1人と1匹   作:takoyaki

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百三十二話です。



ニチアサ8時の映画を観に行ってきました。
自分以外全員家族連れで気まずかったです。
ただ映画のいいところは、始まってしまえばそんなの関係ないところです。

いやぁ、楽しかったです。

面白かったし、文句ないですね。


ただ、映画を終わって出て行こうとしたら孫を連れたおばあちゃんに凄い目で見られた。
アレだよね?もう一人の孫がちゃんと自分についてきてるか来ているか、心配だったんだよね?私の後ろにいたんだよね?そうだよね?



てなわけで、どうぞ


晴れ時々クルスニクの槍。ところによりアルクノア

「む?きたか」

ミラの視線の先には、ホームズとエリーゼがいた。

アルヴィンは、それを確認しると口を開く。

「全員揃ったな。それじゃあガイアスの所に行こうぜ」

「お待ちください」

そう言ってローエンが遮る。

「今回の戦い、ガイアスさんも本気の様です。

皆さんも準備だけは怠らないようにしましょう」

「………うん、そうだね」

ジュードは、そう言うとホームズを見る。

「買えたの、酔い止め?」

ホームズは、頷いてみせる。

「おかげさまで」

「ふむ、なら行こう」

ホームズの準備を確認すると、ミラはそう言った。

「………君たちは、準備とかいいのかい?」

「船に乗るのに準備がいるのは、お前だけだ」

「………理解してくれて嬉しいよ。涙が出そうだ」

ホームズは、半眼でそう返した。

「さて、いつも通りのホームズの悪態が聞けた所で、行くぞ!」

釈然としないホームズを含めた一行は、空中戦艦に向かった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

空中戦艦には、ラ・シュガル兵とア・ジュール兵の両兵が整列していた。

ホームズは、両国の揃った兵を見て首をかしげる。

「もしかして、ローエン?」

「はい、僅かですが、私が呼び寄せました」

「流石」

ホームズの言葉にローエンは、微笑んでお辞儀をする。

「あれ?イバルもいる」

当の本人は、ジュード達の方を振り返り胸を張る。

そんなイバルを見てミラは呆れ顔だ。

「あいつ、ニアケリアでの使命を放り出してきたな……」

胸を張るイバルからジュードが目をそらすと不満げに動き出した。

ローズは、そんなイバルを見てため息を吐く。

そんな中、ウィンガルに促されたガイアスが口を開く。

「かつて、我々は、リーゼ・マクシアの覇権を賭けて争った」

戦場に出る前の王の言葉は、何より重い。

「だが、この戦いは、今までのそれと一線を画するものだ。

敵の本拠地のジルニトラの場所は既に掴んである」

そこでガイアスは、更に声を張る。

「臆するな!信頼せよ!昨日までの敵を!」

握り拳を強く握りしめる。

「我らの尊厳を再びその手に!」

兵達は、一気に雄叫びをあげた。

「凄いわね………ガイアスの言葉でここまで、士気が上がるなんて……」

ローズの言葉にローエンが頷く。

「兵の士気をあげられるのも王の素質の一つですからね」

「………なるほど」

ローズは、静かに頷いた。

「船を出せ」

士気が上がるのを見届けるとウィンガルが指示を出す。

「お待ちください!!」

その兵の言葉にホームズは、慌てて酔い止めを飲もうとした手を止める。

「リーゼ・マクシア全域に高出力魔法陣の展開を感知!!」

ホームズの脳裏にやな予感がよぎる。

「来ます!!」

その言葉と同時だった。

ミラ達を含めた船の上にいる人々が膝をついた。

ホームズも思わず頭を押さえる。

「っつ!くそ、くらくらする……」

この前とは、明らかに威力が違う。

ヨルも同じようにへばっている。

「何………これ……マナが抜けるみたい………」

「この感覚は………」

ミラが呟く。もしかしなくてもクルスニクの槍だ。

「クルスニクの槍のマナ吸収機能を世界中に向けて使ったんだ!」

ジュードの言葉にウィンガルは、歯噛みをする。

「燃料計画が始まったか………」

「民を犠牲には、させん!リーゼ・マクシアの民は俺が!」

ガイアスは、そう言って操縦室体を向ける。

「今すぐ、船を出せ!!」

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

ガイアスの指示通り、船は空を進んでいた。

「どうやら、この高度では、魔法陣の影響はないようですね」

「エリーゼ、大丈夫?」

甲板にぺたんと座り込んでいるエリーゼにレイアが屈んで尋ねる。

「頭痛いです……」

目を閉じて辛そうにエリーゼは、こぼした。

「医務室行こうか」

レイアの言葉にエリーゼは、頷く。

レイアは、ジュード達の方を向く。

「じゃあ、エリーゼを医務室に連れてくるね」

そう言って二人は医務室へと歩いて行った。

そんな中ジュードが辺りを見回す。

「あれ?ミラは?」

「そう言えば見ないな………」

アルヴィンも同じように辺りを見回すが見つからない。

「僕、ちょっと探してくるね」

ジュードもそう言ってその場から立ち去った。

それを見届けるとアルヴィンが口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、ホームズとローズもいないんだけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

