1人と1匹   作:takoyaki

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百七十六話です




さてさてバトルですよ!



てなわけで、どうぞ


何かが滴るいい男?

「剛………しょ……うぇ……」

ホームズは、腰を落とそうとして嗚咽を漏らした。

「ああ、もう!バリアー!!」

レイアが詠唱を省略してホームズに防御力強化の精霊術をかける。

「下がっててホームズ」

ジュードの言葉に船酔い真っ只中のホームズは、頷く。

「じゃあ、代わりに……ヨル貸してあげる」

「ちょうどいい。ゲロ酸っぱい臭いから解放されたいところだったんだ」

ホームズは、無言で船にあったバケツ(液体入り)をヨルに向かってひっくり返した。

そのうっとおしいドヤ顔にヨルは、苛立ちを隠そうともせずに口を開く。

「水も滴るなんとやらというつもりか?」

「まさ………か。そんなこと……言うんもんか」

「いいから!!逃げてホームズ!!」

ジュードに言われホームズは、小袋を落としてふらふらと逃げる。

「あら?逃すと思ってるの?」

足取りのおぼつかないホームズにミュゼは、容赦なく遅いかかる。

だが、それをレイアの棍が止める。

行く手を遮られたミュゼは、小さく舌打ちをする。

「どきなさい。邪魔をするならあなた達から殺すわ」

「随分釣れないことを言うじゃないか」

そう言うとヨルの尻尾がミュゼを捉えようと伸びる。

ミュゼは、忌々しそうに髪で振り払う。

「まだ、ダンスの相手を帰る時間じゃないと思うが?」

ヨルはホームズが落とした小袋を咥えがらニヤリと笑う。

ミュゼは、顔を険しくさせる。

「いいわ望み通りあなた達から殺してあげる」

ミュゼは、一直線にレイアとヨルに向かって距離を詰め、髪を振るう。

「っつ!!」

レイアは、辛うじて捌き、ミュゼの懐に入り込む。

「はっ!!」

掛け声とともに棍をミュゼに向かって繰り出す。

ミュゼは、その棍を馬鹿にしたように鼻で笑うと僅かな動作でかわす。

そこをジュードの拳が襲う。

「─────っ!!」

ジュードは、物音たてずにミュゼが避けるであろう場所に近づいていたのだ。

かわせたと油断していたミュゼをジュードの拳が捉えた。

確かな手応えとともにジュードは、ミュゼを船のマストに叩きつけた。

「────っハ!!」

「フリーズランサー!!」

『「ティポ戦哮」』

そこにエリーゼとローエンが畳み掛ける。

降り注がれる氷の矢とエリーゼとティポの攻撃。

手応えはある。

だが、それが信用できないことぐらい、彼らは分かっている。

大精霊と呼ばれる彼女がこの程度で、攻撃が全弾ヒットした程度で倒れないことぐらい分かっている。

ミュゼは、ゆらりと立ち上がる。

「本当に鬱陶しい………」

ミュゼの髪がレイア達を襲う。

レイアは、バックステップでかわすと同時に棍を伸ばす。

ミュゼは、振るわれる棍を防ぐとそのままレイアを押し返す。

「邪魔なのよ!貴方達さえ、貴方達さえいなければ!!」

その取り乱した様子にレイアとジュードは、眉をひそめる。

「なんか、いつもと違う……」

「焦ってる?」

「だったら、そこを突くしかないだろ」

ヨルの言葉を合図にレイアとジュードが踏み込む。

ミュゼは、空中に浮いてかわそうとする。

(─────っ?)

だが、そのミュゼの行方を防ぐ目に見えない何か。

思わず動きを止める。

「飛燕連脚!!」

そこをジュードの空中回し蹴りが捉える。

最後の蹴りでジュードは、ミュゼを叩きおとす。

落とされる時にミュゼは、視界の端で確かに捉えた。

ミュゼの動きを遮ったものの正体。

(糸………いや違う!!)

