1人と1匹   作:takoyaki

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二百二十七話です。



連続投稿!!このまま続けられるか!!



でなわけで、どうぞ


進むも地獄負けても地獄

「っ!」

世ノ精途(ウルスカーラ)を抜け、踏み入れたそこは、戦いの場だった。

次元刀を振りかぶりジュードに斬りかかるガイアス。

ジュードは、集中回避を使いその後ろを取る。

そのジュードに向かっていくミュゼ。

それを止めようとする、アルヴィンとレイア。

後ろに気を取られたガイアスに斬りかかるミラとローエン。

ガイアスは、無理矢理長刀を振るい後ろにいるジュードを含めて一行を押し飛ばす。

その隙にエリーゼが術を打ち込む。

ガイアスは、それを防ぐと長刀をエリーゼに向かって振り下ろす。

「エリーゼ!!」

ジュードの叫びが響く。

 

 

 

 

 

 

 

「叫ぶ名前が違うわ」

 

 

 

 

 

世ノ精(ウルスカーラ)を抜け、戦いの場に現れたローズはそう言うと、ガイアスの振り下ろされる刀とエリーゼの間に入る。

そして、二刀を交差させ、受け止めた。

「んぐっ!!」

「ローズ!?」

「それよ……それ!」

ローズは、そう言いながら斬撃を受け止めている。

想像以上の思い斬撃に膝をつきそうになる。

だが、ローズの意地がそれを許さない。

「っ剛招来・纏!!」

ローズは、剛招来の闘気を両腕にのみ纏う。

力の上がったローズは、そのまま腕の筋肉を膨らませ、

「んぐぁ!!」

ガイアスの次元刀を押し返した。

思わぬ反撃に仰け反るガイアス。

その隙に刀を持ったまま両拳を合わせる。

「獅子戦哮!!」

闘気の獅子はガイアスに喰らいつく。

「ぬぅっ!」

一瞬の隙をついたその攻撃にガイアスを飛ばす。

ガイアスは、宙返りして、着地する。

『ありがとー!助かったよ!!』

ティポの礼にローズは、にこやかに笑う。

だが、そんな時間も一瞬だ。

ガイアスと入れ替わるようにミュゼが襲いかかる。

ローズは、ミュゼの髪の攻撃を防ぐ。

「何故、貴女は、そちらに着くの!?アルクノアに家族を殺された貴女なら、エレンピオスを滅ぼす方に着くのが普通じゃないの!?」

ローズは、アルクノアに、エレンピオス人に家族を殺された。

確かにミュゼの言うとおりだ。

滅ぼす側に回る理由はあるが、守る側に回る理由など、普通に考えればない。

「私の信念だからよ」

ローズは、そう言って刀の切っ先を繰り出す。

ミュゼは、紙一重でかわす。

ローズは、それに構わず更にもう一歩踏み込み連撃を放つ。

「私は、自分の傷を誰かに押し付けたくない!!そう思って刀を取った!!

貴女の言う行為は、まさにそれだ!!自分の家族が殺されたという傷を別のエレンピオス人に押しつけようとしている!!そんなもの絶対に認められない!!」

ローズの連撃は、続く。

ミュゼは、連撃を凌ぐと髪で思い切りローズの腹を叩いた。

「ぐぅっ……!!」

「よく言うわ、貴女がホームズにした行為は、まさにそれでしょう?まさか忘れたの?」

ローズは、地面に投げ出される。

地面の感覚味わいながら脳裏に蘇るのは、あの光景だ。

「忘れるものか……」

自分が一体、何を奪ったのか、何をしてしまったのか。

一度だって忘れたことはない。

ローズは、刀を地面に突き刺し、杖代わりにして身体を起こす。

「忘れられるわけないでしょ」

 ローズは、杖代わりにした刀で自分の身体を支える。

「だから、私は絶対に償う。私の未熟さでホームズの思い出を奪ってしまったのだから」

立ち上がったローズは、地面に刺さった刀を引き抜く。

逃げるのは、もう終わりだ。

「何?命でも懸けるの?」

ミュゼの質問にローズは、フンと鼻で馬鹿にしたように笑う。

「命?そんなもの懸けるわけないでしょ」

ローズのリリアル・オーブが煌々と輝く。

 

 

 

 

 

 

 

「私が()けるのは、人生よ」

 

 

 

 

 

