1人と1匹   作:takoyaki

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百二十二話です


「女の言う可愛いこってのは、信用ならねぇ、だいたいワンランク下の奴を連れてくんだよ」
だったかな?何処かの銀髪の甘党侍が言ってた台詞です。
そんな話を会話の流れで母親に話したら「そんなの当たり前じゃん」と真顔で言われました。
ちょー怖い………


てなわけで、どうぞ


矛と盾

「む?帰ってきたか?」

教会の聖堂に入るとそこにはミラが一人椅子に座っていた。

ミラは二人とヨルが来ると振り返ってそう言った。

「なに?待ってたのかい?」

ホームズが冗談めかしてそう言うとミラは静かに頷いた。

「あぁ。明日を迎える前にすっきりさせておきたくてな。まあ、座れ」

ホームズは、ミラに従い座る。

レイアは、どうしようか迷うが、ホームズに習って座る事にした。

二人が座るとミラは口を開いた。

「………ローズから聞いた。自分の家族が殺されたのは、お前達親子のせいらしいな」

「ほんっと………ストレートに聞いてくるよね、君」

「……すまない。確かにあまり気分のいい話ではなかったな」

「いや、ただの感想だよ。非難してるわけじゃあない」

ホームズは、そう言って背もたれに腰掛ける。

「そうか。なら、話を続けよう。

ローズの話なんだがな、素直に頷けないところが幾つかあってな、それをホームズに言いたくてここに来た」

「どういうことだい?」

「筋が通ってるようで通っていないんだ」

そう言ってミラは指を一つ立てる。

「追われていたのはホームズの母親、お前はそう言っていたよな」

「うん」

「つまり、お前は追われていなかったな」

ホームズは、答えない。そんなホームズに構わずミラは言葉を続ける。

「詠唱なしで、精霊術を出す黒匣(ジン)は、下手すれば私の魔技に近い。

ヨルのその能力は、アルクノアの前では発動させようがない」

ミラはそう言ってホームズを指差す。

「ヨルの力を知らないアルクノアがホームズを狙ったとは、考えづらい。必然的に、追っていたのはお前の母親という事になる、ここがまずおかしい」

ミラはそう言って腕を組む。

「細かい事だが、お前達親子のせいという言葉と矛盾する」

ミラはそこで言葉を切ってホームズを真っ直ぐに射抜く。

「そして、もう一つ、ローズは、お前ら親子に関わったせいで、家族が殺されたと言っていた。

なら、真っ先に殺されていないとおかしい人間がいる」

レイアが隣で聞いて思案する。

ホームズに友人と呼べる人は早々いないはずだ。

更に行商人をしている親子と深く関わった人間なんているはずが………

(行商人………?)

そのワードでひらめく。

「そうか!ドロッセルさんだ。ホームズのお得意さんでしょ?」

正解だったようだ。

ミラは静かに頷く。

「それと、マーロウだ。

マーロウは、恐らく襲われてもいないはずだ。

黒匣(ジン)の存在をホームズが説明したんだろ?あの時のマーロウとの戦い前での話を聞く限り」

ホームズは、頷く。

ミラは更に続ける。

「つまり、この時点で例外が二人いる事になる」

ミラは更に話を続ける。

「アルクノアは、目的の為なら手段は、選ばない。

実際、私を殺す為に食事に毒を入れ、関係のない人々を殺したからな」

そして指を一つ立てる。

「だがな、あれは私を殺す為の行為だ。だからこそ派手に動いた。

しかし、派手に動けばそれだけ目立つ。私と準備の出来ていない状態で戦う事になってしまう。

だというのに、ローズ達の家族は惨殺された」

「ホームズ達の行く先を教えてくれなくて、カッとなったとか?」

レイアの提案にミラは首を横に振る。

「いや、そんな事はないだろう。

先程も言ったろう?ホームズ親子は、行商人なのだ。

だったら、客を装って何処へ行ったか聞けばいい」

そう言ってホームズを見る。

「馴染みの腕のいい商人が次へ何処へ行くか聞いたって別に不自然じゃないだろう?」

「まあね。この人の物なら、今度その街に行くしついでに買うと言う人もいるし」

ホームズの返しにミラは満足そうに頷く。

「手段は選ばない。しかし、目立ちたくないアルクノアが、こんな事をしている……おかしいだろう?」

そう言ってミラは指を三本出す。

「今度は回りくどいね……何が言いたいんだい?」

ホームズの言葉にミラはホームズの瞳を真っ直ぐ見る。

「お前ら親子のせいでローズの家族が死んだわけではない。ローズの家族が殺されたのは、何か別の理由がある」

そう言ってふっとため息を吐く。

「そういうつもりだった……だが、途中で気づいた」

ミラは、目元を険しくさせホームズを睨みつける。

「お前がそれに気づいていないわけがないのだ。

馬鹿なくせに隠し事に関しては頭の回るお前が、気付かないわけがない。

これは、言い訳でもなんでもない、ただの事実だ。

なのに、何故、お前は否定しない。

何故、お前は答えない」

 

 

 

 

 

 

 

ミラの追求にホームズは、少し困った顔をしている。

 

 

 

 

 

「答えろ、ホームズ。お前は一体何を隠している」

 

 

 

 

 

 

ミラの低く静かな声音にホームズは、大きくため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

「随分と強引な推理だねぇ。こじつけに近いよ……そんなんじゃあ、おれが隠し事をしてるって根拠にはならないよ」

「筋は通ってるだろ?まぁ、そんなものよりもっと決定的なものがある」

「なんだい?」

ホームズの疑問にミラが口を開く。

「お前、母親がアルクノアに追われていた事をバラしただろう。聞かれてもいないのに、自分から」

ミラの言葉にホームズは、ピタリと口を閉じる。

「あそこでわざわざお前の母親が過去、アルクノアに追われていた事を話す必要は、どこにも無かった。

なのに、何故かお前は自分から母親が過去アルクノアに追われている事を話した」

そこで言葉を切りホームズを睨む。

「本当の事を言わず隠し事をすることが得意なホームズが何故、こんなミスをした?

そう考えると少しずつ別の結論に辿り着く」

「別の結論?」

レイアは、隣で首を捻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは、ミスではない。ミスに見せかけた、ニセのヒント」

そう言ってホームズをギロリと睨む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだろう?ホームズ・ヴォルマーノ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





因みに言っておくと、ドロッセルはホームズの母親が死んだことは知りません。
いつものようにホームズが隠したので。


タイトルの矛盾ですが、逸話は今更説明するまでもないですね。
まあ、その話を聞くたびに両方壊れるという発想はダメなのだろうか?といつも思ってました。
その話をしたら、何を頭の悪い事言ってるんだと友達に言われ、懇々と説明されました。





ではまた百二十三話で( ´ ▽ ` )ノ

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