1人と1匹   作:takoyaki

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百八十五話です!



今回でこの章は終わりです!



てなわけで、どうぞ


雨が降ったその後に

「ホームズ!ローズ!」

ジュード達は慌ててホームズとローズに駆け寄った。

エリーゼとジュードが二人の治療をする。

するとホームズの方が先に目を覚ます。

「ありぃ?」

「呑気な声出してる場合じゃないよ」

ジュードは、淡々とホームズの治療を進めていく。

「プレザさん達は?」

ホームズの言葉にレイアが指をさす。

そこには、倒れているプレザとアグリアを見張るアルヴィンとローエンがいた。

「そ、倒せたんだ。やっぱり凄いね君たち」

「褒めてくれて嬉しいよ」

「出来ればにこやかな笑顔で言って欲しいなぁ………」

ホームズは、ジュードの冷め切った視線に耐えながら治療を受ける。

「まあ、こうなるって分かってたけどね」

ジュードは、そう言いながら治療をしていく。

するとエリーゼ達が治療をしているローズが目を覚ました。

「ん……?」

「起きたかい、ローズ?」

ローズは、ぼんやりとしながら治療をしているエリーゼ達を見る。

「………私まで治療してくれるの?」

「あ、そうか」

レイアは、ポンと手を叩く。

そうホームズとは、本気でやり合っていた。

敵と考えても何らおかしくはない。

「何も考えてませんでした」

エリーゼは、にっこりと笑ってローズの治療を続ける。

ローズは、首を動かしホームズの方を見る。

「見せかけの強さにハリボテの信念、か………」

ローズは、ポツリと呟く。

ホームズの言うことは全て的を得ていた。

(きっとホームズ達が来なければ、家族は消えることはなかった)

エレンピオスを憎む心、そして、それがエレンピオスを滅ぼそうとするガイアスの信念とあった。

だから、ガイアスの元に走った。

楽だったからだ。

信念を自分で持つよりも人の信念に同調するほうがはるかに楽なのだ。

例えその信念が崩れる日が来ても自分は傷つかない。

逆に信念が崩れなければ、自分は正しい道を歩み続ける事が出来る。

ホームズを殺しかけガイアスの信念に寄り添った時には、もうローズ自身戻れなくなっていた。

「でも、それでも助けてくれた………」

 

 

 

 

 

─────仲良くしてみたら?きっとその子は、友達思いだよ。断言してもいい──────

 

 

 

 

今はいない姉の言葉が蘇る。

(本当、その通りね………どうして忘れてたんだろ)

ホームズに抱く感情は、憎悪だけではない。

少しだけ時間はかかったが、あの雪の降る夜なくした感情がローズの元へと戻ってきた。

視線の先のホームズは、ローズより先に目が覚めただけあって身体を起こせるところまで回復していた。

ジュードは、刀を掴んで血だらけになっているホームズの手をを治療するため、盾を外していた。

そして外されて露わになった左手を見て、ローズは、目を丸くしてそれからポツリと呟く。

「ねぇ、ホームズ、その指輪………」

ローズの言葉にホームズは、ハッとしたような顔をして隠そうとする。

だが、それより先にローズは言葉を続ける。

「どうして、右手と左手で同じデザインなの?」

言葉が出ないホームズに変わり、ローズは少しずつ言葉を繋いでいく。

辿り着くのを止めてはならない。

「言ったわよね。確か、ルイーズさんから貰ったって」

「………」

 

 

 

 

 

 

「どうしてルイーズさんがくれたものと同じデザインなの?」

 

 

 

 

 

 

「………えっと……」

ホームズは、必死にこの場を切り抜ける言葉を探す。

気付かせるわけには、いかない。

だが、もう遅い。

ローズは、気づいてしまった。

なにせ、それは女の子なら誰もが憧れるものだから。

「それ、結婚指輪(丶丶丶)じゃないの?貴方の両親の」

ホームズは、言葉を続けようと口を開くが、答えることできずに小さく頷く。

ローズは、そこから更に辛そうに目を伏せる。

結婚指輪があることは問題ではない。

問題は、何故ホームズがそれを持っているかということだ。

この短い間に何度後悔したか分からない。

しかし、自分から言わなければホームズは、きっと永遠に教えてくれない。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、どうして死んだ旦那さんとの結婚指輪を貴方が持っているの?どうしてルイーズさんが持っていないの?」

