1人と1匹   作:takoyaki

151 / 242
百五十話です


てなわけで、間違えたシリーズです。
こっちが、百五十話です。
三連休突然やってきた友人に連れて行かれました。
色々やろうと思っていたことは全てパーです。
まあ、楽しかったですけどね




てなわけでどうぞ


可愛さ余って憎悪百倍

「ローズ、食べるかい?」

食事を持ってきたホームズが尋ねるが、ローズは相変わらず返事をしない。

「あのさ、一つ提案があるんだけど」

ホームズの言葉にローズは、反応しない。

ヨルは、そんなローズを見て思わず舌打ちをする。

「おい、貴様いつまでそうしてるつもりだ」

ヨルは心底苛立ったように言葉を告げた。

ヨルのその言葉にローズは、初めて反応示した。

「レイアもホームズも言わないようだから俺が言ってやる」

ホームズは、止めようと手を伸ばすが、ヨルはするりとかわしクローゼットの上に飛び乗る。

「そこで膝を抱えてればマーロウは、生き返るのか?」

「ヨル」

「飯を食わなければ、オンナが生き返るのか?」

「やめたまえ」

「家族が生き返るか?」

「ヨル!!」

ホームズは、クローゼットの上にいるヨルを睨みつける。

「親しい人や家族、近しい人が死んだら悲しいのは、当たり前だ。それを責める資格なんてない」

強い口調で発せられるホームズの言葉をヨルは、鼻で笑うと肩に飛び乗る。

「俺には縁のない感情だ」

ヨルはニヤリと笑っている。

ホームズは、そんなヨルを見て深くため息を吐く。

そんな中ローズが、ベッドから立ち上がった。

「………貴方になにが分かるのよ、ホームズ」

「え?」

「『親しい人や家族(・・)が死んだら悲しいのが当たり前』だって?」

俯いていたローズは、キッと顔を上げる。

「貴方に一体何が分かるって言うのよ!!ホームズ!!」

怒鳴りつけられ、ホームズは思わず目を見開く。

ずっと溜まっていた感情がローズの口から止まることなく溢れ出す。

「誰も言わないようだから言ってあげるわ!ミラがあの時、死んだ時これで両親の故郷に行けると思わなかった?」

「……………」

「そんな貴方が近しい人が死んだら悲しいのが当たり前とか言うんだ?」

ローズは、ハハハと乾いた笑い声を上げる。

「お笑い草ね!一番近しい人と死に別れたこともないくせに」

「おい、小ムスメ」

ヨルはローズが何を言おうとしているか予想がついていた。

だが、ローズは止まらない。

「生まれた時から父親はいなかったですって!!バカ言わないで!貴方には、母親が、ルイーズさんがいるじゃない!!そんな貴方が知ったような口をきかないでよ!!」

「ローズッ!!」

レイアは、扉を蹴破らんばかりの勢いで部屋に入ってきた。

レイアは、ずっと部屋の外で聞いていたのだ。

ヨルを除けばこのパーティの中で唯一ホームズの母親のことを知っているレイアは、我慢できなかった。

友人のそんな顔を見たくはない。

レイアは、手を振り上げてローズとの距離詰めていく。

「おーっと」

そんな張り詰めた空気とは不釣り合いなホームズの間抜けな声が響く。

「包帯が解けちまったなぁ………レイア」

ホームズは、そう言って腕の包帯をひらひらと振る。

「巻き直してくれないかい?」

「ホームズ!」

「あぁ、ダメだダメだ。腕痛い。超痛い。昨日のあれだ、なんかこう、何かのせいかも………」

そんなしどろもどろに声を上げながらそんなことを言うホームズを見てレイアは、俯いてホームズの腕を引いて部屋の外へと歩みを進めた。

ホームズは、振り返りざまにローズの方を見る。

「羽織綺麗にしといたから、元気になったら着てね」

 

 

 

 

 

