連続投稿ならず!!
てなわけで、どうぞ
(後、五歩!!)
ミュゼまでの距離は、ホームズの歩幅で残り五歩だ。
(四歩!!)
脚を踏み出す。
鎖に繋がれたミュゼは、何とか拘束から抜け出そうとする。
「こんの!!」
ローズは、もう一つ光の鎖を作り出す。
すると彼女の鼻から血がたらりと流れる。
初めて使ったこの術をいつものように思いつきの力技で行ったためだろう。
体には、いつも以上に大きな負荷がかかっていた。
「でも……だからって、逃すわけないじゃない。こんなチャンス二度もないんだもの」
ローズが増やした鎖を見てホームズは、更に一歩詰める。
(残り、三歩!!)
ここでローズの頑張りを無駄にしないためにもホームズは、脚を進める。
(後は、二歩!!)
ホームズが三歩目の脚を地面につけようとしたその時だ。
腹部に激痛が走ったのは。
「……カハっ」
何が起こったか理解できないホームズ。
そんなホームズを差し置いて、口の中は鉄の味でいっぱいになる。
激痛の先を見るとそこには、腹部を背中から貫いたミュゼの髪があった。
「後ろ……から?」
「何を驚くことがあるの?手品師が右手を見せたら左手を見るのが常識、なんでしょ?」
ミュゼは、ローズに掴まりながら髪をホームズの後ろに回し、死角から貫いたのだ。
「だからって………近付ければ……!」
ホームズは、血を吐きながらも近付こうとする。
「よく見なさいよ。貴方の脚」
言われてホームズは、ようやく炎が消えていることに気が付いた。
「まさか………?」
もう一度、自分の傷口を貫く髪を見る。
髪の先には、貫かれたホームズのリリアル・オーブがあった。
「………嘘………だろう……ここにきて?」
「これで貴方は、戦力外」
ミュゼは、鎖を引きちぎりホームズに髪を振るった。
「ホームズ!!」
かわすことも出来ないホームズの腹の傷口にミュゼの髪が放たれた。
「─────っ!!」
声にならない叫びと血を吐き出しホームズは、膝から崩れ落ちた。
倒れたホームズへ追撃しようとするミュゼにローズの刀が襲いかかる。
ミュゼは、髪を使って防ぐ。
「行かせない!!」
「まあ、そう来るわよね?」
ミュゼは、そう言うとローズに攻撃を仕掛けてきた。
今度は、ローズが受ける。
(ヨルが消えていないところを見ると、まだ、ホームズは死んでない)
ローズの刀がミュゼの顔面に迫る。
ミュゼは、一歩引いてかわすと先程まで眼前迫った刀を持つローズの手を髪で激しく打つ。
「っ痛!」
一瞬刀を持つ手が緩む。
ミュゼは、その一瞬を逃さない。
「はあっ!!」
ミュゼは、ローズの刀を叩き落し、それを自分の後ろに飛ばした。
倒れるホームズより更に後ろで光るローズの刀。
(マズイ………!)
ローズは、歯噛みをする。
刀が一つ減ったことではない。
この状態がマズイのだ。
まずは、ホームズの安否。
ヨルが生きている限り、まだホームズも生きているだろう。
だが、怪我も決して軽いものではない。
何より、リリアル・オーブが壊れている。
ローズもホームズもこれがあるから魔物達と戦えているのだ。
特にホームズは、
自分でマナを操作することができないため、どうしてもリリアル・オーブに頼らざるをえない。
現にリリアル・オーブが壊れたホームズの炎を纏った脚は、普通の足に戻ってしまった。
これでは、例え傷を治しても戦線には、復帰出来ない。
そして、更にそのホームズへは、ミュゼが一番近いところにいる。
これが一番マズイ。
何せ、人質に取られているようなものだ。
ミュゼとしては、ホームズを殺せるに越したことはない。
何しろヨルがいれば精霊術を使えないのだ。
たが、精霊術が使えなくても、ローズ一人が相手なら別にどうだっていい。
しかし、ローズにとってはそうではない。
ミュゼにとっては殺しても殺さなくてもどっちでもいい相手でもローズにとっては殺させてはいけない人物だ。
何としても、守らなくてはならない。
ミュゼの行動に最大の注意を払わなくてはならない。
にもかかわらず、ローズの刀がホームズの近くにある。
これが視界にあるせいで、ローズの中に刀を拾う選択肢が追加されてしまう。
(考えることもやることも多すぎる!!)
