1人と1匹   作:takoyaki

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二百話です!!

いや、マジで行きましたね、二百話。
絶対行かないと思っていたのに!
残り二十話ぐらいかなとか言っていたのが嘘のように続きました。
初めたころは、百話ぐらいで終わるだろうな……なんて思ってたのに驚きです!




それは、ともかく新しいニチアサも始まりましたね。
デザインの評価は、どうでもいいんですよ。
毎年発表されるたびに「ダサい」だの「もう終わった」だの「こんなモチーフ認めない」など、言われてるんですから!
そして、終わったあとにやっぱりあれじゃなきゃダメだった、最高だったに繋がるんですから。

てなわけで、どうぞ


整理整沌

「嘘だ!!」

「いや、信じてあげようよ」

ホームズの言葉にレイアが、頬を引きつらせながらやんわりといなす。

「母さんの知り合いがこんなまともそうな人の訳がないだろう!!」

「お前は、自分の親をなんだと思っているんだ………」

エラリィは、隣で聞いて呆れている。

ただ、否定しないところを見ると彼なりに思うところはあるようだ。

「そんなことより人間、答えろ」

ヨルは、そんな二人に構わず姿を現し尋ねる。

突然現れた喋る猫にエラリィは、目を丸くする。

「い、今、猫が喋ったのか?」

「あ〜、えーっと………」

ホームズが困っている中、ヨルは、我関せずを決め込んで質問を続ける。

「外の機械、アレに侵入者対策で爆薬とか仕込まれていないだろうな?」

子猫の容姿からは信じられない低くい声にエラリィは、困惑しつつも疑問を飲み込んで答える。

「あ、あぁ。そう言う意見もないわけじゃなかったが、軍の一人が反対してその案は消えた」

「一人の意見で…………」

「まあ、そいつも大概だからな………」

「まさか、母さんの知り合いとか言いませんよね?」

「知り合いどころか唯一無二の親友だ」

「………………」

ホームズは、鈍く響く頭痛を堪える。

脳裏に浮かぶ馬鹿笑いしている母親が鬱陶しい。

「とりあえずあの機械は、ここの研究所の関係者は襲わないようになっている」

エラリィは、そう言ってアルヴィン達を見る。

「確認するが、お前達はバランを助けに来た、それでいいな?」

一行は、頷く。

「なるほど、ならどうするかが、問題だな」

「おたくと一緒に行けば襲われずに進めるんじゃないのか?」

アルヴィンの最もな質問に二つ返事で答えるかと思いきや、エラリィは目を伏せる。

「エラリィさん?」

その動きを不審に思ったジュードが、首をかしげる。

「いや、その………研究所の関係者には、共通のカードが渡されていてな、それを元に外の機械が攻撃対象かどうかを判断している」

ローエンが顎髭を触る。

「つまり、カードを持っていない私たちは依然あの機械達の攻撃対象というわけですか……」

「いや、カードを持っている僕と行動していれば、お前達は攻撃対象から除外されるはずだ」

「どこに問題があるの?」

レイアは、腕を組んで尋ねるとエラリィの視線が泳ぎ始める。

息継ぎの暇などないくらいせわしなく。

「なくしたんだ………実は」

一斉に空気が凍った。

「盗られたんですか?」

エリーゼの質問にエラリィは、首をゆっくりと振る。

「いや、机の上に置いたことは確かだし、カードの位置はこれでわかる」

そう言ってエラリィは、画面のついた機械をスライドさせ電源を入れる。

表示された画面には、エレンピオスの言葉でこの研究所が示されていた。

確かに盗られたらというわけではなさそうだ。

この研究所にカードはある。

もっと詳しくエラリィは、見せてくれた。

研究所の中でも更にこの部屋を機械は、指し示していた。

そうなると当然の疑問が出てくる。

「机って、どこにあるんです?」

ホームズの質問にエラリィは、指をさす。

そこには、ありとあらゆるものがごちゃごちゃに積み重ねられた板のようなものが合った。

「…………机?」

気のせいでなければ軋んでいる。

ローズの疑問にエラリィは、肩をすくめる。

「何一つ捨てていないから、あるはずだ」

わびれもせずに言うエラリィ。

面々は、頬が引きつるのを感じた。

ミラは、呆れたようにため息を吐く。

「疑うまでもなく、ホームズの母親の知人だな」

そう言って机の上に目を向ける。

机の上にあるのは、本、書類、何かの工具、なぜか虫かごと虫取り網、そして水槽。

よくもまあ、これだけ集めたものだと逆に感心してしまう。

「…………とりあえず、探せばあるのだろう?その机の上をどうにかするぞ」

「いや、無駄だよ、ミラ」

ジュードは、ため息を吐く。

「僕、これと同じような机を小さい頃何度も見たんだ」

ちらりとレイアに視線を向ける。

レイアは、気まずそうに視線をそらして頭をかく。

「あ、あははは。何度も片付けて貰ったよね……」

「本人すらどこにあるか分かっていない机なんて他人が、手を付けてもいいことなんかないんだよ」

力強く語るジュードにホームズ達は、ため息を吐く。

「じゃあ、どうするんだい?」

