1人と1匹   作:takoyaki

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二十三話です。



テイルズと言えば料理!

てなわけで、どうぞ。


一汁一災

「ホームズの料理が食べてみたい」

レイアはある日突然そんな事を言い出した。

ホームズはその時レイア特製のクリーム牛丼を食べていた。取り敢えず、箸を置いた。

「どうしたの突然?」

「ジュードのご飯は食べたよね」

「食べたね。美味しかった」

「わたしのご飯も食べたよね」

「まあ、今食べてるね。朝からクリーム牛丼を作る君のセンスに驚きだよ、おれは」

ホームズは、器にある料理を見つめる。朝食には、あまり適してないないのがよく分かる。

しかし、レイアは、そんなホームズに構わず続ける。

「次は、ホームズの番だと思うの。腕の包帯もとれたし」

ホームズは両目の付け根を揉む様にしている。

「……料理当番なんてあったけ?」

「ないよ」

「……別におれが作らなくてもいいんじゃない?」

「いいじゃん、別に。それに、旅をしてたんなら、食事の用意とかもしてたでしょ?」

「まあ、一応」

「だったら、料理出来るでしょ!」

「まあ、一応」

「なら、決定!明日のお昼ご飯はホームズの料理を食べよう!ジュードにも言っとくね」

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「で、僕のうちに来たと……」

こちら、ジュード宅。ホームズはレイアに言われてやって来た。勿論ヨルもいる。

仕事中のレイアの宿のキッチンを使うわけにもいかず、ホームズは、ジュードの家で料理をしている真っ最中。

食卓にはレイアと、そして、何処で聞きつけたのかミラまで居る。

ジュードはお皿を出したりと、食事の準備をしている。

ホームズはフライパンを扱いながらジュードに話し掛ける。

「君の幼馴染み、どうにかならないのかい?」

「昔から、ああだからね。どうにも……ところでご飯は?」

「出来たよ、はい、どうぞ」

そう言って、出来た物を渡し、食卓に運ばせた。

 

 

 

お皿に乗った料理を見てレイアは呟く。

「………えーっとこれは…」

その言葉にホームズは恭しくお辞儀をする。

「〜『肉と野菜の油によるハーモニー、燃えるような情熱を貴方に』〜です」

「ただの肉野菜炒めじゃん!!」

レイアの今日一番の突っ込みが炸裂する。

しかし、ホームズは不敵に笑っている。

「ただの肉野菜炒めと侮るなかれ!」

「やっぱり肉野菜炒めだったんだね。何処からそんな名前だしたんだろう」

レイアの冷めた言葉がポロリと零れる。しかし、そんな言葉に構わずホームズは続ける。

「絶妙な火加減、野菜、肉などの具材を入れるタイミング。全てが、影響する、まさに至高の料理なのだ!」

「それ、全部の料理にいえるんじゃ……」

「いいから、いいから、ほれほれ」

そうホームズに進められてレイア、ジュード、ミラは肉野菜炒めを食べる。

 

 

「「「こ、これは……」」」

 

 

思わず、全員が絶句した。そして、感想を漏らす。

 

 

 

 

「「「普通だ……」」」

 

 

 

 

 

至って普通の味だった。

「何これ!不味くもなく、美味くもなく、至って普通。

普通過ぎて逆にコメントしづらいんだけど!」

「本当に、普通だね。僕もここまで普通だとは思わなかったよ」

「ふむ、ジュードやレイアに比べればまだまだだな」

三者三様の感想が飛び出した。

「何か、これはこれで腹立つな……」

少し、苛立ちを覚えるホームズ。ヨルは肩で尻尾を振っている。数少ない得意料理がこの評価なのだから、仕方ないといえよう。

結局、みんなぶつくさ言いながらも一応全部完食した。

そして、レイアから一言。

「今晩、テイク2やるよ」

「……え、何で?」

「お題は……」

「ち、ちょっと待って……」

「ミネストローネ!」

「いや、あの……」

「ホームズ……諦めた方がいいよ。こうなったレイアは止まらないから……」

「レシピを渡しとくね。それじゃ」

シュタ、何て音が聞こえるように手を上げると仕事に戻って行った。

ジュードは苦笑いをすると、ミラを連れて、リハビリに向かった。

残されたホームズはポカンとしている。

「ハア……」

ホームズはため息を吐き、ヨルはヨルで欠伸をする。

「おれも仕事しよう」

ホームズはヨルを連れて宿屋ロランドに戻った。

 

 

 

 

 

