世間は盆休み……………けっ!
てなわけで、どうぞ
「ウィンガル、出発までは?」
城に戻った一行は、謁見の間にいた。
「兵達が船の掌握の為に動いているので、数刻はかかるかと」
ジュードは、それを聞くとミラに話しかける。
「まだ、時間がかかるみたいだね」
ミラは考えるように腕を組む。
「ふむ………ならば、我々も少し休むとしよう」
そう言って後ろを見る。
「ホームズもあんなんだしな」
視線を向けた先には、青い顔をして横になっているホームズがいた。
「ゔー…………気持ち悪い………」
レイアとの
一発で船酔いを起こし、今はこのザマだ。
「この吐きそうで吐けない中途半端なのが、一番キツイなぁ………」
「吐かないでよ、頼むから。仮にもお城の中なんだから」
「『仮にも』って……」
レイアの言葉にジュードは、引きつり笑いをする。
ホームズは、フラフラと立ち上がると壁に手を付きながら歩き出した。
「ちょっとホームズ!どこ行くの!?」
ジュードの言葉にホームズは、口を押さえながら答える。
「酔い止め……買ってくる。この前買ったやつ何処かに落としちゃったし…………」
ホームズは、そう覇気のない声で返すとフラフラと城から出て行った。
多分ファイザバード沼野だなぁという声と共に。
「ホームズ、本当に船ダメだね」
レイアは、思わず苦笑いしている。
「まぁ、準備が整うまで自由行動とするか」
ミラの言葉で一同は解散となった。
◇◇◇◇
自由行動というわけでローズは、一人廊下に佇んでいた。
色々な事が起こりすぎて、ローズ自身上手く整理できてないのだ。
けれどもそんなローズを置いて周りは目まぐるしく変化していく。
「ローズさん」
そんな事を考えていると、ローエンに声をかけられた。
ローエンの言葉にローズは、我に返る。
「ローエン?」
ローエンは、ふっと笑って答える。
「………どうしたのよ?」
「いえ、先ほどまでラ・シュガル軍の応援を要請していまして」
「流石、
ローズは、心底感心したように頷く。
ローエンは、微笑むと直ぐに真面目な顔になる。
「少し、話をしませんか?」
そう言ってローズを再び見る。
「話?」
「えぇ。例えば、ホームズさんの事とか」
その言葉にローズは、息を飲む。
いつか、言われるだろうとは、思っていた。
できるだけ隠していたのだが、それでも限界というものがある。
元来隠し事の苦手なローズだ。
いつ誰に聞かれたって不思議ではない。
「よろしければ、話して頂けませんか?」
ローエンの言葉にローズは、口を開き、そして、言葉を発する前に首を振る。
「………ごめん。話せないわ。ここで、私だけが言うのはフェアじゃないのよ」
ミラとエリーゼには、感情に任せるままに話した。
しかし、考えてみればそれはあまり好ましいとは言えない。
ホームズにとって悪情報を与えるようなものだ。
「………頭では分かっているのよ……」
そう、別にホームズ親子が、アルクノアを手引きしたわけではない。
ましてや、ホームズ親子がローズの家族を殺したわけではない。
そこまで分かってもローズは、納得出来ない。
頭では分かっても感情が納得しない。
「………ホームズさんの事が嫌いになりましたか?」
「………よく、分からないわ……」
ローズは、そう今の気持ちを正直に話した。
少し前なら、顔を真っ赤にしていたところだろう。
しかし、顔を赤く染めるほどの熱はもうローズに上ってこない。
なら嫌いかと問われれば、これまたはっきりとは言えない。
「結局、何もかも中途半端なのよね……」
そう言ってローエンを見る。
「私さ、今でも考えるのよ。マーロウさんにホームズの事を頼まなければ、マーロウさんはまだ生きてたんじゃないかって………」
「マーロウさんは、元々助けに行くつもりでした。
ローズさんのせいでも、ホームズさんのせいでもありませんよ」
ローエンは、そう言って指を立てる。
「マーロウさんは、最後まで信念を貫き通しました。
それをそんな風に言っては、マーロウさんに失礼ですよ」
「………そうよね……」
ローズは、そう呟くと刀の柄をトントンと叩く。
「………やっぱり、私って最低だなぁ………」
ローズは、そう言ってまだ何か言いたげなローエンに気づかないふりをして歩き始めた。
