鹿馬鹿しくなるほど」

「………あのさ、他人(ひと)のお母さんのこと、こうは言いたくないけどさ……ホームズのお母さんって、人間?」

ジュードの引きつる声にホームズは肩をすくめる。

「まあ、おれが人間だから、そうだと思うよ」

どこか遠い目をするホームズになんとも言えない空気が生まれる。

「………何としても敵に回したくない。どうにか連絡は取れないか?」

ミラの言葉にホームズは、手をひらひらと振る。

「別に大丈夫だよ。前にも言ったろう?母さんがアルクノアの味方なんてするわけないよ」

そう言って、壊れていない椅子に腰をかける。

「昔は勧誘とか結構いたんだけどねぇ……」

ヨルとホームズは、顔を見合わせる。

「………あいつ、あんだけ強いくせに追っ手を巻くのすっげえうまかったからな……」

「そのうち諦めたよね………」

哀愁漂うヨルとホームズにレイアは、頬が引きつる。

「そ、そうだ!逆に、味方になるってことはない?今の放送を聞いて駆けつけくるかもよ?」

レイアの提案にホームズとヨルは首を横に振る。

「ないね」

「ないな」

「なんで!?」

ヨルは答えずらそうに口を開く。

「まあ、うん。俺がいうのも何だが………」

ふっと遠い目をする。

「常識が通じない人間だからな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

『『……あぁ、そう』』

 

 

 

 

 

 

 

 

一行は、追及するのを諦めた。

なんだか、どっと疲れた気がする。

 

 

 

 

 

「まあ、母さんの力は当てにせず、頑張ろうゼ、ミラ」

そう言って、ホームズは自分を親指で示す。

「そうだな。常識はずれはお前らだけで十分だ」

ミラはそう言って笑みを浮かべた。

釣られてジュード達も顔に笑顔が戻った。

張り詰めていた一行の空気が緩やかに柔らかくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、一人だけ、笑顔が戻らない人間がいる、一人だけ柔らかくならない人間がいる。

ローズだ。

ローズだけ、何かに絶望した顔をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローズは、目を見開き、呼吸が浅くなっていくのを感じていた。

先ほどのホームズの言葉が頭の中で渦を巻いている。

(…………まさか、でも……)

「ローズ?どうしたの?」

「な、な、何でもない……わ……ちょっと、色々あって疲れたから先に休むわね」

ジュードの問いかけにローズは、慌ててそう答えると部屋に戻っていった。

「どうしたんだろう?」

ジュードは、不思議そうな顔をしてレイアの方を向くがレイアだって知るわけがない。

おのずと、ホームズに視線は集まる。

ホームズは、どうでもよさそうに肩をすくめて返した。

「まあ、それはともかく、明日も早いし、小ムスメに習ってとっとと寝た方がいいんじゃないのか?」

ヨルの言葉にミラが頷くとその場は解散となった。

レイアも女子の部屋へ行こうとして後ろを振り返る。

「……………?」

部屋割りじゃんけんをして負けているホームズの背中を見てレイアは、首を傾げる。

ローズの行動も気になるが、それよりもホームズだ。

(…………なんか、変だ)

レイアの頭を離れない違和感は、今に始まった事ではない。

下手をすればもっと前からあった。

しかし、その正体がまだわからない。

 

 

 

 

(何なんだろう………)

 

 

 

 

レイアは、考えながらミラ達の後をついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯車の狂い始めた音が、辺りに響き始めた。

 

 

 

 

 









不穏な空気が消えません。


そんなことよりベルセリアpvでましたね!
楽しみです!!



では、また百二十話で( ´ ▽ ` )ノ
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