1人と1匹   作:takoyaki

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十四話です。



花粉との戦いが始まってきました……


敵に石を送る

「転泡!!」

ジュードの技が、ハンマーズファームに炸裂する。元々、水属性の攻撃に弱いこの魔物には、まさに的確な攻撃といえよう。そして、レイアも後方支援に徹するかと思いきや、

「瞬迅爪!」

思いっきり前衛の技も繰り出す。

「いいコンビネーションだね、彼ら」

「ああ、そうだな」

ホームズの言葉をミラは、うわの空で返す。何か考え事をしているようだ。

そして、ふと顔をホームズ達に向けて口を開いた。

「今なら、ジュード達には聞こえないだろう」

ジュード達は今ハンマーズファームと激しい戦闘を繰り広げている。

「答えろホームズ、お前はエレンピオス人か?」

「そうだよ」

「なら、お前はアルクノアか?」

「違うよ」

ホームズは、問いに答えると納得のいかなそうな顔をしているミラに向かって、やれやれと言った風に肩を竦めた。

「何だか、納得できてないようだから説明してあげるよ。別にね、全てのエレンピオス人がアルクノア入っている訳じゃないんだよ。おれや、おれの両親がいい例だね」

「なぜ、入ってない?」

「特に入りたいとも思わないし、そもそも、アルクノアなんて組織を知ったのはここ最近だもの」

「お前の両親は?」

「さてね、入りたくなかったんじゃないの?」

ホームズののらりくらりとした返しに、ミラは少し考え、もう一度尋ねた。

「なら、質問を変えよう。なぜ、入りたくなかったのだ?」

「予想だけど、おれの両親は多分黒匣(ジン)の、精霊が死ぬ、という副作用を知っていたと思うんだよね。だから、それを使う連中と一緒に居たくなかったんじゃないかな」

ああ、後、と言葉を続ける。

「おれのお陰とも言ってたね」

「お前の?」

「そ、おれの」

ホームズは返す。

「何かね、本当は何回も入ろうと思ったんだってさ。リーゼマクシアに取り残されて、友達もいない、両親もいない常に一人ぼっち、おまけにリーゼマクシア人は訳の分からない術を使う、心がもう、折れそうだったんだって。でも、その度におれの事を思い出して、やっぱりそんな所に入らなくてもいいなと思ったんだってさ」

今でも、思い出す母の言葉だ。

 

『私はね、君を産んで、君に会えて、本当に良かったと思うよ。…私にとっての1番の幸運はホームズと旦那に出会えた事だね』

そう言って母親はホームズの頭を撫でた。ホームズ本人はその言葉を言われる度に照れ臭そうに笑っていた。

今なら分かるとホームズは考える。自分を一人ぼっちにしなかったホームズへの感謝の意味を込めて言っていたのだろう。

ホームズは頭を触りながらそんな事を考えていた。

「……なるほど。息子の力というのは、偉大だな……」

ミラはそう言って、ふと止まった。

今何か矛盾が、あったような気がする。

 

何か、辻褄の合わない何かが。

 

ミラが思考の渦に巻き込まれていると、突然大きな音がした。なんと、ジュード達はハンマーズファームを倒したのだ。カラン、と倒れた衝撃で、頭についていた精霊の化石が、欠けて落ちた。

その音でミラは、はっと我に返った。そして、気付いた。

 

 

 

ハンマーズファームがまだ、完全倒されていない事に。

 

ハンマーズファームは自分を痛めつけたレイアとジュードに襲いかかる。2人は吹っ飛ばされてしまい、立ち上がるのに時間がかかる。そこを追撃するように再度ハンマーズファームは襲いかかる。

