1人と1匹   作:takoyaki

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百七十二話です



今回から新章です!



そして、少し短いです


てなわけで、どうぞ


再会
名は猫を表す


「さて、まあ、色々置いといて、決めようと思うんだ」

「何をだ?」

「君の名前」

君といわれた黒い猫は、不機嫌そうに尻尾を振る。

「化け物でいいだろ」

「良いわけないだろう?自分の飼い猫の事、化け物なんて呼ぶ行商人から商品を買いたいなんて誰も思わないよ」

「猫じゃないんだが…………」

黒い猫は不満そうに尻尾を振る。

そんな黒い猫に構わず早速名前を出す。

「『クロ』とかどうだい?」

「却下。マジで猫の名前みたいだな」

即答で名前を取り下げる。

「えぇ………結構、自信あったんだけどなぁ……」

そう言いながら紙に新たな名前の候補を書く。

「『クロネコ』」

「却下だ!!猫じゃないっつてんだろ!!」

全力で突っ込んだ後、じっとりとした目を向ける。

「というか、お前ネーミングセンスないな」

「シンプルでいいと思ったんだけどなぁ………」

「シンプルの意味分かってんのか?」

黒い猫の言葉を右から左に聞き流し更にスケッチブックに名前を書き込んでいく。

「じゃあ、これ」

スケッチブックを机の上に出す。

「『暗黒帝・ブラック・黒猫王三世』」

「くどい!!」

黒い猫の爪が伸びスケッチブックを切り裂く。

「あぁ………スケッチブックが……」

「くどい!!なんだ『暗黒帝・ブラック・黒猫王三世』って!どこまで真っ黒なんだよ!後、『帝』なのか、『王』なのかはっきりしろよ!」

「分かった。じゃあ、間をとって『暗黒()武羅津駆(ぶらっく)』で」

「お前、絶対ふざけてるだろ!!」

黒猫の突っ込みなど素知らぬ顔で次のスケッチブックを取り出す。

「おい、もういい、化け物でいいからこれ以上俺に体力使わせんな」

「まあ、待ちたまえ。ネーミングセンスがないと思われるのはシャクだ」

「事実ないだろ!頼むから身の丈にあった事をやってくれ」

「何騒いでいるんだい?隣の部屋まできこえたけど」

スケッチブックをパタンと閉じると、その声のした方を向く。

「いいところに来た!ホームズ!聞いておくれよ。この黒猫に名前を付けてあげようとしたんだけど、どれもこれも断るんだよ」

「母さん、ネーミングセンスないからなぁ………」

「君も人のこと言えないと思うけどね」

ホームズは、ムッとしながらも頭をひねる。

「うーん………」

それから、ポンと手を叩く。

「そうだ!『ヨル』とかどう?黒いし、目は星みたいに金色だしぴったりだと思うんだけど」

黒猫は、少し目を丸くした後、考え込む。

「ふむ…………」

そんな黒猫を見ながら、ルイーズはスケッチブックにスラスラと書き進める。

「やっぱり、不満だよね。だったら、私の案がいいと思うんだ」

そう言ってスケッチブックをドンと置く。

「『ワトソン』」

「ヨルにしよう」

黒猫は、即答で遮った。

ホームズも後ろでうんうんと頷いている。

対するルイーズは、不満そうだ。

「えぇー………息子の相棒になるんだったら、これ以外ないと思うんだけど………」

「誰が、相棒だ。ふざけんな」

黒猫は、そう言ってホームズの肩にちょこんと乗る。

「俺の名前は、『ヨル』。これでいいだろ、人間」

ルイーズは、自分の名前が採用されなかったのが不満だったようだが、諦めたように頷く。

「まぁ、化け物よりはいいかな」

そう言ってルイーズは、立ち上がると軽く黒猫、ヨルの頭を撫でる。

「それじゃあ、ヨル(丶丶)

これからよろしく」

「腹パンしたクセに何言ってんだか………」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「ホームズだったんですね、ヨルの名前つけたの」

エリーゼは、信じられないという顔をする。

「まあね」

「信じられませんね」

「声に出すんじゃあない」

顔どころか声に出して驚いた。

ヨルは、ぷらぷらと尻尾を振りながら頷いている。

「こいつのネーミングセンスは、あの時がピークだったな………」

しみじみというヨルにホームズは、不満そうに口を尖らせる。

「えぇー………そう?」

ローエンとエリーゼの方を見ると二人は、こくこくと頷いている。

ローエンは、ヨルに尋ねる。

「ヨルさんは、気に入っているんですか?その名前」

「割と」

ヨルは、頷いた。

「二文字だし、化け物だし、ホームズにしては、よく出来てる」

『珍しいねー。ヨルがホームズを褒めるの!』

ティポの言葉にホームズとヨルは、顔を見合わせる。

「言われてみれば………」

「そうかもだねぇ………」

彼らは考え込んでしまった。

「タレ目だの、モテないだのしか言われた試しがないね」

「役立たずだの、トラブルメーカーだのしか言われた覚えがないな」

そう言うとお互いしばらく無言になり、摑み合いの喧嘩を始めた。

ローエンとエリーゼは、呆れたようにヨルとホームズを見る。

それからどちらともなくクスリと笑う。

思い出すのは、出発間際のミュゼとの戦いだ。

「今となっては、『ワトソン』も捨てがたいですね」

「あんな悪態つく助手なんてヤですけどね」

『同感ー!』

ローエンは、面白そうに笑っている。

そんな話をしてる間に醜い争いは、終わっていた。

「ホームズ?」

手をパンパンと払うホームズにエリーゼは、怪訝そうな顔をする。

「見えてきたよ、ハ・ミルだ」

そんなエリーゼに構わず、ホームズは目の前を指差す。

「わぁ……!」

見覚えのある風景とジュード達がいるかもしれない、という事を踏まえてエリーゼは、嬉しそうに駆けていった。

 







まあ、エクシリアの世界に漢字はないので、ぎりぎりな気がしなくもないのですが……………



ま、気にしない気にしない!



お願い気にしないで………


では、また百七十三話で( ´ ▽ ` )ノ




企画もまだまだ募集中です!!
お待ちしてます!!

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