1人と1匹   作:takoyaki

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二百二十一話です。


から紅の恋歌見てきました!!
めちゃくちゃ面白かったです!
去年の映画も面白かったですが、それを超える面白さでした!
見ていない方は、是非!

てなわけで、どうぞ!


日進月歩でGO!GO!

「さて、次はどこへ?」

ホームズの質問にジュードが提案する。

「ル・ロンドは?ちょっと僕、父さんに聞きたいことがあるし……」

ジュードの言葉にホームズは、頷く。

「へぇ、いいんじゃないの」

特にどうって事なさそうに言う。

「……一応言っておくけど、ホームズだって無関係じゃないよ」

「え?」

他人事のように言っているホームズにぴしゃりと告げるとジュードは、空間を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、おれなんかした?心当たりないんだけど………」

ル・ロンドの港に着くと一行はマティス医院を目指して歩き始める。

尋ねられたジュードは、ホームズにジトッとした目を向ける。

「ホームズが父さんに会いに来た理由は?」

「両親の生まれ故郷への行き方の手掛かりを掴むため」

「両親の生まれ故郷って?」

「エレンピオス」

「何で、父さんに聞きに言ったの?」

「……………あー……そういう事……」

ホームズは、気まずそうに目をそらす。

「うーん………まあ、おれが言ってもいいんだけど………」

「いいよ。家族の問題だし、僕が聞くよ。父さんに」

「まあ、それがいいだろうねぇ」

そうこうしているうちにマティス医院に着いた。

「ただいま」

ジュードは、そう言って家に入る。

ドアの開いた音を聞いてジュードの母、エリンがやってくる。

「ジュード!帰ってきたの?」

「うん。ちょっと………」

そう言って辺りを見回す。

「父さんは?」

「鉱員の方とフェルガナ鉱山に行っているわ」

「フェルガナ鉱山?」

ホームズが首を傾げるとジュードの母は、頷く。

「えぇ。何でも手術に必要らしくて」

レイアとミラが眉をひそめる。

フェルガナ鉱山に手術に必要なものを取りに行くとしたら、一つしかない。

「足が動かない患者さん、いるんですか?」

レイアの質問にエリンが頷いて待合室を示す。

そこには、小さな女の子とその女の子に水を運んでいる男の子がいた。

「妹のために一生懸命なのよ」

エリンの言葉にホームズは、目を向ける。

「そっか……」

ホームズは、頷くとジュードに向き直る。

「どうだい?フェルガナ鉱山でマティス先生を助けに行くってのは?」

「そうだね」

ジュードが頷く。

「ホームズにしては、珍しく建設的な意見じゃないか」

「一言多い」

ミラの言葉にホームズは、そう返す。

エリーゼも付いて行こうするが、女の子の視線がティポに向いていることに気がつく。

「あの、触りますか?」

「いいの?」

「はい」

ティポを触る女の子を見てエリーゼは、満足そうだ。

それから、ホームズ達の方を向き直る。

「私は、残ります。ティポを見せてあげたいです」

エリーゼの言葉にアルヴィンとローエンが頷く。

「そんじゃあ、俺たちもここに残るか?」

「えぇ。そうですね。行き違いになってもよくありませんし」

二人は、残るようだ。

「君は、どうするんだい?ローズ?」

「私は、残るわ」

そう言ってニヤリと笑う。

「貴方のここでの日々を聞かないと」

そう言ってエリンの方を見る。

「確か、聞いた話だとここでバイトをしていたとか?」

ローズの質問にエリンは、頷く。

「幸い、患者さんも今は、あの兄妹しかいないし、支障のない範囲でお答えするわ」

ホームズの顔から血の気が引く。

「ちょっと、待って」

「はいはい、行くよホームズ」

「いや、ちょっ、離してレイア!」

「何、話していいの?」

「字違う!!」

ぎゃあぎゃあ喚くホームズを引きずってレイア達は、フェルガナ鉱山へと向かった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「何もやらかした覚えはないけど、なんだろうこの胸騒ぎは………」

