1人と1匹   作:takoyaki

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百九十話です。



もうこんなに二百話への王台見えてきましたね…………




てなわけで、どうぞ!


口八丁剣八丁

「ストップロウ」

 

 

 

 

その言葉が響き渡ると同時に四色のマナの砲撃が、ジュード達に降り注いだ。

突然のことに彼らは防ぐことが出来ない。

声を上げる間も無く、それはジュード達を蹴散らし無数に降り注ぐ。

降り注ぐそれは、彼らを吹き飛ばし地面に叩きつける。

「………何が……」

エリーゼは、一体自分に何が起こったのか、不思議でしょうがなかった。

激痛に耐えながら思わず溢れた疑問にローズは、顔をしかめながら答える。

「時を……止めたんだよ……」

ローズは、身体中に走る激痛に耐えながら、睨みつける。

「昔、マーロウさんに聞いた………反則級な強さの術だって」

ローズ達にとって一秒にも満たないその間にマクスウェルは、二秒以上動いていたのだ。

マクスウェルは、倒れている面々を見下ろす。

「わからんな。この者たちに歯車(ミラ)が狂わされたのか!」

「何言ってんの!!」

マクスウェルの言葉にレイアが食ってかかる。

『ミラはずっとかわらなかったよー!』

ティポの言葉が信じらないマクスウェルは、目を見開く。

「バカな!」

「分からないんですか!?」

エリーゼは、マクスウェルが信じられないのが、信じられないようだ。

「そうだ!あなたは、間違ってる!!」

ジュードは、膝立ちになりながらマクスウェルを睨む。

「何!?」

「見てたんじゃないの?育てんじゃないの?」

ローズは、拳を地面に叩きつけながら、身体を起こそうと力を込める。

「おたくさ、本当にミラの親?」

アルヴィンは、呆れたように言葉を投げかける。

「えぇ。知らないようですね。ミラさんに限ってそのようなこと………」

「何を言っている!?」

ジュード達は痛みを訴える身体に鞭を打って凛として立つ。

「ミラが使命を見誤るなんてことないってみんな知ってるんだ!」

「では、あやつのあの行動はなんだ!断殻界(シェル)を壊すなど使命ではない」

「ミラは、僕たちを救うために命をかけたんだ!」

ジュードは、胸元にある首飾りを掴む。

「自分の心に従ったんだ!あなたのためなんかじゃない!!」

「戯れ言を!!」

マクスウェルは、再び盾を操りジュードに襲いかかる。

「剛招来・………」

ローズに闘気が渦巻く。

そして渦巻く闘気は、ローズの刀へと集まっていく。

「纏!!」

紅い闘気を鎧のように纏った刀をローズは、迫り来る盾にぶつけた。

「んぐあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」

ローズは、歯を食いしばって迫り来る盾を押しとどめる。

そして、

「ガァあぁあぁあぁあぁらァ!!」

思いきり盾を弾き飛ばした。

ローズの刀は健在だ。

「バカな………!」

「省略!シャープネス!!」

ローズは、弾いた刀をそのままに思いきり叩きつけながら、声の限り叫んだ。

