1人と1匹   作:takoyaki

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二百十話です。



早いもので、この投稿を初めて三回目の新年です。



てなわけで、行くゼ!新年一発目!!


盆に返る覆水

「みんな、眠れた?」

翌朝、一行が起きて外に出るとジュードが開口一番に尋ねた。

ホームズは、OKサインを出す。

アルヴィンも頷く。

「こんなにぐっすり寝たのは初めてかもってくらい眠れたよ」

アルヴィンの隣にいるホームズの肩にはいつもの姿のヨルがいた。

「ヨルも戻ったみたいだね」

「おかげさまで。生首になるには、もう少し時間がいるがな」

ヨルは、そう言って欠伸を一つする。

レイアが一歩前に出る。

「ジュード、ミラ、わたし一緒に行くよ。あぁっと、理由は、いちいち言わないからね」

最後は、少し照れながらレイアが言うとエリーゼも頷く。

「私も行きます」

『もちろん。ぼくもねー!』

ティポがふよふよ浮かんでいる。

「私もご一緒しますよ」

ローエンは、柔らかく微笑む。

「唯一のエレンピオス出身者としては、傍観決め込む訳にはいかないってね」

アルヴィンは、手袋をはめ直しながらそう答える。

「私も行くわ」

ローズは、マーロウの煙管を咥えて胸を張る。

皆がホームズの方を向く。

「行くに決まってるだろう?」

「ヨルは?」

ジュードの問いにヨルは、尻尾を揺らす。

「ホームズから離れられない俺に選択権は、ない」

ヨルは、そう答えてからジュードを見据える。

「だが、俺も行くぞ」

だからとは言わない。

だがと言う。

制約でついて行くのではない。

ヨルの意思でこの道を選んだ。

「いいんだな」

一行の意思を確認するとジュードとミラが頷きあう。

「それなら、話しておいたほうがいいよね」

ジュードが一振りの短刀を見せた。

刃の部分が仄かに青い。

「なんだいこれ?」

ホームズが首をかしげるとヨルがヒゲをピクリと動かす。

「次元刀と同じものを感じるが?」

「察しがいいな」

ミラが頷く。

「昨晩、ガイアスが持って来た。ミュゼの力の一部だそうだ」

エリーゼが、首をかしげる。

「つまり、これで裂け目を開けられるんですか?」

「そうみたい」

わざわざ自分のところへの鍵を渡しに来たガイアスにローエンはあごひげを触る。

「全く、計り知れない方ですね」

「俺達をナメてんだよ」

アルヴィンは、つまらなそうに吐きすてる。

するとレイアがムッとした顔をしてアルヴィンに食ってかかる。

「そんなことない!あれで、ガイアス結構いい人だもん!!」

アルヴィンは、目を丸くする。

「口、聞いてくれるのか?」

アルヴィンの言葉にずっと冷戦状態だったのを思い出したレイアは、気恥ずかしそうに目をそらす。

「あ、えっと……」

「嬉しいよ、レイア」

「どう………いたしまして」

ホームズは、そんな二人を満足そうに見ている。

レイアの視界に満足そうな顔をするホームズが入り、思わず突っ込みそうになるがぐっと堪える。

「まあ、きっとガイアスなりの礼儀なんだろうねぇ。これは、いわゆる挑戦状ってわけだ」

ホームズの言葉に一行は、ジュードの手に収まる次元刀の一部を見る。

一行の心は、決まった。

あとは、出発するだけだ。

『でもさー、誰の見送りもないのが、寂しいねー』

ティポの言葉にジュードは、ふふっと笑う。

「別にいいんじゃないの?」

「あぁ、私たちらしいと言えば私たちらしい」

「友達少ないからねぇ……」

「ホームズにだけは言われたくないなー」

だが、まあ否定出来ないのが悲しいところだ。

ジュード、エリーゼ、アルヴィンは苦笑いしている。

レイアは、パンと手を叩く。

「さ。それじゃあ、ジュード出発前の掛け声よろしく」

「お、いいねぇ」

「なんやかんやで掛け声なんてやったことなかったな、そう言えば」

同意するホームズとヨル。

「外すなよ」

とミラ。

「よろしくお願いします」

エリーゼも続く。

「頼むぜ」

アルヴィンがいつもの軽い調子で言う。

「さあ、大きな声で」

「気合い入れてね」

ローエンとローズの言葉にジュードは、頷くと拳を握る。

「それじゃあ……」

そう言って拳を突き上げる。

「みんな、絶対にやり遂げよう!!」

『『おお!!』』

一行は、拳を突き合わせた。

気合いを入れた一行は、そのままエレンピオスとリーゼ・マクシアを繋ぐ裂け目の丘へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「ローズ、それって?」