ローズは、そういって二刀を鞘に収める。

「信じられないなら見せてやる」

リリアル・オーブは、オーバーリミッツに達した。

 

 

 

 

 

 

 

「女の覚悟を見せてやる!!」

 

 

 

ローズからマナが溢れる。

 

 

 

「技!」

 

 

 

 

 

その言葉と同時に一瞬だけ、時間が停止する。

ローズのその技をミュゼは、知っている。

こればっかりは、一撃を覚悟しなければならない。

急所を髪でガードする。

だが、ローズの目的はミュゼではなかった。

時間停止を解いてローズが現れた先は……

 

 

 

 

 

「俺が狙いか……いいだろう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ガイアスだ。

 

 

 

 

 

 

突然目の前に出現したローズにガイアスは、慌てることなく次元刀を振り下ろす。

 

 

 

 

 

「体!」

 

 

 

 

 

 

本当だったら抜刀まで時を止めておきたかったが、これ以上止めればローズは、何も出来なくなる。

ローズの刀が鞘を走る甲高い音が鳴り響く。

抜刀の一撃とガイアスの振り下ろしがぶつかり合う。

「ぬぅん!!」

ガイアスがローズの刀を巻き上げる。

刀は、くるくると宙を舞う。

 

 

 

 

「心!!」

 

 

 

 

ローズは、もう一刀を引き抜く。

間髪入れずに放つ抜刀術にガイアスは、一歩後ろに下がって、かわしてみせた。

しかし、これは、二連撃の技ではない。

「!!」

ローズは、抜刀の勢いそのままに飛び上がり、宙にある刀を掴む。

 

 

 

 

「やっと揃った心技体!とくと味わえ……」

 

 

 

 

天高く振り上げる二刀にマナが収束していく。

 

 

 

 

 

「覚めよ!黄昏の地より呼びし流転の狼王!」

 

 

 

 

 

ガイアスは、その間に脇差の構えを取り、次元刀に闘気を集める。

闘気を纏った次元刀をガイアスが振り切る。

 

 

 

 

 

 

「闢・魔神王剣!!」

「崩襲剣・極!!」

 

 

 

 

 

