1人と1匹   作:takoyaki

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百九十六話です。
本日ベルセリアの発売日!!
ゼステリィアと同じくアマゾンで買ったので、今回も発売日には届きませんでした。
オリンピックでは、日本人が続々と金をとり、甲子園も佳境、そしてベルセリアの発売………なんかもう真剣に影分身出来ないかな?て思います。


てなわけでどうぞ!


艱難辛苦を踏み越えて

「………早速で、悪いんだけど、アルヴィン」

「本当に早速だな。なんだ?」

「これ、どうやるんだい?」

ホームズは、目の前にある扉を前に首をかしげていた。

先ほどから、取っ手を探すのだが全く見つからない。

「あー………そうか」

アルヴィンは、納得したように扉の近くのボタンを押そうとする。

「それはね、ボタンを押すんだよ!」

驚いて足元を見ると、小さな女の子がいた。

ホームズは、首をかしげながら隣のボタンを指差す。

「これのことかい?」

「うん」

「爆発としない?」

戸惑っているホームズを他所にその女の子は、ボタンを押す。

すると機械音が足元から上がってきた。

そして、チンと言う音と共に扉が開く。

「おお………」

開かれたそこには四角い部屋があった。

ホームズは、目を丸くしている。

いや、ホームズだけでなくジュード達も目を丸くしている。

「何も知らないの?もしかして、『イナカモノ』」

「…………」

純真無垢な視線で問われてしまいホームズは、言葉が出ない。

恐らく言葉の正確な意味もわかっていないのだろう。

「悪意がない分タチが悪いねぇ………」

ホームズは、そう言うと再び部屋に視線を移す。

「それで、これに入ればいいのかい?」

「まあ、どっちかっつうと乗るって感じなんだけどな」

そう言ってアルヴィンが乗る。

ホームズ達もそれの後に続く。

女の子が最後に入ると2と書かれたボタンを押す。

「…………これが階数かい?」

「そうゆうこと」

ホームズは、1と書かれたボタンを押そうとすると、その女の子に止められた。

「あれ?あってるよね?」

「どうせ黒匣(ジン)も知らないんでしょ?わたしのうちで見せてあげるよ!」

「いや、あの……」

「多分、普通じゃないよ」

「いや、だからね………」

そうこうしているうちにチンと言う音ともに二階に辿り着いた。

「さあさあ早く!」

女の子は、先頭をきって歩いていく。

ホームズは、ミラの方を見る。

「まあ、いいではないか」

「………あぁ、そう」

ホームズも諦めたように後をついて行った。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「ただいま!おばあちゃん!!」

