1人と1匹   作:takoyaki

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百四十三話です。



ついに次回から新しいライダーが始まりますね。



楽しみです。




てなわけで、どうぞ


急転特攻

「………どけ!」

セルシウスは、地面に手をつき氷の柱を出現させた。

ホームズは、セルシウスから離れ氷の柱をかわす。

「ちっ!」

思わずこぼれた舌打ちに構わずセルシウスは、起き上がった。

そしてホームズに右の拳打を放つ。

その拳をホームズの顔をかすめる。

「っのぉ!」

ホームズは、掠めた拳に構わず身体捻りセルシウスに蹴りを放つ。

セルシウスは、一歩下がりかわす。

ヨルは、無言で黒球を吐き出す。

空を切った蹴りをホームズは、そのまま身体を回す。

セルシウスは、背中を見せたホームズに再び拳を放つ。

しかし、その拳が届く前にホームズの身体が再びセルシウスと向かい合った。

その右足には、いつもの黒霞がまとわりついていた。

「うぉら!」

遠心力と黒霞、そして剛招来を乗せたホームズの右足の一撃がセルシウスの身体に響き渡る。

「ぐっ……!」

動きを止めたセルシウスにホームズは、畳み掛ける。

「獅子戦哮・焔!!」

左足から現れた炎の獅子がセルシウスに襲いかかった。

「ガァアっ!」

炎に焼かれた氷の大精霊は、辛そうに声を上げる。

しかし、すぐに歯を食いしばり獅子戦哮で炎を消し飛ばす。

ホームズがその荒技に目を向いている間にセルシウスは、ホームズの左腕に回し蹴りを放つ。

「─────っ!!」

声にならない声が響き渡る。

気を強く保たないと気絶してしまうレベルだ。

腕に走る激痛に気を取られたホームズにセルシウスは、腹に向かって拳を固め殴りつけた。

しかし、拳をホームズは、防ぐ。

セルシウスの拳は、ホームズの黒霞を纏った右足の裏と接していた。

「残念」

ホームズは、ポンチョを翻しそのままセルシウスの顔の側面に踵から回し蹴りを放った。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「レインバレット!」

降り注がれる銃弾。

アルヴィンとローズは、急いでその場から離れる。

「これ以上、その技を食らうつもりはないわ」

「こっちからも行くぜ」

アルヴィンは、そう言って銃口を天井に向ける。

「レインバレット!」

「ぐっ!」

アルヴィンからの予想外の反撃にジランドは僅かに傷を負う。

ローズは、ちらりと凍らせれているレイアを見ると詠唱の体制をとる。

「速く!速く!だんだん速く!!どんどん速く!」

そう言い終わると刀を払う。

「アッチェランド・クイックネス!!」

現れたマナは、ローズを纏う。

「クイックネス?」

レイアは、ローズの詠唱を見て納得する。

(そう言えば何回か見せたなぁ………)

だが、自分のクイックネスと何かが違うのだ。

(アッチェランド?)