これ以上ここにいれば、ローエンに言わなくてもいい事まで喋ってしまいそうだ。
「あ、そうだ。ありがとう、ローエン」
ローズは、振り返ってローエンにそう言ってその場を後にした。
「ローズさん。最後です。ジジイの戯言だと思って聞いてください」
そんなローズの背中にローエンが言葉をかける。
「私達のようにはならないようにして下さい。時間だけでは、解決できない事もあるのです」
ローズは、背を向けたまま立ち止まると小さく頷いた。
◇◇◇
「あれ?ジュードとエリーゼ?」
ローズの進んだ先には、二人が話していた。
ローズの言葉に二人は振り返る。
「ローズ?みんなといないの?」
「さっきまで、ローエンといたわ」
ジュードにローズは、そう返すと二人を見る。
「それで、二人は何の話をしていたの?」
ローズの質問にエリーゼが俯きながら答える。
「ジャオさんが、どうして、私の事を助けたのか、です」
エリーゼの言葉にローズは、目を伏せる。
そんなローズの言葉にティポがふよふよと浮きながら口を開く。
『ミラとローエンに聞いたら死んだ人の気持ちなんて知るもんかー、だってさ』
その遠慮のない言葉にエリーゼは、顔を赤くして手を振る。
「そ、そんなふうに言っていませんからね!」
ティポの言葉は、エリーゼの考えている言葉だ。
慌てるのも無理はない。
「分かってるわよ」
ローズは、やれやれという風に言う。
ジュードも困ったように笑うと、エリーゼの目線に合わせるように屈む。
「でも、死んだ人の気持ちは分からないよ」
声音こそ優しい。
しかし、紡がれる言葉は何処までも厳しい。
けれども、
「その通りよね……」
ローズは、薄く笑いながらそう答える。
短いその言葉に幾重もの感情を込める。
エリーゼは、ローズの言葉を聞くとキッと目に力を込める。
「で、でも!お父さんとお母さんに聞いたことがある気がするんです!
死んだ人は精霊に生まれ変わるって」
エリーゼが力一杯紡いだ言葉を聞くとジュードは、優しく微笑む。
「なら、やっぱり、僕達が守らないとね」
ジュードの言葉にエリーゼは、ニッコリと満足そうに頷いた。
ローズは、目を見開き、驚いて声が出ない。
そんな様子に二人は気付かず、エリーゼは、納得したように頷く。
「そうか………はい、分かりました」
エリーゼは、そう言うと顔あげる。
「ありがとうございました」
そのままエリーゼは、城の外へと出て行った。
ローズは、無言のまま渋面でそれを見つめる。
そんなローズを不思議に思ったジュードは、声をかける。
「ローズ?」
「……なんでもないわ」
ジュードの言葉にローズは、少し苛立ちを混ぜながら、素っ気なく返す。
「あ……そう」
ジュードは、戸惑いながら曖昧に頷く。
「じゃあ、また後で」
ローズは、そう一方的に告げるとその場を足早に離れた。
◇◇◇
誰もいないところまで、歩くと廊下の柱にコツンと頭を当てる。
あの時のジュードを思い出すと胸がざわめく。
チクチクと痛むというの様な生易しいものではない。
どろりとヘドロのようなもので心が汚れていくというものだ。
「…………認めない……そんな訳ない!」
とはいえ、なら、これはなんだと説明しようとしたところで出来ない。
ジュードは、頼りのないところがあった。成長しようと頑張っている、そんな男の子筈だった。
だが、今のはどうだ?
成長しようと頑張り、僅かに変わり始めている。
エリーゼに対する発言だけで、こんなに感情が渦を巻くのだ。
あの時ミラの力を借りず立ち上がったジュードにローズが、何も感じなかったはずがない。
しかし、ローズは、この感情を認めない。
この感情だけは認めるわけにはいかない
「私は、ミラみたいになるの…………だから」
ローズは、背を預けている廊下の柱を殴りつける。
「嫉妬なんかする筈がない」
胸に渦巻くドス黒い感情に蓋をするようにローズは、呟いた。
聞く人が聞けば、虚勢なことがわかるぐらい震える声で。
雲行きがなんだか怪しいですね……
さて、そんな事よりストックが大体、11話。
そこからさらにかかって10話かな?
なんて、希望的観測を立ててはいるのですが、どう考えてもそれ以上いきそうです………
ではまた百三十一話で( ´ ▽ ` )ノ