1人と1匹   作:takoyaki

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百五十四話です。



なのに其の弐というのも変な感じですね。



それはともかくベルセリアのpv第2弾が出ましたね!

紫色の文字とか雰囲気とかやけに年齢の低い相手役とかが、X2を彷彿とさせますね!


主人公、幸せになってくれるよね?



てなわけで、どうぞ


其の弐

「………この辺り一面に広がる、青い花は、わたしたちの村のメインの産業ですわ」

そう言って、畦に生えている青い花をむしってルイーズに渡す。

「見てよし、嗅いでよし、食べてよし、染め物にもよしとまさに一石二鳥を超えた究極の花ですわ。まあ、その分肥料も必要なのですが……」

ルイーズは、口に放り込む。

「なるほど、おいしいね」

「こんな鮮やかに青いのに食えるんだねぇ……」

ホームズは、ルイーズが花を食べている様子を興味深そうに見ている。

マープルは、首をかしげる。

「どういう意味ですの?」

「ん、いやね、青い色の食べ物って普通はないだろう?」

マープルは、その言葉を聞くと顎に指を当て考え込む。

「言われてみればそうですわね」

「だろう?だから、珍しいなって思って」

「まぁ、喋る猫ほどでは、ありませんわ」

「はははは…………」

ホームズの口から乾いた笑みがこぼれる。

「おーい!マープルちゃん!」

そんな会話をしていると何処からともなく女の子の声が聞こえる。

「まぁ!ユーフォさん」

ユーフォと呼ばれた少女は、弟の手をつなぎながらマープルの方に向かって走ってきた。

ボブカットの少女と、そして、自然に放置したような弟。

そんな二人を見てマープルは、少し時間を空けてから口を開く。

「お散歩ですか?」

「そうだよ。それよりマープルちゃん、後ろの二人は誰?」

興味深々というふうに聞いてくる。

ルイーズが手を挙げる。

「私は、この街に来た行商人のルイーズ・ヴォルマーノ。そして、この隣にいるタレ目の奴が、私の息子、ホームズ・ヴォルマーノだ」

「どうも。そして、僕の肩にいる黒猫がヨルだ」

そんなホームズを冷めた目でマープルは、見ていた。

「自分の紹介も出来ないなんて、本当にわたしより年上ですか?」

「……………いやに突っかかってくるねぇ………僕に恨みでもあるのかい?」

「特に恨みも興味もありませんわ。単純な感想ですの」

「わぁーかわいくない」

そう言って二人の会話を会話を面白そうに笑いながらユーフォは見ていた。

ホームズは、そんなユーフォを指差す。

突然のことにユーフォは、目を白黒させる。

「君も少しは可愛気を身につけたまえ」

「わたしは可愛くなくたって、構いませんわ!」

心外だとばかりにマープルは、胸を誇らし気に張る。

「わたしは、可愛いではなく、美しいのですから!」

その堂々とした物言いにホームズは、頬が引きつっていくのを感じていた。

(すげぇ、変な子だなぁ………)

