1人と1匹   作:takoyaki

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二百三話です。



さて、誰得?な感じがしなくもないですが、書いてた方としてはノリノリでした。



てなわけで、どうぞ


無理なんだい?

「あの軍人さんが、リーゼ・マクシア人!?」

驚いているレイアにヨルが頷く。

「奴からは、霊力野(ゲート)の気配を感じた」

淡々というヨルにエリーゼが慌てる。

「待ってください!だったら、戻らないと……」

「阿呆。あいつも分かってる。分かったうえで、あいつが引き受けたんだ」

「そうそう。拳銃も持ってるだろうし、大丈夫さ」

「いや、あいつ。俺に銃弾すべて渡しちまったぞ」

ホームズの言葉にアルヴィンが弾倉を見せる。

そう、アルヴィンの銃弾はマクスウェル戦でとっくに底を尽きていたのだ。

ホームズの笑顔が引きつる。

「ヨル………」

心配そうなエリーゼとは対照的ににやりと笑っている

ヨルは、エラリィが消えた方を見る。

 

 

 

 

 

「まあ、お手並み拝見といこうか」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「でぇいりゃっ!!」

エラリィのハンマーが女軍人に打ち下ろされる。

女軍人は、それを半歩ずれることによりかわす。

女軍人に当たらなかったハンマーは、地面に叩き落とされた。

地面に落ちたハンマーは、石造りの床を砕く。

床には、ヒビが入り砕かれた石が散る。

女軍人は、エラリィがハンマーを構え直すより早く短剣で斬りつける。

ハンマーの柄で受け止めようとするが、両手で無数に振るわれる剣を全てを防ぐことは出来ない。

エラリィの白衣に赤い染みが少し広がる。

エラリィは、柄だけで女軍人を突き、距離をとる。

しかし、距離を取った瞬間女軍人は、目の前に火球を作り出す。

「まさか………」

「ファイアーボール!!」

火球は、女軍人の間にある空気を燃料にエラリィをめざす。

エラリィは、ハンマーを抱えて前転してかわす。

「側で見てると驚きだけだが、自分に向けられるとアレだな、恐怖すら覚えるな」

エラリィは、ハンマーを地面でする。

「リーゼ・マクシアの軍人、名前は?」

「これから死ぬのに必要か?」

「研究者は、知りたがりなんだ」

女軍人は、諦めたようにため息を吐く。

「カベルネだ」

名乗ったカベルネにエラリィは、思わず吹き出す。

「マジで名乗りやがった。お前、名前を名乗るリスク分かっているのか?」

エラリィの言葉に女軍人は、短刀で斬りかかる。

「お前をここで殺せばノーリスクだ!!」

斬りかかって来た女軍人をかわし、ぐるりと身体ごとハンマーを回し遠心力を乗せて打ちおろす。

だが、攻撃直後だというのに身体をひねってかわす。

(くそっ!当たらん!!)

「おお振りだな」

そう言うとカベルネは、一歩で間合いを詰める。

ハンマーを振るおうにもここまで内側に入られては、やりようがない。

「お前らが考える事のプロなら……」

両手の剣がそれぞれ二連繰り出す。

「私達は闘う事のプロだ」

迫り来る合計四つの刃がエラリィの

白衣を、皮を、肉を切り裂く。

「ぐっ………」

そして、ダメ押し。

「燃えろ、ファイアーボール!」

精霊術が放たれた。

エラリィは、慌ててまだ形を残している白衣を翻し、火球を行く手に広げる。

火球は、エラリィの白衣に当たるとそのまま何も燃やす事なく掻き消えた。

その光景にカベルネは、目を見開く。

「防炎素材………ようは、そう簡単に燃えないという事だ」

「バカな……っ!!」

信じられない光景に呆然としているカベルネにエラリィは、ハンマーを横薙ぎに振るう。

カベルネは、慌てて一歩引く。

カベルネに当たらなかったハンマーは、近くの壁を打ち崩す。

「お前が言ったんだ、僕の事を考える事のプロだと」

エラリィは、焦げ目一つない白衣を摘んで見せる。

「これは、プロの僕が作ったものだ。お前如きの火力で燃えるかよ」

「だが、刃物には弱いようだな」

カベルネは、しっかりと切り刻まれた白衣を指差す。

エラリィは、赤く染まる白衣に目を向ける。

「だったら、次は刃にも耐えられるものを作るか」

気軽に今日の晩御飯を決めるかのような口調にカベルネは、背筋に寒気が走る。

「……お前、一体何者だ?」

「だから、研究者だと……」

「研究者が血まみれでどうして平気なんだ」

忘れがちだが、本来研究者は、荒事をやる存在ではない。

頭を使うプロだ。

だが、そのハンマーを使う腕はどう見ても素人ではない。

(短刀使い相手にハンマーで挑むところは、まあ、素人だが……)

