1人と1匹   作:takoyaki

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二百二十九話です!!




まだまだ、いくぞ連続投稿!!




てなわけで、どうぞ


能ある猫が爪を剥く

「剛招来!!」

「剛招来・纏!!」

ホームズの身体を紅い闘気が包む。

紅い闘気がローズの刀を包む。

二人は、地面を強く踏み鳴らし、ミュゼに向かっていった。

真正面から向かってくる二人にミュゼの髪が伸びる。

その瞬間、ローズがホームズの前に立ち、迫る髪を斬りつける。

(先ほど切れたのだから出来ない筈がない!)

だが、ローズの予想に反して、髪は刀を弾いた。

「刃物が切れるわけないでしょ」

「だったら、いなすまで!!」

ローズは、刀を返して迫る髪の軌道を変える。

「ナイス、ローズ!!」

ホームズは、そう言うとローズの肩に足を乗せ飛び上がる。

「馬鹿ね。髪が何本あると思っているの?」

宙にいるホームズに向かって髪を伸ばす。

「馬鹿は君だ」

そう言うとホームズの両脚に黒霞が現れ、宙に着地した。

ホームズの落下を予想していた髪は、虚しく空を切った。

ミュゼは、それを見て悔しそうに歯噛みをする。

そう、ミュゼはこの技を見ているのだ。

引っかかってしまった自分が情けない。

空中に注意を取られた隙にローズが、髪をいなして斬りこむ。

「っく!ネガティヴゲイト!!」

「ヨル!!」

ヨルが生首状態となって落下してその闇の腕を飲み込む。

ローズは、ヨルの頭を踏み台にして、宙返りをする。

その遠心力を乗せ二刀を振り下ろす。

「崩襲剣!!」

二刀をミュゼが髪で受ける。

その隙にホームズは、ミュゼの後ろに降り立ち蹴りを放つ。

ローズに気を取られていたミュゼは、ワンテンポ遅れて髪で防ぐ。

「こんのっ!!」

ホームズは、防がれた髪ごと蹴り飛ばした。

「ローズ!!」

ホームズがそう言うとリリアル・オーブから一筋の光が伸びて繋がる。

それの意味することは一つしかない。

共鳴術技(リンク・アーツ)

(そう言えば、ホームズとするのは、初めてね)