医務室の扉を開けたレイアとエリーゼは、目を丸くしていた。

何しろそこには、見覚えのある茶髪のアホ毛が椅子に座って本を黙々と呼んでいたのだ。

「ホーム………!」

「静かに」

『ズ』と言おうとするレイアの口にホームズは、人差し指を持って行き黙らせる。

「起きちゃうだろう?」

そう言って目線は、医務室のベッドで寝ているローズを向く。

最近の憂いや険しい顔が嘘のように穏やかな寝顔を浮かべている。

「ローズ、どうかしたんですか?」

「なんか、倒れてたから連れてきた」

エリーゼの質問にホームズは、ページをめくりながら答える。

元々霊力野(ゲート)の大きなローズは、モロに影響を受けたようだ。

「にしても」

そう言って、ホームズはローズの目の下を指差す。

「昨日、この子眠れてなかったね」

そこには、薄っすらと黒く隈が出来ていた。

寝不足の所にこのクルスニクの槍の力だ。

恐らく相当キツかっただろう。

ホームズは、そう言ってページを戻す。

先ほどから一ページも進んでいない。

「もしかして、ホームズが一番最初に見つけた?」

「いいや。二番目。一番最初は、別にいる」

そう言ってヨルを見る。

ヨルは、うんざりしたような顔をする。

「お前が探せと言ったんだろうが」

あのクルスニクの槍の作動の後、直ぐにホームズは、ヨルに探すよう言ったのだ。

「ローズが倒れること分かってたの?」

レイアの言葉にホームズは頷く。

「あの時、一人だけ何処かに隠れようとしてたからねぇ……」

そう言ってホームズは、再び本に目をやる。

全く、ローズと会話をしていなかったホームズだが、結局ローズに気を配っていたのは、いつも通りだった様だ。

『ローズと仲直りしないのー?』

ティポの言葉にホームズは、肩をすくめる。

「うーん………まぁ、難しいかもね」

ホームズは、ローズの家族の問題に目を向けさせない様にこの様に誘導してきた。

今更、この状態を解消するつもりはない。

「私は、いつものホームズとローズに戻って欲しい……です」

「そう言われてもねぇ」

ホームズは、エリーゼの言葉に肩をすくめる。

「まぁ、アレだ。いつものことだ。女の子に嫌われるなんて、いつものことだよ」

そう言って、眠っているローズを見る。

「それが、今回はローズだったってだけの話さ」

ホームズは、そのまま視線を二人に戻す。

「で、二人はいいのかい、休まなくて?その為に、医務室(ここ)に来たんだろう?」

ホームズからその言葉出るとエリーゼは、レイアに促され渋々ローズの隣のベッドに横になる。

ホームズは、本をパタンと閉じる。

「まぁ、君達も無理しないようにね」

「…………ホームズもね」

レイアの言葉に肩をすくめるとホームズは、目を閉じて眠りについた。

「ホームズの距離感は、かわってないんだよね」

そんなホームズを見てレイアは、そう言うとヨルが頷く。

「あぁ。あいつの中で、小ムスメは、昔馴染みで友人のままだ」

ヨルは口角を吊り上げる。

「だからこそ辛いだろうに、本当、馬鹿な奴だよ」

ヨルの言葉にレイアが沈んだ顔をする。

すると、ヨルの尻尾が伸びてきて、レイアの額を弾く。

「そんな顔してないで、お前もさっさと休め」

「……………そうだね」

レイアは、そう言って椅子に腰かけようとしたその時、ウィンガルが扉を開けて入ってきた。

「ウィンガル?」

「何の用だ?」

