1人と1匹   作:takoyaki

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百七十四話です。


ちなみにちはやふるの実写映画も見てきました。



話の順番が若干違う気がしますが、それでも十分まとめ上げていて特に文句はありませんでした。



昔に比べてそういうのが気にならなくなったのは、私が大人になったのか、それともそういう作品が増えてきたのかどっちなんでしょう………




まあ、それはさて置き本編どうぞ


捨てる神あればパクる神あり

「やっとおさまってきた…………」

イル・ファンについたホームズは、顔を青くしたままそうこぼす。

そう言ってから後ろを見る。

「なんでみんなおれから離れているんだい」

「おい、臭いからしゃべんな」

ホームズは、ヨルの顔面を思い切り握る。

『口をゆすげー!!』

ティポの言葉にカチンときたホームズは、ティポに向かってヨルを投げつけた。

エリーゼは、その光景に目を見張る。

そしてホームズを睨む。

「何するんですか!!」

エリーゼの文句を無視してホームズは、水を口に含んでゆすぐと街を流れる川に吐き捨てる。

「いや、ヨルを投げたくなったらたまたまその先にティポがいた」

ホームズは、そっぽを向きながら言い訳をする。

そんなホームズにティポが口を広げて迫ってきた。

ホームズは、ギリギリでそれを止める。

「ふっふっふ、男子はしばらく見ない間に驚くほど成長するんだよ」

「うわぁ、どこかで聞いたセリフを最悪な使い方してる……」

レイアが呆れているとホームズに向かって杖が飛んできた。

真っ直ぐにエリーゼから放たれた杖は、ホームズの額に当たった。

突然のことに驚いたホームズ。

その隙にティポがホームズに齧りつく。

ジュードは、慌てて二人を止めに行った。

久々のその光景にレイアは、ため息を吐く。

「全く…………あんなことがあったってのに変わらないね、ホームズは」

レイアは、そう言ってヨルを見る。

「まあ、いつものことだ」

そういつものやせ我慢だ。

ヨルは、髭を前足で整えながら答えた。

ローズには殺されかけ、そして行方不明だ。

アルヴィンも行方がわからない。

「それにしても、お姉さんか………もう少しまともな子だと思ってたよ」

レイアは、少しだけ面白そうにそして、寂しそうに笑う。

「辛かったよね、ホームズ。きっとその日々が楽しかったから余計に」

「だろうな」

そういうヨルの口調にも影がある。

「ヨル?」

ヨルは、イル・ファンの空を見上げる。

夜空に輝く星を見ながらヨルは、尻尾を揺らす。

「ちっぽけなくせに、残してくものはいつだってデカイ………」

ヨルは、そういうとローエンの肩にぴょんと飛び乗る。

「厄介だよ。お前らは」

「ヨルさん…………」

ヨルの言葉にローエンは、優しく微笑む。

ヨルは、犬歯を見せる。

「まあ、お話はここまでだ」

そう言って目の前を尻尾で示す。

ヨルの示す先には、逃げ惑う人々がいた。

「だ、誰か!!」

「エレンピオス兵よ!!」

ホームズは、無理矢理ティポを剥ぎ取り、エリーゼに放り投げる。

「やれやれ、ここでもかい……」

ホームズは、ゆっくりと足を肩幅に開き構える。

前にいたホームズ達に追いついたレイアが息を飲む。

「なんで、エレンピオス兵が!!」

「今や珍しくありません」

レイアの言葉にローエンは、静かに答える。

「各地で、エレンピオス兵やアルクノアを見かけます」

「ジランドがいなくなったから?」

「それもありますが………」

ローエンは、そこで言葉を切る。

エレンピオス兵は、何かをわめきながら暴れている。

「許さんぞ、お前ら!!」

その震えるような声にレイアは、眉をひそめる。

「何かに、怯えてる?」

「ミュゼ、だね」

ジュードの言葉にエリーゼが頷く。

『あの人達、めっちゃ酷い目にあってるみたいだよー』

エレンピオス兵の振り回す鉤爪の武器は、腰を抜かしている少女に迫る。

兵は、何のためらいもなく少女に向かって振り下ろされた。

その瞬間鉄と鉄をぶつけた甲高い音が鳴り響く。

「…………間に合った」

