1人と1匹   作:takoyaki

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百七十七話です。



何だか筆が進みましたので、連続投稿です!!



てなわけで、どうぞ


男心と馬鹿の意地

『黒ずくめめー!いきなり襲うなんてー!!』

道中、ティポは、不満げに唸っていた。

「油断も隙もないよね」

レイアも憤慨している。

ようやく酔いの引いたホームズは、ため息を吐く。

「ま、軍師だからね。油断なんてしてたら仕事にならないだろう?」

「そういう事を言ってるんじゃないよ」

レイアにピシャリと言われてしまいホームズは、思わず泣きそうになる。

「ジャオさんの事を教えてくれたのにどうして………」

「彼にとって行動は、全てガイアスさんだからです」

エリーゼの疑問にローエンが答える。

「ガイアス王の?」

ホームズは、訳も分からず首を傾げる。

「えぇ。ガイアスさんのためになら何でもするし、ガイアスさんのためにならないものは、何でも排除する」

「それが、おれだったり、ジュードだったりするわけだ」

ローエンとホームズの言葉にレイアが納得をしたようだ。

「ふーん、そんなにガイアスが好きなんだ」

「それは、ちょっと違いますよ」

レイアの解釈にローエンは、少し困ったように答える。

ローエンの答えにエリーゼは、不思議そうに首を傾げる。

「二人は友達じゃないんですか?」

「友達です。同じ理想を持ち、同じ道を歩く………ね」

ローエンは、そこで言葉を区切ると遠くを見る。

「だからこそ、複雑なのです。最高の友であると同時に最大の敵なのですから」

「敵?」

聞きなれないフレーズにホームズは、首を傾げる。

「えぇ。二人は対立する部族なんですよ」

「あれ?でも、ガイアス王がまとめたって言ってなかったかい?」

「はい。つまりは、そういうわけです」

そうつまりウィンガルの一族は、ガイアスに負けたのだ。

「それは…………」

ホームズも思わず言葉を失う。

自分の最大の敵が自分の理想を持っている。

これは確かに複雑だ。

「難しいです………レイア、分かりますか?」

「うーん…………男性版乙女心みたいなもんかな?」

「あ、それ結構正解ですよ」

「ハッハッハーって奴だね………」

ホームズは、レイアの解釈に苦笑いを浮かべる。

「ところで、ジュード、ミラの社ってのは、まだ先なのかい?」

「うん、まあ、もう少しだよ。この階段登り切ればすぐかな」

ホームズの質問に答えるとジュードは、ホームズにジトッとした目を向ける。

「というか、ホームズ。あの爆発ってホームズのせいなんだよね」

船でのミュゼとの戦闘、ホームズは、船室を一つ吹き飛ばしている。

沈没しなかっただけでも儲けもんだ。

「どうするの?そのウィンガルさんが、請求とかしてきたら」

「マクスウェル様で領収書切ってもらうから大丈夫だよ」

「やばい、こんなに不安なの久々だ」

これから、未知の領域へ挑むというのにとても現実的な問題がのしかかり、ジュードの気持ちを暗くさせる。

船の修理費なんて考えたくもない。

「というか、今回、おれ無傷で終わらせたんだよ。誰か褒めくれないのかい?」

『エライエライー』

ティポのやる気もない棒読みの褒め言葉にホームズのこめかみがピクリと動く。

「エリーゼ、最近おれに冷たくない?」

「いつも通りです」

エリーゼは、そう答えるとぷいと顔を背けた。

エリーゼなりにホームズの選択に怒りを覚えているのだ。

あの、記憶と引き換えに自分の視力を回復させるという選択肢を選んだ事に。

ドタバタとして忘れていたが、それでもホームズのその金色の瞳を見れば嫌でも思い出してしまう。

大切なもののハズなのにいつも通り、平然としているのが、気に食わないのだ。

素直にこの怒りをぶつけられればいいのだが、ホームズ自身、何を犠牲にしたか思い出せない。

よって行き場のないこの怒りが、今のホームズに対する態度に繋がるのだ。

だが、ホームズにはさっぱり伝わらないし、分からない。

訳のわからないホームズは、肩にいるヨルに話しかける。

「おれ、何かしたかな?」

「お前が、自分に原因を探す日が来るなんてな……コレが『成長』という奴か?」

「馬鹿にしてるだろう?」

ヨルとホームズが睨み合っているとエリーゼの方から大きなため息が聞こえた。

「エリーゼ?」

