1人と1匹   作:takoyaki

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百二十四話です


連続投稿です!
そして、お気に入りが500を超えました!!
これもそれもあれもみんなみんな皆さんのおかげです!!
この場を借りてお礼を申し上げたいと思います!
てなわけで、どうぞ




※後書きが分かりづらかったので書き直しました。


ピーチパイは砂糖と秘密と素敵な何かで出来ている

「…………やっぱり、君の事を紳士と呼ぶには無理があるねぇ」

そう言ってホームズは、階段を上る足を止めて振り返る。

「出歯亀なんて、男が廃るゼ?アルヴィン(・・・・・)

アルヴィンが壁に背を預けていた。

「なんだ、気づいていたのか」

アルヴィンは、そう言って歩みを進める。

ホームズは、肩を竦める。

「まぁ、もしかしてって奴さ。ヨルが察知出来ないのは、この面子で霊力野(ゲート)のない君ぐらいだからねぇ……気を張っておくのは当然だろう?」

正確にいうなら殆どないなのだが。

そう言ってアルヴィンを涼やかな笑みを向ける。

「何か面白い話は聞けたかい?」

「まあまあってとこだな」

「そりゃあ良かった」

ホームズは、どうでもよさそうにそう言ってアルヴィンに目を向ける。

「立ち話もなんだ、おれの部屋に来るかい?」

アルヴィンは、こくりと頷くとホームズの後についていった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

ホームズは、部屋に入るとピーチパイを出す。

「いつの間に………」

アルヴィンが驚いているとホームズは、自分の分を切り分ける。

「君たちと別れた後、直ぐだよ。材料を漁ったら出て来たから適当に作った」

アルヴィンは、いかぶしむようにピーチパイを観察する。

「………おい、これ食えんのか?」

前科の多過ぎるホームズ相手にこの用心は妥当なものだ。

ホームズは、睨みで答えると自分の分をパクリと食べる。

ホームズが平気そうに食べるのを見てアルヴィンも恐る恐る毒物を口にするように食べる。

そして驚いたように目を丸くする。

「驚いた……美味いもんだな」

「こいつ、こういうのは、失敗しねーんだよな……」

ヨルはそう言って自分の分を食べる。

「まぁ、時間短縮の為に色々簡略化したけど」

自分の分を食べつつアルヴィンを見る。

「で、どうだい?」

「どうだいって?」

「君の知っている味と大分違うだろう?」

「………まあな」

アルヴィンは、少し面白そうに笑う。

エレンピオスでは、ポピュラーな家庭料理の為、家の数だけ違いがあるのだ。

「………まあ、食う機会ももうないだろうがな」

「まあ、ああなってしまえばな」

ヨルの言葉にアルヴィンは、首を横に振る。

「……死んだんだよ、俺の母さん」

アルヴィンの言葉にホームズは、眉を動かす。

「さっきの手紙は………」

ホームズの問いに声音だけは何とか明るい声を出す。

「御察しの通り。手紙には、母さんが死んだって書いてあった……」

ホームズは、少し悲しそうな顔をする。

「そうか………それは、辛いねぇ……」

ホームズの心からの言葉。

しかし、事情を知らないアルヴィンには、届かない。

アルヴィンは、ハッと鼻で笑う。

「同情か?」

「……なに?金の方が欲しいのかい?」

ホームズは、そんなアルヴィンに構わずさらりと返す。

そんなホームズにアルヴィンは、顔をしかめる。

「おたく、本当、いい性格してるよな」

「褒めてくれてありがとう」

ホームズは、ピーチパイを食べ終わると手をパンパンと払う。

そんなホームズの様子にアルヴィンは、首を傾げる。

「………おたく、本当にいつも通りだな。普通、こういう話をされるともう少し違う反応をするもんだと思うんだが……」

ホームズは、少しだけ微笑んで椅子に腰掛ける。

「別に。話を聞くぐらいやるよ。今日、おれは色んな人に話を聞いてもらったからね」

そう言ってホームズは、窓の外に目を向ける。

「聞きたい事があれば、可能な限り答えてあげるし、言いたい事があれば幾らでも聞いてあげる」

そう言ってホームズは、ニヤリと笑う。

「勿論、悪態も嫌味もね?」

アルヴィンは、そんなホームズを見てふっと笑う。

「……おたく、本当にもったいない奴だな」

アルヴィンの言葉にホームズは、首を傾げる。

そんなホームズに構わずアルヴィンは、口を開く。

「おたくはさ、ローズがお前を憎むように誘導したんだろ?」

「まあね。人は自分の出した結論に矛盾が無ければ信じちゃうからねぇ……それだけが正しいってね」

分かりやすい選択肢を目の前にぶら下げられれば、他の選択肢が霞んでしまい、下手すれば見えない。

ホームズの見せられた右手に目を奪われたローズは、ホームズの左手で何が行われているか気づけない。

「でも、それがどうしたんだい?」

「一つ聞きたいんだが」

「ん?何を?」

 

 

 

 

 

 

 

「ローズがおたくの事をどう思ってるか、知ってたか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルヴィンの質問にホームズは、頬をひきつらせる。