 ローズは、不敵に笑ってみせる。

「よしっ!任せなさい!!」

そう言うとフォトンを用意する。

ホームズは、右脚を大きく後ろに下げる。

「「フォトンシュート!!」」

そのままホームズは、ミュゼに向かって蹴り飛ばした。

光球は、ミュゼに当たり弾けた。

「ぅぐっ!!」

ミュゼが、大きく仰け反る。

「畳み掛けろ!!」

「「言われなくても!!」」

ヨルの怒鳴り声に二人は、負けじと言い返す。

「発射用意っ!」

ホームズが足を上げるとローズが、飛び上がる。

「「飛天翔星駆!!」」

そしてそのままローズを前方に蹴り飛ばした。

勢いそのままに刀を振るうローズ。

ミュゼは、舌打ちする。

反撃をしようにもこの勢いにカウンターを合わせるのは、無理だ。

「だけど、防げるわ」

そう言うと髪で防ぐ。

ぶつかり合う二刀と髪。

別のものの筈なのにそれらは、まるで鉄同士をぶつけた様な音を響かせる。

二人とも一歩も引かずに押し合う。

その隙にホームズが回りこむ。

動けないミュゼの視界の片隅に飛び込んでくるホームズにミュゼは、舌打ちをする。

「調子に………」

ミュゼは、ギリっと歯を噛み締めて髪を傘の様に広げる。

「乗らないで!!」

勢いよく開かれた髪の傘にホームズとローズは、吹っ飛ばされた。

「うっ!」

「ぐっ!!」

二人が地面に投げ出されるとミュゼは、容赦なく髪を伸ばした。

ヨルに向かって。

その髪をホームズの盾が遮る。

「邪魔をしないで」

「やだね。おれも死んじゃうもの」

そう言ってむくりと立ち上がる。

「貴方、世界を滅ぼすつもりはないと言ったわね?」

「言ったよ」

「だったら、そこにシャドウもどきがいるのは、おかしいじゃない!」

ホームズは、肩にいるヨルを見る。

「だってさ」

「いない方がおかしいんだがな」

いつもの調子で微妙にピントのずれた言い合いをする彼らにミュゼが業を煮やす。

「そいつは、リーゼ・マクシアの敵よ!!過去に一体何人の人間と精霊を殺したと思っているの?」

「忘れた」

即答するヨルにホームズは、頬を引きつらせる。

そんなホームズに構わずヨルは、尻尾を伸ばす。

「とりあえず十は、超えるな」

「百の間違いだろう?」

呆れた様にため息を吐くホームズにミュゼの髪が伸びる。

「そんな奴をこの世に再び放った、貴方の罪は重い!!」

ホームズに伸びる髪をヨルの尻尾がまとめて止める。

「間違うなよ、大精霊。人を殺したのも精霊を殺したのも俺の行いだ。こいつが背負う罪は別にある」

「………庇うの?この人間を?」

ヨルは、目を丸くすると愉快そうに笑う。

「阿保。問うべき相手を間違えるなと言っているんだ」

ホームズの蹴りがミュゼの腹に当たる。

ミュゼは、大きく後方に飛んだ。

「……なら、貴方に問うわ。人間と精霊を殺したこと、世界に仇なしたことを悔やんでいないの?」

「お前がそれを聞くのか?」

ヨルは、愉快そうに笑っている。

「ニ・アケリアだっけか?の人間を殺し、精霊の主をクルスニクの槍に閉じ込めた、そんなお前が化け物()にそれを聞くのか?」

「黙れ!!」

その瞬間、ホームズとローズに重圧がかかり地面に押し付けられた。

ミュゼは、会話に気を取られているフリをして精霊術を発動させていたのだ。

この状態では、ヨルも生首になれない。

「私は、リーゼ・マクシアを救う、その信念に基づいて動いているの!ニ・アケリアもマクスウェルもそのため犠牲よ!!貴方と一緒にしないで!」

ミュゼは、更に術を強める。

「犠牲………か……くくく、便利な言葉だ」

馬鹿にしたようなヨルの笑い。

ホームズとローズにかかる重圧は、更に威力を増し、ホームズとローズの身体を軋ませる。

「貴方には、あるの?信念に基づいて行動したことが?」

ミュゼは、鬼気迫る表情で問い詰める。

それに比例するように身体にかかる重力は増していく。

ヨルは、そんな中馬鹿にした様に笑う。

「そんなものあるわけないだろ。俺は、化け物だぞ」

ヨルの火に油を注ぐ一言に重力はさらに増していく。

(ヤバイ………!)

ローズも身動き一つ取れない。

「俺を突き動かすのは、欲望と……」

開かれたヨルの口から一筋の光が伸びる。

光は、ホームズのリリアル・オーブと繋がる。

 

 

 

 

 

「約束だけだ」

 

 

 

 

 

 

その瞬間、ホームズ達押さえつけていた精霊術が消えた。

「ッカハ!!」

突然消えた重圧から解放された身体が、動き出す。

それと同時に口から血が溢れる。

「そんな……!生首になっていないのに!?」

ミュゼは、突然のことに目を丸くするしかない。

だが、ホームズは、血を吐き出しながらも自分のリリアル・オーブを結ぶ光の筋を見て眉をひそめていた。

「おい、これって………」

ヨルは、それに構わず口から光のもと、リリアル・オーブを吐き出すと尻尾を使って器用に首にかけた。

一行は、思いもしない展開に息を飲む。

「忌々しいことだが、」

ヨルは、言葉を区切るとミュゼを睨む。

「俺なりの固有サポートのようだ」

「何で……君がそんなものを持っているんだい?」

ホームズも知らなかったようだ。

「お前の母親に渡された。元々、お前のために用意したが勝手に調達したから余ったと言っていた」

「勝手に調達………?あ、そうか」

そう、ホームズはあの村でリリアル・オーブを奪っている。

それが現在、使っているリリアル・オーブだ。

その様を見ていたミラは、ガイアスの長刀を押し返し、エリーゼとレイアに指示を出す。

「エリーゼ!レイア!ホームズとローズのところへ!!」

「分かりました!」

『まかせろー!!』

駆けつけたエリーゼが、ホームズ達の治療のため、精霊術をかける。

しかし、

「あれ?」

『うーん?おかしいなー?』

「どうしたんだい……エリーゼ?」

辛そうな顔でホームズは、エリーゼに尋ねるとエリーゼは、困ったように手をかざす。

「精霊術が発動しないんです!」

血を吐くホームズのためにも何としても精霊術をかけようとするものの発動する気配など微塵もない。

原因など一つしかない。

「ヨル……君の固有サポートって………」

ホームズは、ジロリと睨むとヨルは、尻尾を揺らす。

 

