テイルズと言えば料理!
てなわけで、どうぞ。
「ホームズの料理が食べてみたい」
レイアはある日突然そんな事を言い出した。
ホームズはその時レイア特製のクリーム牛丼を食べていた。取り敢えず、箸を置いた。
「どうしたの突然?」
「ジュードのご飯は食べたよね」
「食べたね。美味しかった」
「わたしのご飯も食べたよね」
「まあ、今食べてるね。朝からクリーム牛丼を作る君のセンスに驚きだよ、おれは」
ホームズは、器にある料理を見つめる。朝食には、あまり適してないないのがよく分かる。
しかし、レイアは、そんなホームズに構わず続ける。
「次は、ホームズの番だと思うの。腕の包帯もとれたし」
ホームズは両目の付け根を揉む様にしている。
「……料理当番なんてあったけ?」
「ないよ」
「……別におれが作らなくてもいいんじゃない?」
「いいじゃん、別に。それに、旅をしてたんなら、食事の用意とかもしてたでしょ?」
「まあ、一応」
「だったら、料理出来るでしょ!」
「まあ、一応」
「なら、決定!明日のお昼ご飯はホームズの料理を食べよう!ジュードにも言っとくね」
◇◇◇◇
「で、僕のうちに来たと……」
こちら、ジュード宅。ホームズはレイアに言われてやって来た。勿論ヨルもいる。
仕事中のレイアの宿のキッチンを使うわけにもいかず、ホームズは、ジュードの家で料理をしている真っ最中。
食卓にはレイアと、そして、何処で聞きつけたのかミラまで居る。
ジュードはお皿を出したりと、食事の準備をしている。
ホームズはフライパンを扱いながらジュードに話し掛ける。
「君の幼馴染み、どうにかならないのかい?」
「昔から、ああだからね。どうにも……ところでご飯は?」
「出来たよ、はい、どうぞ」
そう言って、出来た物を渡し、食卓に運ばせた。
お皿に乗った料理を見てレイアは呟く。
「………えーっとこれは…」
その言葉にホームズは恭しくお辞儀をする。
「〜『肉と野菜の油によるハーモニー、燃えるような情熱を貴方に』〜です」
「ただの肉野菜炒めじゃん!!」
レイアの今日一番の突っ込みが炸裂する。
しかし、ホームズは不敵に笑っている。
「ただの肉野菜炒めと侮るなかれ!」
「やっぱり肉野菜炒めだったんだね。何処からそんな名前だしたんだろう」
レイアの冷めた言葉がポロリと零れる。しかし、そんな言葉に構わずホームズは続ける。
「絶妙な火加減、野菜、肉などの具材を入れるタイミング。全てが、影響する、まさに至高の料理なのだ!」
「それ、全部の料理にいえるんじゃ……」
「いいから、いいから、ほれほれ」
そうホームズに進められてレイア、ジュード、ミラは肉野菜炒めを食べる。
「「「こ、これは……」」」
思わず、全員が絶句した。そして、感想を漏らす。
「「「普通だ……」」」
至って普通の味だった。
「何これ!不味くもなく、美味くもなく、至って普通。
普通過ぎて逆にコメントしづらいんだけど!」
「本当に、普通だね。僕もここまで普通だとは思わなかったよ」
「ふむ、ジュードやレイアに比べればまだまだだな」
三者三様の感想が飛び出した。
「何か、これはこれで腹立つな……」
少し、苛立ちを覚えるホームズ。ヨルは肩で尻尾を振っている。数少ない得意料理がこの評価なのだから、仕方ないといえよう。
結局、みんなぶつくさ言いながらも一応全部完食した。
そして、レイアから一言。
「今晩、テイク2やるよ」
「……え、何で?」
「お題は……」
「ち、ちょっと待って……」
「ミネストローネ!」
「いや、あの……」
「ホームズ……諦めた方がいいよ。こうなったレイアは止まらないから……」
「レシピを渡しとくね。それじゃ」
シュタ、何て音が聞こえるように手を上げると仕事に戻って行った。
ジュードは苦笑いをすると、ミラを連れて、リハビリに向かった。
残されたホームズはポカンとしている。
「ハア……」
ホームズはため息を吐き、ヨルはヨルで欠伸をする。
「おれも仕事しよう」
ホームズはヨルを連れて宿屋ロランドに戻った。
時は流れて夜……
「ほい、ミネストローネだよ」