ローズは、一つだけの刀を握りしめる。
その瞬間、ミュゼの髪が迫る。
ローズは、刀で受け止める。
すると、ミュゼは、後ろにいるホームズに向けて髪を伸ばす。
「っ!!」
ローズは、防御から攻撃へと転じる。
だが、それは、ミュゼの攻撃を身体で受けることを意味する。
刀で阻まれていた髪がローズへと襲い掛かる。
ローズは、腕の皮膚を切り裂く髪など構わずミュゼへと距離を詰め、刀の柄で腹部を殴りつける。
ローズの捨て身の攻撃にミュゼは、態勢を崩した。
態勢を崩したミュゼの髪は、ホームズから外れた。
「やるわね」
ミュゼは、そう言うとニヤリと笑う。
「でも、残念」
腹部を殴りつけたはずの攻撃は、ミュゼの髪に阻まれていた。
ミュゼにとってこの展開は、容易に想像できていたのだ。
想像以上だったのは、威力だけだ。
思わず態勢を崩すほどだった。
だが、ただ、それだけだ。
ミュゼの髪が紫色の光と共にローズを頭から叩きつける。
「ぐっ!?」
頭を揺らす衝撃にローズは、意識が飛びそうになる。
そんな意識を繋ぎ止めるようにローズは、唇を噛む。
たらりと血が流れる。
鋭く走る痛みで何とか意識を繋ぎ止める。
地面に落とされた視線をミュゼに戻すとローズは、刀を構える。
「瞬迅……」
「そうはいかないわ」
ローズの足元には紫色に輝く陣。
その陣は、辺りの空気を巻き込んで弾けた。
ローズももれなくそれに巻き込まれた。
辺りに立ち込める煙。
「爪竜連牙斬!!」
それを切り裂いてローズが現れた。
額から血が流れ、顔の半分は、血まみれだ。
煙を切り裂いた刀は、そのままミュゼに迫る。
「くっ!!」
ミュゼの髪がローズの腹を激しく打つ。
「が………!」
ローズは、後ろに仰け反る。
「…………ナメんなァア!!」
ローズは、仰け反った身体を戻しながらミュゼに頭突きをかました。
「ぐっ!」
「がっ!!」
二人は、堪らず後ろに下がる。
ローズの顔は変わらず血まみれだ。
ミュゼは、衝撃が響く頭を押さえながら、ローズを睨む。
押さえた手からは、血が流れる。
よく見ると腕からも血が流れている。
さっきの刀は、しっかりと届いていたようだ。
「貴女、正気なの?そんな状態で、頭突きなんて……」
ミュゼの言葉にローズは、ぺっと血が混ざった唾を吐く。
「生憎、メンタルは弱くても身体は丈夫なの」
ローズは、そう言うとウィンガル戦で使った鉢巻を再び巻きつけ、目に血が入るのを防ぐ。
(まだ、諦めないのね)
この状況で、ミュゼを倒すことを目指し続けるローズにミュゼは、歯噛みをする。
諦めない人間ほど厄介なものはない。
なら、やるのは一つだ。
「ねぇ、なんでそうまでしてこの人間を庇うの?今のこの人間は、完全に足手まといよ」
ミュゼは、言葉を続ける。
「貴女がこの短期間に傷だらけになった理由なんて火を見るよりも明らかじゃない」
何故、こんな話をするのか?
