1人と1匹   作:takoyaki

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二百三十話です!!



ええもう何も言いませんとも!!




まさかまさかの連続投稿!いつまで続くか!!



てなわけで、どうぞ


詰みの……?

「よし、今のうち」

エリーゼとレイアが精霊術で二人を治す。

ヨルの固有サポートが消えた今、再び精霊術を使うことが可能になったのだ。

ヨルは、砕けたリリアル・オーブを見ながら、フンと笑う。

「やはり、俺では使いこなせないようだな」

「人間の力を底上げするものだからね。君相手は、流石に想定外だったと思うよ」

治療を受けながらホームズは、目の前のミュゼを見る。

ミュゼは、ゆらりと立ち上がった。

決して、ダメージが軽かったわけではない。

「軽くはないが耐えられないほどのダメージではなかったってところか」

だが、それは、耐えなくてならないダメージだったいうことだ。

それでもミュゼは、立つのだ。

「まだ、立つのかい?」

「貴方なら諦めるの?」

ミュゼの言葉にホームズは、感心したように頷く。

「へぇ……言うじゃないか」

ホームズは、そう言うと後ろにいるエリーゼとレイアの方を振り返る。

「二人ともありがと。助かったよ」

「後は、私達に任せなさい」

ローズも刀を構えてミュゼを見据える。

エリーゼとレイアは、少し迷った後、頷いて走り出した。

勿論、それを許すミュゼではない。

髪が広がり、二人の行く手を阻む。

「蒼破追蓮!!」

ローズの二連撃が髪を弾く。

二人のそばを駆け抜けるレイアとエリーゼ。

ローズとのすれ違い様にエリーゼがポツリと呟く。

「任せましたからね、ホームズを……友達を」

「えぇ。友達にお願いされたら百人力よ」

エリーゼは、にっこりと頷いて元いた戦場に走っていく。

レイアもそれに続く様に走り出す。

レイアがホームズとすれ違う時、彼は申し訳なさそうに笑う。

「ごめんね。最後まで迷惑をかけて」

「わたしに迷惑をかけないホームズなんてホームズじゃないよ」

思わぬ即答にホームズは、苦笑いを浮かべた。

それに応える様にレイアは、悪戯っぽく笑い返した。

蒼破追蓮で空いた隙間をぬって二人は、元いた戦場に戻った。

レイアとエリーゼを止められなかったミュゼは、ため息を吐くとホームズ達と向かい合う。

ヨルは、ぴょんとホームズの肩に乗る。

「あれ?いつまで経っても子猫モードにならないねぇ?」

それを見て不思議そうなホームズにヨルは小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

「戻したのは一瞬だったし、何より一部だけ。おまけにリリアル・オーブの力も借りてたしな。副作用は無しだ」

「なるほど」

ホームズは、頷くと右脚を前に出す。

ヨルとの共鳴(リンク)の切れたホームズのリリアル・オーブは、ローズのリリアル・オーブと繋がった。

ローズは、離れたところからそれを確認する。

二人は、同時に踏み込んだ。

「紅蓮脚!」

「紅蓮剣!」

二人は、ミュゼに左右それぞれから攻撃を仕掛けた。

「エアプレッシャー!」

ミュゼは、ホームズとヨルに向かってエアプレッシャーをかける。

脚を纏った炎は、ミュゼに届くことなく地面に押しつけられ掻き消えた。

精霊術を喰らえず、ホームズ達にかかる重圧は、増していく。

そう、重圧をかけているのは、ホームズとヨルだけだ。

「っつはあ!!」

ローズの二刀がミュゼに迫る。

下手に髪で受ければ炎がこちらに燃え移る。

「っく!!」

ミュゼは、一歩引いてかわす。

行き先を失った二刀は、地面に落ちる。

その瞬間、刀から炎が消える。

ミュゼは、炎が消えた瞬間、ローズに髪を振るう。

しなる髪が的確にローズの腹部を捉える。

「────っか!」

胃の中の物が口から溢れる。

白黒する景色を見失わないようローズは、唇を噛んで堪える。

ミュゼが追撃をしようとした、背中にホームズの蹴りが炸裂した。

(しまった!!)