「おかえり」

おばあちゃんと呼ばれた老齢の女性は、にっこりと笑って出迎えると後ろにいるホームズ達を見て目を丸くする。

「………あの、えーっと」

「わたしが連れてきたの!」

「あらあら」

「すいません」

「いいのよ。この子結構強引だから」

「だったら気にしなくていいだろ」

ヨルがフードからそう言うと女の子が首をかしげる。

「あれ?声が?」

「おほん!『気にしなくていいだろ』いや、そう言うわけには『それだから頭が硬いと言われるんだ』失礼だな」

ホームズが慌てて低い声といつもの声を使い分けて一人二役を演じきる。

それを見て女の子は、目を輝かせる。

「すごーい!!」

「そ、そう?あはははは………」

引きつり笑いを浮かべながらホームズは、目の前の女の子とその祖母に見えないようヨルの髭を引っ張っていた。

レイアは、そんな彼らを見て一番最初にヨルとホームズに詰め寄ったことを思い出した。

「あぁ……そう言えばあの時も似たようなこといってたなぁ……」

「あの時………?」

首をかしげるローズにミラがポンと手を叩く。

「おぉ、ホームズがレイアの家に泊まっていた時か!」

「ミラ、お願いだからもう少し考えて喋って」

レイアは、ローズとミラの方を見ずにそう返す。

「レイアのウチの宿に泊まっていたんだよ」

「わざわざ解説しなくてもいいわよ、ジュード」

ローズの冷え切った声にジュードの背筋が凍りつく。

そんな三人の会話を他所にホームズは、

「それで珍しい黒匣(ジン)ってなんだい?」

「わたしとおばあちゃんだよ」

そう言って自分に手を置く。

「ま、まさか!黒匣(ジン)で出来た人間………」

「なんでそうなるのよ」

頬を引きつらせているホームズにローズの突っ込みが入る。

すると祖母は笑いながら答える。

「私もその子も循環器の病気でね。代わりに黒匣(ジン)を使っているの」

ホームズは、ポカンとした顔をする。

「…………マジ?そんなことが出来るのかい?」

ホームズは、振り返ってアルヴィンを見る。

アルヴィンは、頷いて返す。

「ミラの足に付いてるのと似たようなもんだ」

アルヴィンは、そう言ってミラの足についている医療ジンテクスを指差す。

ホームズは、眉をひそめる。

「あぁ、そう言うことか」

納得しているホームズを他所に女の子は、ミラの方を見る。

「それつける時、すっごい痛かったでしょう?」

「…………あぁ。痛かった」

そう言うミラに女の子は、頷く。

「でも、ガマンしなきゃダメなんだよー。黒匣(ジン)のおかげでフツーの生活ができるんだから」

「そう……なのか?」

かなりしっかりした言葉にティポが首をかしげる。

「それ、自分で考えたのー?」

ティポの追求に目をそらす。

「って、おばあちゃんが言ってた」

祖母は、優しく微笑む。

黒匣(ジン)の進歩のおかげで医療技術は飛躍的に進歩したわ」

ローズは、驚いて目を丸くする。

「そんなことが………」

「えぇ。だからマティス(丶丶丶丶)先生の分まで生きないとね」

マティスという言葉に一行は、首をかしげる。

「マティス?」

「ジュードと同じ名字ですね」

ローズとエリーゼが首をかしげる。

「うん……」

ジュードは、頷くと隣にいるホームズに視線を向ける。

「ホームズ、何か知ってるでしょ」

「内緒。男は秘密があった方が格好いいからね」

ホームズは、人差し指を口に持って行き胡散臭く笑っている。

レイアは、頬を引きつらせる。

「久々に聞いたよ、そのセリフ」

レイアとエリーゼのジットリとした目にホームズは、肩をすくませる。

「まあ、おれから話すのは筋違いだからねぇ………気になるならマティス先生から聞くのが筋だと思うけれど?」

ホームズの言葉にジュードは、小さく頷く。

「うん。そうだね」

「それは、無理よ。この医療用黒匣(ジン)を開発したマティス先生は、前の船の事故で亡くなってしまったもの」

「……………そうなんですね」

ジュードは、こめかみに指を当てる。

すると祖母の方が時計を見る。

「あらあら、もうこんな時間。そろそろ医療用黒匣(ジン)の検査に行かなくちゃね」

「えぇー……もう?」

祖母の言葉に女の子は、不満そうだ。

するとホームズは、口に人差し指を当てる。

「それおかげでフツーの生活が出来るんだろう?だったら、それぐらい我慢したまえ」

ホームズは、そう言うと踵を返す。

「それじゃあ、お邪魔しました」

「ごめんなさいね。結局なんのおもてなしもできないで」

老婦人の言葉にローズが首を振る。

「いえ。興味深い話でした。有難うございます」