そして、それを阻止するかのように一つの人影がジュードとレイアの前に立つ。見覚えのあるポンチョをはためかせて、その人影は思い切り、その場で踏み込んだ。

「守護方陣!!」

「グギャアアアア」

青白い光が輝くハンマーズファームを捉える陣。そこに浮かび上がる顔は、これまた見覚えのある、碧い瞳のたれ目のあの顔だ。

「「ホームズ!」」

「やっほー」

ホームズは驚く2人に、なんて事なさそうに挨拶をする。

「ちょっと怪我は?」

レイアが心配そうに聞く。

ホームズは答えようとするが、すぐに又攻撃がくる。

「後で教えてあげるよ」

そう言い残し、ぴょんと高々とジャンプした。そして、そのまま、

「爆砕陣!!」

破裂するかのようなかかと落としを決めた。ハンマーズファームは少し怯んだ。しかし、すぐに体制を立て直すと地中に潜って姿を消した。

「逃げたって訳じゃなさそうだ」

ホームズは油断なく周りを警戒していた。地下を移動する衝撃で地上に土煙が舞う。そして……

 

足元から飛び出てホームズを天井近くまで突き上げた。

 

 

 

 

 

成す術なく落下し、地面に叩き付けられるホームズ。激突の衝撃に周りの時間が止まったように感じられた。そして、その時間が動き出すと同時に、痛みがホームズの全身を襲う。

「〜〜〜!」

声に鳴らない声を上げると再び立ち上がる。腕からは血が流れている。右腕に至っては激痛しかない、恐らく、いや、絶対に折れている。

「やれやれ、避けきれると思ったんだけどねぇ……」

ホームズはそう言いながらため息を吐く。結局、怪我は治った訳ではない。そのせいでホームズは、ワンテンポ逃げるタイミングが遅れたのだ。

ハンマーズファームは雄叫びをあげ、ホームズに狙いを定める。自分を攻撃した連中は全て潰す気なのだろう。

ハンマーズファームは、まず、ホームズ目がけて襲いかかった。

 

しかし、その攻撃が届く事はなかった。

なぜなら、

 

「アサルトダンス!」

 

ミラが復活したからだ。

 

◇◇◇◇

 

 

ホームズがジュード達を助けに行った時にミラが何もしていなかった訳がない。ミラは何とか彼らを助けようと車椅子を乗り捨て、這いつくばって精霊の化石の所まで進もうとしていたのだ。しかし、届かない。

そんな時、ヨルがミラの前に現れた。

「よう、いいザマだな」

いつもホームズの側にいるヨルが、目の前にいるのを見て、ミラは目を見開いた。

「何故、ホームズの側にいない?!あいつは今……」

「『怪我人』だ、と言いたいんだろ。そんな事、俺の知ったこっちゃないからな」

ヨルは当たり前の様に言った。自分から、進んで行ったのだ。どうでもいいと言えばどうでもいい。

「死ぬかもしれないんだぞ!」

「阿保。そうならない為に俺がここにいるんだ」

にべも無く返すヨルにミラは、最後に尋ねる。

「……離れられないのではないのか?」

「別にこれくらいだったら大丈夫だ」

ヨルはそう言うと、てくてくと精霊の化石の所へ歩いて行った。

「さてと、最初の質問に答えてやる」

ヨルは尻尾で青く輝く精霊の化石を器用に巻き付ける様に掴み、ミラに向かって投げた。

「こうする為だ、受け取れ!」

突然飛んで来た精霊の化石にミラは驚いたが、それをキャッチする。そして、それを何の迷いもなく医療ジンテクスに嵌めた。

「ぐっ…アアアアあああアアァァ!」

信じられない激痛が足にはしり、思わず叫ぶ。そして、叫び終えると、いつもの様に、つい先ほどまで歩けなかったのが嘘の様に、凛と立ち上がった。

「礼を言うぞ、ヨル」

「あの阿保にも言っておけ、俺をここに残したのは奴だからな」

そういわれてミラは戦っているジュード、レイア、ホームズを見る。

「つくづく私は幸せ者だよ」

ミラは剣を構える。今にもハンマーズファームはホームズに襲いかかりそうだ。

「よくも、今まで好き勝手やってくれたな」

そして、ミラはハンマーズファームに駆け出して行った。

彼らを助ける為に。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

「「ミラ!」」

ジュードとレイアは驚いた様にそして、嬉しそうに声を出した。

ミラは少し微笑むと、2人に指示を飛ばした。

「ジュード、ホームズの治療を。レイアは私と共鳴して戦うぞ」

「分かった」

「任せて」

2人はそう言うとそれぞれ、指示に従った。

 

