1人と1匹   作:takoyaki

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百九十三話です。


決めた、PS4で買おう。


PV第5弾で、決めました。





枕を固くして寝る

「ん…………」

「お!起きたね、ローズ」

ローズがゆっくりと開くとそこには、ホームズの姿があった。

金色の瞳で覗き込むホームズを見て、ローズは、自分が今どんな状況かようやく分かった。

「………筋肉質の膝枕は、寝心地が悪いわね」

そうローズは、ホームズに膝枕をされていた。

「………最近の枕は固いのが流行りなんだよ」

ホームズは、頬を引きつらせながらそう言い返す。

「そう」

ローズは、そう言って首だけ動かす。

そこに映るのは、ミラに飛びつく二人と一つのぬいぐるみだ。

飛びつかれたミラは、少しよろめく。

「エリーゼ、レイア」

ミラも嬉しそうに三人の頭を撫でる。

ティポは、ぐりぐりと頭をミラに押し付けている。

『この感触ホンモノだー!』

ミラは呆れたように笑っている。

ローエンは、そんな彼女らを見て嬉しそうに微笑む。

「こんなに嬉しいことに出会えるなんて、長生きはしてみるものですね」

アルヴィンは、破顔しながら髪をかき上げる。

「信じられねぇ。でも現実なんだよな」

「本当、これ以上はないね」

ホームズは、とても嬉しそうに笑う。

ミラは、そんなホームズを見て驚く。

「おお!初めて見たぞ、お前のその笑顔。いつもとは大違いだな」

「相変わらず一言多いね。というか、何回か見せた気がしなくもないけど………」

ホームズは、先程の笑顔を消し去って深くため息を吐く。

いつものように喋るミラを見てローズの瞳が潤む。

「あぁ、こんなことって本当にあるのね」

「泣いてるのかい?」

「泣いてちゃ悪いの?」

不機嫌そうな声でローズが言い返す。

そんな二人を見ながらミラは、微笑む。

「元気そうだな、みんな」

そう言ってミラは、ジュードに視線を向ける。

ジュードは、静かに頷く。

「うん。おかえり、ミラ」

「あぁ。ただいま」

ミラの言葉と共にヨルを包んでいた黒い靄が晴れた。

晴れたところから現れたのは、普段のヨルよりひと回りもふた回りも小さい黒い子猫だった。

その愛らしい姿に一行は言葉が出ない。

「…………………ヨル?」

レイアが、疑問系で尋ねるとヨルは思い切り嫌そうな顔をする。

「ああ」

だが、そんな容姿から出た声はいつもの低音だ。

「…………………えーっと」

レイアとエリーゼは、ミラから離れシゲシゲとヨルを見る。

「エリーゼ、見たことある?」

「はい。一回だけ」

「ヨル。普段からそれでいない?」

「あ"ぁ?」

「ごめん。嘘です」

その容姿からは信じられないドスの利いた声にレイアは、直ぐに謝る。

「まあ、封印がかかっている状態で無理をしたんだ。これぐらいの代償は当然だろ?」

ミラの言葉にヨルは、忌々しそうに鼻息をならす。

それぐらいは、覚悟の上だったようだ。

ミラは、そんなヨルを見ながら腕を組む。

「お前は、私がマクスウェルじゃないことに気づいていたのか?」

ミラの言葉をヨルは、尻尾をゆらゆらと揺らして答える。

「当然だな。お前、俺の封印の種類を知らない、セルシウスを知らない、それでマクスウェルだと俺が思うわけないだろ」

淡々と紡がれるヨルの言葉にミラは、反論出来ない。

「正直、人間が何を粋がっているのかと思っていた」

ヨルは、全てを知った上で面白がっていたのだ。

いつ、その正体に気づくのかと。

皆の視線が険しくなる。

そんな視線に構わずヨルは、続ける。

 

 

 

 

 

 

 

「だが、まあ、やはりミラ(ヽヽ)の方がマクスウェルだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨルから思わぬ形で語られた名前に一行は目を丸くする。

