1人と1匹   作:takoyaki

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百八十三話です。



今回はこの子たち



てなわけでどうぞ


女は度胸

「ファイアーボール!!」

アグリアの火の玉がレイアに向かって放たれる。

レイアは、身体を捻ってかわすと棍の先を構える。

「兎迅衝!!」

棍と共にレイアが全力でかける。

アグリアは、それを大剣で受け止めた。

「喰らうかよ!ブス!!」

アグリアは、そのままレイアを押し返す。

思わず体勢を崩したレイアにアグリアの追撃が襲いかかる。

そこにアグリアが追撃を仕掛ける。

体勢の崩れたレイアに防ぐすべはない。

「レイア!」

そこにアルヴィンが割って入る。

「え?」

レイアが驚いた声を上げる。

アルヴィンは、それに応えることなくアグリアに向かって銃を放つ。

アグリアは、身体をぐにゃりと曲げてかわす。

「おいおい、お前らのとこは裏切りものしかいないのか?」

アグリアのその言葉にアルヴィンは、拳を握りしめる。

レイアの方をまともに見ることができない。

当然だ。

それだけのことをアルヴィンは、やって来た。

「アルヴィン!!」

レイアの声にはっと顔を上げる。

すると目の前には、プレザの氷の矢が迫っていた。

自責の念にかられていたアルヴィンは、とっさのことに反応出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、そんなに死にたいのか?」

 

 

 

 

呆れたような低い声と共に生首のヨルが、プレザの精霊術を飲み込む。

 

 

 

 

 

