1人と1匹   作:takoyaki

130 / 242
百二十九話です。


世間は夏休み…………けっ!

てなわけで、どうぞ




馬鹿が騒げば誰かが疲れる

「蒼破・追蓮!!」

蒼い剣戟が二つ兵士を襲う。

ローズは、その後直ぐにもう一度刀を振り回し、背後にいる兵士を斬り伏せる。

「レイア!」

「悲霊壮活!シャープス!」

レイアの身体強化がローズにかかるとローズは、両手を合わせる。

「獅子戦哮・氷牙!」

冷気を纏った闘気の獅子が、兵士達に襲いかかる。

「ローズ!!」

ジュードがローズを呼び共鳴(リンク)を結ぶ。

「OK、任せなさい」

ジュードは拳を、ローズは、二刀を振り被る。

「「魔神連牙斬!!」」

連続で襲いかかる魔神剣と最後に、二人の力の合わさった剣戟が、兵達を蹴散らして進む。

技を決め一息つくと、その二人に人影が襲いかかる。

「ファイアボール!」

その人影に向かって術後調律を終わらせたローエンのファイアボールが、連続で打ち込まれる。

「助かったわ、ローエン」

「いえいえ、これくらい」

ローエンは、そう言ってにこやかに微笑む。

ローズもそれに頷くと刀を足元で交差させる。

「援護よろしく」

「わかった」

レイアがローズの前に立ち、ジュードが突撃する。

「業火よ……」

詠唱を始めたローズに敵兵達が向かい出す。

ジュードの漏れをレイアが棍で捌く。

「爪となり、斬り裂け……」

その詠唱の一節が出るとローズの周りの温度が上がる。

「牙となり、喰らいつけ」

更に上がる。

「あっつ!」

レイアの棍が熱を帯び始めていた。

鎧で身を包んだ兵士達もそれ以上踏み込めない。

「竜となり、蹂躙しろ!」

 

 

ローズの周りを炎が渦巻く。

 

 

 

 

「フレイムドラゴン!」

 

 

 

 

 

渦巻く炎は竜となり、目の前の獲物に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぁああああっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