 

「全く、無茶するよ」

ジュードはそう言うとホームズの治療を始めた。

「痛ててて、もうちょっと優しく……いえ、何でもないです」

ホームズはジュードに睨まれそう言うと、大人しくなった。

すると、何処からともなくヨルもやってきた。

「やあ、ヨル。ちゃんとやってくれたみたいだね」

「当然」

ヨルはそう言うと、ホームズの近くによった。

「おい、つり目のガキ、まだか」

「もう少し、というか、ヨル。君からもよく言っておいてよ」

ジュードは、ヨルに言った。

「無駄な事をするのは疲れるからな…というより、お前、助けられたんだから、文句をいうのはどうかと思うぞ」

「助けた事にはお礼を言いたいけど…こんな怪我したら、文句も言いたくなるよ」

ジュードとヨルはそんな風に会話をしていた。

傷はどんどん治っていき、折れた腕からも大分腫れが引いた。

「とりあえず、さっきの攻撃で受けた傷には、治療しといたけど、応急処置程度治だよ。だから、骨も治ってはいない。それに、僕らが負わせた怪我まではちょっと……」

「充分!」

しかし、 ホームズは立ち上がった。ミラの様に凛としてではないが、それでも堂々と立ち上がった。

すると、ホームズのリリアルオーブが輝き出した。ジュードのも同様だ。

「なるほど、今なら共鳴術技(リンクアーツ)が出来そうだね……、ジュード!!」

「分かった」

そう声を掛け合うと、ジュードはホームズの蹴り上げる足を踏み台にして高々と飛び上がり、そして、

「「飛天翔星駆!!」」

飛び蹴りをかました。その飛び蹴りを喰らい、ハンマーズファームは大きく仰け反った。

その隙をミラが逃す訳がない。手を胸の前で構えてすぐに詠唱を始める。

 

 

 

 

 

「天杯溢れよ、スプラッシュ!!」

 

 

 

 

 

何処からともなく水亀が現れ、ハンマーズファームに水を注ぐ。

水が弱点の身としてはたまったものではないだろう。大分応えたようだ。その証拠にグッタリとしている。

しかし…

「これで終わりな訳ないだろう」

ホームズがヨルを肩に乗せ不敵に笑っている。

「せっかく暗い所にいるんだ、調子はどうだい?」

「まずまずだな、それにここの所大人しくしていたし、力なら充分、とまではいかないが、そこそこある」

そう言うと、ヨルは黒い球体を口から出し、ホームズの足に落とした。例の如くその球体は砕け、ホームズの右足は黒い煙に包まれた。そしてそのまま足を構えて

「輪敦旋風・改!!」

思い切り回し蹴りを叩き込んだ。

「グギャアアアア!!」

ハンマーズファームは大きな悲鳴をあげ、そのまま逃げる様に地面の中に潜り混んで逃げてしまい、それっきり出てこなかった。

 

 

 

 

勝負がつくと、ジュードとレイアはミラの所に駆けつけた。ホームズは、というと、息を大きく吐き、その場に座り込んでしまった。ホームズとしてもミラに駆け寄りたいのだが残念ながら、そんな元気はないのだ。要するに無理をしたツケを今払っている状態だ。