決まっている動揺させるためだ。
諦めないのなら、心を折ればいい。
「………そうね」
「だったら見捨てたら?足手まといを切り捨てるなんて、よくあることで……」
「足手まといぐらい何よ、私なんて足引っ張ったわ」
ローズは、ミュゼに被せて言い放つ。
「危うく飛び込み心中させるとこだったわ。それに比べればこんなの可愛いものよ」
ローズは、一歩踏み込む。
その瞬間ローズは、ミュゼの前から消えた。
一瞬のことで動揺するミュゼの右から風を切る音が聞こえる。
音につられて右に視線を向けるとやはり、そこにローズがいた。
「心を折ろうと思った?お生憎様!」
ローズの横薙ぎの刀がミュゼに迫る。
ミュゼは、髪で防ぐ。
「私の心なんて、とっくの昔にバッキバッキよ!!」
ローズは、防がれることも構わずそのまま刀を振り切った。
ミュゼは、そのまま地面に叩きつけられた。
「ぅぐ!」
ローズの肩から血が噴き出す。
どうやらミュゼは、叩きつけられながらも一矢報いていたようだ。
ローズは、溢れる血を押さえながらミュゼを睨む。
「さあ、まだまだ続けようじゃない」
(とはいえ、ヤバイわ……血を出し過ぎた)
クラクラする頭を支えようとするが、そんな事をして仕舞えば、ミュゼに弱点を教えてしまうようなものだ。
必死に堪える。
だが、ミュゼは、その場を動こうとしない。
「どうしたの?動かないならこっちから行くわよ」
ローズは、刀を担ぎ腰を落として低く構える。
ミュゼは、それに構わずローズを指差し震える声で尋ねる。
「ねぇ、貴女のその光、誰と繋がっているの?」
ミュゼの言葉に驚いたようにローズは、自分のリリアル・オーブを見る。
すると確かに誰かと光で繋がっている。
その光の先を目で追うと、そこには、
ミュゼに空中回し蹴りを放つホームズがいた。
黒い安全靴は、振り返るミュゼの肩に打ち込まれた。
めりめりとなってはいけない音を立てながら。
「ホームズ……」
「待たせて悪かったねぇ、ローズ」
ホームズは、ヨルを肩に乗せポンチョをはためかせる。
ミュゼは、僅かに下がりながら、肩を押さえて、ホームズを睨みつける。
「貴方、それ………」
「勿論、リリアル・オーブさ」
「なんで、それは貴重品よ!何でそんなに持っているの!?」
ミュゼの言葉にホームズは、指を三つ立てる。
「リリアル・オーブは、最初から三つあった」
ホームズは、そう言うと三本立てた指を一つに切り替える。
「一つは、おれが奪ったリリアル・オーブ」
そう言うと二本目を立てる。
「もう一つは、ヨルが母さんから貰った本来おれが使う予定だったリリアル・オーブ」
そして、更にもう一本指を立てる。
「そして、最後の一つこれは、母さんのリリアル・オーブだ」
─────
最後の夜、ヨルと話す前、ホームズはルイーズの元にいた。
その時、渡されたのだ。
『まあ、理論上は使えるはずだからどうしても時は使いたまえ』
ホームズは、胡散臭そうにそれを見る。
『本当に使えるのかい?』
『君がちゃんとマナを溜めてればね。二つ持ってる君は、その分成長も遅いだろうね。くくくく』
『笑うんだ………』
イラっときたのでぶっ飛ばしたくなったが何とか堪える。
『何らかの不具合は、あるかもだけど使えるよ』
『なんで、そんな自信満々なんだい?』
『君だって人のリリアル・オーブ使ってるじゃあないか』
ルイーズの言葉にホームズは、思わず納得してしまう。
『まあ、それもそうだねぇ………』
『だろう?それと、何よりもう一つ』
─────
「より正確に言うなら父さんから母さんが引き継いだリリアル・オーブだ!」
『私達の想いがこもっているんだ。使えないわけがない』
ミュゼは、目を丸くしていた。
ヨルは、肩でため息をつく。
「ま、立ち上がりは遅かったがな」
「本当にね。あの世で会ったら絶対文句言ってやる」
ホームズは、恨めしそうに言うと地面を踏み鳴らした。
それと同時に守護方陣が現れ、ミュゼを拘束する。
ミュゼは、ホームズを睨みつける。
「貴方、まさか最初からこれを狙って?」
「いや、使わずに済めばいいなと思ってた」
ホームズは、陣を更に強める。
だが、拘束はしても回復しない。
恐らくこれが不具合なのだろう。
「なんで俺がわざわざホームズと
ヨルがホームズの肩でニヤリと笑う。
「印象に残るからだ。絶対に使うはずのない俺がリリアル・オーブを使ってホームズと
「………そうやって、人を囮にするのを思いつくところは、流石だよね」
「いつだって自分から囮になってるからいいだろ」
「………なんだろう。何一つ間違っていないはずなのにこの釈然としない感じ」
ホームズは、ため息を吐く。
ホームズがローズと
「だからって、私が最後のもう一つの存在に気付くとは思わなかったの?」
「ぜんぜん」
ホームズは、そう言うと言葉を続ける。
「いいかい?これは、おれのことを知っていればもう一つのリリアル・オーブが誰のか分かる。
更に頭が回ればもう一つを隠し持っていることぐらい分かるんだよ。
でも、君はそのどちらでもない。
