1人と1匹   作:takoyaki

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百八十六話です!



今回から新章です!!



てなわけで、どうぞ


マクスウェル
虎穴に入らずんば何も得ず


「………不思議だな」

ヨルは、ホームズとローズのやり取りを見ながらそう呟いた。

自分を殺しかけたような相手をホームズは、受け入れている。

そんな光景がヨルには、信じられなかった。

瞳の色のことは、記憶が消えているからと納得出来るが、それでも自分だったら無理だ。

「一度壊れてしまえば、それまでじゃないのか?」

ヨルの言葉にローエンは、ヒゲを撫でる。

「それは、人によりますよ。壊れてしまえば、もう二度と会いたくないと切り捨てて生きていく、そういう人もいますし、ホームズさんみたいに直して繋ぎとめておこうとする人もいます」

「お前みたいにか?」

ヨルの言葉にローエンは、寂しそうに微笑む。

「私は……そうですね……選べませんでした。逃げてしまった。その事に後悔がないといえば嘘になります」

「後悔、か…………」

「えぇ。ヨルさんにもそういう方が?」

ヨルの脳裏に自分と対峙する炎を纏った精霊が蘇る。

ヨルの側にいて、そして、一番最初にヨルと戦ったものだ。

「微妙なところだな。まあ、俺というより、奴の方だろうな」

思い出すのだ。

あの時の感情を押し殺した奴の顔を。

ずっとその意味を考えていた。

「なるほど、ようやくわかった気がする」

ヨルは、そう答えながら俯いているレイアに気づく。

レイアの元にジュードが行くが、レイアは、大丈夫と首を振る。

「わたしは、いいからアルヴィンのところに行ってあげて。わたしが行っても、ね」

レイアは、アルヴィンに撃たれている。確かにそれは、お互いのためにならない。

ジュードは、頷くとアルヴィンの元に歩いて行った。

「損な性格だな」

ヨルの言葉にレイアは、腰に手を当て胸を張る。

「じゃなきゃ、ジュードなんか好きにならないよ」

その言葉にローエンとヨルは目を丸くする。

「いいますね……」

「まあね」

レイアの視線の先をヨルは追う。

「白髪女の手、掴めなかったのか?」

ヨルの言葉にレイアは、首を振る。

「掴めた。だけど、振り払われちゃった。『頑張ってもこの世にはどうにもならないことがあるんだよ!』って」

レイアは、悲しそうにこう答える。

ヨルは、尻尾を揺らしながら、あの時の言葉を思い出す

 

 

 

 

────「わたしは、頑張ってここにいるんだ……」─────

─────「それが間違いだなんて思えない……」─────

─────「頑張ったって勝てないっていうなら、わたしは頑張って頑張って勝つ!」──────

 

 

 

 

 