 

 

 

 

 

 

ローズの言葉にホームズは、諦めたように笑っている。

「分かっているんじゃないのかい?」

ローズは、静かに頷く。

「ルイーズさん………もう亡くなってるその二つの指輪は、形見、違う?」

涙を堪えながら紡がれたローズの言葉にホームズは、静かに頷いた。

そうホームズは、確かに嘘は言っていない。

指輪は、母親から貰ったものだ。

ただ、タイミングが死ぬ間際だったということだ。

それだけで、意味合いが変わってくる。

指輪を失くさないよう常に指にはめ、そして、壊さぬよう拳を使わないで戦う。

気付いてしまえば単純なことだ。

ホームズの一見無意味なこだわりは、全てここに繋がる。

実を言うとミラは、あのナハティガルとの戦いの後、あの盾が砕け散った時、ホームズの両手に同じデザインの指輪がある事に気付いた。

だが、人間とずれているミラには、不思議だなとしか思わなかった。

しかし、ホームズがポケットに手を入れて隠した時、それが違和感として残った。

幸か不幸か、それをレイア達に相談したため、レイアはホームズの母の真相に誰よりも早く辿り着いたのだ。

ローズは、腕で目を隠す。

 

 

 

 

 

 

 

─────貴方には、母親が、ルイーズさんがいるじゃない!!そんな貴方が知ったような口をきかないでよ!!─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん………ホームズ、ごめんなさい」

震える声に涙を堪えようと我慢している様子が伺える。

だが、腕で隠したその隙間から水滴がいくつも伝って落ちていく。

「私………私…………」

あの時、ホームズだっていっぱいいっぱいだったはずだ。

それでもローズの世話を一生懸命やってくれた。

そんな昔馴染みにかけた一言を思うとローズは、やりきれない。

もっと掛けるべき言葉があったはずだ。

もっとやれることがあったはずだ。

(なんで、なんで、私はいつも終わってから………)