 

 

 

「精霊術の禁止。味方敵問わずな」

 

 

 

 

ホームズの額に血管が浮かび上がった。

「こんの、クソ猫!どうして、そんなハタ迷惑なサポートを出すんだい!!」

「お前に言われたくないな」

「つーか、こんなことが出来るんなら、もっと別の時に使いたまえよ!!例えば、ジルニトラ戦の時とか!!」

「その時は、リリアル・オーブに制約を超えるだけのマナが溜まっていなかったんだから無理に決まってるだろ」

「嘘は言ってないけど本当のことも言ってないね!使えるようになったの、少なくとも今じゃないだろう!!絶対タイミング計っていただろう!!」

「わぁ、ホームズが言うんだ………」

呆れるレイアを他所にヨルはしれっと頷く。

「まあな」

「クソ猫オオおおおおおおおおごふぁ!」

「ホームズ!!騒ぐと内臓に触るから静かにして!!ジュード、治癒功をお願い!」

血を吐き出したホームズをレイアは、叱りつけて、ジュードを呼ぶ。

だが、呼ばれたジュードは、ガイアスとの戦いの真っ最中だ。

血と不満を吐き出したホームズは、ヨルの方を見る。

「ヨル」

「なんだ」

「約束って、母さんと何を約束したんだい?」

「お前を助けてほしいと」

ヨルは、そう言うとニヤリと笑う。

「俺は化け物だ。約束を破るような人間とはワケが違う」

「にしては、事態は好転してないんだけど」

「いいことじゃないか、俺は約束を守った。お前は苦しんでる。みんな幸せだ」

「幸せなの君だけゴボッア」

「だから、静かにしてよホームズ!!」

また、血を吐き出したホームズをレイアが再び叱りつけている。

ヨルの出した固有サポートは、かなり厄介だ。(敵味方問わず)