灼熱の竜に襲われ悲鳴をあげる兵士達。

そんな兵士達とは、別に竜に襲われていない兵士達もいる。

ローズは、それを見ると刀の交差を解く。

そして、ポツリと呟いた。

「………突っ込むわ」

「え?」

ジュードの返事など聞かずローズは、刀を構え直すとそのままその兵士達の元へ突っ込み刀を振るった。

一人、また一人と倒し、ローズは、進んでいく。

ローズは、研ぎ澄まされた感覚を頼りに次々と斬り伏せていく。

しかし、そんな状態は長くは続かない。

兵士達は、ローズを囲むように武器を構える。

「ローズ!!」

離れたところにいるジュードの言葉を聞きながらローズは、呼吸を一つ。

焦ってはいけない。

無傷では済まないだろうが、それでも死ぬ前(・・・)には、必ず援護が来る。

リーチの一番長いレイアが、幸い近くにいるが、レイアの周りにも敵がいてそれどころではない。

「まずい……」

レイアが棍を伸ばしながらそう呟く。

明らかにローズは、ヤケになっている。

それが分かってはいるのだが、目の前の敵がそれを許してくれない。

そう歯噛みをしているとレイアのリリアルオーブが輝き、光が一筋背後に伸びていく。

「「飛天翔星駆!!」」

ホームズが、アルヴィンとの共鳴術技(リンクアーツ)で、天高くから飛び蹴りを放った。

「ナイスタイミング!」

レイアは、直ぐに棍の先をホームズに突き出す。

ホームズは、着地と同時にそれを掴む。

「「爆砕………」」

レイアは、棍を両手で掴み、歯を食いしばって上段に振り被る。

「「ロック!!」」

大上段から打ち下ろされたホームズが地面を弾けさせ地面を抉る。

ナハティガルと戦った時とは違い、振り回していないので今回のレイアの負担は大分軽い。

「レイア、しっかり掴んでいたまえ」

振り下ろされたばかりのホームズは、そう言うとレイアの棍を掴む手に力を込める。

リリアルオーブは、まだ光っている。

「……小ムスメ、巻き込まれたくなかったら離れろ」

ヨルの言葉に反論しようとしたが、直ぐに口を紡ぎ、急いで離れる。

「多めに回す!」

ホームズは、そう言うとレイアが掴んだままの棍を回す。

ホームズの馬鹿力が遺憾なく発せられ棍を回すスピードがぐんぐん上がっていく。

「「超牙旋滅タイフーン」」

やがて巨大な竜巻を作り出し周りの兵達を上空へと巻き上げた。

おかげで敵の数も大分へった。

「よくやった、ホームズ、レイア」

ミラの言葉を聞き膝をつくホームズとレイア。

「目が回る……」

「う、視界が歪んで気持ち悪………」

ホームズは、青ざめた顔で口を抑える。

「………お前は、もう少し後先考えて行動したほうがいいな」

ミラは呆れたようにそう呟く。

「…………ゔぅ、何処かで聞いた台詞だなぁ……」

ホームズは、げんなりしながら精一杯の口ごたえをするが、覇気ががない。

すると同時に空中戦艦にイバルの声がスピーカー越しに響き渡る。

「あ、あー……この船は俺が占拠した。大人しく投降しろ」

その声を聞いた兵達は、ミラ達のまえから一人また一人と去っていった。

「イバル!船を降ろして!」

「貴様に言われなくてもわかっている!」

ジュードにそう力強く言い返すとスイッチを探し始める。

「えーっと………これ!……じゃない………これでもない……あった!これだ!」

カチという音がスピーカーを通して船に響き渡る。

しかし、船が降りる気配などない。

代わりに、ミラ達を取り囲むように黒匣(ジン)の機械が起動した。

四足歩行をしながら、辺りを規則的に伺う。

「…………えーっと」

ローズは、動き出したそれに頬を引きつらせる。

「ヤロー……何しやがった……」

アルヴィンは、声が若干震える。

ホームズは、ジュードを見て操縦室を見てため息を吐く。

「…………何がわかったんだい、何が」

ホームズは、呆れた顔で(ついでに青い)そう呟いた。

「………しょうがない奴だ……」

ミラも今回は呆れていた。

ミュゼがふわふわとジュードの側に浮かぶ。

「これはこれは」

「?ミュゼ、知ってるの?」

「そんな事より、ジュード。敵が来ますわよ」

六人はそれぞれため息を吐くと武器を構えた。

ホームズは、肩にいるヨルに声を掛ける。

「ヨル」

「なけなしの一発だ。受け取れ」

ヨルはそう言うと黒球を吐き出した。

それは、弾け霞となって右脚に纏わりつく。

そして、そのまま目の前の機械に回し蹴りを喰らわせる。

回し蹴りを食らった機械は、一瞬で砕け散った。

それと同時にホームズの右脚の黒霞も消えた。

「…………………あれ?早すぎない?」

「だから言ったろ。なけなしの一発だって」

ホームズは、霞の消えた右脚を見てため息を吐くと左脚に闘気を纏う。