ローズの治療もホームズの治療もいつの間にか終わっていた。

ホームズは、声を押し殺して泣くことを堪えているローズの腕を退ける。

「我慢しなくてもいいだろう?」

覗き込むホームズの金色の瞳を見ると更にローズの目から涙が溢れる。

「泣いていいわけないでしょ………私が、貴方に何をやったと思ってるのよ………」

必死に歯をくいしばるローズ。

「泣いて許しを請う真似なんて私が許さない…………!」

ローズは、そう言って腕で顔を覆うとする。

それをホームズが抑える。

「ホームズ……」

「あのねぇ、息をするのを止めろなんて言わないだろう?それと一緒だよ」

ホームズは、そう言ってハンカチをローズに渡す。

「ほら、使いたまえ」

ローズは、受け取ったハンカチで涙を拭いながら大声で泣き出した。

ホームズは、少しだけ微笑んでそのままアルヴィンとローエンの元へと歩いて行った。

途中で振り返るとレイアとジュードとエリーゼを手招きして呼ぶ。

三人は顔を見合わせるが、直ぐにホームズを追った。

レイアは、ちらりとホームズを見る。

「ホームズ、いいの?」

「今のあの子は、泣いてる時に側にいない方がいいだろう?」

ホームズは、何てことなさそうに返す。

基本的に泣き止むまでは側にいるホームズから出てきた言葉にレイアは、一瞬だけ首をひねるが直ぐに納得したように頷く。

「まあ、あれだよ。笑顔でいて欲しいけどさ、それ以上に泣くことを我慢して欲しくないんだよねぇ」

ホームズは、そう続けるとローエン達の元に辿り着く。

「そう言うことローズに言ってあげなよ」

ジュードの言葉にレイアとエリーゼも頷いている。

「いいの。こんなのただの感想なんだから。あの子は知らなくてもいいんだよ」

ホームズは、ひらひらと手を振る。

レイアは、そんなホームズを見てため息を吐いた後にっこりと笑う。

「そんなんだからホームズは、モテないんだよ」

ホームズは、肩をすくめる。

プレザは、ホームズの気配を感じると顔を上げる。

「貴方の策かしら?」

「?何の話です?」

「俺の策だ」

ヨルは、ホームズの足元で欠伸をしながら返す。

「…………何したんだい?」

「したのは、エリーゼだ」

ホームズは、エリーゼに視線を送る。

エリーゼは、悪戯っぽく笑う。

「後で説明しますね」

そんなホームズ達とアルヴィンを見るとプレザは、力なく微笑む。

「アル、数日間だけだったけど、貴方の側にいられて幸せだった」

プレザの言葉にアルヴィンは、苦しそうな表情になる。

「プレザ……俺は……」

「よかった。貴方もいたいと思える場所があるわ」

プレザは、優しく、そして寂しそうな顔でアルヴィンを見る。

「アルヴィン、気付いて」

ローズは、ゆっくりと涙を拭きながらプレザ達に近づく。

「貴方もよ、お嬢さん。貴方の居場所は、こっちじゃないわ」

プレザに優しく言われローズの瞳から再び涙が溢れ出した。

「プレザさん………」

次の瞬間、地響きが起こった。

思わぬ衝撃にホームズ達はよろけたが、何とか踏ん張った。

だが、プレザとアグリア、そしてローズの地面は、崩れ去った。

「なっ!!」

アルヴィンとレイア、そしてホームズは走り出した。

「ローズ!!」

ホームズは、手を伸ばすがローズには届かない。

ヨルの非常識も間に合わない。

迫るホームズの手が届かないことを悟ったローズは、寂しそうに笑う。

「バイバイ」

ローズは、それだけ言うとゆっくりと崖下へと落ちていった。

ホームズの脳裏に巡るのは、別れてきた人たちの最後の顔だ。

(させるか!そんなこと!!もうあんな顔を見たくないと思いながら生きてきたんだよ!!)

「くそったれええぇええええええ!!」

ホームズは、ローズに向かって手を伸ばしながら落ちていった。

後もう少し、それを何度も繰り返しながらようやくローズの手を掴んだ。

ローズは、目の前で自分と同じように落ちていくホームズを見て目を見張る。

「貴方………どうして!!」

ホームズは、その質問に答えずローズを地面から庇うように抱きかかえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……」

ヨルは、ため息と共にマーロウから貰ったリリアル・オーブを取り出す。

結局ホームズは、改善されたとはいえ、生き方を曲げなかった。

その挙句がこれだ。

正直に言ってしまえば、助ける義理はない。

自分から飛び降りたのだから、殺害で死ぬわけではないのだ。

死んだところでヨルまで死ぬということはない。

寧ろ封印が解ける。

ヨルにとっては万々歳だ。

だが、そんなヨルの脳裏によぎるのは、あの雨の日とそしてもう一つ廃墟となった村だ。

「…………約束だからな」

ヨルはそう言うとがりっとリリアル・オーブを噛み砕いてホームズを追って落ちていく。

リリアル・オーブに蓄積されたマナがヨルの中に集まっていく。

そして、黒霞がヨルを包む。

それが晴れるとそこには、いつかの黒虎の姿があった。

「ヨル………」

エリーゼは、ポツリと呟く。

ヨルは、真っ直ぐに駆け下りていく。

ホームズは、そんなヨルを見つけるといつもの小憎らしい笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来るのが遅いゼ、ヨル」

