1人と1匹   作:takoyaki

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二百七話です!



エグゼイド結構面白いです。
デザインは、慣れました。というより、むしろカッコいいと思うようになってきました。


てなわけで、どうぞ


みんなといっぴきはひとりのために

「何かは、分からないけど向き合ったみたいだねぇ」

ホームズは、そう言って一旦役目を終え、光が消えていくリリアル・オーブを指差す。

ホームズと戦ったあの時、リリアル・オーブは、輝かなかった。

「まあね。後で、百点もらいに行かないといけないんだけれど」

「?」

「こっちの話」

何かを振り切ったローズに一行は、優しく微笑む。

何もかもが良い訳ではないが、それでも駆けつけてくれた事は嬉しいのだ。

「………まあ、何はともあれやっと大人しくなったな」

ローズの秘奥義で叩きつけられたヴォルトは、地面に倒れたまま動かない。

「セルシウスといい、源霊匣(オリジン)ってのは、面倒だな」

「はい、大精霊も復活させてしまいますからね……」

「何とか有効な利用法が欲しいところだねぇ。でなければ、潰すとか」

「ぶっそうだね……」

ホームズの言葉にジュードは、呆れている。

そんな会話をしていると目の前に黒い穴が現れ、ガイアスとミュゼが現れた。

ミラは、突然の事に目を丸くする。

「ガイアス、ミュゼ」

ガイアスは、ホームズ達を見据える。

「こんなところで出会うとは、意外なこともあるものだ」

「やっぱり、エレンピオスに来ていたのね」

「お陰様で」

ホームズは、肩をすくめてみせる。

(こんな状態でやり合いたくないなぁ……)