「命を賭けて、お前を否定したわけか………」

「うん………」

「わたし、どうすれば良かったのかな?」

「俺の言葉が聞きたいのか?」

ヨルは、怪訝そうな顔をする。

レイアは、少しだけ頷く。

「レイアは、白髪女の手を掴んだ。それだけで十分だ。あれ以上はない」

「ホームズは、ローズを助けたよ」

「アレは、あいつがおかしいだけだ。おまけに俺のおかげで助かった」

ヨルは、バッサリ切り捨てる。

そして、レイアを見る。

「納得してないな」

ヨルの言葉にレイアは、慌てて手を振る。

「い、いや、そんなことは………あるかな?」

「正直だな、お前も」

ヨルは、呆れたようにため息を吐く。

「だから、いうの嫌だったんだよ」

ヨルの言葉にレイアは、困ったように頭をかく。

それから、ヨルを真っ直ぐに見る。

「分かった。わたし、考えるよ。大事なことだもん、自分で考えるよ」

ヨルは、尻尾を揺らすと頷く。

「煮詰まったら、相談ぐらいには乗ってやる」

「ふふふ、ありがとう」

「ローエンが」

「いや、ヨルも乗ってよ」

ローエンは、ホッホッホと笑う。

「なら、レイアさんもヨルさんの相談に乗るといいですよ」

「そうだね」

ヨルは、大きくため息を吐く。

「気が向いたらな。ほら、ホームズが呼んでるからそろそろ行くぞ」

ヨルに促され、レイア達はホームズの元へと歩いて行った。

ヨルは、ホームズの肩にぴょんと飛び乗る。

「人間は、面倒くさいな」

「何、どうしたの?」

首を傾げるホームズにヨルは尻尾を揺らして答えに替える。

「さてと………」

ホームズは、ヨルから視線を外して目の前に広がる黒い穴のようなものを見つめる。

「これ、精霊術かい?」

「えぇ。今にも消えてしまいそうなほど、ひどく不安定ですけれど」

ホームズは、しばらく考えた後肩にいるヨルを見る。

「試しに入ってくれないかい?」

「今のさっきで、よくそんな言葉が出るな」

ヨルとホームズの醜い言い合いにジュードとレイアは、ため息を吐く。

「わたしから入るよ」

言い合うホームズとヨルを他所にレイアがそう宣言する。

するとアルヴィンが一歩前に出る。

「いや、こういうのは、おれの役目だ」

アルヴィンの静かな物言いに一同は、少し迷う。

そんな中、言い合いをしていたはずのホームズとヨルはいつの間にか取っ組み合いへと発展していた。

そして、

「「あ」」

ホームズとヨルは薄暗い黒い穴へと落ちていった。

「ああああああああああああ!!」

間抜けな声と共にホームズとヨルが一番手をとった。

「えーっと…………」

レイアが引きつった笑みを浮かべながら、アルヴィンを確認すると、なんとも言えない顔でうなずいた。

「じ、じゃあ、わたし行くね」

そう言ってレイアが有無言わさず飛び込んだ。

それに続くようにアルヴィン、ジュード、ローエン、エリーゼ、ローズが入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

穴を通ってたどり着いたその場所は、ひたすらに暗かった。

最後にたどり着いたローズは、辺りを見回すがジュード達の姿が見えない。

「………ホームズ!!」

「呼んだ?」

ボッと言う音共に炎に照らされたホームズの顔が浮かび上がる。

「ぎゃあっ!!」

「『ぎゃあ』は、無いだろう……ま、いいや、みんなこの炎に集まっておくれ」

ホームズは、不服そうに言うとそう呼びかける。

ジッポーの炎を灯台のように目印にするホームズにジュード達が集まる。

「こんなに暗いとは思いませんでしたね」

ローエンがそうこぼす。

「まあね」

ホームズはそう返しながらヨルを掴んで放り投げた。

放り投げた先には、緑色の光の球がある。

「貴様!」

それは、ヨルがぶつかると弾けて消えた。

それと同時に辺りを明るく照らし出した。

「…………わーお」

ホームズは、目を丸くする。

ローズ達も同じようなものだ。

光に照らし出される足元の立方体が繁雑に組み合わされた道。

光の通らない暗い空が際立たせる。

道を作り上げる立方体は、虹色に輝き、より幻想的に存在し続ける。

「なるほど………コレが世ノ精途(ウルスカーラ)か……初めて見たな」

ヨルは、むくりと起き上がりながら辺りを見回す。

若干ホームズを睨んでいるが、睨まれてる本人は、どこ吹く風だ。

「ここを抜ければ………」

ジュードの言葉にヨルは、頷く。

「あぁ、いるぞ。間違いなく」

ヨルの髭がビリビリと震える。

ヨルを纏う緊張感にホームズは、眉をピクリと動かす。

「一応、言っておくけどマクスウェルと戦いに来たわけじゃあないからね」

「勿論。だが………」

ホームズ達の周りに魔物が集まる。

 

 

 

 

 

 

「向こうがそう思っていてくれるかは、また別の話だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホームズ達は、それぞれ武器を出して構える。