ローズの両刀がガイアスの次元刀とぶつかり合う。

「ハアアアアアアアア!!」

「おおおおおおおおお!!」

二人の雄叫びが響き渡る。

交じることのないぶつかり合う闘気は、やがてお互いを拒絶し弾けた。

「ぐっ!!」

「ぬぅん!」

爆音と共にローズは、思い切り飛ばされ地面に投げ出される。

ガイアスは、両足で踏ん張ると刀を再び構えようとして、腹部の皮が微かに切れ血が流れているのに気づく。

「あの時か………」

二発目の抜刀術は、確かにガイアスを捉えていたのだ。

ローズも立ち上がり両刀を構える。

「ローズ!!」

ジュードの呼びかけにローズは、周りを見渡す。

ホームズ以外全員揃っている。

「待たせたわね」

『ぜんぜん!!ぼくたちも今来たところー!!』

「わぁ……デートに遅れたみたいな気分だわ………」

「ホームズもいないけどね」

レイアがため息をつきながら言うとミラは、真顔で口を開く。

「安心しろ。彼奴が来るのは、いつだって一番最後だ」

ミラの言葉にアルヴィンは、苦笑いだ。

「ま、いない奴愚痴っても仕方ない。今は……」

「えぇ。お二人をどうにかしなくてはなりませんね」

アルヴィンとローエンの視線の先には、迫るミュゼとガイアスがいた。

「レイア!!」

「任せて!シャープネス!!」

ローズの要求通りレイアは、彼女に攻撃力強化の精霊術をかける。

「もう一個、バリアー!!」

レイアの精霊術を受けてローズの防御力も強化された。

ローズは、右足を踏み鳴らし二刀をぶつける。

二刀と長刀がぶつかり合い、歯車が噛み合ったような音が広がる。

身動きの取れないローズにミュゼが精霊術を作り出す。

「「衝波十文字!!」」

そこにレイアとアルヴィンの共鳴術技(リンク・アーツ)が襲いかかる。

二人の攻撃にミュゼは、精霊術をキャンセルし、攻撃を防ぐ。

「このっ!」

ミュゼは、髪で切り返す。

アルヴィンは、迫る髪を銃で撃ち落としていく。

だが、撃ち漏らした髪がアルヴィンへと襲いかかる。

「うっ!!」

髪でアルヴィンは、後ろに押し戻された。

その隙にミュゼは、精霊術を完成させる。

アルヴィンの前に無数の黒い腕が蠢きながら現れる。

「ネガティブゲート!!」

『「ネガティブゲート!!」』

それにエリーゼとティポの精霊術がぶつかる。

「うぅう………っ!」

『がんばれー!エリーゼ!!』

無数の黒い腕は、お互いにお互いを飲み込もうと激しくぶつかり合う。

だが、どう考えてもエリーゼの方が分が悪い。

何せ、大精霊の精霊術とのぶつかり合いだ。

おまけにマナの溢れたこの場所、そして、迷いのなくなったミュゼ。

実力差は、火を見るよりも明らかだ。

「でも………それは、理由になりません!!」

エリーゼは、杖をぎゅぅっと握り締める。

「調子に乗らないで!!」

ミュゼも負けていない。

ミュゼの黒い腕達は、勢いを増しエリーゼの黒い腕達を掴み動きを封じ込める。

動けるエリーゼの黒い腕達は、数えるほどしかない。

「ティポ!!フルパワーです!!」

『まかせろー!!』

エリーゼは、そう言うとありったけのマナを込める。

『 「ハァアアアアアアアアアアアアア!!」』

裂帛の気合いに呼応するようにエリーゼは、自分の黒い腕達を更に出現させた。

 蠢くその大量の腕達の様子は、正に地獄絵図だ。

 腕達は、ミュゼの腕達とぶつかり合いミュゼの腕達を巻き込んで消えた。

「このっ!!」

『「ティポ戦哮!!」』

ティポから紫のマナの球が複数発射される。

「ぐっ!!」

ミュゼの髪がエリーゼの腹部を捉える。

「かっ………!!」

「エリーゼ!!」

吹き飛ばされるエリーゼを地面に落ちる寸前でアルヴィンがキャッチする。

「余所見している場合か?」

その一連の流れに気を取られたローズ。

ガイアスが力を込める。

ローズは、慌てて力を込め、ガイアスと競り合う。

「っつ!!」

僅かにではあるがローズは、押されている。

徐々に次元刀がローズの首に迫る。

(このままじゃ……文字どおり首が飛ぶ)

幸い態勢は、まだ崩れていない。

何とか持ち直そうとこれ以上下がらぬように気を張るが、それでもガイアスの前では意味がない。

リーゼ・マクシアの王。

信念も力も経験も、その全てがローズを凌駕する。

一枚上手?

違う。

桁が上だ。

だが、

(諦めるな……!探せ、今までの私の全てから……)

ローズは、歯を食いしばりながら頭を回す。

(最善の一手を!!)

今まで、ありとあらゆるモノと戦ってきた。

その記憶から、これを打開する手を探し出す。

ローズは、踏ん張ったまま僅かに重心を後ろに下げる。

ガイアスは、それに連れられて態勢が前のめりになる。

ローズは、前のめりになったガイアスを腕の力だけでなく全身を使って押し返す。

ガイアスは、今度こそ態勢を崩した。

「喰らえ!獅子戦哮!!」

闘気の獅子がガイアスを捉える。

「追撃!」

おかげで刀の間合いが出来た。

「散沙雨!!」

無数の突きをガイアスに放つ。

「秋沙雨!!」

足を踏み替え、更に両刀を使って放つ。

刀の雨の中、ガイアスは、右手に闘気を集める。

「獅子戦哮!!」

片手で放たれた獅子は、刀の雨を弾き飛ばしてローズに食らいついた。

(片手でこの威力って……!!)

獅子に弾き飛ばされたローズは、地面に刀を突き刺し、これ以上飛ばされないように堪える。

「今のは、ウィンガルのか?」

「まあね。しっかり決まったと思ったのに……」

「悪くはなかった。だが、」

その瞬間ローズの背筋に寒気が走る。

(このマナの量!?)