「シャドウもどき、貴方の尻尾ね」

「正解。だが、シャドウもどきじゃない」

ヨルの否定に構わずミュゼは、顔を険しくさせる。

「いつの間にこんなものを……」

「お前の知らない間に決まってるだろ」

ヨルの小馬鹿にした口調が更にミュゼを煽る。

ミュゼと睨み合うヨルを肩に乗せレイアは、言いづらそうに口を開く。

「あのさ、煽るの止めてくれない?わたしまでターゲットになるんだから」

「物事は諦めが肝心だ」

自分の事を棚に上げどうでも良さそうに言うヨルにレイアは、ため息を吐く。

「全く、強い相手によくもまあそこまで言いたい放題言えるよね……」

隣で聞いていたジュードもため息を吐きながら、そうもらす。

「なんだ?お前は、自分より弱い奴じゃないと言いたい放題言えないのか?」

ヨルの言葉を聞いたジュードは、きょとんとした後ニヤリと笑う。

「なるほど、それはみっともないね」

ジュードは、拳を突き合わせでミュゼを睨み、すぅっと息を吸う。

「ミュゼ、ミラの事を馬鹿にしたこと、謝ってもらうからね!」

ジュードから紡がれた言葉にレイアは、拳を突き合わせ構える。

「ニ・アケリアでしっかりとね」

「ええ。それと、ホームズさんを馬鹿にしたことも」

ローエンは、そう言ってナイフを投げる。

ミュゼは、髪で払う。

「あと、ヨルの事をシャドウもどきと呼んだこともです!!」

『土下座ー!!』

エリーゼとティポは、くるくるとエリーゼの周りを回りながら口を開く。

ヨルは、少し目を丸くしたあと、犬歯を見せる。

「大精霊?今ここで謝れば、許してやる」

それからヨルは、底意地の悪い顔をする。

「誠意を見せろ」

「殺す!!」

ミュゼの髪がレイアとその肩にいるヨルに襲いかかる。

文字通り怒髪天を衝く勢いで繰り出される髪。

そのひと束ひと束が凶器となり繰り出された。

「散沙雨!!」

無数とも言える攻撃をレイアの棍が弾いていく。

捌ききれない攻撃は、レイアの頬をかすめる。

「スプラッシュ!!」

レイア達への攻撃に気を取られているミュゼにローエンのスプラッシュが頭から降り注ぐ。

「ぐっ…………!」

思わぬ攻撃にミュゼは、地面に落とされた。

「転泡!!」

地面にいるミュゼにジュードの下段回し蹴りが炸裂する。

思わぬ追撃にミュゼは甲板を転がる。

「この………」

「『ティポプレッシャー!!」』

そこに更に巨大化したティポがミュゼにのしかかる。

勢いと重さを持った一撃思わずミュゼの肺にある空気が漏れる。

「いい加減に………」

ミュゼの身体からマナが溢れる。

「しなさい!!」

『うあぁ!!』

ミュゼから溢れたマナはティポを弾き飛ばした。

そしてそのまま海へと向かっていく。

それをヨルの尻尾が追いティポを掴む。

『ナイスキャッチ!!』

ヨルは、ティポをそのままエリーゼに投げる。

「礼の一つも言えないのが、流石だな」

『アリガトー』

棒読みの「ありがとう」がティポから聞こえている中、ミュゼの苛立ちは募るばかりだ。

大精霊という自分より遥かに劣る人間達に確実にミュゼは、押されている。

ニ・アケリアで、これより多い人間を虐殺した時はこんなことはなかった。

後からやってきたホームズ達も敵ではなかった。

しかし、今はどうだ?

間違いなくこのままでは負ける。

一体、何処からこんな事になってしまった?

何一つ自分の望むように、思い通りに動かない。

一体、何が原因だ?

「…………ホームズ」

ミュゼの口から漏れる名前にレイアが眉をひそめる。

「あいつが……あいつがいたから!!あいつのせいで!!」

激昂するミュゼにエリーゼは、思わず後ずさる。

その様は狂気そのものだ。

「あいつと戦ってからよ!!こんな事になってるのは!全部ホームズが悪いのよ!!」

怒りに顔を歪ませるミュゼ。

レイアは、口をキュッと結ぶ。

「ジュード」

「うん。今のミュゼをホームズに合わせちゃダメだ」

ジュードの言葉に頷きながらローエンは、ナイフを構える。

「踏ん張りどころですね」

「ここで食い止める……です!!」

「ったく、とことん女に嫌われる奴だ」

「本当にっ!!」

レイアは、それと同時に棍で突き進む。

レイアの棍がミュゼの髪の間をぬって届く、

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

 

 

 