「ヨル!」

突然現れたヨルにアルヴィンだけでなく、ジュード達も驚いている。

「ホームズの所にいるもんだとばかり………」

「俺があそこにいたらイカサマを疑われるだろ」

ヨルは、そう言うといつもの黒猫に戻りレイアの頭の上に乗る。

レイアは、頭にいるヨルを見る。

「いいの?見なくて?」

「別に」

ヨルは、短く返すとチラリと後方支援に徹しているエリーゼを見た後、レイアの肩に移動する。

「あの馬鹿どものことより、自分の事をどうにかしたほうがいいぞ」

「だよね……」

レイアは、きゅっと棍を握りなおす。

ヨルは、レイアの頭でアルヴィンを眺める。

「どうする?あの猫女と戦えないなら、誰かに代わってもらったらどうだ?」

ヨルの言葉にアルヴィンは俯向いたゆっくりと首を横に振る。

「いや、これは……こればっかりは……俺がやらなきゃいけないことだ」

アルヴィンの言葉に頷くとヨルは、レイアの額をぺしぺしと叩く。

「おい、レイア」

「わかってるって!」

レイアは、そう言うとアグリアに向かって駆け出す。

アグリアは、ニヤリと笑う。

「上等!!」

アグリアは、ニヤリと笑うと大剣をレイアに向かって振り下ろす。

レイアは、棍の先でそれをいなすとそのまま棍の柄に当たる部分をアグリアに向かって放つ。

レイアの棍の柄はアグリアの横腹を捉える。

「ぐっ………!」

走る衝撃にアグリアは、顔をしかめる。

「調子に乗んなブス!!」

アグリアは、横腹にある棍など構わず、剣を振り抜く。

まさか、そんな反撃をしてくるとは思わなかったレイアは、無防備だ。

そんなレイアに剣が迫る。

「ハァッ!」

その剣をジュードは、レイアに届く前に殴りつけた。

「ジュード!!」

「レイア、気を抜かないで!」

ジュードは、そう言いつつアグリアに拳を放つ。

「それは、あなたもね」

次の瞬間ジュードとレイアの足元に光の陣が現れる。

プレザの守護方陣だ。

現れた光の陣は、レイアとジュードを縛る。

「ぐっ………」

近くにいたアルヴィンも拘束される。

プレザは、それを視界の端に捉えながらも精霊術を詠唱する。

「ヨル!早く!」

レイアの声にヨルは首を何とか横に振る。

「あの女…………」

ヨルは忌々しげにプレザを睨む。

レイアは、不思議そうにヨルを見る。

地面に足をついていないヨルなら拘束されていないはずだ。

だが、ヨルは動けない。

「アハハハハーーー!」

アグリアは、身体を仰け反りながら笑う。

それは、もう本当に面白そうに馬鹿にしながら笑っている。

そして笑い終わると、反らした身体を戻す。

その勢いを殺さず、そのまま剣を地面に突き立てる。

「バァーカ!」

剣が地面に突き立てられた瞬間、ヨルの顔が歪む。

「あたしたちが何度も同じ手を喰らうわけないだろ?」

守護方陣の光で反射するその中に黒い紐のようなものが、浮かび上がっていた。

ジュードは、それを見て理解する。

ヨルは、彼女らを捕らえるためにいつものように尻尾を地面に這わせていた。

だが、今回はそれが裏目に出た。

拘束されているため精霊術を喰えない。

アグリアは、ニヤリと笑うとリリアル・オーブを輝かせる。

「"テメーら、丸焼きだ!!"」

その瞬間アグリアを炎が囲む。

溢れるマナがただの術技ではない事を告げる。

「ヤバイ……秘奥儀だ!!」

レイアは、何とか動こうとするが動けない。

「"焼き払え!ロギス・イーター!!"」

アグリアが両手を広げると同時に炎が爆発的に広がった。

炎は、全てを飲む混む波となってレイア達に襲いかかる。

「ダイダルウェイブ!!」

その炎を抑えるようにローエンの精霊術が完成した。

正真正銘の水が渦を巻きながらアグリアの炎とぶつかり合う。

流水は、一瞬で水蒸気となる。

突然体積の大きくなった水が轟音とともに爆発する。

「っ!」

レイア達は、地面に叩きつけられた。

アグリア達も崖ギリギリまで追い詰められる。

アグリアは、忌々しそうにローエンを睨む。

「やってくれるじゃん、ジーさん」

「えぇ。まだへぶりーするには、早すぎますからね」

ローエンは、そう返すと細剣を構える。

「なら、もう一押しかしら?」

プレザは、面白そうに笑うと本のページをめくる。

そう言ったプレザの前には、氷が現れる。

しかし、現れた氷がローエンに向かって放たれるより早く、アルヴィンの銃弾がプレザの本を弾く。

精霊術が失敗したプレザに変わり、アグリアが火の玉を放つ。

ローエンは、慌てることなくゆったり構えている。

そんな火の玉とローエンの間を遮るように生首のヨルが現れた。

(うそだろ!確かに剣で指して拘束しといたはずだぞ)