「言ってろ」

ヨルは、そう言うとローズを抱きかかえるホームズを自分の背中に乗せ、そのまま空中へと飛び上がった。

ホームズは、つかまりながらヨルを見る。

「ねぇ、ヨル」

「無理だ。お前とその小ムスメを乗せるのが限界だ。他の余裕は、ない」

遥か崖下へといるプレザとアグリアを思うとホームズの瞳が少しだけ揺れるが直ぐに頭を振ってヨルの方を向く。

「ありがとう、ヨル」

ヨルはニヤリと笑う。

「約束したからな、マーロウと」

 

 

 

 

 

 

 

─────分かった…………元々一連托生の身だ。一回だけはどうにかしてやる─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そうだったね」

「まあ、もう一人とも約束しているんだが………」

ヨルは、そう言ってぴょんと崖の上に飛び乗った。

その見覚えのない姿にレイアとジュードとアルヴィンは、目を剥いて驚く。

「ヨル………なの?」

「当たり前だろ」

ヨルは、そう返すとホームズを下ろす。

ホームズは、抱きかかえていたローズを下ろす。

そして、いつもの黒猫の姿に戻った。

「プレザとアグリアは?」

アルヴィンの言葉にヨルは首を横に振る。

「………そっか……」

アルヴィンは、悲しそうに目を伏せた。

ローズは、顔を俯かせ再び泣く。

「どうして………どうしてよ!どうして………貴方は、私を………」

ホームズは、俯向くローズの顔を両手で挟んで上げさせる。

「つまらないことは、言うもんじゃあないよ、ローズ」

ホームズは、そう言って少しだけ拗ねたような顔で続ける。

「友人に生きて欲しいって思う理由は、腐るほどあるんだよ」

ホームズの言葉にローズは、再び涙が溢れる。

「ハンカチ1枚じゃ足りなそうだねぇ………」

「うるさい!やかましい!だまれ!!」

ポカポカと叩きながらローズは、大泣きした。

ホームズは、甘んじてそれを受けながら、ポツリと話しかける。

「………ねぇ、君もおれ達と来ないかい?」

ホームズの言葉にローズは、目を丸くする。

「いいの?だって、私は………」

「NOじゃないってことなら、了承ととるよ」

ローズの言葉を遮ってホームズは、尋ねる。

目をそらすこと無く告げるホームズにローズは、とうとう泣き崩れた。

自分が何をやったか、何を言ったか、それが分からないローズではない。

「本当に………いいの?私は………貴方に一体どれだけのことを………」

「なんだい?行きたくないのかい?」

ローズは、涙でぐしゃぐしゃになりながら言葉を続ける。

この言葉を言うことなど許されないと思っていた。

アレだけのことをやっておいてこんな我儘が許されるわけがない。

それでも叶うなら、という思いが口から溢れる。

「行きた……い………みんなと一緒にいたい………」

ホームズは、にっこりと笑った。

「おかえり、ローズ」

ホームズの言葉にローズは、涙を拭う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん………遅くなってごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 








章の終わりという事で少し感想を!


仲違いが始まってから約三十話以上でようやく仲直りです。
長かったなぁ………
あまりにもいないせいで、ロー……なんとか、レイアやエリーゼやマープル姉さんの方がヒロインしてるなど……(笑)いやはやその通りですね、本当。返す言葉もございません。
まあ、この展開は、この1人と1匹を考えた時から考えていまして………。
こんなヒロインって珍しくね!?とか考えていたのですが、まさか本家の方であんな形でやられるとは、思いませんでした………。
まあ、その分あれを超える!と気合いが入ったので良しとしましょう!
そして、ホームズとローズの最後の戦いは、miwaのdon't cry anymoreを聞きながら読んでもらえると嬉しいです。
個人的にホームズのテーマソングとしています。
因みにハ・ミル戦は、The Everlasting Guilty Crownです。
言うまでもなくローズのテーマソングです(笑)
歌詞を書くことは出来ないのでなんとなくぐらいで感じてもらえれば嬉しいです。




まだまだ語り足りないですが、長くなったのでここらで切ります!
でも私としても思い入れがあったというわけでどうか一つ!!
いずれ各章の裏話も話せたらと思います!

ではまた百八十六話で( ´ ▽ ` )ノ




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