「下がれ!レイア!!」

「え?」

レイアが棍を当てようと踏み込んだそこはミュゼの精霊術だった。

レイアの踏み込みとともに精霊術が展開しレイアを吹き飛ばした。

「ぐっ!!」

吹き飛ぶレイアと宙を舞うヨル。

「レイア!ヨル!!」

ジュードがそちらに気を取られている間にミュゼは、エアプレッシャーをかける。

「─────っ!!」

上から突然現れた重圧にジュードは、動けない。

その間にミュゼは、ローエンとエリーゼに襲いかかる。

だが、その行く手をまた見えない何か、いや、極細のヨルの尻尾が遮る。

動きを止めるミュゼにローエンのナイフが突き刺さる。

「っち!」

「『ティポ戦哮』」

迫り来る紫のマナをミュゼは、ナイフからの痛みに耐えながら髪でかき消す。

ミュゼは、乱暴にナイフを抜く。

そして地べたに倒れるヨルを見てミュゼは、思い出す。

「そういえば、あなた達は離れられないはずよね?」

「あ?」

ヨルは立ち上がりながら首をかしげる。

ホームズとヨルの情報は、アルヴィンかすでにもらっている。

「なのになぜ離れているのかしら?」

「お前には関係のないことだ」

そういうヨルの後ろに光る一本の線が見える。

怒りに震えるミュゼに新たな選択肢が一つ現れる。

(離れられない。けれども身体の一部でも触れていればそれは………)

ミュゼは、もう一度確認する。

見えづらいが、一本だけ光っているそれは遠くまで伸びている。

(離れたことにはならない!!)

しかし、問題はそれが本当にヨルの尻尾かどうかということだが、一つ状況証拠がある。

その一筋の紐が光っていることだ。

ミュゼが現れた時ホームズは、ヨルに怒りのままバケツの中身をぶちまけた。

その水分がまだ残っている。

「なるほど、自分で自分の首を絞めてバカそのものね」

もうやることは決まった。

ミュゼは、見るもの全てを凍えさせるような笑みを浮かべるとレイアたちを飛び越えて行く。

「先ずはホームズ!!その次に幾らでもあなた達の相手をしてあげるわ!!」

「ま、待て!!」

レイアの制止を振り切ってミュゼは、光るヨルの尻尾を追っていく。

糸はどうやら船の中へと続いているようだ。

船員達と出くわさずそのまま尻尾を追っていくと倉庫にたどり着いた。

よく見ると鍵穴から中へと尻尾が続いている。

「ここね。覚悟なさいホームズ・ヴォルマーノ!!」

ミュゼは、扉を壊して中に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「マズイよ!ヨル!今のミュゼにホームズが会ったら………」

ただでさえ怒り狂っているミュゼに船酔い状態のホームズが出会ったらどうなるかなど火を見るよりも明らかだ。

ヨルは嫌そうにため息を吐くとホームズが落とした小袋からジッポーを取り出す。

レイアは、それを見た瞬間、先程の焦りは何処か遠いところに飛んで行った。

その小袋は、大切な形見だ。

それを落とすというのがそもそも不自然だ。

「………まさか………」

レイアの言葉に答えず、ヨルは、尻尾を使って器用に火をつける。

「ったく、この借りはデカイぞ」

ヨルはそう言うと光る尻尾に向かってジッポーを落とした。

ジッポーの火はそのまま尻尾の光る方へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

ミュゼが飛び込んだ部屋は真っ白だった。

中を確認するのが困難なくらいに白い粉が舞っている。

予想外の景色にミュゼは戸惑った。

「…………甘い匂い?これ、砂糖?」

しかし、戸惑うのもそこまでだ。

白い粉に薄っすらと浮かび上がる人影に向かってミュゼは、髪を伸ばす。

一思いには、殺さない。

先ずは拘束し、そしてじわじわと嬲り殺しだ。

「覚悟なさい。最初は、目よ」

ミュゼは、目に向かって髪を伸ばす。

「えっ……………?」

白い霞に目が慣れた時にわかる景色に思わず間抜けな声が漏れる。

髪に拘束されていたのは、ホームズではない。

即席で作られた妙な人形だった。

ご丁寧にどこで見つけてきたのか、互い違いに猫の目のようなものまで貼られている。

そして、張り紙が一つ。

 

 

 

 

 

 

 

《バーカ》

 

 

 

 

 

 

 

 

思考が正解にたどり着くより早く、ヨルの尻尾を走る炎が部屋にたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、轟音と同時に衝撃がミュゼの身体に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