アグリアが驚いて地面に視線を這わせるとそこには、千切れた尻尾があった。

生首となったヨルが、火の玉を丸呑みにする。

ヨルは、巨大生首から通常の黒猫の状態に戻る。

その瞬間、レイアがヨルの影から現れ、アグリアに向かって棍を突き出す。

「ハァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

しかし、

「残念だったな、ブス!」

アグリアの剣がそれを防いだ。

剣の腹でレイアの棍を受けるとアグリアは、思い切り振り抜く。

「うっ………」

思わずタタラを踏むレイアにアグリアは、振り抜いた勢いをそのままに両手剣を振るう。

レイアは、態勢を崩しながらも棍を横にして攻撃を防ぐ。

「アハハハ、残念だったな!千載一遇のチャンスを逃しちまってよ!」

喋りながらも更に剣戟をアグリアは、重ねていく。

棍で剣を防いでいるレイアの腹をアグリアは、蹴りつける。

「………!」

思わず後ろに下がるレイア。

その隙にアグリアは、小さな火の玉を作り出し、ヨルにぶつける。

「ぐっ…………」

火の玉により吹き飛ばされたヨルは、地面に落ちる。

レイアとヨルから距離の出来たアグリアは、今度こそちゃんと精霊術を作り上げ、火の玉をレイアに向かって放った。

ヨルが生首になるより早く火の玉は、ヨルとレイアに襲いかかった。

「ゔっ……」

「っあ!」

ヨルとレイアがそれぞれ苦悶の声を上げる。

そんな二人を見てアグリアは崖を背にして大笑いしている。

「ヤロ…………」

ヨルは、悔しそうに歯をくいしばる。

アグリアが一体どういうつもりで戦っているのか、丸分かりだ。

「アハハハ!その猫、対策さえ整えちまえば、どうってことないな!!」

ヨルが、精霊術を食べるのにどうしても若干の時間が必要だ。

アグリアは、そこの隙をついた。

ヨルの術喰らいを発動させないよう、極力発動まで時間のいらない精霊術を多用することによって、ヨルを封じている。

「どうだ、ブス!頑張って勝てそうか?」

「…………?」

レイアは、棍を杖代わりに立ち上がる。

「その猫の力も使えず、お前一人じゃあたしには勝てない」

「…………」

「頑張ったってどうにもならないことがこの世にはあるんだよ!!」

その嘲るようにそして言い聞かせるように罵るアグリアを見て、レイアは、顔を伏せる。

確かにこのままでは勝てない。

(だけど………)

レイアは、伏せた顔を上げアグリアを睨みつける。

「認めない!その考えだけは、絶対!」

「なっ…………」

もう完全に心が折れたと思っていたレイアから思わぬ切り返しが飛んできて、アグリアは面食らう。

「わたしは、頑張ってここにいるんだ……」

ゆらりと杖を地面から離す。

「それが間違いだなんて思えない……」

地面から離れた棍は、くるりと円を書いて回るとアグリアに向けられる。

「頑張ったって勝てないっていうなら、わたしは頑張って頑張って勝つ!」

「─────っ!世間を知らない甘ちゃんが!調子乗ってんじゃねーよ!ブス!」

アグリアは、憎悪を乗せレイアに斬りかかる。

レイアは、迫る剣をかいくぐり、棍をアグリアの腹に向かって放つ。

響く衝撃に思わず後ろに下がる。

「コイツ………」

思わぬ反撃に顔をしかめるアグリア。

だがいつもの人を嘲る表情に戻ると、レイアに反撃を仕掛ける。

アグリアは、レイアの懐に入り込み剣を横薙ぎに振る。

後ろに下がってかわそうとするが、僅かに剣がレイアの腕をかする。

「っつ!」

レイアの腕から血が流れる。

レイアが痛みにひるんだ瞬間、アグリアは、地面に手をついて黒い紐、ヨルの尻尾を引っ張り上げる。

「うっとおしいんだよ!」

そう言って尻尾ごと投げ飛ばす。

ヨルはくるりと宙返りし、尻尾を戻す。

ヨルに攻撃を仕掛けている間にレイアの棍がアグリアに襲いかかる。

舌打ちをして、アグリアは剣で受ける。

攻撃が通らなかったことを悟るとレイアは、棍を逆方向から打ち込む。

「ぐっ…………」

アグリアの息が詰まるがすぐに持ち直し、剣を振るう。

今度は、レイアか棍てアグリアの剣を受ける。

一太刀目は防いだ。

だが、そこからアグリアは更に剣戟を繋げていく。

乱雑に見えて確実にレイアの反撃を潰している。

ヨルが尻尾を伸ばそうとすれば、すかさず、ヨルに向かって攻撃をする。

それをレイアが防げば、アグリアは、容赦なくレイアの方に刃を向ける。

(…………これが、四像刃(フォーブ)、無影のアグリアってわけか……)

レイアは、攻撃が僅かに切れた隙に棍を振るう。

だが、アグリアにとってそれは予想通りだったようだ。

体を曲げながら避けると更に攻撃を続ける。

「バレバレなんだよ!」

アグリアは、レイアに足払いをかける。

「!!」

剣にばかり気を取られていたレイアは、態勢を崩す。

崩れ落ちそうになるのを踏み込んで堪える。

だが、その僅かな隙が命取りだ。

大上段に構えたアグリアはニヤリと笑う。

「あたしの勝ちだ!ブス!」

アグリアは、崖を背にして振りかぶる。

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間アグリアの側頭部に衝撃が走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思わず痛みのした方を振り返ると、そこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティポにぶら下がり、宙に浮きながら杖を振るうエリーゼの姿があった。

エリーゼは、そのままスカートを翻し詠唱しながらプレザとアルヴィンの間に割って入った。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