ミラは少し驚いた後、優しく頬笑んだ。

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

辺りを優しい空気が包む。

そんな中、ローズは、兼ねてからの疑問を口にする。

「あのさ、レイア」

「何?」

「もしかして、ホームズが死んだフリしてたの気付いてた?」

「うん」

即答だった。

レイア以外も皆頷いている。

ホームズは、そんな面々を見てため息を吐く。

「あーあ………せっかく復活したんだから、誰か涙を浮かべて喜んでくれると思ったのになぁ……」

「ホームズとも長い付き合いになったからね」

ジュードの言葉を誰も訂正しない。

「殺してもしなないもんね、ホームズ」

「殺されたら死ぬよ」

レイアに向かってジトっとした目を向ける。

レイアは、どこかの誰かさんのように肩をすくめる。

「まあ、ローズは心配してたよ」

「嘘は、感心しないよレイア。この子第一声『そんな、なんで?』だっからね。喜びの笑顔なんてなかっつつつつつ」

ローズが枕になっているホームズの腿を力の限り抓ったのでホームズは、最後まで言えなかった。

「ローズ………」

「手が滑った」

「滑るどころか、全く離れなかったけど」

ホームズは、そう言ってローズの頬をつねる。

ローズも負けじとつねり返す。

そんな二人を遠巻きに見ながらジュードは、ポツリと零す。

「というか、ローズ恥ずかしくないのかな?」

「いや恥ずかしいと思うよ、顔真っ赤だし」

レイアの言葉にジュードは、首をかしげる。

「……………だったら、退けばいいんじゃないの?」

ジュードの言葉にレイアとエリーゼは、ため息を吐く。

「……………ほんと、乙女心が分かってないねジュード」

「え?」

レイアは、もう一度だけため息を吐いた後、説明する。

「動揺してるって思われたくないから、あのままなんだよ」

ジュードは、更に首をかしげる。

「まあ、ジュードには分からないよね………」

レイアは、呆れたようにため息を吐いた。

ジュードは、一瞬不満そうな顔をした後、ホームズに視線を向ける。

「なんだかよく分からないね」

ジュードの言葉にレイア達は苦笑いを浮かべる。

完全に子猫となったヨルは、尻尾を揺らしている。

そんなヨルの後ろに熱が巻き起こる。

「久しぶりだな、シャドウ」

「俺をその名で呼ぶなと言ったはずだ、イフリート(丶丶丶丶丶)