ホームズの質問にエラリィは、首をかしげる。

「別に自爆機能もないし、壊していけばいいだろ」

何処かの誰かに負けないほど物騒な言葉に一行は、目を丸くする。

「い、いや、それは………」

「何だったら、許可取ってやるぞ」

そう言うとおもむろに先ほどの画面付きの機械を取り出す。

それに幾つかボタンを入力して、耳に当てる。

「もしもし」

エラリィが尋ねるとその機械から大音量の女性の声が響き渡った。

「《もしもし!エラリィ!?大丈夫ですか?!》」

狼狽した様子でまくし立てる女性の声にエラリィは、少し機械から耳を離す。

それから、現状を説明する。

「そんなわけで、バランを助けるのに対侵入者用の機械が邪魔だ」

「《……?別にエラリィに襲いかかるはずないので、真っ直ぐ普通に助けに行けばいいんじゃないですか?》

ホームズ達の先ほどの質問を再びかけられる。

「カード無くしたから、襲われる」

「《アレ?電波の調子がおかしいです……ごめんなさいもう一回言って欲しいんですが……》」

「何で二度も言わねばならないんだ?」

「《信じられないからに決まってるからじゃないですか!!》」

再びつん裂くような声が響き渡る。

「《無くしたっていうんですか!?アレ、凄い大事なものだって何度も説明しましたよね?!》」

「命とどっちが大事だ?」

エラリィがムッとした声で尋ねると電話の向こうでブチっと何かが切れる音がした。

「《命を守るために大事なんです!!そう説明したはずですよね!?エラリィがどう思ってるか知らないですけど、自爆装置の案、あっさり却下させたわけじゃないですからね!!研究員を守る利点を何度も説明してその上で、研究者と侵入者を見分けるシステムを作れば効率的に守れると、そう説明したからやっと、通った案なんですよ!?》」

電話から漏れ聞こえる女性の叫びは、止まらない。

「《だいたい、いつも片付けをするよう言ってるじゃないですか!!その度にあぁ、とか、また今度とか、来週までにとかばっかり答えて全然片付けないからそう言うことになるんです!!私、忘れてないですからね、エラリィの机片付けようとしたらカサカサ動く茶色の例のアレの死骸が出てきたこととか!私が貸した本埃まみれになってたこととか!》」

まるで止まることを忘れた馬のように喋り続ける機械の向こうの女性に一行は、同情を禁じえない。

女性の方も脱線したことに気付いたようだ。

ごほんと咳払いをすると話を戻す。

「《とにかく、それを作るのにお金もかかっているんです。ですから……》」

「命は金では買えないんだ」

「《えぇ。鉄は命では買えないですよね》」

余りにも容赦のない一言にエラリィは、言葉に迷う。

「………命と金どっちが、大事なんだ……」

「《そう言う議論を出さないために頑張った私の努力を無駄にしといて何言ってるんですか》」

容赦どころか温度もない絶対零度の一言にエラリィは、言葉に迷うどころかもう何を言うか完全に分からなくなった。

このままでは、何時までも本題に入らないと判断したホームズは、腕を回して 巻いて巻いてと合図をする。

エラリィは、頷いて返す。

「じゃあ、あの機械壊して進むから。壊された機械は、侵入者に壊されたことにする」

「《えっ?ちょっ、そんな……》」

「おお、許してくれるか!因みにこれからこの機械に電波は入らない」

そう言うとブチっと機械の電源を切った。

無言の面々を見回してからゆっくりと口を開く。

「そんなわけで許可降りたぞ」

「どんなわけ?」

ホームズの質問にエラリィは、肩をすくめる。

「…………やっぱり少しだけ探さない?」

そう言ってローズは、机の上の上のものを退かす。

目の前には、何故あるのかわからない虫取り網。

しかし、あの会話の流れから察するに茶色の例のアレを捕獲するためだったのだろう。

どう考えても不適切だが。

(虫取り網……………?)

ローズの動きが止まる。

何てことのないどこにでもある虫取り網だ。

だが、それはローズの記憶を揺り起こすのに充分だった。

(そうだ、あの時………ホームズと友達になった翌日………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『虫取り網どこだろ?』

ローズは、虫取り網を探していた。

何処かにしまったのは、覚えていたのだが、どこにしまったかは思い出せないでいた。

そんな時、半開きになった倉庫の扉だ。

『いつも鍵がかけてあるのに………』

ローズは、不思議に思いながらももう探す場所も見つからなかったので、倉庫に入り込んだ。

薄暗く見えづらかった。

けれども奥に白い、影が見えた。

『あ。あれだ!』

ローズは、思わず駆け出した。

しかし、暗かったのが災いし、うっかり荷物に当たってしまいその中身をひっくり返してしまった。

 

 

 

 

 

そう、ひっくり返したのだ。

商品の箱に入っていたものをひっくり返した。

だが、大事なのは、商品をひっくり返したことではない。

商品の中に入っていたものだ。

 

 

 

 

 

 

 

(そうだ………入ってた………あの時だ!あの時に見たんだ!)