レイアの頭から肩に移動する時、ヨルが一度だけ、たった一度だけ目配せをした。

その一度だけの目配せで、エリーゼにはヨルが何を企んでいるのか分かってしまった。

ホームズとヨルと共にジャオと戦ったエリーゼにわかってしまうのは、気にくわないが、仕方のないことなのだろう。

エリーゼは、戦いが激しくなったところを見計らって崖から飛び降りる準備をする。

下から吹き上げる風に思わずひるむ。

過去に何回かこの技を使ったことはある。だが、それは全て着地が保障されていた。

今回は違う。

今回は、着地は保障されていない。

失敗すれば本当に助からない。

(だけど………!)

あのヨルが、ホームズの作戦抜きでエリーゼに頼んだのだ。

ホームズの生死が賭かっていない戦いだ。本来なら、ヨルに戦う必要などないのだ。

だが、ヨルは、その戦い現れ、わざわざ攻撃を受けている。

エリーゼは、口をきゅっと結んで飛び降りる。

そして、ティポにぶら下がり、空中を進んでいく。

おおよその位置に付いた瞬間エリーゼは、崖から現れる。

エリーゼは、大きく杖を振りかぶる。

(ここで決めなきゃ…………!)

そのままアグリアのこめかみを打つ。

(女じゃない………です!!!)

アグリアに一撃を与えるとアルヴィンの所へ急ぐ。

「深淵の盟約を果たせ!」

詠唱をしながら距離を詰める。

プレザの精霊術は、アルヴィンの眼前まで迫っている。

どちらが早いか、均衡した勝負だ。

しかし、アルヴィンに届くより前に見覚えのある人影がスカートを翻して現れた。

(間に合った!!)

杖を向け最後に技の名を告げる。

 

 

 

その名は……

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「『リベール・イグニッション!!』」

エリーゼの術とプレザの精霊術がぶつかり合う。

アグリアは、不意打ちを食らい、クラクラとする頭を押さえながらエリーゼを睨む。

プレザは、精霊術を発動させながらも目を丸くする。

アグリアの後ろは崖、アルヴィンの後ろも崖だ。

そんな二人の後ろから現れた。

後ろを取ることなどありえない。

いや、一つだけ手がある。

((崖を飛んできた!?))

そう道が他にないならそれしかない。

崖から降り、一同の死角を通ってアルヴィンとアグリアの後ろから現れる。

だが、一歩間違えば、自分が崖から真っ逆さまにおちてしまう。

そんなリスクのある手を十二歳の少女がやりきったのだ。

(っ!なんで気づかなかった!あの猫からは、目を離さなかった…………のに?)

アグリアは、はっとしたように思い返す。

そう、ずっとヨルにばかりアグリアは、気を取られていた。

如何に術喰らいだけでなく、尻尾を伸ばすという非常識な手段を平気で使ってくるこの化け物を封じることだけを考えていた。

だから、エリーゼから意識を外してしまった。

 

 

 

─────『手品師が右手を見せたら左手を見ろ』─────

 

 

 

 

 

 

 

ウィンガルの言葉が脳裏に蘇る。

まんまと油断した。

全てヨルの思い描いた通りだったのだ。

どこからかは分からない。

どこまでがホームズの入れ知恵なのか?それともヨルの考えなのか?

だが、そんな事はどうでもいい。

それよりもエリーゼが詠唱を始めている。

何としても阻止しなくてはならない。

突然状況変化にアグリアは、一人忘れてしまう。

そのため、いつの間にか立ち上がっていることに気づかなかった。

「活伸棍・円舞(ワルツ)!!」

アグリアをレイアの棍の舞が捉える。そして、彼女のリリアル・オーブが光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…………!」

エリーゼの最大出力は、プレザに押されていた。

これでは、ジリ貧だ。

いずれ、エリーゼの方が押し負ける。

おまけにこれだけのことをやりながら守護方陣が消える気配がない。

(このままじゃ………!)