そう言って一行は、部屋から出た。

ミラは、物思いにふけている。

黒匣(ジン)のおかげ、か………リーゼ・マクシアにいた時は、考えもしなかったな……」

「見聞が広がるって奴だねぇ」

ホームズは、隣で頷いている。

ホームズ自身も黒匣(ジン)について、人の部を超えた力だと思っていた。

そう言ってエレベーターへと歩いていく。

ローズも慌てて後を追う。

そんな二人を見ながら首をかしげる。

「聞き損ねていたんだが………」

そう言ってレイアの方を振り返る。

「ホームズの瞳、どうして金色なんた?碧色だったろう?」

レイアは、思わず言葉に詰まる。

「………わたしも詳しくは、知らないんだ」

結局、レイアもホームズの過去しか聞けていない。予想はつくがそれ以上は解らないのだ。

レイアの言いづらそうな様子にミラは、腕を組む。

「どうやら、私がいない間に色々あったようだな」

「そりゃあもう、盛大に」

いつの間にかレイアの頭にいるヨルが、そう返した。

ヨルの言葉にレイアとアルヴィンとジュードは、ぎこちなく視線を逸らす。

「おおい!なんか来たけど、これ、乗っていいのかい?」

そんな空気をぶち壊すホームズの能天気な声が届く。

アルヴィンが、慌ててエレベーターのところへ向かい、ボタンを押す。

「これしとかないと、エレベーター動いちまうんだよ」

「へぇー………」

ホームズは、興味深そうに話を聞きながらエレベーターに乗り込む。

そしていつの間にか、レイアの頭にいるヨルを見て首をかしげる。

「なんの話をしていたんだい?」

「お前の友人は、大変だという話だ」

「…………どういう意味だい……ってレイア目をそらすんじゃあないよ」

「ははは、いや、まあ、それはともかく!」

その言葉と同時にエレベーターの扉が開く。

「ほら!着いたよ!!」

「なーんか、釈然としないなぁ………」

ホームズは、ブツブツと呟きながらエレベーターを降りてエントランスを抜ける。

ホームズは、きょろきょろと辺りを見回しながらだが。

そして、出入り口の扉。

ホームズは、扉の周りを何かを探すように視線を彷徨わせている。

「ホームズ?」

「いや、取っ手がないのは、わかったからボタンはどこかなぁって思って」

アルヴィンは、疲れたようにため息を吐く。

「アルヴィン?」

「いいから、一歩前に出ろ」

ホームズは、首をかしげながら一歩前に出る。

すると閉じられていた扉がゆっくりと開いた。

「ふぉおおお!!」

「やめろ阿呆」

驚きの声を上げるホームズをヨルが尻尾で叩く。

「元気ですねぇ……ホームズさん」

ローエンは、ホッホッホと面白そうに笑っている。

そんなローエンの言葉を振り切ってホームズは、外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

外には見たことのない景色が広がっていた。

リーゼ・マクシアとは違う石造りの建物が並び、見たこともない明かりを灯す道具。

違和感として残るのは、全く緑がないこと。

確かに黒匣(ジン)の弊害は、エレンピオスを終わりへと導いていた。

リーゼ・マクシアと違い目をみはる美しさがあるわけではない。

散々見たいと言っていたエレンピオスの景色を見たというのにホームズは、静かだ。

「ホームズ?」

不思議に思ったレイアがホームズの顔を覗き込むとホームズの金色の瞳が揺らいでいた。

「これが、エレンピオス………父さんと母さんの故郷……!」

ホームズは、こぼれ落ちそうになる涙を堪える。

何度来たいと思ったか。

何度死にかけたか。

何度諦めかけたことか。

それら全てを乗り換えてようやくここに立てた。

「来たぞ…………来てやったぞ………ここまで、確かに手放しで素敵な世界なんて言えやしない……でも、それでも……」

ホームズは、袖でゴシゴシと目元を拭う。

「これて良かった……!ありがとう、みんな」

ホームズの心からの笑顔に皆は頷いて返した。









やっと着きました。長かったなあ………
いや、本当。




それにしてもオリンピック、逆転勝利というのが結構ありますね。
漫画とかでは、割とお約束ですが現実でそれをもぎ取る様を見ると素直に凄いなと思いまし、手に汗を握ってしまいます!!
とある漫画の作者の言ってい「現実の試合の方がもっとドラマチック」というのは、なるほどと頷きたくなりますね


テイルズ関係ない話をしたところで、ではまた百九十七話( ̄∇ ̄)/

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