ホームズは、何時でも対応出来るように全身に力を込める。

そんなホームズの前にジュードが一歩前に出る。

「ガイアスも源霊匣(オリジン)の可能性に気付いてるんでしょ?」

「可能性?そんなものの上で民を生かすつもりはない」

ガイアスは、そう言って腕を組む。

「俺が、源霊匣(オリジン)を起動させたのは、ジュード、お前の考えそうなことだからだ」

「え?」

ジュードがポカンとしているとガイアスが言葉を続ける。

「だが、ダメだった。とうてい人に御しきれるものでは無い」

「だったら、どうするんだい?」

ホームズが尋ねると、ガイアスは言葉を続ける。

「やはり、この世界から黒匣(ジン)を一掃するよりないようだ」

ガイアスから放たれた予想通りの言葉にアルヴィンは、舌打ちをする。

「やっぱり、そんなこと考えてやがったか………」

「でも、そんなことしたら!」

レイアは、声を荒げる。

「だが、それで異界炉計画は確実に終わらせることができる。

異論は、あるだろうがな」

「当然だろう?」

ホームズは、ガイアスを睨みつける。

ガイアスは、真っ向からホームズを睨み返す。

断界殻(シェル)は、どうする?」

ミラの質問にガイアスではなく、ミュゼが答える。

断界殻(シェル)は、無くさないわ。黒匣(ジン)がある限り」

そう言ってミュゼは、ホームズとアルヴィンに視線を向ける。

「リーゼ・マクシアが、エレンピオスに蹂躙されては堪らないもの」

ミュゼの言葉にミラがもう一言質問する。

「マクスウェルもあのままか?」

「弱き者を死なせないのも強きものの義務だ」

「間違ってるよ、ガイアス!!」

ジュードは、ガイアスの言葉を真っ向から否定する。

ジュードの言葉にガイアスは、歯噛みする。

「何が間違っているというのだ!!断界殻(シェル)を維持し、黒匣(ジン)を全て滅ぼしたのちに世界を一つにすればいいだろ」

黒匣(ジン)をなくせば苦しむ人間が出る。お前は、それを無視するというのか?」

ミラは、真っ直ぐにガイアスに問いかける。

「苦しむ弱い人間は、ガイアスが救ってくれるわ」

ミュゼの答えにホームズは、鼻で笑って返す。

「お前は何もしないのか、大精霊?」

ヨルの馬鹿にした物言いにミュゼの眉がピクリと動く。

「おれの理想がわからぬお前たちではないだろう!?」

ガイアスが激昂しながら問い詰める。

「別に、わかるよ。リーゼ・マクシアの為にエレンピオスを犠牲にするというんだろう?」

ホームズは、肩をすくめてみせる。

「正しい判断だよ。リーゼ・マクシアの王、ガイアス。王が民のことを考えるのは、当然だ」

でも、と言ってホームズは、言葉を区切る。

「それが、おれや、ジュード、ミラやアルヴィンの理想と一緒かと聞かれればそうじゃない。ガイアス、これは、そういう話なんだ」

ホームズは、そう言ってガイアスを真っ直ぐに見据える。

「君には君の、おれ達にはおれ達の理想があり、信念がある」

ホームズは、ガイアス相手に一歩も引かない。

「ガイアス、どんなに立派な理想も人に押し付けちゃダメだよ!」

今度は、ジュードが口を開く。

「なら、お前の理想は何だ!」

黒匣(ジン)だよ」

ジュードは、にべもなく言い放つ。

黒匣(ジン)が必要なんだ。自分らしく生きるために」

「………お前の言葉は、可能性だけを述べている恣意的なものにすぎんぞ」

「そうかもしれない。でも止めるわけにはいかない」

二人に歩み寄る気配はない。

ミュゼは、ため息を一つ吐く。

「行きましょう。ここにいても時間の無駄です」

ガイアスは、頷く。

「………そのはないのいいようだな」

そう言って二人は、黒い穴の中へ消えていった。

穴が完全に消えるとホームズは、安堵したようにため息を吐く。

「ふぅ、助かった。あのまま襲ってくるじゃないかと思ったよ」

「まあ、奴らにも奴らなりの事情があるってことだろ」

ヨルは、子猫のまま欠伸をしながら返す。

ヨルとホームズが安堵している中、ジュードが俯く。

「僕は、また……ううん。まだ、何かあるはずだよ」

ジュードの決意を横目で見届けるとヨルは、辺りを見回す。

「さて、後は、メガネ男だが……」

「ヨル、探せるかい?」

「どいつもこいつも霊力野(ゲート)の気配がないからわからんな……」

「君、ここに来て何の役にも立ってないね」

子猫状態のヨルに誰もが何となく思っていたことをサラリというホームズ。

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「あぁ?」

ドスの効いた声に対しホームズは、肩をすくめてみせる。

「マクスウェル戦で活躍したからいいだろ、代休だ代休。お前に至っては、死んだフリしてただけだろ。そのまま永眠してろ」

「他にも色々やってましたぁ!!ヨルの事聞き出したり、ヨル呼び出して翻弄したり!!」

喚き散らしながら、騒ぐホームズとヨルに一行はため息をつく。

「ダメだ。とりあえず、ホームズとヨルは当てにしないでどうにかするか」

ミラの言葉に頷き、アルヴィンは、ふと辺りを見回す。

すると、一台の止まった昇降機とそこに乗っている人間が目に入る。

「………バラン?」

間違いなくアルヴィンの従兄弟のバランだ。

「バラン!!」

アルヴィンの呼びかけにバランも気付いたようだ。

ホームズ達のいる場所は、この棟の屋上だ。

その屋上より、遥かに高いところにバランは、いた。

「アルフレド!!」

バランも慌ててアルヴィンに呼びかける。

ホームズとヨルも睨み合うのを止めて昇降機を見る。

「ん?止まってる?」

「どうやら、動力がなくなったせいであのような場所で止まってしまったようですね」

アルヴィンは、ヨルの方を見る。