ローズに気を取られたミュゼの精霊術をホームズは、抜け出してきたのだ。

「獅子戦哮・氷牙!!」

ホームズに視線が移ったミュゼを後ろからローズの氷の獅子が襲う。

「ネガティヴゲイト!!」

ミュゼは、即座に精霊術を作って打ち消す。

「獅子戦哮・焔!!」

「しつこい!」

迫る炎の獅子をミュゼは、紙一重でかわすとホームズに髪で攻撃する。

「蒼破追蓮!!」

蒼い斬撃が、空を走りミュゼに襲いかかる。

ミュゼは、攻撃の手を止め、自分の身を守るしかない。

「なるほど、最初からこれが狙いってわけ」

ミュゼは、忌々しげに舌打ちをする。

二人一緒にエアプレッシャーをかけられてしまえば、それこそ終わりだ。

だからこそ、二人は同時に精霊術をかけられないようミュゼを挟み撃ちする形をとった。

(ジルニトラの時のは、時間がかかり過ぎて無理。それに出来たとしても私を中心にしたら、私も動けなくなる)

単純だが、とても効果的な布陣だ。

更にヨルの存在が精霊術の牽制となる。

「だったら!!」

ミュゼは髪を傘のように広げ、ホームズとローズを弾き飛ばす。

ホームズとローズは、飛ばされた後、直ぐに宙返りをして態勢を立て直す。

先程食らったのだ。対策ぐらい直ぐに立てられる。

「こんの!!」

ミュゼの髪がホームズに巻きつく。

ホームズは、地面を踏み鳴らす。

「守護方陣!!」

光の陣は、ミュゼの髪を弾く。

「二度も三度も食らいたくはないさ」

「─────っ!」

ミュゼは、悔しそうに歯噛みをすると髪を引いた。

そのミュゼの後ろには、ローズが迫る。

ミュゼは、ローズの右の一刀を髪で受け、そのまま髪で攻撃を仕掛けた。

ローズは、左の一刀で受けながすと、そのまま刀を振り下ろした。

ふわりと浮かんでミュゼは、かわす。

ミュゼは、上空でマナを込める。

(ここなら!!)

そう思った瞬間背中に衝撃が走る。

 

 

 

 

「とか思ってるんじゃあないだろうねぇ?」

 

 

 

 

 