相手は四象刃(フォーブ)

エリーゼ一人で、対抗出来るはずがない。

分かりきっていたことだ。

実力差なんて、最初から火を見るよりも明らかだ。

しかし、諦められないわけがある。

どうしたって、その実力差というものをひっくり返して来たあの男の顔がよぎる。

(考えなきゃ…………勝つにはどうしたらいいか…………)

エリーゼは、杖を握る手を強める。

(ホームズなら、どうするか!!)

「ローエン!ジュード!」

エリーゼは、考えに至ると同時に口にしていた。

勝てない相手への勝ち方。

それは、一人で戦わない、ということだ。

「お任せ下さい………!」

守護方陣で拘束されながらローエンは、何とかナイフをプレザの足元に投げる。

そして、一瞬だけナイフで結界を作り出し、プレザを守護方陣から隔離する。

プレザから離れた守護方陣は、搔き消える。

「ジュードさん!!」

ローエンの言葉とジュードが動き出したのは、同時だった。

ジュードは、プレザの本に狙いをつける。

(さっき、アルヴィンが本を弾き飛ばしたら精霊術が消えた……だったら!)

ジュードは、踏み込みそして、プレザの本を蹴り上げる。

「なっ!?」

宙を舞う本、そして消えるプレザの精霊術。

それが消えたことにより、エリーゼの精霊術は真っ直ぐに進み、遂にプレザをとらえた。

「─────っ!!」

突如自分を襲うその衝撃にプレザは、声も出ない。

プレザを捉える精霊術。

だが、それだけではダメだ。

それだけでは倒せない。

「だったら………!!」

エリーゼのリリアル・オーブが輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「"ぶっ飛べ!!"」

レイアの棍がアグリアの顎をかち上げる。

「"ぐるぐるぐるー!!"」

そのまま棍を回す。

「"ブンブン回して………"」

レイアは、棍を高々と宙に放り投げる。

「"大ジャーンプ!!"」

宙を舞う棍をレイアは、ジャンプして掴む。

そして、アグリアに狙いを定める。

アグリアは、剣を構える。

狙いを定めたら、あとは振り下ろすだけだ。

「"活伸棍────」

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

『「"目標ロック!!"」』

ティポが、プレザに狙いを定める。

「"チャージ完了!発射!"」

エリーゼは、杖の先でマナを集め、ティポを打ち出す。

『"覚悟しろー!!"』

エリーゼに打ち出されたティポは、くるくるとプレザの周りを回りながら筒状の魔法陣を描く。

その魔法陣の中にプレザは、閉じ込められる。

描き終わるとティポは、すっとエリーゼの元に戻る。

『"ただいまー!!"』

ティポの言葉にエリーゼは、頷いて杖を振り上げる。

そのゆっくりとした起動がプレザに終わりを告げる。

エリーゼの口が技の名を告げる。

名は、

 

 

 

 

 

 

「"リベール─────」

 

 

 

 

 

 

あげていた杖を振り下ろす。

構えていた棍を振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「────ゴーランド!!"」』

「─────神楽!!"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリーゼの精霊術は、魔法陣全てから紫色の闇の精霊術を発動しプレザを包み込んだ。

その闇の精霊術の奔流にプレザは、なす術がない。

 

 

 

 

 

レイアが棍とともにアグリアに向かって落下してきた。

剣で防ごうと構えたが、レイアの棍は、それすらも貫きアグリアへと注がれた。

「─────っ!!」

 

 

 

 

 

「「『ハァアアアアアアアアアアアアアア!!』」」

 

 

 

 

 

 

 

 

二人とぬいぐるみの慟哭が雨粒を弾きながら、山に響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、水飛沫が晴れる頃そこに立っていたのは、

 

 

 

 

「………ケホ」

「ふぅ………」

レイアとエリーゼだ。

二人は、お互いがその場に立っているのを確認するとにっこりと笑ってハイタッチをした。

 

 

 

 

 

 

 

ヨルはそんな二人を遠目に見ながら溜息つく。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、ガラじゃないことはやるもんじゃないな」

 

 

 

 

 

 

そう言って千切れた尻尾を元どおり直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 










勝敗つきました。
残るは、あの子たちです。


では、また百八十四話で( ´ ▽ ` )ノ

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