フェルガナ鉱山に辿りついたホームズは、マティス医院を出た時のことを思い出してげんなりする。

「何にも根拠はないけど大丈夫だから、安心して」

「どの辺に安心があるんだい!?」

「やかましいな………」

ホームズの突っ込みを肩で聞いていたヨルは、前足で器用に耳を押さえている。

「何を話していたかは、私も後で聞くとしよう」

「いや、止めて」

ミラの言葉にホームズが制止をかける。

そんなことを言いながら歩くミラを見て、ジュードは、笑み浮かべる。

それに気付いたミラは、首を傾げる。

「どうかしたか?ジュード」

「いや、懐かしいなと思ってさ。精霊の化石を取りに行ったのも確か、このメンバーだったよね」

ジュードに言われてホームズは、考え込む。

「そっか、言われてみればそうだねぇ。最初は、敵対していた君達と和解して直ぐの冒険だったね」

頷くホームズにミラとジュードは、ジトっとした目を向ける。

「いや、和解というより休戦だったな」

「え?」

「あれだけミラを揺さぶってたクセによく言うよ」

「あれぇっ!?」

ホームズは、冗談ぬきで驚いている。

「うん、まあ、ジュード結構不信感丸出しだったよね」

「嘘!?てっきり和解したもんだとばっかり………」

「いや、逆に何でそう思えたの?」

「だって、ヨルの件の誤解も解けたし………」

「それを差し引いても大分胡散臭かったよ、ホームズ」

ジュードは、淡々と返す。

その返しに真剣に驚いているホームズを見てジュードは、ため息を吐く。

「逆に聞くけど、ホームズは、あの時、僕らのことどう思ってたの?」

「うーん…………」

ホームズは、腕を組んで考え込む。

レイアとは、あの時既に友達だ。

だが、ジュードやミラは、と聞かれると答えに困る。

「商売相手とか情報源?」

「ホームズも人のこと言えないじゃん」

近くで成り行きを見守っていたレイアもため息を吐く。

「いやぁ、まあ、アハハハハ………うん………」

ホームズは、気まずそうに乾いた笑いをした後目を伏せる。

「………よく持ったよね」

「いや、崩壊したろ」

ヨルが、冷静な突っ込みに全員目をそらす。

ホームズは、それからため息を吐く。

「よく乗り越えたよね、おれ達」

ホームズの言葉にジュード達は大きく頷いた。

「お前が言うな感が凄いな」

「おれが言わないと説得力がないだろう?」

「はーい、ストップストップ」

睨み合うホームズとヨルをレイアが止める。

レイアに止められ、ホームズは、前を向く。

その瞬間眉をひそめる。

「ん?あれって………」

ホームズが指差す先には、倒れている人影があった。

ジュード達は、すぐに人影に駆け寄る。

倒れているのは、二人、ディラックと鉱員だ。

「父さん!何があったの!?」

「……ジュードか?」

ディラックは、呻きながら返す。

「目をやられたの?」

「大したことはない。粉塵に少しやられただけだ……ただ」

ディラックの言葉に鉱員に目をやる。

レイアが首を横に振る。

「意識がないよ!岩で頭を打ったかも」

ホームズは、腕を組む。

「とりあえず、ここでこうしてて仕方ないし、病院まで運ぶしかないだろう」

そう言って鉱員を背負おうとするホームズをジュードが止める。

「待って!脳内出血を起こしてる!動かしちゃダメだ」

「ならどうする?」

ヨルの言葉にジュードが頷く。

「治癒功で応急処置して動かせるようにする。レイアは、病院に戻ってこの人の受け入れの準備をしておいて」

「分かった」

「治癒功で応急処置だと?」

ディラックが倒れたまま声を上げる。

「出血箇所を見誤れば即命取りだぞ!」

ディラックの忠告に対し、ジュードは力強く頷く。

「分かってる。でも、やらなきゃ」

「くそ!私の目が見えれば……」

「大丈夫、まかせて」

ジュードの言葉にディラックは、息を飲む。

「ジュード……お前」

様子を見守っていたミラは、頷いてレイアに話しかける。

「ここは、ジュードに任せよう。レイアは、街に急いで戻ってくれ」

レイアは、頷くと来た道を引き返した。

「ホームズは……」

「二人を運ぶのにも手が必要だろうう?」

ホームズの提案にジュードは、微笑む。

「信じてくれるの?」

「そりゃあね。何度おれの怪我を治してくれたと思っているんだい?」

ジュードは、息を大きく吐く。

「そうだったね」

そう言ってジュードは、治療を始めた。

その行動に迷いはなく、確かな自信に裏打ちされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「患者さんの容態落ち着いたわ。ジュードの処置のおかげね。鉱員さんもお礼を言っていたわ」