再び黒霞を纏いミュゼの背後にたったホームズは、ミュゼに向かって一撃を放った。

ミュゼは、宙返りをして飛ばされる勢いを殺し、ホームズを睨むと髪を素早く伸ばした。

攻撃をしたばかりのホームズに避ける余裕はない。

何とか盾で防ぐ。

その隙にミュゼは、ホームズとの距離を詰める。

迫る刃と化した髪を前にホームズは、盾でミュゼを殴りつける。

「………ちっ!」

ミュゼは、仰け反りながらも髪を振るう。

その髪は、ホームズの肩を捉える。

肩からは血が噴き出しミュゼの髪を真っ赤に染める。

「ホームズ、血が!」

「んなもの、いつものことだ!!」

ローズの心配そうな声にそう返すと、ホームズは、距離を詰め、頭突きを食らわせる。

まさかの攻撃にミュゼは、脳を揺らす。

「鳳凰天駆!!」

身体に炎を纏い更にホームズは、頭を揺らしているミュゼを巻き込んで高く舞い上がる。

「かぁーらぁーの!!」

ミュゼの上を取ったホームズは、黒霞が消えることを察して、先に宙返りをして消す。

「鳳凰天翔駆!!」

火の鳥となったホームズは、そのままミュゼを地面に叩き落とした。

だが、ミュゼも負けてはいない。

仰向けのまま髪を操り、ホームズを吹き飛ばす。

「となれば、次は……」

案の定、後ろに迫っているローズ

ミュゼは、振り返りながらホームズと同じように髪で弾き飛ばす。

「ぅぐ……」

飛ばされたローズは、全身に走る衝撃を呑み込む。

ミュゼは、そんなローズに追撃を仕掛けようと距離を詰める。

満身創痍のホームズではフォローに向かうことは出来ない。

そう思いローズへと向かったミュゼの身体が、急にがくんと止まった。

「これは………」

「覚えがあるだろ?」

ホームズの肩でヨルがニヤリと白い歯を見せて笑う。

今まで何度もミュゼに仕掛けていた手だ。

ローズに向かおうとしているミュゼをヨルの尻尾ががんじがらめに縛り上げていた。

「一本釣りじゃあ!!」

ホームズは、ミュゼを思い切り引っ張った。

ローズに迫っていたミュゼは、一気にホームズの元まで引き寄せられる。

引き寄せる勢いを利用しホームズは、蹴りを叩き込もうとする。

「グラビティ!」

ホームズの目前まで迫ったその瞬間、ミュゼは精霊術を発動させた。

生首状態になる前に術を発動させる。

ヨルの術喰らいを封じるのにこれ以上の策はない。

現れた闇の球体は、ホームズの身体を軋ませる。

「くそ!!」

ヨルは、ワンテンポ遅れて生首になり、術を喰らおうとする。

ヨルが生首になったその瞬間、がんじがらめのミュゼの拘束が解けた。

ミュゼは、これを狙っていた。

もちろん、ヨルだって分かっていた。分かっていながら乗るしかなかった。

ミュゼは、指を鳴らす。

するとホームズの身体を軋ませていた球体は、弾けた。

突然の爆発にホームズは、地面を転がる。

「グラヴィティ!!」

先程より更に大きい球体が、ホームズとヨルの上に現れ、彼らを地面に抑えつける。

その重圧は、今までと比べ物にならない。

「レイ!!」

「!?」

術を発動させたばかりのミュゼの上に光の雨が降り注ぐ。

思いもしないところから現れた攻撃をミュゼは何とかかわそうとするが、いかんせん余りにも不意打ちだった為、いくつか受けてしまった。

ミュゼの肩を焼いた光の雨を放った張本人、ローズは、真っ直ぐに標的に向かって走り出していた。

目の前には迫るローズ。

そして、先の一瞬でグラヴィティは、解けた。

となれば、次に来るのは決まっている。

「ワンパターンにもほどがあるわ!!」

後ろで第二撃を用意しているホームズだ。

ミュゼは、背後にいるはずであろうホームズを狙って髪を振るう。

 

 

 

 

 

 

「ざぁんねん、俺だ」

 

 

 

 

 

 

ヨルは、ミュゼの髪に着地しながらそう返す。

着地したヨルは、ミュゼから見て右の方向に視線を移す。

「今だ!ホームズ!!」

ミュゼは、ヨルの目の動きを見逃さなかった。

視界の端にポンチョが微かに映る。

自分の右に向かって鋭く尖った髪を放つ。

ミュゼの髪は、

 

 

 

 

 

ポンチョだけを貫いた。

 

 

 

ホームズは、ミュゼの左から現れ、そのまま蹴り上げた。

ミュゼは、飛びそうになる意識を堪えるとヨルを睨みつける。

「やってくれたわね!」

「何のことだか分からんな」

ヨルは、馬鹿にしたように笑いながら、尻尾を使ってポンチョを回収する。

ヨルの視線は、ただのダミーだ。

だが、それだけでは、ミュゼは引っかからない。

逆に深読みするかもしれない。

ワザと反対方向を見ていると。

そこでポンチョだ。

あらかじめ脱いでおいたポンチョをヨルが尻尾使って視界に映るか映らないかのギリギリのところではためかせたのだ。

二つ揃った状況証拠のせいでミュゼは、まんまと騙されてしまったのだ。

「よくも……!」

彼らは、人を出し抜くことにかけては、他の追随を許さない。

「おいおい、どこ見てるんだい?」

ポンチョを羽織ったホームズは、ヨルに気を取られたミュゼにアイアンクローを決めると顔面から地面に叩きつけた。

「ーー!!」

顔面に走る激痛にミュゼは、言葉が出ない。

そのミュゼにホームズが追撃を仕掛ける。

「……ヴゲイト」

弱々しい声と共に足を振りかぶったホームズの目の前に闇の腕が、現れた。

「っくそ!!」

ミュゼの精霊術に気を取られたホームズをしなった髪が弾き飛ばす。

「次!!」

タタラを踏んで堪えたホームズにミュゼは、更にもう一撃を加えようと距離を詰める。

「ソリッドコントラクション」

ローズは、刀でミュゼに標準を合わせると精霊術を発動させた。

突如現れた光の鎖は、ミュゼを拘束する。

ローエンの発動させたものを見たローズは、いつものように見様見真似で使ったのだ。

恐らく本来なら、テクニックが必要になるのだろう。

ローズは、それを全て力だけでどうにかしている。

「くっ………!」

ミュゼは、動こうと身をよじる。

鎖がギチリギチリと軋み始める。

「ホー……ムズ、早く!!」

ホームズは、ローズの言葉に答えるように足を速め、走り続ける。

「おおおおおおおおおおおおお!!」

走りながらホームズの脚が徐々に燃え上がる。

燃え上がると同時にミュゼへの距離を徐々に詰める。

 

 

 

 

 

その距離、

 

 

 

 

 

 

 

 

(後、五歩!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 







続きますよ〜




さて、章の振り返りは、こちら。
『サブイベント』
タイトルの通りですね。
とりあえずやりたいことを色々ぶち込みました。
多分一番書いてて楽しかったのは、女装パーティー編です。
もうね、あれが一番やりたい放題やった話だったと思います。
全部のお話を拾いたかったですが、ちょっと無理でした。
これ以上伸ばすなと、待たせているガイアスとミュゼのラスボスコンビと、外伝のメンバーが騒ぎ立てるのであの辺で切りました。
書いてて楽しかったのは、女装パーティー編ですが、思い入れがあるのは、最後のお話です。





では、また二百三十一話で( ´ ▽ ` )ノ

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