「魔物とは少し違うような…………?」

レイアは、首を傾げる。

ローエンが頷く。

「恐らく侵入者を阻む、言わば兵といったところでしょう」

エリーゼは、ちらりとヨルを見る。

「ヨル………これは食べれますか?」

イル・ファンでヨルは、精霊術で作り出された魔物を食い尽くしている。

「別に出来なくはない。マナみたいなものだろ」

ヨルはそう言って生首になろうとする。

だが、それをホームズが手で制する。

「ヨル。君の力はここでは使わない」

ホームズの言葉にヨルは目を丸くする。

「別に、この場にお前が通すべき意地はないだろ」

「ないよ」

「だったら………」

「イバルと初めて会った時のこと忘れたのかい?」

「あ?」

「まだ思い出せないなら、もう一個。ミラ達と初めて会った時のこと、忘れたのかい?」

どちらもシャドウもどきの封印が解かれたと言って襲いかかってきた。

「…………」

「分かるだろう?君が出て行けば間違いなく、話を聞くどころじゃなくなる」

ホームズは、そこまで言うと目の前の魔物を顎で示す。

「今この場にマクスウェルは、いないみたいだけど、少しでもありそうな可能性は、潰しておくべきだろう?」

ホームズの言葉にヨルは不服そうに生首になるのを諦め、ホームズの肩に戻る。

「忌々しいな。制約が多いってのも」

「まあ、大丈夫だよ」

ホームズは、そういうと魔物を一匹蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた魔物は、そのまま道の切れたところから真っ逆さまに落ちていった。

