1人と1匹   作:takoyaki

215 / 242
二百十四話です。


今回は、この2人!



てなわけでどうぞ


きれいな花には気を付けろ

「エリーゼ、リリアル・オーブは?」

「はい、大丈夫です。ローズは?」

大会の舞台裏でローズとエリーゼは、互いに今の状況を確認していた。

「そう言えばエリーゼと二人で一緒に戦うのって初めてかしら?」

エリーゼは、今までのことを思い出す。

ローエンがいたりという事はあるが確かに二人で戦った事はない。

「ホームズと戦ったことは、ありますね」

『二つの意味でねー』

「ハハハ」

ローズは、渇いた笑みを浮かべている。

それから少しだけ真面目な顔になる。

「私とでいいの?私は……」

「ホームズの瞳を潰した……ですか?」

ローズは、静かに頷いた。

「友達の大切なものを奪った………それは、許せないです」

でも、と言葉を続ける。

「私は、ローズも大好きですよ。だから、これは仲直りです」

ローズは、静かに頷く。

「ありがとう」

『どういたしましてー!』

エリーゼは、舞台に向かって歩いていく。

その後ろをローズが付いていく。

 

 

 

 

 

「私より、ずっと大人よね………」

 

 

 

 

 

情けない気分になりながらもなんとか気持ちを持ち直してローズは、会場に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

【さあお待ちかね!オオトリは、こいつらだ!!】

実況の声と共にローズとエリーゼが入場した。

【第1ステージを瞬きする間に終わらせた最強チームからの女コンビだ!さてさてどうなる?!】

「間に合った!」

レイアが何とかホームズを観客席まで連れてきた。

「お前が出たいと言ったんだからな、次のステージでは出てもらうぞ」

ミラから厳しい言葉がホームズに飛ぶ。

何か言い訳が来るかとミラが次の言葉を用意しているが、ホームズから返答は、一切ない。

「…………ホームズ?」

ミラが首を傾げる。

しかし、何処か虚ろな瞳に反応はない。

「ホームズ!」

ミラが肩を強めに叩くとホームズは、ハッとしたようにミラを見る。

「何だい?」

「次のステージは、お前に出てもらうという話だ」

「ん、ああ。いいよ」

二つ返事で了承したホームズにミラは、眉をひそめる。

「おい、ホームズ……」

【いくぜ、第2ステージ!!種目は、タイムアタックだ!!】

ミラの言葉は、実況でかき消された。

【制限時間は、十分間!その間に敵を倒せるだけ倒せ!!その数で競うからな!お嬢ちゃん達、覚悟しろよ!】

その言葉と共に精霊術が発動する。

【んじゃ、スタート!!】

現れた魔物達は一斉にローズ達に襲いかかった。

観客達は息を飲む。

誰もが彼女達の無残な姿を想像する。

しかし、それは裏切られることとなった。

魔物達は爆音と共に空に舞い上がった。

空に打ち上げられた魔物達は、順番に消えていく。

地上には、刀を抜いたローズと杖を構えるエリーゼ。

「やるからには、勝つわよ。エリーゼ!」

「当然です!」

『任せろー!!』

ローズは、刀を膝下で交差させて詠唱を始める。

「だんだん速く♪どんどん速く♪」

魔物達がローズに向かっていく。

しかし、後半歩足りない。

マナは、ローズに収束する。

「アッチェランドクイックネス!!」

纏ったマナと共にローズの白刃が魔物を切り裂く。

その様子を観客席から見ていたホームズは、考え込む。

「なるほど。クイックネスよりはいいよねぇ」

先ほどのぼんやりした様子を消し去ってホームズが分析する。

レイアが隣で頷く。

「まあ、クイックネスじゃあ途中で切れちゃうもんね」

「その点あのクイックネスならだんだんと速くなってく。通常より速い状態を保つことが出来るからね」

ホームズは、そう言ってローズの戦いに目を向ける。

刀を振るう程ローズは、少しずつ速くなっていく。

目の前の敵を斬り伏せるローズ。

その後ろで魔物が掴みかかる。

「『ネガティヴゲート!!』」

瞬間、エリーゼの精霊術が発動した。

無数影の腕が、魔物を蹴散らす。

他の魔物達は、それを見ると今度はエリーゼに狙いを定める。

しかし、それをローズの剣戟が阻む。

「お姫様に何するかしら?」

ローズは、刀を振り上げ、思いきり打ち下ろした。

魔物達は地面に叩きつけられる。

「頭が高いってんのよ!!」

魔物達は、かき消えていく。

ローズは、そのまま地面を打ち鳴らして前方には飛び出す。

その勢いを乗せたまま身体を捻って切り崩す。

回転を加えた斬撃によって魔物達は宙を舞う。

魔物を蹴散らしたローズは、地面に足をつける。

動きの止まったローズに再び魔物達が襲いかかろうとする。

「『ティポプレッシャー!!』」

巨大化したティポがそれを押しつぶす。

ローズに切り崩されている間にエリーゼの精霊術が完成する。

そして、ローズの攻撃の手が緩まったところにエリーゼの精霊術が襲いかかる。

その隙のない連携に魔物達は、なす術がない。

すると出てくる魔物が重量級へと変わりだした。

鈍い鉄の音と共にローズの刀が弾かれる。

「っ!!」

弾かれたローズは、別の魔物に切り替える。

だが、切り替えた先も同じ魔物だ。

「きゃあ!」

「エリーゼ!!」

手間取っている間に詠唱中のエリーゼに魔物が襲いかかっていた。

何とか杖で防いだが詠唱は、途切れてしまった。

その様子を観客席で見ていたレイアが声を荒げる。

「ちょっと!!魔物を変えないでよ!

