1人と1匹   作:takoyaki

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百八十話です



友達がPS4を買ってました。



画質が更に綺麗で迷いました………


想い
鸚鵡返し


「お前達………だったのか………」

アルヴィンは、驚いたように目を丸くする。

「……………」

ローズは、無言でホームズを見る。

「二人とも……そんなどうして!」

「ジュード………」

ジュードの言葉にアルヴィンは、俯いてしまう。

プレザは、そんなジュードとアルヴィンに構わず手をひらひらとふる。

「また貴方達と敵同士になれるなんて喜んでいいのかしら?」

そう言いつつ本を取り出し準備は、万端だ。

「またあんた達をいたぶれるなんてサイコー」

アグリアは、天を仰いで大笑いしている。

そして、レイアを睨みつける。

「おいブス!お前この男に撃たれたんだって!?」

アルヴィンを指差しながら言うアグリアにレイアは、顔を俯かせる。

「おい、やめろ……」

アルヴィンが弱々しく止めるがアグリアは、止まらない。

「それとそこの裏切りもの!」

そう言ってホームズに向かって指をさす。

「お前も、この女に腹を刺されたらしいな?」

「………よくご存知で」

ホームズは、動揺を見せないよう精一杯の虚勢を張って笑って返す。

あの時の辛さは、今更話すまでもない。

その虚勢を見抜けないアグリアではない。

アグリアは、いつものようにぐねぐねと動きながらホームズを馬鹿にする。

「モテない男は辛いな」

「いつかは、逆の台詞をいいたいもんだねぇ」

ホームズは、そう言うと大きく息を吐いて気持ちを整える。

「まあ、それはともかく、そこどいてくれないかい?」

そう言ってローズを見る。

ローズは、気まずそうに顔をそらす。

ホームズは、それに構わず口を開く。

「おれ達にはやらなきゃならないことがあるんだ」

「誰がどくか、バーカ!!」

「いえ、どいて頂きましょう。私達には、ジュードさんをマクスウェルに会わせなくてはならないのですから」

「ローエン………?」

ローエンは、そう言うとアグリア達を見る。

「ジュードさん、あなたがガイアスさん達を特別と感じるのは、真の大人と言えるものがあるからでしょう」

「はっ!じーさん、あんたにもねーだろ」

「恥ずかしながらそうなのでしょう。しかし、アルヴィンさん、あなたもです」

ローエンのピシャリと諌められ思わず面食らう。

「俺が…………」

突きつけられたその言葉にアルヴィンは、言葉が出ない。

「もういいよ、じーさん!あんたは先にヘブンリーしてな!」

アグリアは、そんな事面倒だとでも言うように精霊術を展開させる。

アルヴィンは、拳を握りしめる二人の間に割って入る。

「アル………?」

プレザは、アルヴィンの行動を目の当たりにし、思わず言葉を失う。

「違う………俺は………」

弱々しく言葉を発しようとするが続きが出てこない。

いつものあの余裕な表情は、どこにもない。

「おいニイちゃん!どきな!!」

弱々しい姿だが、アルヴィンは、それでもその場所を動かなかった。

精霊術の完成したアグリアから、火の玉が射出された。

目の前に迫り来る火の玉、それをヨルが喰らい尽くす。

「まあ、頑張ったんじゃない?アルヴィン」

ホームズは、そういうとヨルを肩に乗せ、一歩前に出る。

「ホームズ…………お前、どうして………」

ホームズは、ふぅとため息を吐く。

「君を許さない理由は、飽きるほどあるんだけど………」

ホームズは、レイアの方をちらりと見る。

そしてローズの方を見る。

「君を許す理由は、腐るほどあるんだよ」

ホームズの言葉にアルヴィンは、目を見開く。

「チィッ!!」

アグリアは、舌打ちをすると、剣を構える。

あくまでもホームズ達とやり合うつもりだ。

「アグリア!あなたは、どうして!!」

レイアが一歩前にでる。

「うるせぇ!!あたしらにはガイアス様に従うしかねーんだよ!!」

アグリアは、ギロリと動揺しているプレザを睨む。

「ババア!テメェもそうだろ!」

アグリアの言葉にプレザは、決意固めたようだ。

「そう………だったわね」

プレザは、本のページをめくる。

「ガイアス様は私たちのようなゴミとされた人間にも居場所を与えてくれたわ」

「プレザ………」

プレザの周りに精霊術が展開していく。

「ゴメン、アル………やっぱりあなたは……敵!!」

プレザの精霊術が展開される。

「おら!お前はどうすんだ!!」

アグリアに言われローズは、刀を二つ引き抜く。

レイアは、棍を握りしめる。

声の震えていたホームズが、脳裏に蘇る。

辛くないわけがない。

(今のホームズに戦わせる訳には………)