ヨルは忌々しそうに返す。

「だいたい、ジルニトラで会ってるだろ」

「あの場で言い損ねたからな。だから、今言った。久しぶりだな」

あくまで久しぶりの挨拶を繰り返すイフリートにヨルはうんざりしたようにため息を吐く。

「あぁ、久しぶりだな。相変わらずの堅……」

「堅物とか言うんじゃないだろうな」

イフリートは、先回りしてヨルの発言を潰す。

そんな彼らのやり取りを見てホームズは、何か思いついたようにポンと手を叩く。

「もしかして、カラハ・シャールで言ってた堅物のイフリートってこの子のことかい?」

「おい、シャドウ。お前、何話したんだ?」

問い詰めるイフリートにヨルは、素知らぬ顔で口笛を吹いている。

ジュードは、苦笑いだ。

「あぁ、やっぱり、あれはホームズ達だったんだね」

「あれ?」

レイアが首をひねる。

するとミラがちらりとイフリートの方を見る。

「カラハ・シャールで、偽イフリート紋様のカップを売っているのを見抜いたのだ。厳格なイフリートが焼いたとは思えない紋様だったのでな」

そんなミラの後をジュードが引き継ぐ。

「ミラがそう言ったら、店の人、同じようなことを黒猫を連れた男に言われたって言っててね………」

「一応、言っておくけど言ったのは、おれじゃないよ」

ホームズの言葉などジュード達にはどうでもいいようだ。

誰も反応しない。

ホームズは、悲しそうにため息を吐いた後、イフリートを見る。

「ヨルの事を敵視してないなんて珍しいね。仲良し?」

「…………まあそうと言えなくはないか」

「おい、嘘をつくな。監視役だったろ、お前」

「割と仲良くやっていたと思うが?」

大真面目にいうイフリートにヨルは、ため息を吐く。

「最後殺しあったろうが」

「そんなもの些細なことだ」

ホームズの頬が引きつる。

ミラの方に視線を向けると、ミラは肩をすくめる。

「堅物で豪快ねぇ………」

ヨルはともかくイフリートとしては、どうやら仲良くやっていたようだ。

「(なんか呆れてるけど、ホームズも人のこと言えないよね)」

「(似た者同士です)」

呆れているホームズを尻目にエリーゼとレイアがこそこそと話している。

「なんだい?」

「ホームズは、大人だなぁって話だよ」

「あれ?前、子供とか言ってなかったっけ?」

「やだなぁ!」

あはははと乾いた笑いを浮かべながら不自然に目をそらす。

ヨルはそんな彼らに構わずイフリートに尋ねる。

「そう言えばあの人間、最後はどうなった?」

ヨルの質問にイフリートは、首を横に振る。

「我々も知らんのだ。あの後消息不明になったからな」

「そうか………」

ヨルの寂しそうな顔にイフリートは、少し驚く。

ヨルは、そんなイフリートを睨みつける。

「なんだ?」

「いや、変わったな」

ヨルは、尻尾をゆらゆらと揺らす。

「…………色々あったんだよ」

ヨルは、つまらなそうに返すと目の前にノームが現れる。

「それより、仲直りするでし!」

球体に乗りながら妙な語尾のノームにヨルは、うんざりした顔を浮かべる。

「元々、直すような仲がないだろ」

その言葉にイフリートは、黙って顔を伏せる。

最後、ヨルはこの世全てと戦った。

そして、敗北し、気の遠くなるほどの時間、あの洞窟に封じられていた。

自業自得とはいえ、自分をそんな目に合わせた四大精霊達にヨルがいい感情を持つわけがない。

ヨルは、イフリート達に背を向けホームズに向かって歩き出す。

「だが、まあ、ジルニトラでの一件とさっきの銃弾を防いだ一撃……」

ヨルは、そこまで行ってホームズの頭に飛び乗って振り返る。

「それで、二千と五百年前の事は、チャラにしてやる」

ヨルの言葉にイフリートは、軽く笑う。

「俺は、元々あの時にチャラにしてやったつもりだったんだがな」

「言ってろ」

ヨルとイフリートは、そう言うとどちらともなく笑い出した。

レイアとエリーゼは、そんな彼らを見て首を傾げる。

「精霊ってよくわかんないね」

『ほんとにー!!』

「安心しろ、私にも分からん」

ミラも同じように首を傾げている。

ローエンは、優しく微笑んでいる。

「女性には、難しいかもしれませんね」

その言葉にレイアは、少し呆れたように肩をすくめる。

「あぁ、それじゃあ仕方ないね………」

全てが終わったと、そう思ったとき、ゆらりと空気が動いた。

その気配に思わずミラが振り返るとマクスウェルが、浮かび上がっていた。

一行は、思わず武器を取る。

「ローズ」

「ダメ、さっきので空っぽ。立てそうにない」

ホームズは、それを聞くと有無言わさずにローズを背負う。

文句を言っている場合ではない。

構えた一行とは、対象的にマクスウェルは疲れ切っていた。

「分からん………何故だ。四大、どいうつもりだ?」

マクスウェルの問いかけにウンディーネとシルフが現れる。

「すまぬ。だが、俺にはもう我慢が出来なかった」

イフリートの言葉にシルフが頷く。

「うん。だから僕たちミラを助けちゃった。精霊界に連れて行ってね」

マクスウェルは、ゆっくりとかぶりを振る。

「そのような指示……出してはおらん」

するとウンディーネが胸に手を当てる。

「盟主、私たちに心があるように誰しもそれを持っています」

「道具扱いはダメでし。いくら世界のためだとはいっても!」

四大達に口々に言われマクスウェルは、閉口する。

そんなマクスウェルにミラが口を開く。

「マクスウェル。私の使命は、貴方のものだった。だが、同時に私のものでもあった」

マクスウェルは、静かに瞳を閉じる。

「自らの意思………お前の心が決めたというのか?」

マクスウェルの問いかけにミラは、光の灯る瞳で答える。

ジュードが一歩前に出る。

「貴方の言う世界は、ただ存在するだけの世界に感じた。でも、それは、生きるとは言わないんじゃないかな」

ジュードは、そこで言葉を切る。

「僕は……僕達は生きたいんだ!」

力強いジュードの言葉にミラは、少し驚いた後優しく微笑む。

マクスウェルは、そんな二人の言葉をただ静かに聞いていた。

「それもお前の行動が解せん理由か………」

マクスウェルは、宙に浮きながら物思いにふける。

「人の心は、時として難解よ………それを蔑ろにし、知らず知らずのうちに道を踏み外したということか………」

マクスウェルは、静かに空気を吐き出す。

断殻界(シェル)を解こう」

マクスウェルから告げられた思わぬ言葉にホームズとアルヴィンは、目を丸くする。

 

 








色々な奴らがちょっとずつ仲直り。


では、また百九十四話で( ̄▽ ̄)

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