「おい、非常識は………無理か」

「まあね」

ホームズは、そう言って顎に手を当てて考える。

「まあ、無いものねだっても仕方ない」

そう言ってホームズは、屋上への出入り口を指差す。

「そうだな。下に一度降りてたすけだすぞ」

ミラの提案に一行が頷いた時、ジュードが、こめかみから指を離す。

「待って。無いものをねだっても仕方ないならあるものを使おうよ」

ジュードは、そう言って源霊匣(オリジン)ヴォルトに近づく。

源霊匣(オリジン)ヴォルトを使うつもりだ。

「おいおい、マジかい。ジランドの最後を忘れたわけじゃあないだろう?」

「………でも、やるしかないよ。下から助け出すには、高さがあり過ぎる」

ジュードは、そう言って落ちている精霊の化石を源霊匣(オリジン)の機械にはめる。

「お願い、ヴォルト。力を貸して!」

するとヴォルトは、ゆっくりと動き出した。

「ジジ………」

ヴォルトは、そう言ってゆっくりと起き上がり雷撃を避雷針のようなものに放つ。

「行けるかしら……」

ローズがそう呟いた瞬間、ジュードに黒い電撃のようなものが纏わりつく。

「ぐ、ぁああ!」

ジュードの苦しそうな声が響き渡る。

「ジュード!!」

「ジランドの時と同じ反応だ、もうよせ!」

一行の脳裏には、ジランドのあの無残な姿が蘇る。

だが、ジュードは止めない。

「まだ………だよ!」

踏ん張って更に続ける。

ジュードは、源霊匣(オリジン)を手放そうとしない。

すると、ミラの手が源霊匣(オリジン)の上に重ねられた。

するとミラの手にも反動の黒い電撃が纏わりつく。

「何故、一人で無茶をする」

「はは、ミラがそれを言う?」

少し呆れたように笑うジュード。

そして、そこにホームズの手が重ねられる。

手には、肩身の指輪が付けられたままだ。

「全くだねぇ、もっと言ってあげたまえ」

ホームズの手にも反動が現れる。

「いや、ホームズもあんまり変わんないよ」

「おれは、割と人に頼ってるよ」

指輪のしたままの手で何てことなさそうに返すホームズ。

「頼ってるにしては、怪我が重いし多いよ、ホームズ」

そう言ってレイアが手を重ね、ジュードに視線を向ける。

「ジュード。わたし達にだって出来ることがあるんだからね」

ローエンの手が重ねられる。

「一人で出来ないことはみんなでやればいいのです」

次は、アルヴィンだ。

「それで、可能性って奴があがりゃあ儲けもんだろ」

「大丈夫よ、今の私なら力になるわ」

そう言ってローズが手を重ねる。

「わたしたちに任せてください」

『うんしょー!!』

エリーゼとティポが手を重ねる。

これで、全員?

いや、後もう一匹いる。

ヨルは、ホームズの腕を伝って降りてくると自分の前足を重ねた。

「ヨル………?」

驚いているジュードにヨルは、ニヤリと犬歯を見せる。

「俺は、お前の話に乗ったんだ。乗ったからには、賭けてやる。何だってな」

ジュードは目を丸くして見回す。

そして、力強く頷く。

「みんな……ありがとう」

皆の力が加わり紫の雷光は、次第に勢いを増していく。

「みんな、もう少しだ!意識を集中しろ!」

雷光の勢いは、更に増していく。

「行っけーー!!」

ジュードは声の限り叫ぶ。

雷光は、更に輝き建物に照明を灯していく。

そして、昇降機が、ゆっくりと下に降りて行った。

ゆっくりとしかし、確実に昇降機は、地面に降りていく。

そして、ガコンという音が響く。

地面に降りたった音だ。

それを聞いた瞬間、一行は、急いで源霊匣(オリジン)から離れ、確認しに行った。

「バラン!!」

アルヴィンが慌てて屋上の手すりに駆け寄るとバランは、大きく手を振って応えた。

アルヴィンは、それを見るとハハハと笑ってどっかりと地面に腰を下ろした。

「良かったよ、ほんと」

「全くもってその通り………とはいえ、やってみるもんだねぇ」

ホームズもぐったりと腰を下ろす。

ジュードが慌ててホームズの左手の指輪を見る。

「指輪、壊れてない?」

「大丈夫だよ。何といったって誓いの指輪だからねぇ、君の誓いにぐらい力を貸してくれるさ」

ホームズは、そう言ってピンクに輝く指輪を見せる。

ジュードは、胸を撫で下ろす。

「まあ、でもこれで殴るのはやらないよ」

「いや、当たり前だよ」

ジュードは呆れたように言う。

ホームズは、くくくと笑った後立ち上がる。

ポンチョがふわりと風に棚引く。

ホームズは、つかつかと歩きアルヴィンを引っ張り上げる。

「ほら、立ってアルヴィン。バランさんの様子を見に行くよ」

突然引っ張り上げられたアルヴィンは、目を白黒させたが直ぐに笑う。

 

 

 

 

「そうだな」

 

 

 

 








タイトルはまあ言わずもがなってヤツです。



てなわけで、お次の章はこれ〈ガールズトーク〉
ローズから見たホームズの過去というのがコンセプトでしたが、結局ヨルが話してますね……
章終わりでもいいましたが、ガールズトークだっつてんだろ!!出てくんなお前!と思いながら書いていました。
でも彼がいないと話が進まないのでしかたないです………
ラストのホームズとローズのお別れのシーンは、書いててすごく恥ずかしかったのですが、アレ以上は、思いつかず、そして「自分なら恋愛シーンだって読みたいだろ!!」と言い聞かせながら強い心の元書き切りました(笑)
恋愛シーンは、書くのが恥ずかしいという人の気持ちが凄く良く分かりました。
でもまあ、おかげで恋愛シーンを書くのに大分抵抗がなくなったのである意味、大切な章です。



それではまた二百八話で( ´ ▽ ` )ノ

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