構えも取られずに飛び出した精霊術は、ローズを纏う。

剛招来・纏で武器を強化し、精霊術で自分を強化する。

その滅茶苦茶な精霊術にローエンは、思わず目を見開く。

「バカは、貴方の方だ!」

ローズは直ぐに刀を返すと再び斬りかかる。

「………何故、お前が楯つく?エレンピオス人を恨むお前が!?」

マクスウェルの言葉を聞いた瞬間ローズは、刀を更に強く握る。

「そんなのわかんないわよ!」

迫り来る盾をローズは、弾く。

「私が知りたいぐらいなのよ!でも!」

ローズの目が険しくなる。

「貴方は……お前だけは認められない!!理由なんてそれだけで十分だ!!」

紅く揺らめく剣とマクスウェルの操る盾がぶつかり合う。

何度も何度も。

だが、繰り返すたびにマクスウェルの顔が曇っていく。

「………どういうことだ?」

「嘘………」

レイアが驚いたように目を丸くする。

『全然当たってないー!!』

ローズは、先ほどから迫り来る盾を全て剣で弾いている。

「鶏足刃の如く!クイックネス!!」

レイアがジュードに精霊術をかける。

ジュードは、腰を落とし構える。

「鋭招来!!」

紅い蒸気がジュードを纏う。

「行くよ、レイア!!」

「任せて!」

二人は、マクスウェルの後ろに回り込み、棍と拳を振るう。

マナの障壁に阻まれるが、そんなことは関係ない。

ジュードとレイアは、次の一手を諦めない。

途切れることなく攻め続ける。

「鬱陶しい!!」

宙に浮く盾をローズではなく、後ろに二人に向かって移動させようとする。

「んぐぁ!!」

それが進もうとする方向とは、逆に向かって刀をフルスイングする。

「何!?」

盾は、動くことが出来ずにその場に留まり続ける。

「レインバレット!!」

アルヴィンが放った銃弾が、マクスウェルに雨となって降り注ぐ。

「からの!ヴァリアブルトリガー!!」

アルヴィンは、狙いを定め通常より巨大な銃撃を放つ。

銃弾の雨に気を取られたマクスウェルの側面から襲い来る一撃。

マナの障壁が震える。

「ディバインストリーク!!」

『「リベールイグニッション!!」』

そこにティポとエリーゼ、そしてローエンの精霊術が混ざり合い、紫と光のが編まれた大砲がマクスウェルに向かって放たれた。

「「無三華!!」」

身動きの取れないマクスウェルにジュードとレイアが共鳴術技(リンクアーツ)を放つ。

マナの障壁を震わせながら、攻撃をやめない。

マクスウェルは、苛立ちを隠さず歯ぎしりすると、両手を合わせ菱形を作り出す。

再びマナが展開され時計の文字盤を作り出す。

現れた文字盤を進む時計の針。

「させるかー!!」

ローズは、盾を完全に弾きかえすとマクスウェルに向かって刀を投げつける。

しかし、

 

 

 

 

 

「ストップロウ」

 

 

 

 

マクスウェルの精霊術は、完成した。

 

 

 

 

 

その名を口にした瞬間全ての動きが静止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時を止める精霊術、おまえ達には決して使えないものだ」