「猫の手を借りたいほど忙しいわけじゃないし」

不意打ちに魔物達は戸惑ったが、直ぐにホームズ達に襲いかかった。

ホームズに迫り来る魔物にローエンの投擲したナイフが刺さる。

「省略!サンダーブレード!!」

ローズの作り出した雷の剣が、刺さっているナイフを避雷針にして各魔物達の元へと避けていく。

ローズの放った雷の剣により動きを止めた魔物達。

そこにリンクしたジュードとレイアが現れる。

「「巻空旋風!!」」

ジュードとレイアの間に挟まれた魔物たちは、空中に巻き上げられ、そのまま崖下へと消えていった。

ホームズは、それを見届けると煙管を咥える。

「今ので全部みたいだねぇ……」

「……そうみたいね。まあ、まだまだいるでしょうけど」

ローズは、辺りを見回して反応が見られないと刀をしまう。

ホームズは、そんなローズを不思議そうに見る。

「…………何よ?」

「いや、別に。なんかこう穏やかな会話って久々だなぁって思ってさ」

最後に怨嗟なく聞いた言葉は、ジルニトラが沈む直前。

悪気のないホームズの言葉にローズは、うっと言葉を詰まらせる。

ホームズは、そんなローズに気付かないフリをする。

「さて、奥を目指すとするかねぇ。とりあえず、この光の球みたいなのを目印に進んでいけばいいんだろう?」

「そうだね」

ホームズの言葉にジュードは、そう返すと前に進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

水晶というには、煌びやかに光る立方体で出来た道をジュードたちは無言で歩いていた。

当然といえば当然だ。

今まで、アルヴィンは、レイアを撃ち、ローズは、ホームズの目を潰している。

仲間に向かい入れて貰えたとはいえ、全てが良くなったわけではない。

特にエリーゼは、二人を怪訝そうに見ているし、ジュードは目を合わせない。

レイアもなんとなく気まずそうだ。

何より当人達がなんと話しかけていいかわからず更に空気は思い。

「あ、あー………ところで、一つ聞いていいか?ホームズ」

そんな中、アルヴィンは、少しぎこちなく話しかける。

「なんだい?」

ホームズは、キョトンとして首を傾げる。

「なんで、ヨルはシャドウもどきなんて呼ばれてるんだ?」

アルヴィンの質問にホームズは、目を丸くする。

仲間に迎え入れてもらったばかり(このタイミング)で随分とチャレンジャーな質問だねぇ」

瞬間、重かった空気が凍りついた。

「あ………わりぃ……」

アルヴィンは、気まずそうに俯く。

ホームズは、そんなアルヴィンを見て慌てる。

「いやいや、そこまで落ち込まないでおくれよ。悪かったって、からかい過ぎたよ」

「(ホームズの冗談って結構ギリギリですよね)」

「(あぁ。ギリギリアウトだ)」

ポンチョにすっぽりと収まっているヨルとエリーゼがボゾボソと話していた。

ホームズは、少し考える。

「なんでだっけ?」

「俺に話を振るお前も相当だな」

ヨルは、怒り通り越して呆れていた。

フードの中でヨルは、ため息を吐く。

「そんなに気になるなら、全部含めて奴に聞けばいいだろ」

ヨルは、どうでも良さそうに返す。

奴が、誰を指すか今更考えるまでもない。

「そっか………マクスウェルがヨルを封印したんだっけ?」

「正確に言うなら、封印に関わっていたと言ったところだな」

ヨルは、ジュードの言葉にそう言って尻尾を振る。

ホームズは、考え込みながら指を出していく。

「えーっと、無を司る大精霊オリジン、時を司る大精霊クロノス、それと五大元素を司る大精霊マクスウェルだっけ?」

「そうだ。まあ、オリジンの馬鹿が他の奴らに秘密で仕掛けたもののおかげで、マナを食うのに苦労してるわけなんだがな………」

ヨルの言葉の端々に怒りが滲み出ている。

「そりゃあ良かった。菓子折りの用意しとかなきゃ……………」

ホームズの悪態は、だんだんと尻すぼみになり、そして、それに比例するようにホームズの歩みが遅くなっていき、最後には、止まった。

「ホームズ?」

止まったホームズにローズが不思議そうな顔をする。

「ねぇ、確かミラは、こう言ったよね『デメリットを話さないと封印は解けないはずだ』って」

そんなローズを意に返さず、フードにいるヨルとの会話を続けるを

「言ってたな」

「………だよね」

ホームズは、少し考えた後再び歩みを進める。

「ち、ちょっとホームズ!!」

ローズは、先を行くホームズの手を少しためらって掴んで止める。

「何に気づいたのよ!」

「少し、マクスウェルの企みについてかな」

ローズにそう短く返す。

「ねぇ、ヨル。さっきの話の続きだけどさ………」

ローズに返した後、フードにいるヨルに話しかける。

「誰か、要件の変更に来なかったかい?」

ホームズから発せられた静かな追求にヨルは諦めたようにため息を吐く。

「あぁ。来た」

ホームズは、追求の手を緩めない。

「マクスウェルだろう、それって」

ホームズから出た言葉に一同は、息を飲む。

「……………あぁ。その通りだ」

ヨルは、少し迷った後頷いた。

ローズは、苦々しげな顔をしているホームズを見て思わず手を離す。

「……………どういうこと?」

「……………利用されたのは、ミラだけじゃない。おれとヨルもだ」

ホームズは、ぎゅっと握りしめる。

「ま、待って。何が何だかわからないわ!ちゃんと説明して」

混乱するローズを前にホームズは、話すべきか迷う。

しかし、ローズを追い詰めてしまったことを思い出すとゆっくりと口を開く。

「まだ、推論の段階だ。だから、これから確かめる。それから話すじゃダメかい?」

ホームズのその真剣な顔に思わずたじろいだ後ローズは、頷いた。

そんなホームズを疑わしげに見る紫色の物体。

『本当に話すんだろーな!』

「おれが嘘言ったことあるかい?」

「隠し事は、たくさんしてたよね」

レイアの方から突然飛んできた援護射撃にホームズは、傷ついた顔をする。

「き、君………言うじゃないかい………」

「そりゃ言うよ。なんかんやで最初の質問には答えてないもん」

最初の質問、ヨルが何故シャドウもどきと呼ばれているかということだ。

「ホームズは、何か知ってるんでしょ?」

「もちろん。まあだから、それも含めてマクスウェル殿に聞けばいいのさ」

そう言ってホームズは、足を止める。

行き止まりだ。

そこから下は、崖になっている。

ホームズは、崖下を覗き込む。

下には、光の靄があった。

「いるんだろう、ヨル?この先に」

「あぁ。間違いないな」

ヨルは、ひげをピクリと動かす。

そしてホームズのポンチョのフードに入り込んでしまい完全に身を隠した。

見つかれば厄介なことこの上ない。

「………大丈夫かな?」

「虎穴に入らずんば虎子を得ずって言葉知ってるか?」

ヨルの言葉にホームズは、ポカンとした後真剣な顔になり両頬を叩いて気合いを入れた。

「よし!まあもう入ってるようなもんだけど」

「一言多いなお前は、本当に」

ホームズは、ヨルの悪態を無視して真っ先に飛び降りる。

ジュード達それに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「客人か……………」

 

 

椅子に腰掛けながらポツリと呟く人影。

 

 

 

 

 

 

「歓迎せねばなるまい」

 

 

 

 

 

 

彼らの信念が試されるのは、もう直ぐだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






これから正念場、頑張ってねホームズ!
ギリギリアウトな冗談言ってる場合じゃないよ!!
では、また百八十七話で( ´ ▽ ` )ノ
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