ローズは、拾ったソレ(丶丶)を懐から取り出す。

「ローズ?」

動きの止まってしまったローズを見てホームズは、不思議そうに首を傾げる。

そんなホームズの言葉など今のローズの耳には入らない。

黒匣(ジン)の外装………!」

大事な商品、それが黒匣(ジン)の外装だった。

ローズの頭の中が真っ白になっていく。

 

 

 

 

 

 

『貴方()は、アルクノアとお似合いよね』

 

 

 

 

 

ミュゼの言葉が蘇る。

「貴方……()……」

ミュゼの言葉。

何故か、両親の商品の倉庫から出てきた黒匣(ジン)の外装。

そして、アルクノアに殺された両親。

これだけ揃えば誰でも分かる。

「ローズ、片付けるんじゃ……」

「ねぇ、ホームズ、噓偽り隠し事なく正直に答えて」

ホームズの言葉を遮ってローズは、震える声で尋ねる。

ずっと自分の信じていたものが、今、目の前で崩れ去ろうとしている。

「私の両親、それと姉さんは黒匣(ジン)の売買をしていたの?」

ホームズは、ピタリと動きを止める。

「それは………」

「私、これと同じもの実家の倉庫で見たことがあるの」

「………」

「貴方と一番最初に一緒に虫取りをしたでしょう?その時、倉庫の虫取り網を探そうとしてうっかり見つけたの」

ホームズは、沈黙してしまった。

別に隠そうとしているわけでは無い。

ただ、突然訪れたことに対処出来ていないのだ。

事情を知っているレイアとミラは、固唾を飲んで見守っている。

ホームズは、言っていた。

自分で辿り着いた答えを信じてしまうと。

ヨルは言っていた。

自分で辿り着かない限り、ローズの誤解は解けないだろうと。

「ねぇ、ホームズ。だとすると、おかしなところが出てくるの」

だからこそ、ホームズは大丈夫だと踏んでいた。

自分という分かりやすく、そして近くに原因が居れば、ローズは決して辿り着くことは無いと。

「私の家族は、貴方のお母さんに会うとか会わないとか関係なしにアルクノアと繋がってたってことになるの」

だが、ローズは辿り着いてしまった。

ホームズの予想を上回って、真実に辿り着いてしまった。

「私の家族は、黒匣(ジン)を売っていた。家族が殺されたのは、貴方達のせい(丶丶)じゃない。黒匣(ジン)を売っていた家族の口を封じることため(丶丶)だった」

ローズの瞳には、確信の光が満ちていた。

きっと、ここでどんな事を言ってもローズは、揺るがないだろう。

そして、何よりホームズは、嘘が苦手だ。

ことの成り行きを見守っていたエラリィが口を開く。

「つまり、こういうことか?そこのお嬢さんは、ホームズの事を逆恨みし続けていたということか?」

「それだけじゃないわ」

ローズは、自分の手が震えているのを感じていた。

視界がどんどん狭くなる。

「私、貴方を殺しかけたわ」

ミラは、眉をひそめる。

自分のいない間にどういう事が起こっていたか、少しずつ理解し始めていた。

ローズは、うつむく。

どうして言ってくれなかったのか?その言葉が喉まで出かかった。

だが、それを言うのはお門違いだ。

何故ならホームズの言い分なんて、あの時の自分が、聞くわけがない。

対するホームズも一生懸命言葉を探すがでてこない。

そんなホームズを見て、エラリィはため息を吐く。

「やり方が、お前の両親そっくりだ。その人にとって不利益になる事は自分が背負って黙りとはね」

エラリィは、そう言って席を立って、言葉を探しているホームズを見る。

「さて、お前は、九十九パーセントあの二人の息子だ。だがな、一パーセント、だけどうしても引っかかるところがある」

そう言ってエラリィは、二本指を立てピースサインを作ってホームズの両目に向ける。

目潰しを喰らうのかと勘違したホームズは、思わず後ろに下がる。

「ルイーズ教官の瞳は茶色、ベイカーの瞳は碧色、だが、お前はそのどちらでもない。何でだ?」

尋ねられたホームズは、困ったように笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言われても困るよ………生まれ(丶丶丶)た時から(丶丶丶丶)こうなんだ(丶丶丶丶丶)もの(丶丶)

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 










さて、記念すべき二百話でこんな話。
では、また二百一話で

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