「俺に気を取られすぎたな」

ミュゼが、巨大な精霊術を展開させようとしていた。

アルヴィン達は、その精霊術の余波で、地面に押さえつけられていた。

「─────っ!!」

ローズは、慌ててミュゼの方へ走り出す。

だが、その前にガイアスが立ち塞がった。

「行かすと思うか?」

次元刀を振りかぶるガイアス。

ローズは、二刀で受けようと構える。

そこにジュードとミラが、剣と拳を振り降ろす。

ガイアスは、振り降ろすはずの次元刀で二人の攻撃を受け止める。

「貴様ら……!」

「任せていいんだな、ローズ?」

突然のことに目を丸くしていたローズは、ミラの言葉で我に返ると頷く。

「えぇ!」

それだけ言うとローズは、ミュゼの前に立つ。

「ぅぐっ」

ローズにも精霊術の重力がかかる。

だが、レイアの精霊術のおかげで這い蹲らずにすんだ。

「貴女、何するつもり?」

「貴女の想像通りよ」

ローズは、そう言うと腰の一刀を構える。

リリアルオーブが再び輝く。

ミュゼは、目を険しくさせると人差し指を立てる。

 

 

「"全てを飲み込み"」

「"天光満ところ我はあり"」

 

 

 

二人を中心にマナが渦巻く。

 

「"乾きの地へ誘え"」

「"黄泉の門開く所汝あり"」

 

 

 

ミュゼの周りには闇が、

ローズの周りには雷が、

 

それぞれ現れ、お互いにぶつかり合う。

 

 

 

 

「"虚数の牢獄!"」

「"出でよ神の雷!"」

 

 

現れた雷光が刀に集まるとローズは、鞘に納める。

ミュゼの闇は、球体を作り出す。

 

 

 

 

「「これで終わり!!」」

 

 

 

 

 

 

二人の慟哭が響く。

 

 

 

 

 

 

「"イベントホライズン!!"」

「"インディグネイション!"」

 

 

 

 

ミュゼは、巨大な漆黒の球体を撃ち下ろす。

ローズの雷を纏った刀が、鞘を走り、そのスピードと破壊力を乗せた一撃が迎え討つ。

 

 

ぶつかり合う光と闇。

 

 

 

「─────っ!!」

想像を遥かに超えたその重さにローズは、声も出ない。

大精霊の秘奥義とは、そう言うものだ。

以前のミュゼならいざ知らず、良いか悪いかは別として今のミュゼに迷いはない。

その心の持ちように呼応するような精度の技。

遥かな高みとは、こういう事を言うのだろう。

 

 

 

(だけど……!)

ローズの脳裏にエリーゼが現れる、そして、もう一人の男も。

 

 

 

「自分よりも強い、そんなの理由に負けてたまるかー!!」

ローズは、絶叫とともに刀を振り切り、ミュゼの秘奥義を斬り裂いた。

その光景にミュゼは、目を丸くしている。

「嘘………」

信じられないのだ。

大精霊の秘奥義を打ち破ったローズの事を。

もちろん、それだけの離れ業をやったローズも無事では済まない。

元々、ウィンガル、ガイアスにすでに秘奥義を放っている。

そのうえ、このとどめの三回目。

ここら辺で回復しないと身体が持たない。

「……まあ、そうは問屋が降ろさないわよね」

ガイアスがジュードとミラを振り切って、ローズへ向かって駆け出していた。

ローズは、呼吸を整えて迎え撃つ用意を整える。

(やるしかない!!)

 向かってくるミュゼを睨みつけながら、二刀を構える。

 

 

 

 

 

 

 

「ローズ、どいて!!」

 

 

 

 

 

 

そんなローズに後ろからレイアの指示が飛ぶ。

言われるがまま避けたローズが、思わず振り返ると、棍を大上段に構えたレイアがいた。

「………って、ん?」

眉をひそめるローズに構わずレイアは、棍を力の限り振り降ろす。

 

 

 

 

 

「「爆砕ロック!!」」

 

 

 

 

 

直感で止まったガイアスの目の前に棍が振り下ろされた。

ガイアスに当たらなかったそれは、地面を爆破させた。

 

 

 

 

 

 

もうもう上がる土煙が晴れると、ポンチョをはためかせた、金色の瞳の男、ホームズがいつものようにヨルを肩に乗せて佇んでいた。

 

 

 

 

ホームズは、ローズの方を振り返る。

「やっほー、待った?」

「えぇ。首が飛びそうなぐらいね」

ローズは、ため息をつきながらそう返すとパイングミを頬張った。

 

 

 

 

 




爆砕ロックは、気付かぬ内に回していたということで、どうか一つ!!



さて今回の章の振り返りは、『想い』です。
前回一方的にやられたホームズでしたが、今回は頑張ってもらいました。
この仲直りの戦いのシーンは、何度も何度も練り直してようやく形になりました。
おとこをみせたな、ホームズ!!



ではまた、二百二十八話で!!

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