ホームズを庇うようにレイアが一歩前にでる。

そんなレイアの肩にポンと手が置かれる。

思わず振り返った先には、もう碧い色の名残など何処にもない金色の瞳がレイアに向けられていた。

「ホームズ………」

ホームズは、小さく頷いてレイアの前に出ながら、ローズに金色の瞳を移す。

「君は、そっちにつくんだね」

震える声で尋ねるホームズ。

ローズは、一瞬だけ、ビクリと体強張らせるが口を開く。

「ガイアス王は、エレンピオスを滅ぼすと言っていた………だから」

「今度はガイアス王ってわけかい?」

ホームズから発せられる声は、全く震えていなかった。

平坦にそして、冷え切った声に変わった。

「ミラのために刀を振るっていた君が、今度はガイアスのために刀を振るうのかい?」

言い返せないローズにホームズは、ため息を吐く。

「やれやれ、随分と尻の軽い女だね、君は」

「………なんですって」

ホームズのその言葉にローズの殺気がもう一段階膨れ上がる。

「ガイアス王の言うことは正しいのよ!!そのために刀を振るって何が悪いというのよ!」

「馬鹿言え」

ホームズは、一蹴する。

「ミラにしろ、ガイアスにしろ、君は二人のために刀を振るうんじゃあない。二人にすがって刀を振るっていただけだ」

ホームズのポンチョが風を受けてたなびく。

「周りが成長していくなか、自分だけ成長出来てない。そんな時の選択肢は、いくつかあるけれど、君は、その中で最も愚かなものを選んだ」

人の心を抉りだす、最も触れて欲しくない部分に土足で踏み込んでいく。

「目標としていたミラに君はすがりはじめた」

「なっ……………」

「そして、ミラがいなくなってすがる相手がいなくなったから、次はガイアス王ってわけだ。全く尻が軽いったらないよ」

「じゃあ、ガイアス王が間違っているというの!?」

「正しいさ。でも………」

ホームズは、そこで言葉を区切るとローズを指差す。

 

 

 

 

 

 

 

「ガイアス王の真似をする君は正しくない」

 

 

 

 

 

 

 

静かな山にホームズの声だけが響き渡る。

「ガイアス王がどうして正しくて、どんな覚悟があるか、君はそれにこれっぽっちも気付いてない」

金色の瞳は、ローズを捉えて離さない。

ローズは、もうホームズの瞳を見ていられない。

「なのにガイアス王が正しい、正しいと繰り返してれば、そんなのオウムが挨拶してるのと一緒だよ」

「うるさい!やかましい!黙れ!!」

一切の容赦も手加減も拭い去ったホームズの言葉にローズは、刀を握りしめる。

「正しさは、力よ」

ローズの鬼気迫る表情でホームズを睨見つける。

「構えなさい!!私が勝って証明してみせる!!」

ホームズは、静かに瞳を閉じる。

昔馴染みにこんなに憎悪の塊をぶつけられてしまえば、誰だって耐え続けられない。

だが、それは、結局ホームズが選んだことだ。

そして、ローズが誰かにすがらないよう正す機会は、いくらでもあった。

それをホームズは、見過ごしてしまった。

ローズのためにと行動し、結局ローズをここまで追い込んでしまった。

(なら、やることは決まっている)

「ジュード」

そしてゆっくりと口を開く。

「ローエン」

続けてローエンを呼ぶ。

「エリーゼ」

エリーゼは、驚いた顔をする。

「アルヴィン」

アルヴィンは、腕を解く。

「レイア」

レイアは、棍を少しだけ握る。

「それと、ヨル」

「………予想はつくが一応聞いてやる」

ヨルは、尻尾を振ってホームズを見る。

ホームズは、小さく頷く。

「ローズの相手、おれに預けてくれないかい?」

ジュードは、少しだけ俯く。

ホームズの気持ちは分かるのだ。

だが、それでも……

「ホームズ、今は………」

「争ってる場合じゃあない、だろう?」

ホームズは、ジュードに背を向けたまま続ける。

戦いは避けられない。

だが、確実に勝たなくてはならない。

だったら、一対一、しかもヨルなしで挑むなど了承出来ない。

イバルと戦った時もホームズ達はジュード一人に戦わせなかった。

「そう言えば、一回も使ったことなかったなぁ………」

ホームズは、にっこりと笑って振り返る。

「頼むよ、ジュード。一生のお願いだ」

ホームズのその笑顔の下に一体、どれだけの思いがあるか、分からない。

ジュードは、拳を解くと確かに頷いた。

「悪いね」

「そう思うなら負けないでね」

ジュードは、そう言うとホームズに背を向ける。

ローズの目は険しくなる。

「貴方、馬鹿じゃないの?誰の手も借りず、ヨルの力も使わず、私に勝てると思っているの?」

ホームズは、視線だけレイアに僅かに移す。

「『友達が馬鹿やらかしたら、馬鹿やらかしても止める、それが友情ってもんだよ』」

レイアは、思わず振り返る。

ホームズは、あの時のレイアの覚悟を身を以て味わっている。

だからこそ、この言葉に重みがある。

「一人きりだって負けないよ」

金色の瞳に覚悟が宿る。

ローズは、ぎりっと歯ぎしりをして構える。

「来なさい……私が勝って証明してみせる」

ホームズは、垂れ目を険しくさせ、ローズを睨みつける。

「フン……ピーチクパーチク、オウムがさえずるんじゃあないよ」

ホームズは、一歩前に足を出し、左手の盾を構える。

あの時とは違う。

あの時は、ローズに思わず構えを取らされた。

だが、今回は違う。

今回は、ホームズが自らの意思で取った。

思わず取らされた構えと自ら取った構えでは、その重みが違う。

ローズもそれを感じ取り構えに力が入る。

 

 

 

 

 

 

 

睨み合う二人は、そのまま同時に踏み込んだ。







ではまた百八十一話で

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