ホームズが左手の盾でなんとか受け切っていた。

『走れー、女の子ー!』

ティポの言葉に少女は一目散に逃げ出した。

「ナイスホームズ!!そのまま頼むよ!!」

ジュードは、そう言うと右足に力を込め一気に詰める。

そして、そのままエレンピオス兵を横から殴りつける。

的確に、そして確実に決めた鎧通しに兵は、そのまま膝をついた。

ホームズは、屈んでいた腰をあげると左手を振る。

「ゔー………手がしびれた」

そう言いながら手をグーパーと開いたり閉じたりを繰り返す。

「ホームズ大丈夫?」

心配そうなジュードにホームズは、ひらひらと手を振る。

「まあね。ほら、いつものことだし」

「………すごい説得力だね」

ジュードが呆れている間にホームズは、エレンピオス人の倒れた近くに何かが落ちているのに気づいた。

「なにそれ?」

「んー………」

ホームズは、そう言いながら拾い上げる。

「あぁ、これジッポーだ」

ホームズは、そう言って小さな四角形の塊の蓋を開け現れたつまみを親指で押す。

すると、ボッと言う音共に小さな炎が現れた。

見たことも無いその道具にジュード達は目を丸くする。

「それ……黒匣(ジン)?」

「いやいや。しいていうなら油と火打石」

ホームズは、怪訝そうなジュードにそう短く返すとジッポーをポケットにしまう。

「泥棒だよ、ホームズ」

「拾ったものを返さないだけだよ」

ホームズは、悪びれもせずそう返した。

そんな会話をしているとラ・シュガル兵が走ってきた。

「お前達、そこを動くな!!」

突然の鋭い声にホームズ達は動きを止める。

ラ・シュガル兵は、そのまま倒れているエレンピオス兵の側まで進む。

「無事だったようだな」

背後から聞き覚えのある声が聞こえホームズ達は振り返る。

「ガイアス!?」

そこには、ア・ジュールの王ガイアスがいた。

ジュードは、驚いた声を上げる。

ガイアスは、静かに頷いた後倒れているエレンピオス兵に目を向ける。

「この者を連れて行け。ジュード達はいい」

ガイアスは、そうラ・シュガル兵達に指示を飛ばす。

兵達が倒れているエレンピオス兵を連行する。

「このままじゃ、エレンピオスが死んじまう………何が悪いんだ、何が………」

やりきれないようにつぶやくエレンピオス兵にジュードが顔を伏せる。

「ジランドと同じ………」

「…………まあ、だからと言ってリーゼ・マクシアを使っていい理由にはならないだろう?」

ホームズの言葉にジュードは、更に俯く。

「ガイアスすごい!ラ・シュガルの兵隊にも命令できるんだ」

驚いてるレイアに構わずガイアスは、静かに頷く。

「ラ・シュガルの兵も民もナハティガルの不在で混乱していた。だから、俺が導いたにすぎん」

『それがすごいんじゃないのー!!』

ティポの言葉にホームズは、うんうんと頷いている。

「ガイアスさん、あなたはイル・ファンで何をしているのですか?」

「ラ・シュガル兵と共同でクルスニクの槍の引き上げ作業を行っている」

ローエンの質問にガイアスは、静かに答える。

ホームズは、少しだけ目を鋭くする。

「どうして?今更クルスニクの槍をどうするつもり?」

ジュードが尋ねる。

「俺は異界炉計画を止める。アルクノアは、消えたが異界炉計画が消えたとは思えない」

「ま、だろうねぇ………」

ホームズは、そう答えながらジランドの最後を思い出す。

ジランドは、断殻界(シェル)が消えない限り異界炉計画は、終わらないと言っていた。

「お前達こそどうした?」

今度は、ガイアスからの質問だ。

「僕たち、ミュゼに会いたいんだ」

「ミュゼだと?」

レイアが大きく頷く。

「うん。ガイアスがミュゼと戦ったって聞いたから会いに来たの」

ガイアスは、腕を組んでしばらく考える。

すると兵がガイアスに伝令を持ってくる。

「ガイアス様、船の用意が出来ました」

「海停に来い」

「え、でも」

「ミュゼに会えるかもしれんぞ」

それだけ言い残すとガイアスは、そのまま海停へと向かっていった。

「…………どうする?」

ホームズの言葉にジュードは、首をひねる。

「行こう」

「信用するのかい?ガイアス王は、君の友達ってわけじゃあないんだよ」