ルイーズは、そんなホームズに構わずマープルとユーフォの方を向く。

「ところでこの町の広場って何処だい?そこで、商売をやる許可をもらったんだけど」

「お任せ下さい、案内いたしますわ」

マープルが意気揚々と前を歩いてルイーズを案内する。

「ひろばにいくの?」

ユーフォの弟は、怯えながらルイーズに尋ねる。

そんな弟を見てユーフォは、呆れたようにため息を吐くとルイーズ達に苦笑いを浮かべながら説明をする。

「……なんでも、夜に広場の近くを通りかかったらすすり泣くような声が聞こえたんだって、それからこわがっちゃってこわがっちゃって………」

ホームズは、それを聞くと膝を抱えて、ユーフォの弟と目線を合わせる。

「安心したまえ。僕の母さんが来れば、幽霊の方がかわいそうだよ」

「どういう意味だい?ホームズ」

「やだなぁ。頼もしいって言ってるんだよ」

ホームズとルイーズは、薄ら笑いを浮かべながらメンチを斬り合っていた。

「お二人とも?いかないんですの?」

ホームズもそれについて行こうするが、ルイーズに止められる。

「君はこれを配ってきたまえ」

そう言って紙をどさりと渡した。

その量にホームズの目が死んでいく。

「………………これは?」

「宣伝のチラシ。いいから、とっととそれを各家庭に配ってきたまえ」

「まさか、これを配り終えるまで………」

「おっ、察しがいいねぇ。君の予想通りだよ」

そう言ってルイーズは、親指を下に向ける。

「配り終えるまでかえってくるんじゃないよ」

とてもいい笑顔で。

ホームズの頬が引きつっていく。

「それじゃあ、行こっか、マープルちゃん」

「はい」

二人はスタスタとホームズのまえを歩いて行った。

取り残されたホームズとヨル、そして、ユーフォとその弟。

「あの………チラシもらいましょうか?」

「あ、そうしてくれる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「少年、おかあさんいるかな?」

「おねえちゃんならいるよ」

「………いくつ?」

「十歳」

「これ渡しとくからおかあさんにでも読んでもらっといて」

「うん。おねえちゃんに渡しとく」

「君、人の話全く聞いてないね」

 

 

 

 

 

 

「………えーっと………とりあえずチラシです」

「あ、どうもです」

「背中で寝ている子は妹さん?」

「えぇ。父も母も外出てることが多いんで、俺が面倒みてるんです」

「君、いくつ?」

「十二歳です」

「…………………(僕より大人っぽい)」

 

 

 

 

 

 

「わぁ!美人ですね!はいチラシどうぞ」

「…………は?」

「すいません。調子に乗りました。チラシをどうぞ。明日から商品を売るんで是非来てください」

「ふーん………まあ、気が向いたら弟といくかな」

「やった!」

「あんたがいなかったら絶対行く」

「…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは。お父さんかおかあさんいる?」

「はい!わたしだよ」

「いや、君じゃなくて……」

「今はわたしがお父さんなの」

「あぁ、おままごと中か…………って、君がお父さん?お母さんじゃなくて?」

「うん」

「お母さんは、誰が?」

「お兄ちゃん」

「…………………」

「いつもわたしがじゃんけんで勝っちゃうんだー」

「そっか………じゃあ、チラシ渡しとくからみんなで来てね」

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなキャラ濃すぎだろ…………」

ホームズは、土手に腰を下ろしていた。

「弟がしっかりしてればお姉ちゃんがぶっとんでて、妹がぶっ飛んでれば、お兄ちゃんが不幸で………」

今日の疲れを吐き出すようにふうとため息を吐く。

「なぁ、ホームズ」

「なんだい?」

「お前、全部の家回ったよな?」

「回ったよ」

「だったらなんで、そこにそんなにチラシがあるんだ?」

ヨルが尻尾を差す先には四分の一程度のチラシが積み上がっていた。

途中からホームズもおかしいなとは思い始めていたのだが、結局予想通り、配りきれなかったのだ。

「……………あのクソ親。ハナっからこのつもりだったなぁ………」

ホームズは、はぁ、とため息と共に残ったチラシを叩く。

「……………さてさて、どうしたもんか……」

ホームズは、そう言って青い花畑を眺める。

風に揺れるたびに花のいい香りが鼻を抜ける。

そんな青い花畑の中にポツンと立つ教会がホームズの目に止まる。

 

 

 

 

─────『ここから見えるあの教会に皆さんいるんですの』─────

 

 

 

 

 

「そうだ!」

ホームズは、チラシを持つと勢いよく立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「改めて見るとデカイなぁ…………」