「血まみれになったことがあるからだ」

カベルネが黙っているとエラリィが口を開いた。

「………研究者だよな?」

「研究者だ」

カベルネは、溜息を吐く。

「まあ、いい。それより、もう一つ聞かせろ。何故、黒匣(ジン)を使うという選択肢しかないんだ?」

カベルネは、エラリィを睨みつける。

フルフェイス越しでも体がすくむような迫力にも構わず、エラリィは、ふんと鼻で笑う。

「なんだ、何も知らないんだな、お前」

「なんだと!?」

激昂するカベルネに構わずエラリィは、続ける、

「悪いが、答えるつもりはない」

「何故?」

「逆に聞くが、僕の答えをお前は信じられるのか?」

エラリィの質問にカベルネは、答えを詰まらせる。

「だって、そうだろう?お前は拳を振り上げた状態だ。そんなお前が、今更拳を解けるのか?」

カベルネは、ここを潰しに来ている。

今更、どんな理由を聞いたところでそれは揺るがない。

答えないカベルネにエラリィは、言葉を続ける。

「お前の自己満足に付き合うつもりはない。武器を構えろ」

カベルネは、ナイフを構える。

「そうだったな。私達は、話し合いの為に来たのではなかったな」

「それはそれは、残念なことだ」

エラリィは、小馬鹿にしたようにため息を吐くと問答無用とでも言わんばかりにハンマーを振り下ろす。

「だが、ハイそうですかと頷くと思っているのか!?」

迫るハンマー。

カベルネは、それをかわすと右の短刀で斬りつける。

エラリィは、ハンマーの柄で防ぐ。

だが、左の短刀が、ハンマーの柄をぬってエラリィに振り下ろされる。

「ぐぁっ………!」

「ハンマーの一撃は、確かに脅威だが、その重さ故にどうしても攻撃が限られる。それにくらべて」

カベルネは、流れるように連続切りを繰り出す。

途切れることのない斬撃にエラリィの身体は、赤く染まっていく。

「っそ!!」

斬撃の中、エラリィは何とかハンマーを振るう。

カベルネは、大きく後ろに下がる。

「短刀は、多彩な攻撃で相手を追い詰める事ができる」

「何が言いたい?」

そう言って血だらけのエラリィに短刀を向ける。

「手数で勝る短刀相手に、一撃打てば隙ができるハンマーで勝つなんて不可能だ」

カベルネがそう告げた瞬間、エラリィは、ハンマーに目をやると俯く。

エラリィの手は震えていた。

悔しさを噛み殺しているのか、

命を奪われる事に恐怖しているのか、

それとも単純に出血量が多く体温が下がっているのか、

カベルネは、どれが正解か分からないが、この中のどれかが正解だろうと思っていた。

「……………くっ」

エラリィから、短く息が漏れる。

「くくく……ははは………」

「?」

「ダーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

しかし、エラリィは、そのどれでもなかった。

笑いを堪えるのに必死で震えていたのだ。

「『不可能』か!いいね、燃える言葉だ!」」

エラリィの心底楽しそうな顔にカベルネは、首をかしげる。

「何を言っている?」

研究者(僕達)はな、『不可能』を『可能』にするためにいるんだ」

そう言ってハンマーを掴む手に力を込める。

「そんな僕の前に今、『不可能』とやらがある!これで、熱くならなきゃ研究者じゃない!」

「………理解に苦しむな」

「当然!天才とは常に理解されないものだ」

面白そうに笑うエラリィ。

やけくそとも違う。

逆鱗ともまた違う。

どうやら、カベルネはエラリィのスイッチを押してしまったようだ。

(何かは、分からないがマズイ!)

直感で危険を感じたカベルネは、ファイアーボールを作り出して放った。

だが、それは真っ直ぐ向かってくる破片と相殺され掻き消えた。

「何!?」

カベルネが戸惑っている間にエラリィから、無言の種明かしを見せられる。

エラリィは、砕けているレンガを足ですくい上げるように真上に放つ。

そして、落ちてくるレンガをハンマーで打ったのだ。

打たれたレンガは、簡易的な大砲となってカベルネに放たれる。

余りに素早く放たれたレンガをかわせなかった。

レンガは、フルフェイスの兜を粉々に砕いた。

(そうか………このために、散々地面に打ちつけていたのか!)

外しているように見えて実は、このレンガ砲の砲弾を作っていたのだ。

もし、レンガ砲が一発で決まらなかった時用に何回も打ちつけていた。

例え、ハンマーがカベルネに当たらなくともエラリィは、勝利の下準備をしていたのだ。

エラリィから放たれたレンガ砲は、不幸中の幸いと言うべきか、レンガと一緒ヘルメットも砕けたので頭には、衝撃はあれど傷はない。

 

 

 

 

 

しかし、

「そちらが手数で勝負なら……」

チカチカする目を開ける。

瞼を開けて目に入ったのは、ハンマーの間合いまで入ったエラリィだった。

「こっちは、一撃で勝負だ!!」

そう言ってハンマーをカベルネの腹に打ち込んだ。

「─────ッ、ハ!」

打ち込まれたハンマーから、広がる衝撃にカベルネの肺にある空気が全て吐き出される。

「っでぇいりゃあーーーーーっ!!」

エラリィは、打ち込んだハンマーをそのまま振り切るとカベルネを壁に叩きつけた。

「─────ッ!!」

カベルネが叩きつけられた壁は、凹みヒビが蜘蛛の巣のように広がる。

カベルネは、ゆっくりと前のめりに壁から落ちて、動かなかった。

それを見届けるとエラリィは、ドスンと腰を下ろす。

「あぁー……しんど」

そう言うとエラリィは、倒れているカベルネに近づき脈を図る。

「……やれやれ、死んでればこっちも楽だったんだがな」

そう言ってエラリィは、倒れているカベルネの肩を持ちながら立ち上がる。

「………医務室に連れてくといってしまったからな」

そう言って医務室へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「ま、約束は約束だ」










変なスイッチ持ちなだけですよ。



てなわけで、二百四話で( ´ ▽ ` )ノ
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