「………分かりました。今回は私の方が大人になっておきます」

「凄く気になる言い回しだなぁ………」

「エリーゼさんの方が正しいですよ」

ローエンにすぱりと言われてしまいホームズは、二の句が続かない。

レイアとジュードは、そんな会話を遠くから聞いていた。

「相変わらずだね」

「本当に」

そんな事を話しているとついに一行はミラの社にたどり着いた。

「へぇ、ここがミラの社か………結構趣きがあるね」

「見るべきは、そこじゃないだろ」

そう言ってヨルの尻尾の差す先には、イバルが腕を組んで佇んでいた。

『あー、うるさい奴だー!』

開口一番に的確な評価を口にするティポ。

「相変わらず、悪運の強い奴だねえ」

「お互いにな」

イバルは、ホームズに短く返す。

「イバルさん。ガイアスさんとミュゼさんがここを通りませんでした?」

ローエンの質問にイバルは、腕を組んだまま動かない。

「イバル?」

「二人だけではない。ウィンガルも通ったぞ」

ホームズは、感心したように頷く。

「へぇ………大当たりじゃないかい」

そう言って歩みを進めようとするとイバルは、腕を解く。

「待て、こうも言っていたぞ。ジュードが来るかもしれないが好きにしていいと」

ホームズは、ピタリと足を止める。

『黒ずくめめー!!同じ黒ずくめ同士大目に見てたのにー!!』

「ムラサキダルマが何を言っているんだい?」

ホームズの言葉にムッとした顔をするティポ。

ホームズは、さっと目をそらす。

「ふふふ、ガイアスにも見放されたか?」

力なく小馬鹿にしたように笑うイバルにホームズは、片眉をピクリと上げる。

「それで?君はどうするつもりだい?」

「答えが必要か?」

イバルの言葉にホームズは、首を横に振る。

イバルの気持ちを察したジュードは、手をぎゅっと握り締める。

「イバル、分かってとはいわない。でも、今は争ってる場合じゃないんだ!!」

「黙れ!!」

自分の言葉が届かないイバル。

ジュードは、思わず俯く。

自分の心からの言葉が通じない事ほど苦しいことはない。

そんなジュードを見ていたレイアが一歩前に出る。

「ジュードは………彼女の思いを遂げるためにここに来たんだよ!」

「そんな事、どうだっていい!!」

「おいおい、お前、マクスウェルの巫女だろ?」

ヨルは半ば呆れながら言う。

しかし、そんなヨルに構わずイバルは、俯いて肩を震わせている。

「ジュード、どうしてお前が……お前ばかりが!!」

イバルの両手には短剣が握られていた。

イバルにもイバルなりの思いがある。

それが、彼を突き動かしている。

例えそれが正しいと言えなくとも。

どうやら戦いは、避けられないようだ。

「みんな先に………」

ジュードが最後まで言わないうちにローエンとレイアが前に出る。

「みんな…………」

「ハッ!サシの勝負も受けられないのか、腰抜け!」

イバルの言葉にエリーゼは、静かに目を閉じる。

「ジュードは、言いました。今は争ってる場合じゃないって!!」

開いた瞳で力強くイバルを見据えるエリーゼの手には杖が握られていた。

「悪いけど、君の都合は、二の次三の次だ」

ホームズは、煙管を小袋にしまうと左手の盾を構える。

「そうよ!ジュードには、やるべきことがあるんだから!!」

レイアが棍をくるくると回しながら取り出す。

「だとしたら、私達が力を貸すのは当然でしょう?」

ローエンは、細剣を取り出す。

「ふん。折角だ。お前も力を借りたらどうだ?」

ヨルは、ホームズの肩から社の奥を睨みつける。

「このうっとおしい殺気を感じるのいい加減面倒だ」

ヨルの言葉にイバルは、口に指を当てる。

「いいだろう!!」

ピィっと高い口笛とともにワイバーンが社の裏から現れた。

それと同時にイバルは、二つの短剣を構えて迫ってくる。

「みんな!いくよ!」

ジュードの掛け声とともに一同は、踏み込んだ。

 

 

 

 

 








さて、企画の質問箱に質問がきましたので回答を!



Q.エクシリア2もやるんですか?

A.やります!!


エクシリアが終わりましたら、少し外伝を挟んで、それからやろうと思っていますので、どうかお楽しみに(^○^)


ではまた、百七十八話で( ´ ▽ ` )ノ

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