ホームズの目の前にそびえる教会。

確かに驚くほど大きかった。

歴史を感じさせる、その石造りの建物にホームズは、圧倒されていた。

「いいから、入れ阿呆」

ヨルに促されホームズは、扉を開ける。

がらんと広がる礼拝堂。

長椅子が両脇にあり、入り口から石像まで真っ直ぐに道ができていた。

そこには、人影もなく、ホームズの足音だけが響いていた。

「なんか、妙な気分だな」

「まあ、化け物(きみ)は、そうだよねぇ」

化け物が神の領域に入っているのだ。

妙な気分にもなるというものだ。

「ふむ。さっきから誰も見ないねぇ………」

ホームズは、そう言うと一番前の長椅子に腰をかける。

巨大な石像が目の前にあり、嫌でもそれが目に入る。

ホームズは、それを見て首を傾げる。

「これ、精霊なのかねぇ……」

「いいえ。これは、神ですよ」

ドアがバタンと閉まる音とともに男の声が聞こえてきた。

ホームズは、背もたれに腕を乗せながら振り返る。

他人がいるところで声を上げるわけにはいかないのだ。

こざっぱりとした金髪に碧い瞳。

そして黒い修道服を着ている。

その出で立ちのせいで年齢不詳と言った感じだ。

男はゆっくりと歩みを進めていき、ホームズとは道を挟んだ向かい側に座る。

「まあ、精霊と言ってもいいんですが、なんとなく他と一緒だとつまらないので神と呼んでいるんです」

にっこりと笑って答える男にホームズは、目をパチクリとさせる。

そんなホームズを見て、ポンと思い出したように手を叩く。

「あぁ。自己紹介がまだでしたね。ボクはティーアと言います」

「へぇ………じゃあ、あなたがマープルさんが言っていた………」

ティーアは、笑顔で頷く。

「えぇ。彼女たちのまぁ、養父もやっています」

ティーアは、石像を眺めながら言葉を続ける。

「ところで、あなたは?」

ティーアの言葉でホームズは、ようやく自分がここに何しに来たかを思い出した。

「あぁ。僕はホームズ・ヴォルマーノです。ここには、僕達の宣伝に来たんです」

そう言ってチラシを見せる。

ティーアは、渡されたチラシを興味深そうに読むとホームズを見る。

「行商人の方でしたか。助かります。この村は、ご覧の通りの場所なので、行商人が来るというのは、一つの娯楽なんですよ」

「へぇ、そう言ってもらえると嬉しいですねぇ」

「どうです?ついでにこの神に入信しませんか?」

「えぇ〜………なんか戒律とか面倒くさそうだからやだなぁ………」

露骨に嫌そうな顔をするホームズにティーアは、面白そうに口に手を当てて笑う。

「まあ、戒律と言っても村の約束の三つと変わりありませんよ。早起きをすること。食べ過ぎないこと、あとは一つは……」

そういうといたずらっぽくニヤリと笑う。

「入信してからのお楽しみという奴です」

「いや、入信しませんよ……というか、村の約束と一緒なんですね」

ホームズは、ため息と共に残りのチラシをティーアに渡す。

「これは?」

「ここの子供達の遊び道具にでもしてください」

「ていよく、ゴミを押し付けましたね?」

「別にここに置いておいて、やってくる村人に持って行かせてもいいです」

「なるほど、宣伝ですか」

「そう言うことです」

そう言ってホームズは伸びをする。

ようやくチラシ配り地獄から解放されたのだ。

ホームズは、椅子に深く腰掛ける。

「ティーアさん、マナの欠片振り分けました!」

教会の奥の扉をあけ、少年が笑顔で袋を持ってやってきた。

「こらこら、あまり騒いではいけませんよ」

にこにこと笑いながら静かに諭されると少年は、ホームズの姿に気づきぺこりと頭をさげる。

ホームズもその後に頭を下げながら首を傾げる。

「マナの欠片?」

「ええ。これのことです」

ティーアは、そう言って袋から青白い石を取り出す。

「へぇ。綺麗ですね」

ホームズの素直な感想にティーアは、微笑む。

「えぇ。あまり知られていませんが、この村のもう一つの産業です」

「あれ?青い花だけじゃないんです?」

ティーアは、石を光に透かすように見る。

「これも影ながら支えているんですよ」

「…………どこで取れるんです?」

興味津々に尋ねるホームズにティーアは、微笑んで首を振る。

「それは、内緒ですよ。ボク達の生命線ですからね」

「ですよねぇ」

そんな二人を見ていた少年は、ティーアの方を見る。

「ティーアさん、この人だれ?」