卑怯じゃん!!」

ホームズは、溜息をつく。

「単純にそれぞれの魔物の量がきまっているんだろうね。ローズとエリーゼで倒しきっちゃったから、別のを出したみたいだねぇ」

ヨルは、そんな話を聞きながら首を傾げる。

「だったら、おかしくないか?倒しきったなら、そこで終わりだ。あいつらがトップってことでいいだろ」

ヨルの疑問にジュードが首を横に振って答える。

「ローズ達の他にも何組かいたからここで終わらせるわけにいかないんだよ」

亀のような甲羅を持つ魔物がローズにその重量を武器に飛びかかる。

「心配か?」

ホームズは、肩をすくめる。

「前にも言ったはずだけど、あの子の師匠誰だと思ってるんだい?」

魔物達でローズが見えない。

代わりに赤い闘気が少しずつ溢れてくる。

「剛招来────」

赤い闘気がローズから吹き出て近くにいる魔物を弾き飛ばす。

「纏!!」

赤い闘気は、ローズの両刀に纏わりつく。

「ハァア!!」

ローズの両刀が、魔物達を切り裂く。

自分の周りの魔物を切り裂くと、今度はエリーゼの周りの連中だ。

「蒼刃追蓮!!」

蒼い斬撃がエリーゼに向かって駆け抜ける。

切り裂かれる魔物達と、その間に詠唱を完成させるエリーゼ。

先ほどのパターンに見事に戻った。こうなればもう後は、先ほどの繰り返しだ。

二人の快進撃は、見事十分間続いた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「ここかな?」

一行は、二人の控え室の前にいた。

ホームズは、コンコンとノックをする。

「はいるよ」

「どうぞー………」

ホームズの言葉に何だか元気のないローズの声が返ってくる。

一応了承を得た為、一行が入るとそこにはぐったりと椅子で寝ているローズがいた。

「大丈夫………には見えないねぇ」

「大丈夫よ。少し寝てれば治るわ」

ローズは、そう言ってミックスグミを口に放り込む。

「それで?労いだけじゃないでしょう?」

ローエンが頷く。

「はい。一応、報告しておきますね。ローズさんとエリーゼさんのおかげで見事我々は、決勝の第3ステージに進めます」

「種目は?」

「『小細工なしのガチンコ勝負!』だそうです」

ミラは腕を組んで考える。

「後出ていないのは、ホームズ、ローエン、レイアか」

「全員でれるのかい?」

「えぇ。というより、そういう指示です。三人がそれぞれ個人で戦いその勝ち数で優勝を決めるそうですよ」

今までに比べると随分わかりやすい。

しかし、そうなるともう一個別の問題が出てくる。

「順番、どうするんだ?」

「後腐れなしにする為にもジャンケンにしましょう」

ローエンの提案にホームズとレイアが頷く。

「それではいきますよ!ジャンケン………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

順番は、レイア、ローエン、ホームズになった。

ホームズがボロ負けだった。

「何でみんな先やりたがるんだい?」

「緊張の時間を減らしたいからに決まってるじゃん!!」

レイアがムンと胸を張って答える。

ホームズは、うんざりしたように溜息をつく。

ホームズ自身も同じことを考えていたので、一番にやりたかったのだ。

そんなホームズをジュードが、元気付ける。

「大丈夫だよ。前の二人が勝てばホームズは、負けたって大丈夫なんだから」

「うん。気楽に行けってことだよね?負けるって確信があったわけじゃないよね?」

ホームズは、怪訝な顔をしている。

そんなホームズにレイアが耳打ちをする。

「(ホームズ、何かあった?さっきから……いや、いつも変だけど、それにしたって変だよ)」

「(失礼千万だよね、君は)」

ホームズは、そう言って溜息をつく。

「(言うと本当になりそうだから言いたくない)」

「二人ともどうした?」

アルヴィンに尋ねられ、レイアは言葉に詰まる。

「レイアが失礼だって話」

「安心しろ。お前ほどじゃない」

ミラの返しにホームズは、鼻で笑って返す。

「おれだって君ほどじゃないよ。部屋に入ってきた瞬間にナイフ投げたの忘れてないからね」

「いつの話をしてるんだ、お前は」

ミラは呆れている。

「いや、そんな話初耳なんだけど。それいつのこと?」

ジュードが頬を引きつらせている。

「また、後で話してあげるよ」

ホームズは、盾と靴を確認する。

「準備は、出来た!んじゃあ、行くとしよう!!」

レイアとローエンは、頷く。

ローズは、起き上がって手を振る。

「ほどほどにね」

「……頑張れって言っておくれよ」

ホームズの引きつった顔を見てローズは咳払いをする。

「頑張れ」

「任せたまえ」

そう言って控え室を後にした。

出て行った三人を見送るとローズは、ジュード達に観客席に戻るよう言う。

「私たちも回復したら行くから、場所とっといてもらっても良い?」

「分かった。任せて」

その言葉と共に一行は、控え室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホームズの正念場は、ここからだ。

 







無双は、書いてて楽しいですね。


てなわけで、章の振り返りは、こちら「休憩中」。
ローズとホームズの関係をもう少し掘り下げようと思って書き始めた………はずだったんだけどなぁ…………(遠い目)
関係を掘り下げるついでに次の章に向けて皆と仲良くさせたかったので、みんなでわいわい出来るものを、と思ったらこうなりました(笑)
まあ、休憩中というタイトルの通り箸休めな話になっていれば嬉しいです。



まあ、次の章は、ろくでもないんですけど……



では、また二百十五話で( ̄∇ ̄)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。