ただ一人マクスウェルだけは、例外だった。

彼だけがこの停止した世界で自由に動き回れた。

マクスウェルは、盾を使い、一瞬でジュード達を吹き飛ばし、一箇所に集める。

「…………?」

僅かに覚えた違和感に首をかしげるとマクスウェルは、両手で菱形を作る。

再びマクスウェルをマナが取り巻く。

「"眠り踊れ地水火風"」

マクスウェルの頭上に四色に光り輝く魔法陣が現れる。

「"秦王に集いて我が鉄槌となせ"!」

赤、黄、緑、青の魔法陣の輝きが最高潮に達する。

「"エレメンタルメテオ"!」

魔法陣から四色のマナの砲撃が流星となって降り注ぐ。

流星となってマナがジュード達に迫った瞬間、止まった時が動き出した。

ジュード達は、声を上げる間もなく、四色のマナの餌食となった。

「また……………時を……」

皆、今度こそ立てない。

いや、一人だけ例外がいる。

ジュードだ。

震える膝を押さえながらジュードは、必死に倒れないよう耐える。

「何度立っても同じことだ。お前達は、もう終わったのだ!」

言葉こそ強い。

だが、圧倒的な差を見せられても立ち上がるジュードに思わず声が震える。

「何が終わりだ!あなたが決めることじゃない!!」

「黙れ!今のお主は、立っているのが、やっとで、私に抗う力などないではないか!!」

そう言ってマナの砲撃をジュードに食らわせる。

しかし、ジュードは、再び立ち上がる。

「あるよ。僕は知ってる」

静かにそして、確かな意思を持って語られる言葉にマクスウェルは、目を剥く。

「馬鹿な!理解出来ん!」

誰だって怖いものが、ある。

その最たるものが、理解出来ない存在だ。

「き、消えよ!!」

その恐怖を打ち消すかのように四色のマナを放ち続ける。

乱れ飛ぶマナの中、歩みを進めていく。

歩みは、やがて疾走へと変わっていく。

「お"おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

ジュードの疾走は、慟哭をあげるたびに速くなる。

そして、宙に飛び上がり拳を固める。

(そうだよね、ミラ)

ジュードは、そのまま全体重を乗せ、拳を放った。

マナの障壁が大きく歪む。

(後、もう少し!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間一筋の光が、マナの障壁に走った。

切られたマナの障壁は、ジュードの侵入を許す。

ジュードの想いも重いも乗せた拳が、遂にマクスウェルに届いた。

マクスウェルは、声もあげる間もなくそのまま吹き飛ばされ地面を転がった。

ジュードは、地面に降り立つ。

隣を見るとそこには、剣を持って凛と立つミラがいた。

「…………………ミラ……なのか?」

アルヴィンは、目の前で起きたありえない事に呆然とする。

あの時、ジルニトラで確かに死んだ。

それが、今ここに立っている。

「『ミラ!!』」

エリーゼとティポは、とても嬉しそうに笑う。

「ミラさん……」

ローエンも驚きでそれ以上言葉が出ない。

「ミラ………?」

レイアは、確認する。

確かにそこには、見覚えのある姿が凛として立っている。

「ミラ!!」

傷の痛みに顔しかめるが、そんなことどうだっていい。

「ミラだ………」

ローズも驚きで思わず涙が溢れそうになる。

「ミラ………」

ジュードが続きの言葉を告げようとすると、ミラが人指し指をジュードの口に当て、先を言わせない。

そして、倒れているホームズの方に視線を移す。

それから、起き上がるマクスウェルを睨みつける。

「全てのものを守るのがマクスウェルの使命ではないのか」

マクスウェルは、目の前で起こった出来事が信じられない。

「馬鹿な……四大が図ったというのか?」

マクスウェルは、自分を裏切った四大精霊たちが信じられなかった。

そんなマクスウェルにもう一度衝撃が走る。

 

 

 

 

 

 

ヨルが、マナの障壁を食い破りその穴からホームズが右足に黒霞を纏ってマクスウェルを蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

「何!?」

「ったく、子供の反抗期ぐらいで狼狽えるんじゃあないよ」

戸惑うマクスウェルに構わず、ホームズはそう言って踵落としを食らわせ、マクスウェルを地面に叩きつける。

「やっほー、ミラ」

ホームズは、いつものようにヨルを肩に乗せ、ひらひらと手を振る。

「そんな………ホームズ、何で?」

ローズは、ホームズの存在に更に目を丸くするばかりだ。

「喜んでくれてもいいじゃないか」

ホームズは、不満気だ。

「だって、精霊術で切り裂かれて……」

「切れたのは、鎧代わりに仕込んどいたヨルの尻尾だよ」

そう言ってマクスウェルを見下ろす。

「マクスウェルの封印の仕組みも仕掛けも意図することも読めてたからねぇ。あの時、おれかアルヴィンか、どちらかがヨルに取り憑かれているのは、マクスウェルも気付いていたみたいだし」