道すがらレイアがローズが咥えている煙管を指差す。

ローズは、決まり悪そうな顔をする。

「あぁこれ?恥ずかしい話、ようやく整理がついたからホームズから譲り受けたのよ」

あの時、ホームズが手渡そうとした時、ローズはマーロウの死を受け入れられず拒んだ。

昨晩、ようやくホームズからそれを受け取ることができたのだ。

「そっか、よかったね」

レイアが嬉しそうに笑うとローズは、少しだけ目をそらす。

「その、さ、レイア。ごめんなさい。貴方には、随分迷惑かけたわ」

「ローズがって言うより、ローズのために動いていたホームズがって感じだけどね」

レイアは、苦笑いをする。

まあ、確かに気苦労はかなりのものだった。

ホームズの秘密を知ってからは、特に。

全ての事情を知っているレイアは、何度もやり切れない思いをした。

「まあ、これでいつもの二人に戻ってくれると嬉しいよ」

「そうね。そうなるといいわね」

ローズがにっこりと微笑むとミラがじーっとこちらを見る。

「な、何?」

「いや、その煙管、確かホームズが散々咥えていたなと思ってな」

「それって……」

『わぁーお、間接キスー?』

「ぶっ!!」

エリーゼとティポの追撃に思わずローズは、吹き出した。

吹き出された煙管は、前を歩いていたホームズの頭に当たる。

煙管は地面に落ちる前にヨルが、尻尾でキャッチする。

「何してるんだい、君たち?」

ホームズは、露骨に呆れた顔をしている。

『その煙管ってホームズ使ってたんでしょー?』

「まあね」

『今、ローズが使ってるんだよー!』

「ティポ!!」

ローズが慌ててティポに掴みかかる。

ホームズは、そんな様子を見ながら首をかしげる。

すると、アルヴィンとローエンが面白そうな顔をして、ホームズの後ろに立つ。

「ほほう?それは、アレだなローエン」

「ええ、全く。甘酸っぱいですね。私にもそんな思い出がありますね」

「二人とも………」

完全に面白がっている二人にジュードがため息をつく。

「?」

首をなおもかしげるホームズにヨルが止めの一言を告げる。

「間接キスだな」

ヨルは、煙管を尻尾で弄びながら言うとローズの顔は遂に真っ赤になってしまった。

「ん?あぁ、そうだね。おれとはそうだし、マーロウさんともだね」

ホームズの言葉に場が凍りついた。

「いや、だって、それ、元々はマーロウさんのだよ」

そして、よせばいいのに更に続ける。

「というか、何回か言ってるけど、君別れ際に直接やってるだろう?今更、間接ごときで何言ってるんだい?」

氷点下を超えて絶対零度となった。

ローズは、無言でヨルから煙管を受け取るとホームズにあの一言を告げる。

「貴方は、そんなんだからモテないのよ」

そう言ってスタスタと歩き出した。

ホームズは、呆然とその姿を見送りながらアルヴィンに尋ねる。

「アルヴィン、おれ何か間違った事言った?」

アルヴィンは首を横に振る。

「いいや。でも、お前が悪い」

「えぇ─………」

「アルヴィンさんのほうが正しいですよ」

「もう少し、言葉選ぼうよ、ホームズ」

ローエンとジュードからそっと言われる。

巻き込まれる前にさっさとレイアの方に逃げたヨルが、欠伸をする。

「な?馬鹿一直線だろ?」

「ホームズって、本当、デリカシーないですね」

『さいあくー!!』

レイアは、先ほど言った言葉を早速後悔していた。

「いつもの二人に戻られても困るかもなぁ………」

ハァ、とレイアの大きなため息が響いた。

 

 







仲直り回となりました。
去年の今頃と比べれば大分仲良くなりました。

そして、次回からは、サブイベント編(笑)となります。
長い時間過ぎている気がしますか、超時空だと思って下さい。



さて、今回の章は、盛り沢山でした。
ホームズの血筋、ローズのどん底、秘奥義、決戦前夜、本当に盛り沢山でした。
MVPは、ローズに上げたいと思います。
ぶっちゃけたことを言うと、ローズがホームズの払った代償に気付くのは、エクシリア2のメインの話にしようと思っていました。
しかし、読者としてじゃあ、しこりを残したままラスボス戦を見たいかと言われればそんな事もないので、思い切って書きました。




長くなってしまったので、この辺で。
章の振り返りは、また今度です!
残すところもあと少し!頑張っていきます!



ではまた、二百十一話で( ´ ▽ ` )ノ

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