「まあ、いいや」

向かってくるもう一つの機械に蹴りを放つ。

「獅子戦哮!!」

ホームズから放たれた闘気の獅子は正面から鋼の生き物に食らいつく。

しかし、機械は怯むことなく銃口をホームズに向ける

「こいつは……」

ホームズが、眉を潜める。

それと同時に銃口からマナの光線が放たれた。

ホームズは、粉々に砕け散った破片を蹴り飛ばし少しだけ威力を殺し、横に転がる。

「どうやら、黒匣(ジン)が内蔵されているみたいだねぇ……」

「どうする?俺でも食う暇がないぞ」

面白そうに言うヨルを他所にホームズは、目の前の機械を冷めた目で見つめる。

「ま、やりようなんて幾らでもあるさ」

ホームズは、そう言うと腰を落とし力を込める。

「剛招来っ!」

ホームズは、赤い蒸気を身に纏う。

黒匣(ジン)を内蔵した機械はホームズに照準を定めようとするが、ホームズは、ジクザグと走り照準を合わせない。

攻撃をかわし続けたホームズはそのまま機械の背後を取る。

「ふんぐおらぁっ!」

ホームズは、機械を持ち上げるとそのまま別の機械に投げつけた。

剛招来で強化されたホームズに投げ飛ばされた機械は、他の機械を巻き込み動きを止めた。

ホームズは、飛び上がり、上空から脚を打ち下ろす。

「爆砕陣!!」

辺りは弾け飛び、鋼の機械にヒビが入る。

しかし、動きは停止しそうにない。

「下がれ、ホームズ!」

ミラはそう言うと、己を光に包み突撃する。

「ハイアザースカイ!!」

光と一体となったミラに切り上げられた機械は動きを止める。

「光に弱いのか……」

そして、ミラのリリアルオーブが輝く。

「ジュード!」

「任せて!」

ミラは空中にいるジュードに光の剣をなげてよこす。

ジュードは、それを受け取るともう一機に向けて光の剣を伸ばす。

狙うは、ホームズが入れたヒビだ。

「「カカラットレイ!」」

ジュードは、見事に貫き、破壊した。

飛び散る部品と共にジュードは、着地し、後ろを振り返る。

「後一機!」

残りの一機にローズは、刀を向ける。

「省略!」

そう言うと四本の脚にそれぞれ光球が出現する。

「フォトン!!」

その言葉と共に弾けたフォトンが四本の脚を吹き飛ばす。

突然支えを失った機械は地面に落ちる。

脚を失っても鋼の機械は、しぶとくローズに照準を合わせようとする。

「虎牙破斬!!」

黒匣(ジン)が発動するより早く、アルヴィンが大剣で打ち上げ、斬りおろした。

元々ボロボロだった機械は、遂に鉄くずへと成り果てた。

「はぁ、やっと終わった………」

ホームズは、げんなりしながらそう言うと、どこからともなく翼の羽ばたく音が聞こえた。

「ん?」

思わず顔を上げるとワイバーンから、ガイアスと四象刃(フォーブ)、そして、ア・ジュール兵達が降りてきた。

「そこまでだ!この船は我々が完全に掌握した!」

ウィンガルの言葉と共にア・ジュール兵達が次々と倒していく。

「ガイアス達だけでどうにかなったんじゃ………」

ジュードは、どっかりと腰を下ろしながらそう零す。

「………否定できないわね……」

ローズは、ため息をついて二刀を収める。

ガイアスは、大役を果たしたジュードと向かい合う。

ジュードは、座りながら微笑む。

ガイアスも満足気だ。

そして、直ぐに兵達に告げる。

「我々の勝利だ!」

ガイアスがそう告げると辺りに勝どきが響き渡った。

「城に戻るぞ」

ガイアスは、勝どきを聞くとそう兵達に告げた。

「ミラ様!ご無事でしたか?」

「あぁ、お前以外のおかげでな」

自信満々に降り立ったイバルに呆れたように言う。

すると、イバルは、ジュードを睨んで悔しそうに歯をくいしばる。

偽者とこき下ろすジュードと差が開いていくばかりのイバル。そんなイバルからローズは、視線を外すと刀の柄に片手を乗せ、ローエン達の所へ歩いて行く。

ふと、目を向けるとジュードがミラの手を借りずに立ち上がっていた。

「………私も、か」

ポツリとそう呟くとローズは、歩いて行く。

この感情が何なのか、気づいている。

そして、今の状態も理解している。

それでもこの状態を止められない。

止めたら、立ち上がれない事が自分でもわかっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………城に戻る?」

空気を読まないホームズ言葉が空中戦()の甲板にポツリと零された。

 

 




空中戦艦で城に帰るよー


てなわけで、また百三十話で( ´ ▽ ` )ノ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。