「でも、やるしかないよ」

迷わずに言うジュードにホームズは、呆れたように肩をすくめる。

「言うねぇ………」

そう言いつつもホームズは、嬉しそうだ。

いつかの落ち込んでいたジュードは、もうここにはいない。

頼もしくなった仲間とやせ我慢を続けるホームズ。

そんなジュードとホームズを見てヨルは尻尾を振りながら口を開く。

「決まったならとっとといくぞ」

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「げ、あの人は………」

「……お前達か」

ジュード達が海停に着くとそこには、ウィンガルがいた。

露骨に嫌そうな顔をするホームズにウィンガルは、関わらずジュードの方を向く。

「陛下なら、先に船に乗ったぞ」

淡々と言うウィンガルにエリーゼは、意を決したように近づく。

「あ、あの………」

「ジャオのこと聞きたいか?」

「……はい」

エリーゼは、ティポ抱えながらも前を向く。

「あの時、ジャオさんがどうして私を助けたか分かりますか?」

エリーゼの言葉にウィンガルは、ホームズをみてそれからイル・ファンの夜空を見上げる。

「過去に犯した過ちへのケジメだったのだろう」

「ケジメ………ですか?」

ウィンガルは、頷いてエリーゼを正面から見る。

「人は生きていなければ意味はないと言うが、それは個人の考えに過ぎない。

人は社会の中でしか生きられない」

そう言ってジュードに視線を向ける。

「その中には、死んでもなおつけなければならないケジメもある」

ジャオのそれがきっとそうなのだ。

「…………よく分かりません」

だが、エリーゼには難しかったようだ。

「だからこそ今は子供らしく過ごせばいい」

「子供らしく?」

「ジャオがお前に望んだのは、子供らしい幸せだった」

エリーゼは、迷った後笑顔で頷いた。

「分かりました。子供らしくですね。やってみます」

「それでジャオも浮かばれる」

それだけ言うとウィンガルは、船に乗った。

「そう言えばホームズは?ジャオさんと何かあったんですか?」

「んー……母さんのお墓を作ってもらうようとりなしてくれたんだよ」

ホームズは、少し迷ったあとそう返した。

「そうだったんですか………」

「まあ、他にも落ち込んだ時とか世話になってねぇ……だから、心配してくれたんだろうねぇ……」

そんな中ジュードは、目を丸くする。

「お母さんのお墓?え?」

「あぁ、お前は知らないのか」

ヨルは、すっかり忘れていたとでも言うふうに言葉を続ける。

「こいつの母親死んでるんだよ。二年前に」

そう、船の上でジュードは、船酔いしたホームズの世話をしていたためヨルの話を聞いていないのだ。

「何の躊躇いもなく話したね………」

ホームズは、露骨に嫌そうな顔しながらもヨルの話自体は、否定しない。

ジュードは、ホームズの今までの言葉を反すうしていく。

「………生きてるなんて一言も言ってないね」

ホームズは、パチパチと乾いた拍手を送る。

そんな二人に構わずレイアは、納得したようにぽんと手をつく。

「そっか、昔世話になったって、お母さんのことだったんだ………」

「そゆこと」

ホームズは、ひらひらと振るとイル・ファンの夜空を見上げる。

ウィンガルの言葉がホームズの頭を巡る。

 

 

 

 

「ケジメねぇ………」

 

 

 

 

 

ホームズは、瞼を少しだけ触ると船に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

レイアは、そんなホームズを見てため息を吐く。

何を考えているか丸分かりだ。

 

 

 

 

 

「やれやれ」

 

 

 

 

どうやらこの友人にはまだまだ手間をかけられそうだ。









まあ、そんな訳でハガレンの実写映画が二重三重四重ぐらいの意味でドッキドッキです。



暗殺教室のようにちゃんと愛された作品が出来ると嬉しいです。



ではまた百七十五話で( ´ ▽ ` )ノ





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