そう言うと扉は静かに閉じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「ちょ………ちょっとレイア!」

強引に腕を引かれ座らされたホームズは、戸惑った声を上げる。

「…………腕、出して」

レイアは、目を伏せながらホームズに腕を出すよう促す。

差し出された包帯の解けた腕をレイアは、器用に巻いていく。

「…………んで」

「ん?」

「なんで、あそこで自分のお母さんもいないって言わなかったの?」

「まぁ、理由は色々かなぁ」

そう言うホームズは、面倒くさそうて話すつもりがないように見えた。

「一つずつ話してよ。聞くから」

その真剣な瞳にホームズは、諦めたようにため息を一つ吐く。

「あんなことを言った後におれの母親も死んでるなんて言ってしまえば、ローズは、自分の事を責めちゃうだろう?」

「だからって………」

「それに、もし、言い返して喧嘩に発展した時、それを仲裁するのは誰だろうね?」

ジュードに仲裁をするなど不可能だ。

そして、ヨルは論外だ。

そうなれば、残るのは、レイアだけだ。

ホームズの包帯を巻く手が、震える。

レイアは、下唇を噛む。

「おいおい、そんな顔しないでおくれよ。おれは、君にそんな顔させたくないゼ」

「わたしだって、ホームズにそんな顔させたくないよ」

ホームズは、いつもの胡散臭い笑みを浮かべていた。

だが、いつもと違うのは、そこに今にも泣きそうな感情が見え隠れしていることだ。

「わたしのために、ローズのためにってそればっか」

レイアは、震える声で続ける。

「それで結局自分が傷ついて………見てらんないよ………」

ホームズは、決まり悪そうに目をそらす。

「もっと自分の事、大事にしなよ」

いつの間にかホームズの包帯には、涙のシミができていた。

ホームズは、本当に困った顔をする。

ヨルは、そんなホームズに興味を示さない。

散々注意しろと言われ続けていたのだ。

それを全て無視したり、誤魔化してきたのだ。

困るならここでしっかり困ってもらわないといずれ本当に取り返しのつかない事が起きる。

ヨルは、そう思いながら、ふと窓の外に目をやる。

「………………おい」

二人の会話に興味を示していなかったヨルが鋭く低く声を上げた。

「なに?」

「あそこにチャラ男がいるぞ」

「え?」

二人は驚いて振り向くと、窓の外は、遠く分かりづらいが確かにアルヴィンがいた。

そして、そのすぐ近くにはアルクノアも数人いる。

「どういうこと……?」

戸惑う二人を他所にアルヴィンは、銃弾を放った。

放たれた銃弾は、炊事場の鍋をひっくり返し、スープをぶちまける。

思わず手で防ぐ。

「いたぞ!!やつらだ!!」

アルクノアたちはホームズたちをぐるっと囲み銃を向けた。

ホームズは、巻かれた包帯を確認すると彼らを睨みつける。

レイアは、アルクノアを確認しながら棍を持つ。

「どうして、アルヴィンと?」

「たまたま、利害が一致したのだ!!ここで貴様らを殺せるなら、裏切り者とも手を組んでやる!」

その鬼気迫る表情に思わずレイアは、後ずさる。

「あぁ。貴様らに償ってもらうぞ!」

ホームズは、冷めた目でそんな面々を見る。

「知ってるかい。そういうのを責任転嫁というんだ」

ホームズは、その言葉と同時に床を強く踏み込んだ。

「守護方陣!!」

光の陣が現れ彼らを拘束する。

「レイア!今だ!」

「うん!!」

レイアは、テーブルをアルクノアにぶつけ、怯んだ隙に彼らをなぎ倒していく。

「これで………ラスト!!」

レイアは、最後の一人に棍を振り下ろした。

アルクノア達は暫く目をさます様子はない。

二人はそれを確認すると部屋から飛び出る。

「ホームズ!ローズの元へ」

「分かった!ジュードは、任せたよ!!」

二人は急いでそれぞれの部屋へと向かった。

ホームズは、急いでローズの部屋の扉に手をかける。

「ローズ!!アルクノアとアルヴィンが……………」

部屋を開けた途端むわりとむせ返るような鉄の匂い。

そして、先ほどまではなかった、辺りに塗りつけられたような赤い塗料のような液体。

床には動かなくなったアルクノア達が並んでいた。

「えぇ。アルクノアが突然襲撃してきから、返り討ちにしたわ」

ローズは、背を向けたまま淡々とどうでも良さそうに続ける。

「私分かったの」

そう言うとまだ息のあるアルクノアに刀を突き立てる。

「ぐっ………………がぁ……………」

「こいつらは、自分のしでかしたことの意味を分かっていない」

刀を突き立てられたアルクノアが無理矢理放った銃弾は、ローズの髪留めの紐をかすって見当外れの方向に飛んで行った。

髪留め紐が地面に落ち、ローズの黒髪がバサリと広がる。

「ローズ…………?」

薄っすら寒気を感じるほどの無感情の声にホームズは、戸惑いを隠せない。

「こいつら、一体何のために生きてるのかしら?」

「………ローズ?なにを言っているんだい?」

ホームズは、そう言いながら自分の声が震えていることに気付いていた。

「こいつらのせいで、私の家族は死に、マーロウさんは死に、ミラは死んだ」

無感情でうわ言のように続けるローズの姿にホームズの肌が粟立つ。

今、目の前にいる人間は、ヤバイと。

関わってはならないと、直感と経験が告げていた。

今まで、溜めていた感情が最悪の形でローズから溢れ出ている。

「私決めたわ」

そう言ってローズは、腰にかかるほど長い黒髪をゆっくりと広げながら振り返る。

羽織は返り血で元の色をが分からない。

その何の感情も宿らない黒く暗い瞳にホームズは、冷や汗が流れ出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「エレンピオス人は、全て殺す。一人の例外もなく」

 

 

 

 

 

 

 

ホームズは、ローズから発せられる殺気に思わず足を一歩下げる。

いつものように構えようとしての行動ではない。

純粋に構えなくてはならないと本能が告げていた。

距離を取れと本能が告げている。

命が刈り取られそうになる恐怖、などという生易しいものではない。

何だか分からない、得体の知れない、根源的恐怖。

「次は貴方よ。ホームズ・ヴォルマーノ」

血塗られた二刀は、ホームズに向かって振るわれた。

 

 

 

 

 

 







では、また百五十一話で

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。