ホームズは、起き上がるマクスウェルを金色の瞳で睨みつけながら話を続ける。

「だから、おれがヨルを見せれば、全部話してくれるだろうと思ったし、全部話したら殺しに来ることも分かってた」

「貴様………」

「だから動けないぐらいギチギチに着込んで防御力を上げていたんだよ。まあ、気絶しちゃったけど………」

「だが、シャドウもどきは確かに消えたぞ!」

マクスウェルが、ホームズの肩にいるヨルを睨みつける。

「これのことか?」

ヨルは、そう言って尻尾を伸ばし黒猫を作り出す。

そして、尻尾を徐々に細くしていき、完全に目に見えなくなった。

さながら消えるように。

「………って、だったら貴方は起きなさいよ」

ローズの正当な突っ込みにヨルは、どこ吹く風だ。

「情報の少ない中で戦いたくないだろ」

「…………わたし達を使っといて悪いと思ってないところが、本当にらしいよね……」

レイアは、完全にあきれ顔だ。

そんな彼らにマクスウェルの怒りは、増していく。

マクスウェルは、ホームズとヨルを殺意を込めて睨みつける。

「騙したな!手土産と言ったではないか!!」

「そんなこと一言も言ってないゼ?」

「馬鹿な!確かに………」

「違うね、君が言ったんだ」

激昂するマクスウェルに対してホームズは、ぴしゃりと言い放つ。

「おれがヨルを見せたら君はこう言った。『手土産のつもりか』と」

そう言うとホームズは、マクスウェルを指差す。

「そして、おれはこう言った。『どう取るかは、君次第だよ』って。ほら?」

ホームズは、指を差したまま底意地の悪い笑みを浮かべる。

「騙してないだろう?君が勝手に勘違いしただけだ」

「……………!貴様ァ!!」

火に油を注ぐどころか、ぶちまけるホームズ。

「ま、そもそも不意打ちした奴からそんな言葉が出ること自体おかしいんだよな」

ヨルは、馬鹿にしたように犬歯を見せる。

「所謂、騙される方が悪いという奴だ」

「だから、騙してないって言ってるだろう」

ホームズの種明かしにマクスウェルは、頭を抱える。

確かにホームズは、一言も手土産と言っていない。

たかが人間と見下していた相手にまんまと一杯食わされてしまったのだ。

「馬鹿な………この私が…………」

ミラは、目を鋭くして告げる。

「うろたえたな?それでは、本来の力が出せないぞ?」

ミラの言葉が響きわたったその瞬間、四色の光の球が離れ、ミラの側に着く。

辿り着いた四色の光の球は、それぞれ実態を表す。

マクスウェルは、その光景を信じられないという目で見る。

ミラも驚いたように四大を見る。

「いいのか?お前たち?」

四大は、ミラ達を魔法陣で囲み傷を全て癒す。

「馬鹿な……お前たち……分かっているのか!そいつらは、断界殻(シェル)を壊そうとしているんだぞ!それに……!」

そう言ってマクスウェルは、ヨルを指差す。

「そいつは、シャドウもどき!その意味が分からないお前たちじゃないだろ!!」

だが、四大達は、動かない。

「そんなことが………」

「だから、子離れぐらいで狼狽えるんじゃあないよ」

ホームズは、やれやれと肩をすくめて、打ちひしがれるマクスウェルを見下ろす。

「君は運命を仕組んだ。ヨルを潰すため、アルクノアを潰すため、そのためにミラを歯車にし、おれを歯車にした」

ホームズは、そう言って金色の瞳で睨みつける。

「だけど、ミラもおれも歯車なんかじゃあない!運命は、壊してやった!」

ホームズは、歯を見せにぃっと笑ってみせる。

「ざまあみたまえ!!」

ミラは、フッと笑って片手剣を構える。

「さあ、やるぞジュード!」

「うん。ミラ」

傷の治った面々が、彼らに追い付く。

一行は、マクスウェルに向かって走り出した。

 

 

 

 

 








お久しぶりのホームズです。



まあ、死んでるわけないです(笑)



では、また百九十一話で。




外伝も始めました。
本当は、これ終わってからにしようと思ったのですが、奴らが早く出せと騒いで仕方ないので、書きました。


気が向いた時にでも是非読んでください。


では、また百九十一話で( ´ ▽ ` )ノ

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