1人と1匹   作:takoyaki

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百三十話です。




世間は盆休み……………けっ!



てなわけで、どうぞ


黒いものに蓋をする

「ウィンガル、出発までは?」

城に戻った一行は、謁見の間にいた。

「兵達が船の掌握の為に動いているので、数刻はかかるかと」

ジュードは、それを聞くとミラに話しかける。

「まだ、時間がかかるみたいだね」

ミラは考えるように腕を組む。

「ふむ………ならば、我々も少し休むとしよう」

そう言って後ろを見る。

「ホームズもあんなんだしな」

視線を向けた先には、青い顔をして横になっているホームズがいた。

「ゔー…………気持ち悪い………」

レイアとの共鳴(リンクアーツ)で目を回していたホームズを襲った空中戦艦の揺れ。

一発で船酔いを起こし、今はこのザマだ。

「この吐きそうで吐けない中途半端なのが、一番キツイなぁ………」

「吐かないでよ、頼むから。仮にもお城の中なんだから」

「『仮にも』って……」

レイアの言葉にジュードは、引きつり笑いをする。

ホームズは、フラフラと立ち上がると壁に手を付きながら歩き出した。

「ちょっとホームズ!どこ行くの!?」

ジュードの言葉にホームズは、口を押さえながら答える。

「酔い止め……買ってくる。この前買ったやつ何処かに落としちゃったし…………」

ホームズは、そう覇気のない声で返すとフラフラと城から出て行った。

多分ファイザバード沼野だなぁという声と共に。

「ホームズ、本当に船ダメだね」

レイアは、思わず苦笑いしている。

「まぁ、準備が整うまで自由行動とするか」

ミラの言葉で一同は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

自由行動というわけでローズは、一人廊下に佇んでいた。

色々な事が起こりすぎて、ローズ自身上手く整理できてないのだ。

けれどもそんなローズを置いて周りは目まぐるしく変化していく。

「ローズさん」

そんな事を考えていると、ローエンに声をかけられた。

ローエンの言葉にローズは、我に返る。

「ローエン?」

ローエンは、ふっと笑って答える。

「………どうしたのよ?」

「いえ、先ほどまでラ・シュガル軍の応援を要請していまして」

「流石、指揮者(コンダクター)。つてが違うわね」

ローズは、心底感心したように頷く。

ローエンは、微笑むと直ぐに真面目な顔になる。

「少し、話をしませんか?」

そう言ってローズを再び見る。

「話?」

「えぇ。例えば、ホームズさんの事とか」

その言葉にローズは、息を飲む。

いつか、言われるだろうとは、思っていた。

できるだけ隠していたのだが、それでも限界というものがある。

元来隠し事の苦手なローズだ。

いつ誰に聞かれたって不思議ではない。

「よろしければ、話して頂けませんか?」

ローエンの言葉にローズは、口を開き、そして、言葉を発する前に首を振る。

「………ごめん。話せないわ。ここで、私だけが言うのはフェアじゃないのよ」

ミラとエリーゼには、感情に任せるままに話した。

しかし、考えてみればそれはあまり好ましいとは言えない。

ホームズにとって悪情報を与えるようなものだ。

「………頭では分かっているのよ……」

そう、別にホームズ親子が、アルクノアを手引きしたわけではない。

ましてや、ホームズ親子がローズの家族を殺したわけではない。

そこまで分かってもローズは、納得出来ない。

頭では分かっても感情が納得しない。

「………ホームズさんの事が嫌いになりましたか?」

「………よく、分からないわ……」

ローズは、そう今の気持ちを正直に話した。

少し前なら、顔を真っ赤にしていたところだろう。

しかし、顔を赤く染めるほどの熱はもうローズに上ってこない。

なら嫌いかと問われれば、これまたはっきりとは言えない。

「結局、何もかも中途半端なのよね……」

そう言ってローエンを見る。

「私さ、今でも考えるのよ。マーロウさんにホームズの事を頼まなければ、マーロウさんはまだ生きてたんじゃないかって………」

「マーロウさんは、元々助けに行くつもりでした。

ローズさんのせいでも、ホームズさんのせいでもありませんよ」

ローエンは、そう言って指を立てる。

「マーロウさんは、最後まで信念を貫き通しました。

それをそんな風に言っては、マーロウさんに失礼ですよ」

「………そうよね……」

ローズは、そう呟くと刀の柄をトントンと叩く。

「………やっぱり、私って最低だなぁ………」

ローズは、そう言ってまだ何か言いたげなローエンに気づかないふりをして歩き始めた。

これ以上ここにいれば、ローエンに言わなくてもいい事まで喋ってしまいそうだ。

「あ、そうだ。ありがとう、ローエン」

ローズは、振り返ってローエンにそう言ってその場を後にした。

「ローズさん。最後です。ジジイの戯言だと思って聞いてください」

そんなローズの背中にローエンが言葉をかける。

「私達のようにはならないようにして下さい。時間だけでは、解決できない事もあるのです」

ローズは、背を向けたまま立ち止まると小さく頷いた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「あれ?ジュードとエリーゼ?」