ヨルの言葉を聞き流し、ウィンガルはレイアの方を向く。

「ジルニトラの位置を捕捉した。全員用意しろ」

言うだけ言うと、ウィンガルは医務室から出て行った。

レイアは、慌ててエリーゼ達を起こそうとする。

そんな中、ホームズはレイアに起こされるより前に目を開いた。

そして、寝ているローズの鼻をつまむ。

「お!起きたね」

「…………」

目覚め最悪な状態のローズは、不機嫌そうな顔でホームズを睨んでいた。

そんな二人をレイアとエリーゼは、苦笑いをしてみている。

ホームズは、ローズの視線をさらりとかわし立ち上がる。

「さて、行きますか」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

ホームズ達が甲板に行くとアルヴィン達は深刻な顔をしていた。

不思議そうに首を傾げるとアルヴィンが口を開く。

「ジルニトラに空中戦艦が集結しつつあるってよ」

「わぁ……聞きたくない情報だぁ……」

ホームズがげんなりしてため息を吐く。

敵が増えていると言う情報を聞いてテンションが上がるわけがない。

ホームズが肩を落としていると空が震えだした。

「な、なに?」

ジュードが音のした方を向くと光の柱が立ち上っていた。

「今のって!!」

「クルスニクの槍みたいでした!」

ジュードにエリーゼとレイアが詰め寄る。

ウィンガルは、目を鋭くする。

「光の発信源は、ジルニトラで間違いなさそうだ」

ウィンガルの言葉を聞きながらミラは、顔を険しくする。

「今の光、再び断界殻(シェル)に穴が………」

「でも、今回は何も来ないわね」

プレザは、不思議そうにつぶやいた。

「エレンピオスにマナを送った感じじゃなかったか?」

アルヴィンは、光の柱を差しながら言う。

ジュードは、アルヴィンの言葉に頷く。

「アルヴィンの考えは、正しかったんだね」

アルヴィンは、思わず肩をすくめる。

「最悪な現実だけは、嘘にならないってのは皮肉だよな」

そう言いつつアルヴィンは、ホームズを見る。

ホームズは肩をすくめる。

「人生ってのは、そんなもんさ」

二人がそんな会話をしていると、アグリアは不審そうに眉をひそめ空を凝視する。

そして、突然腹を抱えて笑いだした。

「上等じゃない!!」

アグリアがそう言って指を指すその先には、一隻の空中戦艦が真っ直ぐに向かってきていた。

 

 

 

 

 

【こちらに接近する船がいるぞ!全員衝撃に備えろ!!】

 

 

 

 

 

イバルの声が響き渡ると同時に敵の戦艦が突撃してきた。

突如襲った衝撃に甲板の面子は、体制を崩す。

ホームズは、突撃してきた船の方を向く。

空には、あの時と同じように兵士達が空気を噴射しながらこちらの船に向かってきた。

空を埋め尽くす、アルクノア。

そして、彼らは着々と甲板に降り立つ。

目の前に広がるアルクノアの軍勢を見て、ホームズは息を吐き出し、煙管をしまう。

碧い瞳に少し力を込める。

 

 

 

 

 

 

「相手してやるゼ、アルクノア……」

ホームズは、そう言って駆け出した。









空の上で戦闘です。


いいですよねぇ、ロマンですよねぇ……


ではまた、百三十三話で( ´ ▽ ` )ノ

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