無事応急処置も終わり、マティス院に戻ってきたジュード達は、その言葉を待っていた。

「やれやれ、良かったねぇ」

「本当、一時は、どうなるかと思ったよ………」

レイアは、待合室の椅子に深く腰掛ける。

「私は、別の患者の容態を見てくる」

そう言ってディラックは、奥の診察室へ、入っていく。

それと入れ違いで、アルヴィン達が出てきた。

「大変だったみたいだな」

「まあねぇ」

ホームズは、肩をすくめて返す。

エリンは、そんな面々を見ると優しく微笑む。

「それじゃあ、私は仕事に戻るわ。ホームズの話はまた今度ね」

「はい…………ん?」

エリンの言葉にホームズは、首をかしげる。

「って、あ"っ!?」

そして、思い出す。

ホームズは、ローズに詰め寄る。

「何も聞いてないだろうねぇ!?」

「別に。ただ、猫相手によく話しかけてたって」

ホームズの動きがピタリと止まる。

「事情を知らなければ、ただの変な人だよね」

レイアの言葉にホームズは、錆びた歯車のような音を立てて首を動かす。

「結構名物だったってよ、おたく」

「名物?」

「黒猫を肩に乗せて歩き回る、無類の猫好きだって」

「違うのにー!!」

ホームズの心からの叫びが炸裂した。

「ははは………」

レイアは、側で聞いていて苦笑いしている。

そんな事をしていると扉の開き、ガタイのいい男が、可愛いエプロンをして入ってきた。

「マティスいるか……ってレイアじゃないか!?」

「お父さん!?」

「お父さん?」

ローズが驚いて首をかしげる。

「あ、そうか。ローズは、初対面だったね。レイアのお父さんでウォーロックさん。とても料理が美味しいんだよ」

ジュードの紹介にローズは、ふむふむと頷く。

「レイア、お母さん心配していたぞ。後で顔を出して行きなさい」

ウォーロックは、そう言ってホームズの方を見る。

「おや?ホームズじゃないか、どうしたんだ?」

「いえ、少し不名誉な噂を言われたもので………」

「おかしいな……港で寝る羽目になったことは、誰にも言っていないはずだが……」

「何してるんですか、ホームズ」

エリーゼの言葉にホームズは、深いため息を吐く。

事の顛末を話そうとするホームズを見てレイアは、目を丸くする。

「ちょっと待っ……」

「別に。騒いでるレイアを煽ったらソニアさんに放り出されて、外に締め出されたから、そのまま港で一晩越したんだ」

「ホームズだけ?」

「まさか。騒いだレイアも一緒に放り出されたよ」

「つまりアレだな。一晩一緒に過ごしたわけか」

「ミラ、言い方」

ジュードがやんわりと止める。

だんだんとローズに引きつった笑顔が張り付いていく。

「(俺との)内緒話もあったな」

ヨルのあえて省いた台詞にレイアの頬に冷や汗が流れる。

決してやましいことはない。

だが、何を話したと問い詰められれば、ホームズの初恋の話題にも届くだろう。

いや、それだけならまだいい。

問題は自分の話題にも火の粉が飛ぶことだ。

正直にあの場で喋ったこと全て話せと言われれば、そのことも出てきてしまう。

それは避けなくてはならない。

なら、やらなければならない手は一つだ。

「えーっと………じゃあ、わたし、お母さんに会いに行ってくるね!!」

三十六計逃げるに如かず。

踵を返してマティス院を出て行こうとする。

そんなレイアの肩をガシッとローズが掴む。

「レイア。詳しく聞きたいわ」

「………は……ハハ、いいよ。答えられる範囲でね」

 

 









お次の章は『ジルニトラ』

ここで、ルイーズがどんな人なのかが語られますね。
とにかく変な人、そして、まさかの教官。
そしてベイカーは、不運な人ですね。この二人がどうやって夫婦になったかはまた外伝でご確認ください。
セルシウス戦について言えば、飛んで跳ねての大乱闘をイメージして書いていたのですが、それを文字に起こすのがいかに苦しいかを改めて再確認しました。
とりあえず、この章では肉体的ダメージを最大限に与えました。



では、長くなったのでこの辺で。



ではまた二百二十二話で( ´ ▽ ` )ノ

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