「颯爽とピンチを助けるなら、最後までやるべきだな」

「うるさいなぁ、君は本当に」

ヨルの言葉にホームズは顔をしかめながら言う。

ヨルはふふんと、馬鹿にする様に笑っている。

「にしても、あの魔物を真っ二つにするつもりだったんだけどな…」

「仕方ないだろ…むしろ、精霊術を食った訳でもないのにあの黒い球が出せただけ上出来なんだ」

ホームズはヨルに不満をこぼすとヨルは呆れた様に言った。そんな会話をしているとジュードがやって来た。

「ミラはいいのかい?」

「もう、車椅子も置いて来たし、眠ったみたいだから大丈夫だよ」

「そりゃ良かった」

ジュードはホームズの怪我を診る。お世辞にも無事とは言えない。

「無理はしないでって、言ったつもりなんだけどね」

「無理したつもりはないけどね」

「怪我人がさらに怪我してる、これを無理してないと言うには無理があるんじゃないの?」

「……おっしゃる通りです」

ホールドアップという具合に両手を上げようとしたが、右腕が折れていたので途中でやめた。

「とりあえず怪我を治療するよ」

そう言うと、ホームズの右腕を精霊術で治療し始めた。

「よし、おわった。後は固定して、2、3日大人しくしとけば大丈夫だよ」

「へぇー、やっぱり大したものだね、精霊術」

あり合わせの布でホームズの腕を吊り下げる。

「そう言えばホームズは霊力野がないって言ってたね。やっぱり使った事ないの?」

「ないよ」

ジュードは他の傷の治療もする。

「苦労しなかった?」

「……うーん、生活では、そこまで苦労しなかったかな。母さんが、精霊術なしでも火を起こせたからね。お陰で、おれも火を起こせるよ。それに行商での稼ぎもあったし、どうってことなかったかな。」

ジュードは、ホームズの治療を終えたようで、こめかみに人差し指を当てて考えている。

「『生活では』て言ったね。だったら、人間関係では?」

リーゼマクシアでは霊力野の大きさで全てが決まると言ってもがではない。その霊力野をホームズは持っていないのだ。

人は、自分より下の者を踏みにじる事で、優越感に浸る。全てがそうでないにしても、その様な類いの人間は、いくらでもいる。ジュードが危惧したのはそこだ。

ホームズは一瞬動きを止める。その後いつもの様に人差し指を口まで、持っていき、いつものセリフを言おうとした。

「内緒。男は……」

「隠すということは、肯定として、受け取るよ」

ジュードはピシリと言った。

ホームズは観念した様に言う。

「……あんまりこういう不幸自慢みたいな事はしたくないんだけど……」

「ほとんどばれてるし、それに僕が問い詰めただけだから、不幸自慢ではないよ」

「話しても、話さなくても一緒だね。……君達も聞きたいのかい、レイア、ミラ」

ジュードが驚いて後ろを振り向くと、そこには車椅子に乗ったミラとそれを押しているレイアが居た。レイアは少し戸惑ったが、力強く頷いた。しかし、ミラは頷かず口を開いた。

「私が、聞きたい事は別にある。お前は先程、お前の母親の話をしている時こう言ったな。『独りぼっちで心か折れそうな時にお前の顔を思い出していた』と」

「大分まとめてあるけど、ま、確かに言ったね。」

ホームズがそう言うとミラはまっすぐホームズを見据えている。いや、もうむしろ睨んでいると言っても過言ではない。

「だったら聞かせろ、何故思い出したのがお前の顔だけなんだ?何故そこで、お前の父親、つまり夫の顔が出てこない?」

ミラの言葉にホームズは上目遣いというより、睨みつける様にミラを見る。そして、すぐに目を伏せるとまた、顔を上げて口を開いた。

「あんまり、話したくないなぁ。でも、話さなきゃいけないだろうね。とりあえず、ここを出ようか。いつまた何時あの魔物が来るか、分からないしね」

そう言うと、ホームズは立ち上がりジュード達にここを出るよう促した。

それから、しばらくホームズが口を開く事はなかった。

 

 

 








今回のテイルズはこちら!



《 テイルズオブイノセンスR》!!


DS版をやっていたので、vita版にも手を出しました。


OPは、DS版と新しい方と両方あります。


感想は……面白かったです。これしか、言ってないな……
(笑)
まあ、いいか。レビューて訳じゃないし(笑)

DS版で、うやむやになっていたところが、上手に補完されていたり、所々アニメーションが入ったりと、オリジナルのいい所を潰さない様になっていました。

新キャラの2人、コンウェイとキュキュ。


パティ程ではないにせよ、充分魅力的に書かれていました。

ラスボス戦はDS版をやった人には、かなり胸熱な事になっています。
ぜひプレイを!


えー、言いづらいのですが、これで自分のテイルズ歴は以上です。



ではまた、十五話で( ´ ▽ ` )ノ

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