赤いトマトのミネストローネをホームズはそれぞれの前に置いた。出来栄えは、なかなかのものだ。
ジュードは感心している。
「ミネストローネ作った事あるの?」
「ないよ」
「いくら、レシピが有るからってこんなに上手に出来るとは思わなかったよ」
ジュードの言葉にレイアはチッチッチッと指を振る。
「ジュード、料理は見た目じゃなくて、味だよ。そう言う感想は食べてから言わなくちゃ」
レイアのドヤ顔で言った言葉にジュードは苦笑いしながらもミネストローネを飲む。レイアとミラもそれに続く。
そして、一言………
「「「薄い………」」」
「薄いよ!このミネストローネ!本当にレシピ見て、作ったの?」
レイアは今日で最後の突っ込みを発動させる。
「素材の味をお楽しみ下さい」
そんなレイアにホームズはしれっと言う。そんな事を言っているとジュードにホームズの分のミネストローネを盛られた。因みにミラはぐびぐび飲んでいる。
ホームズは普通にすくって飲むが……
「うっっす!何これ!」
「ホームズの作ったミネストローネ」
ジュードはさらっと言う。
「え、何で………あ」
レシピを読み直し、ホームズは発見した。衝撃の真実を。
「塩少々じゃない。少々なのは胡椒だけだ……」
「いや、胡椒の味もしないんだけど……」
ジュードはボソッと言う。しかし、ホームズは気にしない。
台所から、塩を持ってくると机に置いた。
「後は各自お好みで」
そう言うとホームズは自分で作ったミネストローネを食べ始める。その言い草に若干イラッと来ながらレイアとジュードはそれぞれ、塩を振って食べた。
◇◇◇
「テイク3いくよ」
「……まだ、やるの?」
「ホームズ、今回は僕もレイアに賛成だよ」
「私は食事が出来れば何だっていいぞ」
「以下同文」
「あ、ヨルもちゃっかり食べてたんだ」
そんな三者三様(+1匹)の一言の後、レイアからお題が出る。
「もう一度、ミネストローネを作る事。時間は明日の昼。以上。解散!」
ホームズはため息を一つ吐くと宿屋ロランドに戻って行った。
◇◇◇◇
そんなこんなで、翌日の昼……
「出来たよ」
ホームズはミネストローネver2を皆の前に置く。
まあ、二回目だ。だから、大丈夫。そう思うと皆で一口飲む。そして、感想を一言。
「「「「甘い……」」」」
とても、ミネストローネからは聞けない感想が聞こえた。
「何、砂糖と塩間違えるなんてベタな事してるのー!」
「ホームズ、これは流石に……」
「……これは、私でも食べるのが少しキツイな……」
「素直に不味いな」
3人と1匹にボロクソに言われるホームズ。試しにホームズも食べてみる。
「ゔ……」
碧い瞳は少し、潤んでいる。しかし、強がって声を張り上げる。
「うっかり、間違えただけじゃないか!だいたい、ジュードの言ったとおり、ちゃんと上から3番目の引き出しにあった奴を使ったんだよ」
「3番目なんて、言ってないよ……4番目にある奴だよ」
恐らく、『…ん番目』しか聞こえなかったのだろう。
「………」
「ドジだね、ホームズ」
「君にだけは言われたくないね、レイア」
ホームズはレイアをジロリと睨む。
「というか、昨日は間違えなかったじゃん。どうして今日はこんな事になってるの?」
「昨日は出しっ放しだったからね、間違えようがなかったんだよ」
そんなうっかりホームズにヨルは容赦無く死の宣告をする。
「取り敢えず、お前がこれを責任取って食え」
「マジで言ってるのかい?お代わりする分も合わせて8人前あるんだけど……」
「知った事か」
ホームズは助けてと言う目をジュード達に送るが全員から目を逸らされてしまった。
結局、ホームズはこの甘ったるいミネストローネを全部食べる羽目になった。
ジュード達はジュード達で新たにご飯を作り直してそれを食べていた。
「テイク4いきたいと思います」
「……ウェップ」
「ちょっと、ホームズ大丈夫?」
「なるほど、これが所謂、『自業自得』と言う奴か」
「ほう、よく知ってるじゃないか、オンナ」
「当然だ」
ホームズは白目をむいて机に突っ伏している。
そんな中レイアはお題を発表する。