時は流れて夜……

「ほい、ミネストローネだよ」

赤いトマトのミネストローネをホームズはそれぞれの前に置いた。出来栄えは、なかなかのものだ。

ジュードは感心している。

「ミネストローネ作った事あるの?」

「ないよ」

「いくら、レシピが有るからってこんなに上手に出来るとは思わなかったよ」

ジュードの言葉にレイアはチッチッチッと指を振る。

「ジュード、料理は見た目じゃなくて、味だよ。そう言う感想は食べてから言わなくちゃ」

レイアのドヤ顔で言った言葉にジュードは苦笑いしながらもミネストローネを飲む。レイアとミラもそれに続く。

そして、一言………

 

 

「「「薄い………」」」

 

 

「薄いよ!このミネストローネ!本当にレシピ見て、作ったの?」

レイアは今日で最後の突っ込みを発動させる。

「素材の味をお楽しみ下さい」

そんなレイアにホームズはしれっと言う。そんな事を言っているとジュードにホームズの分のミネストローネを盛られた。因みにミラはぐびぐび飲んでいる。

ホームズは普通にすくって飲むが……

「うっっす!何これ!」

「ホームズの作ったミネストローネ」

ジュードはさらっと言う。

「え、何で………あ」

レシピを読み直し、ホームズは発見した。衝撃の真実を。

「塩少々じゃない。少々なのは胡椒だけだ……」

「いや、胡椒の味もしないんだけど……」

ジュードはボソッと言う。しかし、ホームズは気にしない。

台所から、塩を持ってくると机に置いた。

「後は各自お好みで」

そう言うとホームズは自分で作ったミネストローネを食べ始める。その言い草に若干イラッと来ながらレイアとジュードはそれぞれ、塩を振って食べた。

 

 

◇◇◇

 

 

「テイク3いくよ」

「……まだ、やるの?」

「ホームズ、今回は僕もレイアに賛成だよ」

「私は食事が出来れば何だっていいぞ」

「以下同文」

「あ、ヨルもちゃっかり食べてたんだ」

そんな三者三様(+1匹)の一言の後、レイアからお題が出る。

「もう一度、ミネストローネを作る事。時間は明日の昼。以上。解散!」

ホームズはため息を一つ吐くと宿屋ロランドに戻って行った。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

そんなこんなで、翌日の昼……

「出来たよ」

ホームズはミネストローネver2を皆の前に置く。

まあ、二回目だ。だから、大丈夫。そう思うと皆で一口飲む。そして、感想を一言。

 

 

「「「「甘い……」」」」

 

 

とても、ミネストローネからは聞けない感想が聞こえた。

「何、砂糖と塩間違えるなんてベタな事してるのー!」

「ホームズ、これは流石に……」

「……これは、私でも食べるのが少しキツイな……」

「素直に不味いな」

3人と1匹にボロクソに言われるホームズ。試しにホームズも食べてみる。

「ゔ……」

碧い瞳は少し、潤んでいる。しかし、強がって声を張り上げる。

「うっかり、間違えただけじゃないか!だいたい、ジュードの言ったとおり、ちゃんと上から3番目の引き出しにあった奴を使ったんだよ」

「3番目なんて、言ってないよ……4番目にある奴だよ」

恐らく、『…ん番目』しか聞こえなかったのだろう。

「………」

「ドジだね、ホームズ」

「君にだけは言われたくないね、レイア」

ホームズはレイアをジロリと睨む。

「というか、昨日は間違えなかったじゃん。どうして今日はこんな事になってるの?」

「昨日は出しっ放しだったからね、間違えようがなかったんだよ」

そんなうっかりホームズにヨルは容赦無く死の宣告をする。

「取り敢えず、お前がこれを責任取って食え」

「マジで言ってるのかい?お代わりする分も合わせて8人前あるんだけど……」

「知った事か」

ホームズは助けてと言う目をジュード達に送るが全員から目を逸らされてしまった。

結局、ホームズはこの甘ったるいミネストローネを全部食べる羽目になった。

ジュード達はジュード達で新たにご飯を作り直してそれを食べていた。

 

 

 

 

 

「テイク4いきたいと思います」

「……ウェップ」

「ちょっと、ホームズ大丈夫?」

「なるほど、これが所謂、『自業自得』と言う奴か」

「ほう、よく知ってるじゃないか、オンナ」

「当然だ」

ホームズは白目をむいて机に突っ伏している。

そんな中レイアはお題を発表する。

「えーっと、いい加減、ミネストローネ以外のものも食べたいんだけど、その前に、ホームズにはミネストローネをちゃんと作ってもらいたいと思います」

「異論はないな」

「だね……」

「そんな訳で、次のお題もミネストローネで決定です!それでは、また、夜に。解散!」

レイアはそう言って席を立った。

 