おれのことを人間如き、エレンピオス風情と見下し理解しない、知ろうともしない、そして、自分で考え行動も出来ない君は、どちらにも当てはまらない」
「だからお前は、ホームズが仕込み、俺が更に上乗せした策にまんまとハマったわけだ。ザマァミロ」
ヨルは、白い牙をむき出しにして笑う。
ミュゼは、ギリっと歯軋りをしてホームズとヨルを睨む。
「そんな、この私が……エレンピオス人なんかに………シャドウもどきなんかに出しぬかれるなんて」
ホームズは、ミュゼの言葉にやれやれと肩をすくめる。
「勘違いしないで欲しいねぇ……」
ホームズのポンチョがふわりとたなびく。
「君は、おれに出し抜かれたんじゃあない」
「お前は、俺に出し抜かれたわけじゃない」
ホームズとヨルが口を開く。
「「1人と1匹に出し抜かれたんだよ」」
ミュゼは、侮っていた。
彼ら1人と1匹は、人を出し抜く事に関しては他の追随を許さない。
騙し合いを挑むには、経験値が足りなかった。
ミュゼは、そんな考えを悟らせないように精一杯の笑顔を浮かべる。
「それで、得意げにペラペラと喋って何のつもり?言っとくけど、拘束といた瞬間に貴方の心臓を貫くわよ」
「何のつもりだと思う?」
ホームズの質問にミュゼは、眉をひそめる。
答えが返ってこないと判断したホームズは、ニヤリと笑う。
「正解は、ただの時間稼ぎでした!」
ミュゼは、その言葉にハッとし、ホームズのリリアル・オーブの結ばれた先を見る。
そこには、どさくさにまぎれて拾ったもう一つの日本刀を持って二刀流となったローズが立っていた。
「行くぞ、オーバーリミッツ!!」
ホームズとローズの身体を光が包む。
「私にも事前に教えておいて欲しかったわ」
ローズは、刀を構える。
「敵を騙すにはまず味方からって言うだろう?」
「貴方、遂に騙してること認めたわね」
ホームズは、守護方陣を解く。
ミュゼの髪が真っ直ぐに伸びる。
「省略!ストップロウ!!」
次の瞬間、時が止まった。
ローズは、止まった時の中でホームズを引っ張ると、髪の直線から外した。
「解除!!」
再び時が動き出すとミュゼの髪は虚しく空を切った。
「ヨル!!」
ホームズの脚に非常識・改が纏わりつく。
ローズは、二刀に自分の血を塗り付ける。
ここから繰り出されるのは、ただの技ではない。
秘奥義でもない。
「「「蹴りをつけてやる!!」」」
「抜刀!!」
ローズは、刀に手をかけたままミュゼに向かって低い姿勢で走り出す。
ミュゼの前に迫った瞬間ローズは、踏み込み、助走の勢いそのままに刀を引き抜く。
助走の勢いを下からカチ上げる力に変換する。
当然ながら、右膝にかかる負担は尋常ではない。
オーバーリミッツの状態だからこそ、ギリギリ耐えられるのだ。
真っ赤に輝く抜刀されたそれは、ミュゼに放たれた。
だが、髪で阻まれ、刃が届くことはなかった。
しかし、助走の勢いがそのままカチ上げる力に変わっている抜刀術は、ミュゼを天高く打ち上げた。
「続いて行くわ!来なさい!ホームズ!!」
「もう向かってるよ!」
ローズは、一刀目を放り投げると踏み込んだ右脚を軸にくるりと一回転した。
遠心力を乗せ、抜刀するローズ。
ホームズは、駆け寄ると飛び上がった。
呼吸あわせる。
「二刀目!!」
血で身を固めた刀は、抜刀の勢いを一切殺さず、今度は、ホームズを打ち上げた。
飛び上がったホームズは、そのままに非常識・改を使って駆け上っていく。
ローズは、そんなホームズ見ながらため息を吐く。
(やっと追いついたと思ったらもう先に行くのね)
そんなことを思いながらも次の攻撃の用意をする。
離れたならまた追いつけば、いや、追い越せばいいだけの話だ。
(だから、今やれる精一杯をやるしかない)
ヨルは、そんなホームズの先に黒球を吐き出した。
今までにない巨大な黒球は、ホームズに向かって落ちてくる。
ホームズは、一切立ち止まることなく歩みを進める。
「「後悔も」」
ホームズは、歩みを進める。
ローズは、二つの刀の柄を合わせる。
すると、刃を纏っていた血が姿を変えていった。
「「罪も」」
ローズの手にもう二刀は、ない。
代わりにあるのは、弓だ。
宙に浮かぶミュゼにローズは、マナで矢を作り出し、狙いを合わせる。
「「欲望も」」
黒球が、ホームズに落ちた。
弾けた黒球は、ホームズを飲み込んで陽炎のように揺らめき続ける。
「信念も!!」
ローズが構えた弓の先には、上空にいるミュゼに照準を合わせるように魔法陣が次々と展開されていく。
そして、その魔法陣は、照準合わせだけでなく、ミュゼを上空に拘束した。
「思い出も!!」
揺らぐ黒霞が、中心へと渦巻いていく。
そして、それは徐々に形を変え安全靴をさらに黒くそして、ポンチョへと姿を変えた。
真っ暗なポンチョを羽織ったホームズは、ミュゼの上空に現れた。
「約束も」
ヨルが静かに口にする。
「全部背負って」
ホームズは、身体を捻りながらミュゼとの目測を測る。
「打ち勝ってみせる!」
ローズの引き絞る矢が煌々と光り輝く。
後は、それぞれ一撃を放つだけだ。
しかし、矢を放とうとした瞬間、照準を合わせていた魔法陣が揺らぎ始めた。
(ここにきて…………!)