ローズは、右腕の刀に力を込める。

「魔神剣!」

刀は、一つしかない為、いつものように二つ斬撃は飛ばない。

案の定ジランドは、かわす。

しかし、そこをアルヴィンの魔神剣が襲いかかる。

「蒼破刃!」

地を這う剣戟をかわそう下に目を向けていたジランドの身体に空を切るローズの剣撃が襲いかかった。

「ぐぁ!!」

思わずよろめくジランド。

ローズは、そこを逃さない。

「アルヴィン!」

「おうよ!」

アルヴィンとローズは、リリアルオーブを結ぶ。

ローズは、アルヴィンの大剣の上に乗る。

「発射の準備は万端ね?」

「あぁ、飛んでけ!」

アルヴィンは、大剣を大きく振りローズを飛ばす。

「「飛天翔星駆!!」」

ローズは、そのままジランドに突っ込んだ。

ジランドは、慌てて銃身でローズの刀を防ぐ。

ローズは、鍔迫り合いをせず直ぐに間合いを取り、刀を振るう。

この近距離で刀を振るわれてはジランドは、銃を使えない。

「ちっ!セルシウス!」

ジランドからセルシウスに再び指示が飛んだ。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「来たぞ!」

「了解!」

ヨルの声にホームズは、直ぐに左脚に炎を纏う。

「紅蓮脚!!」

冷気を発生させようとしていたセルシウスは、ホームズからの炎の脚に意識を取られた。

「まだまだぁ!!」

今度は、黒霞を纏った右足で蹴りつける。

「もう一発!!」

踏み替えた炎の脚が再びセルシウスを襲う。

セルシウスは、まだホームズではなくジランドを助けようとしている。

忠実に命令を守ろうとしている。

そうジランドに従わざるを得ないのだ。

一回目を見たときは戸惑った。

二回目は思い切り蹴飛ばされた。

三回目にしてようやく、ホームズとヨルは対応した。

ヨルは、ジランドからの指示が飛ぶその瞬間をホームズに教え先手を取ったのだ。

「更に一撃!」

踏み替え黒霞の脚を頭上から振り下ろす。

前のめりには倒れるセルシウスにホームズは、左脚の用意をする。

「止めの一撃!」

ホームズは、倒れるセルシウスを蹴り上げた。

「………貴様」

セルシウスは、ギロリと睨む。

しかし、ホームズの攻撃は止めの言葉とは裏腹にまだ続く。

「だめ押しにもう一発!!」

蹴り上げた顔面に脚をぶつける。

身体を縛るジランドの援護の命はまだ続いている。

だが、ホームズはそれを許さない。

再び高く掲げられた脚がそれを告げていた。

「君の相手は、このおれだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「くそっ!役立たずが!!」

「そんな感想しか持てないのね」

ローズは、刀を振るう。

先ほどからローズの刀は、止まることなく流れるように振るわれ続けていた。

ジランドは、銃身で受け流している。

ローズの刀はジランドには届かない。

(まぁ、所詮女の力。大したことはない)

「使える腕も減って、手数も減ったしなァ!!」

ジランドの込めた力にローズは、思わずよろめく。

よろめいたローズの顔面をジランドは、銃身で殴りつけた。

「ぐっ!」

思わず目を閉じたローズに銃口を合わせる。

「させるか!!」

アルヴィンの大剣がジランドには襲いかかる。

ジランドは、一歩引いてかわすと同時に、ボルティックチェイサー放った。

アルヴィンは、僅かに身体そらしてかわす。

ローズは、再び刀を振るう。

腕を切るとるように。

ジランドはそれを紙一重でかわす。

そんなジランドには構わずローズは先ほどと同じように剣を振るう。

再び、ジランドはローズの攻撃を銃身で受ける展開になった。

アルヴィンは、ローズに気を取られているジランドを背後から斬りかかる。

「調子に乗るなよ」

ジランドは、懐から金色の銃を引っ張り出す。

アルヴィンは、動きを止める。

「そいつは!?」

「その通り」

言葉と共に放たれた銃弾は、アルヴィンの銃を弾き飛ばした。

「………………なるほどなァ」

ジランドは、ローズを睨みつける。

「貴様のせいで弾がそれたか……」

鍔迫り合いをしているローズをジランドは、忌々しげに睨むと今度は、ローズの額にその銃を突きつける。

「──────っ!!」

ローズは、瞬時にかわし、距離を取った。

その反射にジランドは、思わず目を向く。

「…………驚いたな」

「それは、こっちのセリフよ。まさか銃を二つ持ってるなんて思わなかったわ」

「あぁ、これか?」

そう言ってローズに銃口を定める。

この距離では下手に動けない。

アルヴィンは、悔しそうにそれを睨みつける。

「それは、父さんのものだ。どうしてお前が………」

「さて、なんでだと思う?」

意地悪く笑うジランドにアルヴィンは、ギリと歯軋りをする。

「………貴方、本当に最低ね」

ローズは、刀に力を握る手に力を込める。

「怖い顔だな。だが、それだけだ」

そう言うとジランドは、再び撃鉄を下ろす。

「さよならだ、お嬢さん?」

ジランドは、引き鉄を引いた。

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「何?」

もう何度目かわからないかかと落としをセルシウスは、受け止めた。

「マスターの有利になったようだ」

そう言ってホームズの腹に今度こそ拳を打ち込む。

「──────ッカハ!!」

ホームズは、地面を転がる。

背中を丸めてえづくホームズをセルシウスは掴み上げると蹴りを放つ。

再びホームズは、転がった。

「先ほどは、やりたい放題やってくれたな」

ホームズは、飛びそうになる意識を無理やり繋ぎとめる。

そんな努力をするホームズに再び蹴り飛ばす。

源霊匣(オリジン)という道具になったとは言え、私は大精霊だ」

ホームズは、胃の中のものを吐き出す。

「なめるなよ、人間」

氷の大精霊の名に相応しい絶対零度の声音で睨みつける。

ホームズは、口元を吹き、ニヤリと笑う。

セルシウスは、再び蹴り飛ばす。

壁まで弾かれたホームズ。

ホームズは、壁伝いに身体を起こす。

「君こそ、おれ達を舐めるんじゃあない」

「………そうか」

セルシウスは、そう言うとホームズに向かって全体重をのせ拳を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「どういうことだ!?」

ジランドは、不思議そうに目の前の光景を見ている。

銃に撃たれたはずのローズが、普通に立っているのだ。

「くそ!」

もう一度放つが、ローズには当たらない。

先ほどから同じ場所にいるというのに、何故か当たらない。

「どういうことだ!?」

「忘れたのかしら?それとも知らないのかしら?はたまた、その両方かしら?」

ローズは、納刀する。

「私には、クイックネスがかかっているのよ。刀を使えば使うほど速くだんだん速くなるタイプのがね?」

「まさか?!」

「気づかなかったの?貴方の服、綻びだらけよ?」

ジランドは、そこで驚いて自分の服を見る。

ローズの言う通りジランドの服はボロボロだった。

防げていたつもりだった。

大したスピードではないと、たかを括っていた。

しかし、それは自分が気付いていなかっただけなのだ。

徐々に上がっていったスピードに全く気付いていなかったのだ。

ローズは、屈んで抜刀術の構えを取る。

「蹴りをつけるわ。最高速度よ、かわせるよう祈ってなさい」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「なに?!」

