1人と1匹   作:takoyaki

176 / 242
百七十五話です


4月になりましたね。



学生の皆さんは、まだ春休みですかね?
社会人の皆さんは、言うまでもありませんよね……はい。
てなわけで、どうぞ


船中覚悟

「なるほど、そんなことが……」

船に乗ったジュード達はガイアスにこれまでの経過、ミラのことを話した。

「しかし、エサとはな………」

ガイアスは、腕を組む。

「うん。だから、僕は本物のマクスウェルに会って真実が知りたい」

「マクスウェルの居場所、考えられるとしたら精霊界か……」

ガイアスの言葉にレイアは、ポンと手を叩く。

「あ、それ聞いたことある。確か、精霊達が住んでいるところって言われてるよね」

レイアの発言を聞きながらローエンは、考え込む。

「ですが、誰も見たものは、おりません」

「ここにいるぞ」

ヨルが尻尾をうねうねと上げながら答える。

「昔行ったことがある」

思わぬ情報源にレイア達は目を丸くする。

「どうして言わないの!!」

「聞かれなかったからな」

「………………」

ジュード達は引きつり笑いをする。

「じ、じゃあ、今聞くけど、どうやっていくの?」

「さあ?」

レイア達の怒りのボルテージが上がる。

しかし、ヨルはそんなのどこ吹く風だ。

「昔、無理やり出入り口を作って入り込んだからな。正規のルートを知らないんだよ」

「………あ、そう」

一気に疲れが来た。

そんな中、ティポが口を開く。

『そう言えば、ニアケリアはー?あそこは、精霊の里って言われてるんでしょー?』

ティポの言葉にガイアスは何かに思い当たったようだ。

「うむ。あそこには霊山があった。何かあってもおかしくない」

「ホント!?」

レイアは、目を輝かせるがそれをウィンガルが遮る。

「待て。船は槍の引き揚げ場所まで引き返せないぞ」

その言葉にレイアは、がっくりと肩を落とす。

「え〜……クルスニクの槍なんてどうでもいいのに………」

「口は災いの門だぞ」

「ははは、ヨルが言うと説得力が違うね」

ヨルとレイアがそんな会話してる中、ローエンが一つの疑問を尋ねる。

「ガイアスさん。先ほどの異界炉計画を止めるという話。クルスニクの槍を使い、エレンピオスに侵攻するおつもりなのでは?」

「全てはリーゼ・マクシアのためだ」

クルスニクの槍の力は今更語るまでもない。

エレンピオス軍の作戦の要。そして、その威力は、実証済みだ。

アレなら確かに断殻界(シェル)を打ち破りエレンピオスに行くことも可能だろう。

しかし……

「待って、クルスニクの槍にはたくさんのマナが必要だよ」

「無論、人と精霊が犠牲になることは本意ではない」

ガイアスは、そこで言葉を切ると遠くを見つめる。

明らかにガイアスは、進んで使いたいわけではない。

それを見たエリーゼが口を開く。

「迷ってるんですか………なら」

「だが、誰かがやらねばならんのも事実だ」

その迷いのない口調にジュードは、思い当たるフシがある。

「ガイアスも思いを守ろうとしてくれてるの?」

この言葉にガイアスは、ジュードに視線を戻す。

「そうなのかもしれない、いやそうなのだろう………」

ガイアスの脳裏にミラの姿が蘇る。

「俺の中でもあれだけ大きな存在となった女は初めてだったからな」

「だったら、エレンピオスのことも考えるべきだよ」

そんなガイアスにジュードは、真っ直ぐに反論した。

「エレンピオスのことだと?」

ウィンガルが眉をひそめる。

「リーゼ・マクシアが危機にさらされているというこの現実(とき)に」

ウィンガルが苛立ちを露わにしてジュードに詰め寄る。

だが、ジュードは、一歩も引かない

「どっちかが犠牲になるとかそういうことじゃないと思うんだ」

ヨルの耳がピクリと動く。

「きっと………そういうよ……」

そういうとジュードは、真っ直ぐにガイアスを見る。

その琥珀色の瞳には力強い光が灯っていた。

断殻界(シェル)をなくしてみんな助ける。

僕はそうしたい」

ヨルはそれを聞いて大笑いをした。

「どっちもだと?これまた随分と欲の深い話だな」

ヨルは本当に面白そうに笑っている。

「お前、それがどれだけ大変なことか分かっているのか?」

ジュードの脳裏にアルヴィン、ジランド、エレンピオス兵、アルクノア、そしてホームズがよぎる。

「…………分かってる。それでも、僕はそうしたい」

ウィンガルがそんなジュードを静かに見つめる。

ヨルはぴょんとジュードの肩に飛び乗る。

「いいだろ。その話乗ってやる、()()()()