ヨルの尻尾に炎が灯ってから数十秒後、爆発音が鳴り響いた。

爆発により甲板に穴が空きそこからボロボロのミュゼが現れた。

「な、なに?」

レイア達は突然のことに戸惑っている

ヨルは、尻尾の炎を消すと呆れながらため息を吐く。

「あの野郎覚えてろよ」

先ほど消えたばかりのミュゼが今度は、ズタボロになって現れている。

爆音を聞きつけガイアス達が現れる。

そして、ガイアスの指示のもとミュゼは拘束された。

全ての方が付くとレイアは、肩にいるヨルに目を向ける。

「種明かし、お願いしてもいい?」

「ホームズに聞けばいいだろ」

「いや、今いないし………」

そんなレイアをとんとんと叩く者が一人。

後ろを振り返るとそこには青い顔をしたホームズがいた。

「種明かし出来そう?」

ホームズは、青い顔のまま首を横に振る。

「だってヨル」

「…………はぁ」

ヨルは、一つため息を吐く。

「最初から行くか。まず最初、俺に液体をかけたのはワザとだ」

「うん。まあ、それはなんとなくわかる。後、小袋落としたのもそうだよね」

「ついでに言うとかけたものは、水じゃない。油だ」

「油?」

ヨルは、甲板を尻尾で指差す。

レイアは、ヨルとホームズの会話を思い出す。

 

 

 

 

 

 

──────「水も滴るなんとやらというつもりか?」

「まさ………か。そんなこと……言うんもんか」──────

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ、あの会話は、そう言う意味だったんだ………)

滴っていたのは、水ではない油だ。

「全身にあった油を尻尾に移して後は導火線代わりにしといた」

話を聞いていたジュードが口を挟む。

「あのさ、ホームズとヨルってある程度の距離なら離れらるよね?」

「まあな。そこで、一つ罠。あいつは、歪んだ情報を持っていた。だから、それを利用した」

離れられないなら、どうやれば離れることが出来るか?