セルシウスは、驚愕の表情でホームズを見ていた。

ホームズは、セルシウスの拳を動かないはずの左腕で防いだのだ。

拳をしっかりと盾は受け止めていた。

「どういうことだ!?左腕は、砕けて動かないはずじゃ……」

「だよね。骨が砕けたら、動かないそんなの常識(・・)だよねぇ」

「……………まさか」

「そのまさかさ」

ホームズの左腕には、黒霞が纏わり付いていた。

バージョンは、非常識だ。

今のホームズの左腕は、骨が砕けたら動けないと言う常識が効かない。

下じゃないところを下にする力とばかり思っていた。

しかし、もしかしてというホームズの思いつきで今に至るのだ。

「出来るかどうか怪しかったけど、やってみるもんだよねぇ………」

そう言いつつホームズは、黒霞を纏った右腕でセルシウスの顔面を掴む。

込められる力に手加減の余地はなかった。

徐々にセルシウスを空に持ち上げる。

みしみしと響く頭蓋の音が聞こえる。

ホームズは、獲物を前にニヤリと凶悪に笑う。

 

 

 

 

 

「行くゼ大精霊。とくと味わいたまえ」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

ローズは、納刀したまま一気に走りこみ抜刀術にそのスピードを載せようとしていた。

しかし、下手に回り道をしてしまえばそれだけで、スピードが落ちてしまう。

(なんて、考えているだろうな)

ジランドは、向かってくるローズに引き鉄を引こうと構えていた。

そう、このまま行けばローズは、自分から銃弾に突っ込んでいく羽目になる。

それが分かっているからこそ、ジランドは、笑っていられるのだ。

ローズは、そんなジランドの思惑に構わず、踏み込んだ。

(来た!)

ジランドは、自分の銃弾の引き鉄を引く。

しかし、銃弾が打ち出せれる様子はない。不思議に思って、銃を見るとそこには、銃がなかった。

いや、もっと正確に言うなら、ジランドの腕自体がなかった。

代わりにあったのはアルヴィンの大剣だ。

普段使わない腕で降った大剣だったのでジランド右腕を切るのに精一杯だった。

「やれ、ローズ」

アルヴィンは、肩を押さえながら、ニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒髪たなびかせ、距離を詰めるローズの白刃が鞘から銀色に輝き現れた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおお!!!」

ホームズは、セルシウスの顔面を掴んだまま反対の壁まで走っていた。

セルシウスは、抵抗しようとするがこめかみを握る握力でそれどころではない。

そして、そのまま壁に叩きつけた。

壁には、ヒビが入る。それがどれだけの力で叩きつけられたのか、はっきりと告げていた。

ホームズは、壁に叩きつけたセルシウスから、徐々に距離を置く。

だが、戦いは、まだ終わっていない。

セルシウスの目はまだ死んでいない。

「だろうと思ったよ」

ホームズは、そう言うと右脚の黒霞を消し、炎を纏う。

「ヨル」

「ま、これが本来の使い方だよな?」

ヨルは、そう言いながら黒球を吐き出す。

落とされた黒球は、ホームズの両脚で弾け黒霞となってまとわりつく。

 

 

 

 

そして、ホームズは、助走をつけてセルシウスに向かって落ちていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「ハァアアァァァッ!!」

鞘を走る白刃は、そのままローズのスピードを手に入れ、最高速度のままジランドを捉えた。

かわすことなど叶うはずがない。

鞘から現れた白刃は、そのままジランドを捉えた、斬り伏せた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

真っ直ぐにホームズは、セルシウスに向かっていく。

(盾を………)

セルシウスは、氷の盾を出す。

しかし、

「俺の事、忘れてたろ?」

ヨルは、生首になるとセルシウスの出した氷の盾を飲み込んだ。

もはやホームズの自由落下を防ぐすべはない。

重力と言う強い力を得たホームズの炎の足。

セルシウスは、避けようとする。

しかし、ホームズは、そんな暇を与えない。

「ダァアアアアァラッッ!!!」

「っづぁ!!」

落下音とともに身を駆け抜ける灼熱にセルシウスは、耐える事が出来ない。

ホームズの脚から黒霞が消え、ホームズが床に降りるとセルシウスは、ゆっくりと倒れていった。

 

 

 

 

 

 

それと同時にミラ達の氷が弾け飛んだ。

 

 

 








決着です。



秘奥義を使おうか迷いましたが、この泥臭い一撃ということで。



ではまた百四十四話で( ´ ▽ ` )ノ

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