「ヨル……」

思わぬ賛成にジュードは、目をパチクリさせる。

そんなジュードを見てガイアスは、尋ねる。

「報いたいのか?命を投げ打って、お前を守ったあいつに」

「うん」

ミラが言ったからではない。

何故ならミラはそんなことを言っていない。

だから、これはジュードが自分で選んだ答えだ。

誰かに報い成長するとは、こういうことなのだ。

(ま、それをどっかの馬鹿は取り違えてるんだろうが)

ヨルは尻尾を振りながらそんなことを思う。

「変わったな」

ガイアスは、そう言うと腕を解く。

「ジュード、お前は俺と……」

「陛下、そろそろお時間です」

ガイアスの言葉を遮るようにウィンガルが告げる。

ガイアスは、しばらく迷った後静かに頷いてウィンガルの後を付いて奥へと消えていった。

「ということになっているが、聞いてるのか、ホームズ」

ヨルの言葉にホームズは、片手を振って答える。

相変わらずバケツとにらめっこだ。

そして時折液体の落ちる音が聞こえる。

「ゔー…………炭酸が船酔いにはいいって聞いたからサイダー飯食べたのに………」

「馬鹿じゃないの」

目まぐるしい成長するジュードの側で残念な方向に走り続けているホームズにレイアは、ため息を吐く。

「…………レイアに言われた……」

「どういう意味?」

レイアのこめかみがピクリと動く。

返答の代わりに再び吐瀉物の音が鳴り響く。

ジュードは、そんなホームズにため息を吐く。

「医学校で酔い止め買ってくればよかったね………」

ジュードの言葉にエリーゼとローエンがうんうんと頷く。

ホームズは、バケツを抱えたままジュードの方に向き直る。

「でも、アレだね、ジュード。そこまで考えてくれてゔエエエエエエエ」

「ごめんなんて?」

最後は、ホームズの嘔吐に巻き込まれジュードの耳に届くことはなかった。

「まあ………おれに気にせずみんなは、景色でも見てなよ………」

ホームズは、そう言うとそのまま立ち上がりふらふらと歩いて行く。

そして、甲板で思い切っり滑った。

「申し訳ありません。ここ油で磨いたばかりでして……」

尻もちをついたホームズに船員が謝る。

謝られたホームズは、船員の視線を追う。

そこには、桶に入った油があった。

「………あぁ、そう」

「おい、人間」

突然喋ったヨルに船員は、腰を抜かした。

「それより、何か甘い食べ物はないのか?腹が減った」

しかし、直ぐに持ち直すと立ち上がった。

「わ、分かりました!!倉庫に砂糖が大量にあるので大丈夫だと思います」

そう言ってダッシュで逃げ出してしまった。

ジュードは、その様を見て呟く。

「ヨル、またやるつもりだよ………」

ローエンは、困ったように笑いながらジュード達の方を向く。

「まあ、取り敢えず、ここは、ホームズさんのご好意に甘えましょう」

ローエンの言葉にジュード達は頷くとそれぞれの場所に移動した。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

ジュードとレイアは、クルスニクの槍の引き上げ作業を眺め、ローエンとエリーゼも別の場所からみる。

ジュードとレイアは、他愛のない話をしながら見ている。

正確にいうと一方的にレイアが喋っているだけなのだが。

「って聞いてる?ジュード?」

「うん。きっとどこかで組み立て作業をやるんだと思うよ」

不機嫌そうなレイアにジュードは、淡々とかえしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、黒い球体が現れた。

 

 

 

 

 

「な!?」

その光景にレイアとジュードは、身を乗り出して確認する。

すると、視線の先には水しぶきを上げながら向かってくるミュゼがいた。

「一人残らずぶっ殺してあげるわ!!」

目を血走らせ殺意そのままにミュゼは、ジュード達を目指していた。

「みんな!!ミュゼだ!!」

ジュードの号令でレイア、エリーゼロ、ーエンが集まる。

「ってあれ?ホームズは?」

四人揃って後ろを向くと甲板で突っ伏しているホームズが、一人。

『『あ…………』』

ミュゼの目は血走らせながら迫ってくる。

容赦も遠慮もしないであろう大精霊のミュゼ相手に足手まとい(致命的なまでの)が、一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

『『最悪だーーーーー!!』』

 

 

 

 

 

 

 

こうして船上決戦が始まった。

 

 

 









一回は、こういう事態がないとつまらないなと思い、入れました。
ゲロゲロ吐いてますが、頑張ってね



ではまた百七十六話で( ´ ▽ ` )ノ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。