ローズは、舌打ちをした。
元々、今日だけで秘奥義を三回放っている。
グミで回復したとはいえ、別に全回復というわけではない。
そんな状態で無茶な精霊術を二回も放っている。
これだけでも、限界なのにローズは、戦闘において先ほど血を流しすぎてふらふらしていた。
目の前が霞む。
このままでは、失敗する。
だが、ここで失敗しても誰もローズを責めない。
ローエンと一緒にウィンガルに勝った。
ガイアスに一太刀浴びせた。
ミュゼの秘奥義を打ち消して見せた。
ホームズが復活するまで時間を稼いで見せた。
この功績を前に誰が彼女を責めるというのだ。
きっとよくやったと言ってくれるだろう。
後は任せたまえと言ってくれるだろう。
ローズは、歯を食いしばって前を見つめる。
(私は、そんな言葉が聞きたくて頑張ってるんじゃない!!私が聞きたいのは、そんな言葉じゃない!!)
「気張れ!
霞がかかった意識の中、
「女の覚悟を見せてみろ!!」
その瞬間、ほんの一瞬だけ世界に輪郭が戻った。
揺らいでいた魔法陣が元の形を取り戻す。
「まさか貴方に言われる日が来るなんてね……」
ローズから自然に笑みがこぼれる。
「えぇ。見せてあげるわ!!」
ローズの矢は先程より更に輝きを増していく。
対するホームズは、吸い込まれたまま戻ってこれないよう黒い揺らめきに身を包んでいた。
「「「"朔の………"」」」
ローズは、ミュゼに照準を合わせ切った。
ホームズは、身体を捻りながら霞に纏われた右脚をミュゼに振り下ろす。
「「「"終撃"!!」」」
ローズは、矢を放った。
ホームズは、振り下ろした規格外の一撃をミュゼに叩き込んだ。
ミュゼは、展開された魔法陣を次々と通過しながら地面に向かって打ち落とされて行った。
そして、地面に向かうミュゼにローズの放ったマナの矢が魔法陣を通過しながら、ミュゼに打ち込まれた。
二人の攻撃により、もうもうと煙が立ち上る。
ローズは、思わず着きそうになる膝を何とかふるいたたせ、ミュゼがいるであろう煙を睨む。
その隣にホームズは、宙返りをしてローズの隣に立つ。
黒霞は、静かに消えていった。
ホームズも目の前の煙から目をはなさい。
煙の中にゆらりと立ち上がる人影見えた。
「「!?」」
次の瞬間、ミュゼの髪が二人に向かって真っ直ぐに伸びてきた。
二人とも立つのが精一杯だ。
避ける余裕も防ぐ余裕もない。
二人は、次に来る一撃を覚悟した。
ところがいつまでたっても攻撃が来ない。
恐る恐る目を開けると髪は二人の目の前でピタリと止まった。
「え?」
ホームズがキョトンとしているとミュゼは、悔しそうに笑う。
「認めたくないけど、認めるしかなさそうね」
ミュゼは、今にも泣き出しそうなだ。
「貴方達の勝ちよ」
そう言ってミュゼは、ゆっくりと倒れていった。
決着着きました。
やっとです。
ではまた、二百三十二話( ´ ▽ ` )ノ