ローズの進んだ先には、二人が話していた。

ローズの言葉に二人は振り返る。

「ローズ?みんなといないの?」

「さっきまで、ローエンといたわ」

ジュードにローズは、そう返すと二人を見る。

「それで、二人は何の話をしていたの?」

ローズの質問にエリーゼが俯きながら答える。

「ジャオさんが、どうして、私の事を助けたのか、です」

エリーゼの言葉にローズは、目を伏せる。

そんなローズの言葉にティポがふよふよと浮きながら口を開く。

『ミラとローエンに聞いたら死んだ人の気持ちなんて知るもんかー、だってさ』

その遠慮のない言葉にエリーゼは、顔を赤くして手を振る。

「そ、そんなふうに言っていませんからね!」

ティポの言葉は、エリーゼの考えている言葉だ。

慌てるのも無理はない。

「分かってるわよ」

ローズは、やれやれという風に言う。

ジュードも困ったように笑うと、エリーゼの目線に合わせるように屈む。

「でも、死んだ人の気持ちは分からないよ」

声音こそ優しい。

しかし、紡がれる言葉は何処までも厳しい。

けれども、

「その通りよね……」

ローズは、薄く笑いながらそう答える。

短いその言葉に幾重もの感情を込める。

エリーゼは、ローズの言葉を聞くとキッと目に力を込める。

「で、でも!お父さんとお母さんに聞いたことがある気がするんです!

死んだ人は精霊に生まれ変わるって」

エリーゼが力一杯紡いだ言葉を聞くとジュードは、優しく微笑む。

「なら、やっぱり、僕達が守らないとね」

ジュードの言葉にエリーゼは、ニッコリと満足そうに頷いた。

ローズは、目を見開き、驚いて声が出ない。

そんな様子に二人は気付かず、エリーゼは、納得したように頷く。

「そうか………はい、分かりました」

エリーゼは、そう言うと顔あげる。

「ありがとうございました」

そのままエリーゼは、城の外へと出て行った。

ローズは、無言のまま渋面でそれを見つめる。

そんなローズを不思議に思ったジュードは、声をかける。

「ローズ?」

「……なんでもないわ」

ジュードの言葉にローズは、少し苛立ちを混ぜながら、素っ気なく返す。

「あ……そう」

ジュードは、戸惑いながら曖昧に頷く。

「じゃあ、また後で」

ローズは、そう一方的に告げるとその場を足早に離れた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

誰もいないところまで、歩くと廊下の柱にコツンと頭を当てる。

あの時のジュードを思い出すと胸がざわめく。

チクチクと痛むというの様な生易しいものではない。

どろりとヘドロのようなもので心が汚れていくというものだ。

「…………認めない……そんな訳ない!」

とはいえ、なら、これはなんだと説明しようとしたところで出来ない。

ジュードは、頼りのないところがあった。成長しようと頑張っている、そんな男の子筈だった。

だが、今のはどうだ?

成長しようと頑張り、僅かに変わり始めている。

エリーゼに対する発言だけで、こんなに感情が渦を巻くのだ。

あの時ミラの力を借りず立ち上がったジュードにローズが、何も感じなかったはずがない。

しかし、ローズは、この感情を認めない。

この感情だけは認めるわけにはいかない

「私は、ミラみたいになるの…………だから」

ローズは、背を預けている廊下の柱を殴りつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫉妬なんかする筈がない」

 

 

 

 

胸に渦巻くドス黒い感情に蓋をするようにローズは、呟いた。

 

 

 

 

 

聞く人が聞けば、虚勢なことがわかるぐらい震える声で。









雲行きがなんだか怪しいですね……

さて、そんな事よりストックが大体、11話。
そこからさらにかかって10話かな?
なんて、希望的観測を立ててはいるのですが、どう考えてもそれ以上いきそうです………

ではまた百三十一話で( ´ ▽ ` )ノ
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