 

 

「……ジュード、トイレ借りていいかい?」

「どうしたの?」

「吐きそう……ヴェ。」

「わぁあああ、待って待って!」

 

◇◇◇◇

 

 

 

時は流れて夜……

「出来たよ」

ホームズはいつものように皆の前に並べる。

「いつもいつも、見た目はまともなんだよね……」

「確かに……」

「ふむ、何だか今度はどんな味なのか、1周回って楽しみになってきてしまったのだが……」

「重症だな」

それぞれ感想を漏らすと一口目をスプーンですくって食べた。そして、感想を一言。

 

 

 

「「「「……濃!!!」」」」

 

 

 

尋常じゃない程味が濃かった、そして、

 

 

 

「「「「……辛!!!」」」」

 

 

 

 

「今度は一体何をしたの!どうやったらこんな物が毎度毎度毎回毎回出来るの!」

「凄い体に悪そう……」

「さっきまで、呑気な事を言っていた自分に腹が立つな。これは、ある意味兵器だぞ」

「不思議だ……魚そぼろがこんなに恋しくなるなんて」

ホームズも一応食べる。

そして、吹く。そのミネストローネは全てヨルにかかった。

「なにこれ……?」

「ホームズの作った、ミネストローネ」

「おい、俺の事を忘れてないか……」

ヨルは忌々しそうに言うと体を黒く光らせてミネストローネを体表から消した。

そんな中、ジュードは兼ねてからの疑問をホームズにぶつける。

「あのさ、味見してる?」

「する訳ないじゃん、そんなの」

「「「!!!」」」

ヨル以外の全員が驚いている。ヨルは別に慣れっこなのでそんな事を気にしない。

「何で………?」

「だって、どうせ食べるんだったら途中で食べる意味ないじゃないか。それに、最後まで味が分からないほうが、なんか、楽しみじゃないか!」

「「こっちは全然楽しくない!!」」

レイアとジュードが声を揃えて言う。

「味見してよ!頼むから!」

「というかヨル君!こうなる事知ってたでしょう!!」

「当然だ。何年こいつと一緒にいると思ってるんだ」

しれっとヨルはレイアに返す。

「言ってよ!もっと早く!」

「10回に1回は極上の物が出てくるぞ」

「何で食事で、そんな大博打しなくちゃいけないの!」

「ふむ、その極上の物に興味があるな。10回に1回なら、後7回ミネストローネを作らせれば極上のミネストローネを食べれる可能性があるわけだな」

「余計な事は考えないでミラ!!そのうち6回は兵器を食べる羽目になるんだから」

「それもそうか……しかし、何事にもリスクは付きものではないか」

「こんな馬鹿馬鹿しい事に命をかけたくないよ!」

「それもそうだな。私にはなすべき事がある」

混沌(カオス)と化した食卓にレイアとヨルが一つの審判を下す。

「ホームズ、これから料理する時は味見をする事」

「分かりました……」

ホームズは素直に従う。そして、ヨルから一言。

「今回の兵器もお前が食え」

「マジで言ってる?自分でも引くほど、塩と胡椒が入ってるんだけど、このミネストローネ」

「知るか、食え」

「というか、よくそんな物を僕らに食べさせようしたね……」

ホームズはミネストローネ(兵器)の入った鍋を見つめる。

「……皆は手伝ってくれないのかい?」

レイア達に助けを求める。

「ごめん、やだ」

「頑張ってホームズ」

「お前の勇姿は忘れない」

「断罪の時間だ」

 

 

迫り来る鍋にホームズは、冷や汗がとまらない。

 

 

 

自業自得、そんな言葉が、ホームズの頭の中に浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ホームズは3日寝込んだ。

 

 

 

 

 

「……逆に、よく3日で済んだね。」

 

 

 

 






得意料理は?

ハンバーグ。だって、こねるだけで簡単にできるもん。
みたいな事を友人に言ったら、舐めてると言われてしまいました。




さて、今回で、ル・ロンドの日常は、終わりです。そして、連日投稿も終了です。
また、いつものべースに戻ります。

てなわけで
楽しんでいただけたでしょうか。
楽しんでいただけたら、幸いです。






では、また、二十四話で( ´ ▽ ` )ノ

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