しかし、攻撃の手段がないわけではない。

ミュゼの髪がホームズに向かって伸びる。

ホームズの治療に気を取られていたレイアとエリーゼは、対応できない。

「別に精霊術が無くてもどうってことないわ!!」

髪が二人の目の前まで迫ったその瞬間、背後に回ったローズが、ミュゼに向かって刀を振るった。

刀の空気を切り裂く音で、ようやくローズの存在に気づいたミュゼは、攻撃をやめ、防御に髪を回す。

刀を髪で阻まれたローズは、こくりと頷く。

「えぇ。貴女の言うとおりよ。ミュゼ。精霊術が無くてもどうってことないわ」

ローズの刀を振り払うとミュゼは、次の攻撃を繰り出す。

「私たちは、みんな精霊術を使えない戦いを経験済みなの」

ヨルというジョーカーを持ったホームズと皆、一度は戦っている。

ローズは、喋りながら刀だけで髪を裁ききった。

「何事も経験とはよく言ったものだわ」

「守護方陣!!」

それは、もちろんホームズも例外ではない。

ここ最近が特別だっただけで、精霊術の援護のない戦いなど、本来ならいつものことなのだ。

僅かに回復したホームズは、ミュゼに向かって駆け出した。

ヨルのリリアル・オーブとホームズのリリアル・オーブは、繋がったままだ。

ホームズは、消えていた黒霞を再び脚に纏う。

空中を駆け、ミュゼへの距離を詰める。

「因みに言っておくとそろそろ時間切れだ」

「だと思ったよ」

ホームズの右脚を炎が包む。

「紅蓮脚!!」

炎に包まれたその足は、真っ直ぐにミュゼに向かって落ちていった。

ミュゼは、一歩引いて炎の脚をかわす。

「こんの!!」

着地したホームズは、そのまま回し蹴りを叩き込む。

だが、蹴りが届く前にミュゼの髪がホームズの腹に襲いかかった。

鞭のようにしなる髪。

攻撃を外したばかりの無防備なホームズにかわすことは出来ない。

めりめりという音が響く。

傷は、癒えていない。

そんなところに文字どおり間髪入れずに入る攻撃。

「カハッ!!」

ホームズの口から再び血が噴き出す。

「ホームズ!!」

ローズの声を遠くで聞きながらホームズは、髪を掴む。

「だぁあああああら!!」

掴んだ髪を振り回してミュゼを地面に叩きつけた。

「ッハー………ハー………」

ホームズは、荒い呼吸を繰り返しながら地面に伏せるミュゼを睨む。

相手は大精霊、そう易々とやられない。

いつ動き出すのか分からないのだ。

次の瞬間、案の定というべきか、ミュゼの髪が動き出した。

「くっ!!」

ホームズは、何とか躱そうとする。

だが、先程の攻撃が、膝に来ていたのだろう。

ホームズは、膝から崩れ落ちた。

「ホームズ!!」

ローズが慌てて駆け寄る。

「ヤバイ!!」

レイアとエリーゼは、地面を飛ぶように走る。

ホームズは、倒れながら口を少しだけ動かす。

 

 

 

 

 

 

 

「まだかい?」

 

 

 

 

 

「丁度良い頃合いだ」

 

 

 

 

 

ヨルの低い声が響くと同時に身体が淡く光り、迫る髪を弾き飛ばした。

 

 

 

 

 

その輝きは見間違うことなく、

 

 

 

 

「あれって……」

「オーバー………リミッツ」

思わず足を止めたレイアとエリーゼは、息を飲んだ。

淡い光は、やがてヨルに飲まれるように真っ黒に染まっていった。

「貴方、まさか最初からこれが狙いで、ずっと精霊術禁止状態だったの?」

「当然。でなきゃ、共鳴(リンク)なんてするわけないだろ」

共鳴(リンク)を続け、何とかこの状態まで持って行ったのだ。

「おかげでおれは、また時間稼ぎ……本当、いい加減にして欲しいんだけど」

「いつものことだ。気にするな」

「それ、おれが言うセリフだからね」

ヨルは、半眼のホームズ(吐血済み)を無視すると倒すべき敵と向き直る。

ヨルは犬歯を見せ、獰猛な笑みを浮かべる。

その笑みの先にいるのは、ただ一人。

「よう、覚悟はいいか?大精霊」

 

 

 

 

真っ黒な光は、徐々に広がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

「月夜ばかりと思うなよ」

 

ヨルの秘奥義が発動した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「降りろ、夜の帳!!」

 

 

 

 

 

辺りは闇に包まれる。

一寸先も見えないその中、ミュゼは、ヨルの気配を探してキョロキョロと辺りを見回す。

「ベガ」

戸惑うミュゼにヨルの攻撃が、襲いかかる。

ミュゼは、なすすべなく一直線に吹き飛ばされる。

「アルタイル」

吹き飛ばされたミュゼの先回りをしたヨルが再び、ミュゼを横薙ぎに弾き飛ばす。

何とか態勢を立て直そうとするが勢いが、落ちず移動を続けているため、それも叶わない。

そして、気づく。

ここは一番最初に弾き飛ばされた場所だ。

ミュゼは、三角形を描いて始まりの地に戻ってきたのだ。

「デネブ!!」

先回りしていたヨルがミュゼを打ち上げる。

ミュゼは、打ち上げられ瞬間、自分を攻撃していたものの正体を知った。

(尻尾を編み込んで、拳に!?)

勿論、普段の状態では無理だっただろう。

だが、今のヨルはオーバーリミッツだ。

多少の無理など関係ない。

「瞬け、夏の夜空を彩る星々よ!!」

描かれた三角形が輝きだすと、それは、空中に陣となって浮かび上がる。

ヨルは、そこに自分の右前脚を通す。

すると、そこだけ、元の姿を取り戻した。

 

 

 

「サマートライアングル!!」

 

 

 

ヨルは、ミュゼに向かって、右前脚を振り下ろした。

それと同時にリリアル・オーブも砕け散った。





ヨルのサポートは、朝8時のとあるライダーの能力の応用です。
この展開までは、考えていたのですが、どんな能力にしようと悩んでいたところ、前述のライダーさんの登場で、よしこれだ、となりました。
まあ、どちらにせよ、迷惑なことこの上ないですね。

今回の振り返りは、こちら『エレンピオス』



ホームズの夢が叶った章?
違います。ローズ復活の章です。
色々悩みました。
でもヤッパリ、ここでしっかり、きっかり復活してもらいました。
実はゲストキャラが何人か居ます(言うまでもないですね)
ゲストキャラの解決は、外伝にいますので、ぜひ探してみてください。
決戦前夜まで書けて、本当に書きたいものだらけの章でした。



ではまた、二百三十話で( ´ ▽ ` )ノ

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