そこでミュゼは、ヨルの尻尾を利用した手に行き当たる。

そのためにわざわざヨルの尻尾を主張するような行為を何度も見せたのだ。

「後は簡単だ。気付いた奴は、ホームズを殺そうとその尻尾を、導火線となっている尻尾をまんまと追っていく」

尻尾が徐々に治っていく。

「そして尻尾の行く先は、ホームズのところではない。爆心地へとまっしぐらだ」

「それがよくわからないんだけど、何で爆発したの?」

レイアの質問にホームズが、破れた砂糖袋を見せる。

「砂糖?」

「粉塵爆発。一定の濃度以上の可燃性の粉塵があるところで着火されると爆発が起こる現象だ」

喋れないホームズに代わりヨルが説明する。

レイアが首を傾げる。

「えーっと、つまり?」

「閉じられた部屋で粉撒き散らして火をつけると爆発する」

「なるほど」

嚙み砕いたざっくりとした説明にレイアは、納得する。

エリーゼも感心しながら聞いている。

「エリーゼさん。危ないので早々使わないで下さいね」

ローエンは、エリーゼにクギを刺す。

結局、今回の事は恐らくホームズだから出来たのだ。

普通、ジュードやローエンがヨルの尻尾が見えるなんてミスをすれば流石に罠だと疑う。

だが、普段間抜けな行動をするホームズがやるからミスに見えた。

だからこそ、ミュゼはまんまと引っかかったのだ。

今回、ホームズは足手まとい以外の何物でもないはずだった。

実際、リリアル・オーブを使う事も叶わなかったのだ。

だからこそ、ミュゼはホームズを標的にしたし、ジュード達もそれを阻止しようとした。

だが、ホームズにとってはそんな不利な状況も利用して見せたのだ。

ありとあらゆる状況を整理し、利用、自分の思うように動かす。

「本当、食えない奴だ」

「………………褒めてくれて嬉しいよ……ゔ……」

ヨルの言葉にホームズ力無くそう返すのが精一杯だ。

「うぅ…………」

勝てたはずの戦いに連続で負けたミュゼは、俯いていた。

「………ミュゼ、どうしてこんなことを?」

ジュードの質問にミュゼは、顔を上げる。

「私はリーゼ・マクシアを守っているだけよ!!」

「ミュゼの言う、リーゼ・マクシアを守るって何なの!?」

「私が知るわけないじゃない!!」

そう言って更に目を険しくさせる。

「全てはマクスウェル様の意志よ!!」

ミュゼの言葉にウィンガルは、眉をひそめる。

「本当に別にマクスウェルがいるのか………」

そのウィンガルの言葉にミュゼは、口を滑らせたことを悟った。

マナを展開させ自分を拘束する兵たちを吹き飛ばす。

両手を空に掲げ天を仰ぐ。

「さあ!マクスウェル様!この者たちを裁く命を!」

ローエン達は油断なく構える。

しかし、幾ら警戒しても何も起きない。

「──────っ!!」

幾ら待っても来ない命にミュゼは、顔を歪ませ、そのまま空へと飛び上がった。

「ウィンガル、追うぞ!!」

ガイアスは、そう言うと空へと飛び上がる。

空にいるガイアスを拾うようにワイバーンが現れ、ガイアスを乗せてミュゼを追う。

「陛下を追う!四象刃(フォーブ)にも伝令しろ!!」

船はそのままガイアスを追って進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

港に着いた一行は急いで船から降りる。

ジュード達は急いで降りる。

相変わらずホームズの顔は青いままだ。

フラフラと歩くその様は、危なかっしいことこの上ない。

ジュードは、前を歩くウィンガルに尋ねる。

「本当にこっちでいいの?」

ウィンガルは、静かに振り返る。

その時、兵達がジュード達を取り囲む。

ジュードは、自分達を取り囲む兵に気を配りながらウィンガルを睨む。

「どういうつもり?」

「危険だからだ」

「僕たちが?それともホームズが?」

「ちょっとジュードくん?」

ホームズは、不満顔だ。

だが、ウィンガルは前にホームズを殺そうとしていた。

そう思うのも自然なことだ。

だが、ウィンガルは、首を横に振る。

「違う、お前だジュード」

「僕が?どういうこと?」

ウィンガルは、ジュードの質問に答えない。

「ジュードさんをマクスウェルに合わせたくないのですね」

「………………絶対に逃がすな」

ローエンの言葉も無視してウィンガルは、そのまま港から去った。

しかし、兵達は去らない。

(このままじゃ!!)

「えいや!!」

ローエンの掛け声と共に兵はそのまま気を失って倒れた。

「ローエン!」

「うご、!」

兵がティポに弾き飛ばされていた。

『へーばーりーつーく』

そのままティポは、もう一人の兵へと向かっていき兜の上から顔を覆うように噛り付いた。

「息が…………」

窒息した兵は、そのまま倒れた。

レイアは、棍を大上段に構え、そしてそのまま叩きつけた。

残りの兵がホームズに襲いかかる。

ホームズは、青い顔しながら顔面を掴むと地面に叩きつける。

そして、逆立ちをして後ろから来る兵の首を両足で挟む。

そこから、体を捻る兵を地面へと叩き落とした。

いわゆるフランケンシュナイダーだ。

兵達を全員倒すと、ローエンは、両手の埃を払うように叩く。

「さて、ガイアスさんを追いましょう、みなさん」

レイアが困ったように腕を組む。

「でも、どこに?」

「場所ならわかるはずですよ」

「ニ・アケリアの霊山ですね」

「そういうことです」

エリーゼの回答にローエンは、満面の笑みで答える。

ホームズは、ひらひらと力なく手を振りながら口を開く。

「ま、酔いなら歩いているうちに収まるだろうさ…………」

そう言いながらホームズは、青い顔をして座り込んだ。

動かない地面に降りて調子が良くなったとは言え、急に動いて平気なわけがない。

「ホームズ………」

呆れたような半眼を向けるレイアから、ホームズは視線を逸らす。

ピンチを脱したジュードは、思わず顔が綻んだ。

「みんな……………」

これは嬉しいことだ。嬉しい事なのだが………

「やるならタイミング揃えようよ……」

そういうジュードに皆はジトッとした湿度の高い半眼を向ける。

「僕が悪いの!?」

ジュードの素っ頓狂な声に皆は手を叩いて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

一行の心を一つに目指すは、ニ・アケリア霊山だ。

 

 

 

 








ゲロゲロ吐きつつやることやってるホームズです。

まあ、何事も油断してはいけないということです。


ではまた百七十七話で( ´ ▽ ` )ノ



活動報告の企画もまだまだ進行中です!

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