「ホームズさんと言って、この村に商品を売りに来てくださった方だよ」

ホームズがひらひらと手を振ると少年は、不思議そうにホームズを見る。

「一人で来たの?」

「いや、母さんと一緒だよ」

少年は、ホームズの言葉を聞き少しだけ目を伏せティーアの袖をつかむ。

「……………お父さんは?」

ホームズは、少しだけどう答えようか悩むとニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。

「なら、マナの欠片どこで取れるか教えてくれないかい?」

ホームズの言葉に少年は、心底困ったような顔をする。

「知らない。ティーアさん、教えてくれないんだもの」

「えぇ。あなたのような方がいますからね、ホームズさん」

ティーアの静かな言葉にホームズは、肩をすくめる。

「じゃあ、仕方ないね」

ホームズは、そう言うとムンと力を込めて立ち上がる。

「それじゃあ、後よろしくお願いします」

「ホームズさん、ボクから最後にいいですか?」

そんなホームズをティーアが後ろから呼び止める。

「なんです?」

ティーアは、目の前の石像を見ながら更に言葉を繋ぐ。

「神様っていると思いますか?」

ホームズは、そんな質問をするティーアに苦笑いを浮かべる。

「最後にしては、唐突だねぇ……」

そう言ってホームズは、少し考える素振りを見せると呆れたように息を吐く。

「というか、あなたが、それを言っちゃあいけないでしょう?」

ホームズからの返しにティーアは、困ったように笑う。

「それもそうですね。すいません、今の質問は、忘れてください」

ホームズは、静かに頷くと教会を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「あれ、帰ってきてるじゃないか」

太陽が沈み、代わりに月と星が空を照らす頃、ホームズ達は宿屋に戻った。

そんなホームズ達に開口一番にルイーズは、そう言った。

「文句を言われる筋合いはないよ。ちゃんとチラシは、配ってきたんだから」

「おかしいねぇ、そんなはずはないんだけどなぁ〜」

「ものはやりようだよ」

ホームズとルイーズは、そんな薄ら寒い会話を繰り広げていた。

その不毛な会話をヨルはため息で吹き飛ばす。

「それより飯は?」

「もう終わった」

あまりにどうでも良さそうに言うのでヨルのこめかみが少し動く。

「まあ、もう一回食べれるみたいだからそれを楽しみにしたら?」

そんな中ホームズは、思い出したように手を叩く。

「そう言えば、あの子は?」

「あの子?あぁ、マープルちゃんか。彼女ならその辺で別れてきたよ」

ホームズは、それを聞くとはぁ、とため息を吐いた。

「あの子とは、関わりたくないなぁ………」

ホームズはため息を吐きながら椅子に座る。

ルイーズは、不思議そうに首をかしげる。

「何故だい?あの子、賢くていい子だよ」

「えぇー…………」

ホームズは、げんなりという風な顔をする。

「自分の置かれた状況がわかるくらいは、賢い子だよ、あの子は」

ルイーズは、ふっと息を吐くように溢した。

ホームズは、その何気ない一言を聞くとふむと頷き少し考え込む。

思い出すのは、今日の出来事だ。

実はいくつか目につくことがあったのだ。

今までスルーしていたが、ルイーズのその意味深な物言いにホームズの中で可能性が生まれていた。

ヨルは、そんなホームズに構わず鼻を動かす。

「ふむ。調理が始まったか」

ルイーズは、椅子に深く腰掛ける。

「どうする?ご飯までもう少し時間があるみたいだけど?」

ルイーズのその見透かしたもの言いにホームズは、肩をすくめる。

「ちょっと、散歩してくるよ」

「そう。まあ、夕飯は、とっておくよ」

ホームズは、ルイーズに背中を見せるとひらひらと手を振って宿屋から出て行った。

「さて、ヨル。晩ご飯前に運動でもしておいで」

ルイーズの言葉にヨルは忌々しそうに舌打ちをすると姿を消した。

ルイーズは、ニヤニヤしながら、そして、少しだけ悲しそうにホームズの出て行った扉を見る。

 

 

 

 

「どうするのかねぇ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 






まだまだ続くよ!




では、また百五十五話で( ´ ▽ ` )ノ

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