「随分と答え辛い質問だねぇ」

ホームズは、煙管を咥える。

少し唸って渋々口を開く。

「例えばさ、女の子に優しくされたり、心配されるとさ、勘違いする事ってない?」

「男ってのは、単純な生き物だからな」

アルヴィンは、思わず顔をしかめる。ホームズより歳上のアルヴィンは、それだけ経験も上だ。

勿論上手に回避してきた筈だが、回避できないものもしっかりもらっている。

ヨルが肩で面白そうに笑っている。

「ところがどっこい、心配しているだけって話なんだよな、悲しいことに。お前、それで何回フられた?」

「トラウマを数えたところで幸せは訪れないよ」

ふっと遠い目をするホームズにアルヴィンは、同情を禁じ得ない。

「心配してくれたことは嬉しかったけどね」

ホームズは、寂しそうに笑う。

(結局、気づいてないって事か………まあ、そっちの方が幸せかもな……)

アルヴィンは、ゆっくりと立ち上がる。

「んじゃあ、おれはそろそろ寝るわ。話聞いてくれてサンキュな」

「別に構わないけど……殆どおれの事じゃないか、それでいいのかい?」

アルヴィンは、扉に向かう足をピタリと止める。

「………そんなに俺の事気になっちゃう?」

「そうだね、バナナはおやつに入るのかどうかの問題の次くらいには、興味あるかな」

心底どうでもよそさそうにホームズは、手をひらひらと振って返し、煙管をぷかぷかと口で動かす。

「君になさそうだから、最後におれから一つ」

タレ目で流す様にアルヴィンを見る。

 

 

 

 

 

 

 

「おれとヨルの事をバラしたの、君だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

アルヴィンは、肩を竦める。

「さあ?」

「別に怒ってるわけじゃないんだけど……まあ、とぼけるのなら、話を進めるよ」

そう言ってホームズは、言葉を続ける。

「ヨルの黒球はともかく、精霊術喰いはミラの魔技には使う暇がない。同じ様に発動までの時間がない黒匣(ジン)相手に使う暇はない。

必然的にアルクノアの目に触れる事はなかった。

そして、おれをその理由で追ってくるアルクノアもいなかった」

ホームズは、煙管を口から外しアルヴィンに向ける。

「ところが、君たちと合流してから、おれも狙われる羽目になった……」

アルヴィンは、ただホームズの言葉を聞いている。

「……君達の前で使ったとは言っても、側にアルクノアはいなかったはず(・・)だったんだけど……」

ホームズは、そう言ってニヤリと笑う。最後はアルヴィンに言わせたいようだ。

ホームズの追求にアルヴィンは、両手を挙げて降参する。

「正解だよ。でも、おかげで、ローズを誘導出来たんだからいいだろ?」

「だから最初から言ってるだろう?怒ってないって」

ホームズは、そう言ってピーチパイを再び食べる。

そうホームズは、別にそのことは気にしていない。

どうせ情報はいつかはバレるだろうと思っていた。

だから、ホームズにとってこれはただの答え合わせで、そしてちょっとした意地だ。

自分は、気づいているぞ、と、

騙されていないぞ、と

そう言いたいだけのつまらない意地だ。

ホームズのその様を見てアルヴィンは、背中を向けて手を振って返す。

「アルヴィン」

そんな背中にホームズが言葉を投げる。

「死ぬんじゃあないよ」

ホームズは、ポツリと言った。

アルヴィンは、扉を静かに開ける。

「………当たり前だ」

そう言ってアルヴィンは、ホームズの部屋から出て行った。

ホームズは、残りのピーチパイをヨルに渡す。

ヨルは、もぐもぐと食べる。

「………いよいよ、か……」

「カラハ・シャールでも似たような事言ったよね……」

結果は最後ではなかったのだが。

「どうも、色んな人間の思惑が絡み付いてきてるねぇ………」

「そこにお前も入っているのを忘れるなよ」

ヨルの言葉にホームズは、顔を伏せる。

「あの元おかっぱに激情を持ち、アルクノアに勧誘されたお前は、もう完全に重要人物だ。

縁が薄いとかそんなレベルじゃないぞ」

ホームズは、煙管を口で動かす。

「……どうだっていい話だ。どうせ、おれの目的は変わらないのだから」

そう言ってホームズは、煙管を口から外す。

ヨルは、それをしばらく見た後ホームズに目を向ける。

「煙を吸わなくていいのか?煙管ってのは、そう言うもんだろ?」

「吸わないよ。死へのカウントダウンが近づくからね」

ホームズは、マーロウに生きろと言われた。

別段断る理由もない。

断らない理由もある為ホームズは、煙管を咥えるまでしかしない。

「………ローズに持ってて欲しかったんだけどなぁ……」

「無理だろ」

ヨルにそう言われたホームズは、ため息と共に煙管を置く。

「頑張ろうゼ、ヨル」

「当然だ」






ちょいちょい書いてはいますが、ややこしくなってきたので、解説を。
ホームズの母親のことを知っているのが、レイア、ヨル。
ローズの家族の真実を知っているのが、ミラ、アルヴィン、レイア、ヨル。
ついでに、ローズ一家殺害の表向きの理由を知っているのが、レイア、アルヴィン、ローズ、ミラ、ヨル、それと後もう一人。

まぁ、この後もう一人は、隠す必要がない気もするのですが、一応伏せておくということで



では、百二十五話で( ´ ▽ ` )ノ



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