「えーっと、いい加減、ミネストローネ以外のものも食べたいんだけど、その前に、ホームズにはミネストローネをちゃんと作ってもらいたいと思います」
「異論はないな」
「だね……」
「そんな訳で、次のお題もミネストローネで決定です!それでは、また、夜に。解散!」
レイアはそう言って席を立った。
「……ジュード、トイレ借りていいかい?」
「どうしたの?」
「吐きそう……ヴェ。」
「わぁあああ、待って待って!」
◇◇◇◇
時は流れて夜……
「出来たよ」
ホームズはいつものように皆の前に並べる。
「いつもいつも、見た目はまともなんだよね……」
「確かに……」
「ふむ、何だか今度はどんな味なのか、1周回って楽しみになってきてしまったのだが……」
「重症だな」
それぞれ感想を漏らすと一口目をスプーンですくって食べた。そして、感想を一言。
「「「「……濃!!!」」」」
尋常じゃない程味が濃かった、そして、
「「「「……辛!!!」」」」
「今度は一体何をしたの!どうやったらこんな物が毎度毎度毎回毎回出来るの!」
「凄い体に悪そう……」
「さっきまで、呑気な事を言っていた自分に腹が立つな。これは、ある意味兵器だぞ」
「不思議だ……魚そぼろがこんなに恋しくなるなんて」
ホームズも一応食べる。
そして、吹く。そのミネストローネは全てヨルにかかった。
「なにこれ……?」
「ホームズの作った、ミネストローネ」
「おい、俺の事を忘れてないか……」
ヨルは忌々しそうに言うと体を黒く光らせてミネストローネを体表から消した。
そんな中、ジュードは兼ねてからの疑問をホームズにぶつける。
「あのさ、味見してる?」
「する訳ないじゃん、そんなの」
「「「!!!」」」
ヨル以外の全員が驚いている。ヨルは別に慣れっこなのでそんな事を気にしない。
「何で………?」
「だって、どうせ食べるんだったら途中で食べる意味ないじゃないか。それに、最後まで味が分からないほうが、なんか、楽しみじゃないか!」
「「こっちは全然楽しくない!!」」
レイアとジュードが声を揃えて言う。
「味見してよ!頼むから!」
「というかヨル君!こうなる事知ってたでしょう!!」
「当然だ。何年こいつと一緒にいると思ってるんだ」
しれっとヨルはレイアに返す。
「言ってよ!もっと早く!」
「10回に1回は極上の物が出てくるぞ」
「何で食事で、そんな大博打しなくちゃいけないの!」
「ふむ、その極上の物に興味があるな。10回に1回なら、後7回ミネストローネを作らせれば極上のミネストローネを食べれる可能性があるわけだな」
「余計な事は考えないでミラ!!そのうち6回は兵器を食べる羽目になるんだから」
「それもそうか……しかし、何事にもリスクは付きものではないか」
「こんな馬鹿馬鹿しい事に命をかけたくないよ!」
「それもそうだな。私にはなすべき事がある」
「ホームズ、これから料理する時は味見をする事」
「分かりました……」
ホームズは素直に従う。そして、ヨルから一言。
「今回の兵器もお前が食え」
「マジで言ってる?自分でも引くほど、塩と胡椒が入ってるんだけど、このミネストローネ」
「知るか、食え」
「というか、よくそんな物を僕らに食べさせようしたね……」
ホームズはミネストローネ(兵器)の入った鍋を見つめる。
「……皆は手伝ってくれないのかい?」
レイア達に助けを求める。
「ごめん、やだ」
「頑張ってホームズ」
「お前の勇姿は忘れない」
「断罪の時間だ」
迫り来る鍋にホームズは、冷や汗がとまらない。
自業自得、そんな言葉が、ホームズの頭の中に浮かび上がった。
その後、ホームズは3日寝込んだ。
「……逆に、よく3日で済んだね。」
得意料理は?
ハンバーグ。だって、こねるだけで簡単にできるもん。
みたいな事を友人に言ったら、舐めてると言われてしまいました。
さて、今回で、ル・ロンドの日常は、終わりです。そして、連日投稿も終了です。
また、いつものべースに戻ります。
てなわけで
楽しんでいただけたでしょうか。
楽しんでいただけたら、幸いです。
では、また、二十四話で( ´ ▽ ` )ノ