これでエクシリアは、最後!!
てなわけで、どうぞ( ´ ▽ ` )ノ
「よし」
ローズは、決意をして扉を開ける。
「何年ぶりかしら」
そう言って入ったところは、ローズの実家、家族が暮らしていた家だ。
家族が惨殺されて以来一切足を踏み入れてなかった。
だが、今回、あの旅を経験したローズは、そこに踏み入れた。
勿論、ここで暮らすつもりはない。
というより、今は、この街に住んではいない。
家族が殺された場所で暮らすほど、狂ってはいない。
今日ここに来たのは、過去と向き合うためだ。
「にしても、血の跡がないのは、放って置くにしても」
そう言って辺りを見回す。
「えらく綺麗ね」
きっと何処かのお人好しの師匠があの日まで掃除をしていてくれたのだろう。
「さてと」
ローズは、適当な椅子に腰掛けて懐から手紙を取り出す。差出人は、ジュード、アルヴィン、エリーゼ、ローエン、レイア。
「ホームズのが未だに届かないんだけど……」
どこをほっつき歩いているのか、ホームズから一切手紙が来ない。
「まあ、先に読んでおくか」
あの日々を思い出しながら、ローズは、一通一通読んでいく。
アルヴィンは、商売を始めたらしい。
エリーゼは、学校に通っているようだ。
レイアは、驚いたことに看護師を止めてしまったらしい。現在無職だが、いずれ素晴らしい家庭を築くことが夢だとか。
ローエンは、ガイアスの元で
そして、ジュードは、
まだ、上手くはいっていないが、少しずつ理解者も増えてきているようだ。
「みんな、前を向いているわね」
最後の一通を読み終えるとローズは、大きく息を吐き出す。
手紙を読んだらやるべきことがある。
ローズは、手紙取り出し、ペンを持つ。
「さてと」
『手紙読んだわ。みんな元気そうで何より。まあ、ホームズだけ、全然分からないんだけど。
私?私はね、聞いて驚きなさい。
イル・ファンで学校に通ってるわ。
うんまぁ、ジュードには、申し訳ないんだけど、タリム医学校じゃないの。
精霊術を教えている学校。
ほら、色々と適当に精霊術発動させてきたから、もう少し理論を学ぼうと思ったの。
私は、まだまだ出来ないことの方が多い。
だったらまあ、その出来ないことを潰しておくに越したことはないかな?と思ってね。
それなりに高い志と運で入ったつもりだけど、先生が何を言っているか、よくわからなくて困るわ。
………うん。本当、全然分からないから、ジュードいつか教えてもらってもいい?
まあ、そんなこんなでこっちは楽しくやってる。
まだ、未来の自分は、思い描けないけど、少しずつ探して行くわ。
だいたいね、超えなきゃいけない背中が多すぎるのよ。
ローズ・クリスティより』
ローズは、書き上げた六通の手紙を鳥の背中にある鞄に放り込んだ。
真っ白な鳥は、空高く飛び上がった。
「ホームズ、最後の一通が来たぞ」
「嘘!おれがドベじゃあないか!!」
窓から入ってきた鳥がホームズは、ため息をつく。
目の前には、可笑しそうに笑っているドロッセルがいた。
「突然来るんですもの。驚きました」
ホームズは、カラハ・シャールにいた。
「紅茶を届ける約束でしたからね」
ドロッセルは、紅茶を一口飲む。
「エリーゼに会っていかれればいいのに」
「会わないようにこのタイミングで売りに来たんですよ」
ホームズは、気まずそうに視線を逸らす。
あのメンバーの中でホームズだけ手紙を書いていないのだ。
「会ったら何を言われるか……」
「とっとと書けばよかった話だろ」
ヨルの言葉にムッとしながらもその通りなので反論しない。
ホームズは、黙々と最後の一通、ローズの手紙を読み進める。
そして、手紙を読み終えると立ち上がった。
「ドロッセルさん、机借りてもいいですか。もうここで返事を書きます」
ホームズの宣言にドロッセルは、クスクスと笑う。
「えぇ。どうぞ。ホームズさんが手紙を書いている間に私も仕事を済ましますから」
ドロッセルの了承を得たホームズは、机に向き直る。
そして、インクの瓶を見て首を傾げる。
「あれ?インクだいぶ少なくなってますよ」
「………まあ、ここ最近は手紙をよく書きましたから」
「?とりあえず、おれの置いておきますので自由に使ってください」
「そうですね………まあ、ありがとうございます」
「………こんなに疲れ切ったありがとうございます初めて聞きました」
ホームズは、そう言って手紙を書き始めた。
『やっほー。みんなの手紙読んだよ。
………いやね、本当は、もっと早くに書くつもりだったんだよ……本当だよ。ねぇ、本当なんだって。
コホン、それはまあともかく。
みんなの近況も知れたし、良かったよ。
おれは、特に報告することもないなぁ……
父さんと母さんの友人のエラリィさんに会おうとしたんだけど、今は忙しいからもう少し待って欲しいって言われちゃった。
まあ、
そんな訳で、特にやる事もなく商売やりながらあっちこっち回ってる………』
「ダメだ〜!!いつもここまでは書けるんだよ、その後!その後が思いつかないんだよねぇ………」
ホームズはペンを置いて頭を掻き毟る。
基本的に途中までは書けるのだが、ホームズは最後まで書けないのだ。
そんなこんなでモタクサやっていたのが、手紙の遅れた一番の原因だ。
ヨルは、ため息を吐く。
「手紙っていうのは、口で言いづらいことを伝えるのに向いているらしいぞ」
ヨルからのアドバイスに対して興味深そうな顔をする。
「へぇ。君がそんなこと言うなんて珍しいね。母さんが言ってたの?」
ヨルは、ゆっくりと首を横に振る。
「いいや。昔、とある人間に教えてもらった」
その何処かで懐かしさを楽しむような声にホームズは、口元を少しだけ上げる。
「いつか、その人間についても聞きたいところだねぇ」
ホームズは、そう言って考え込む。
「というか、命が懸かっていないおれにアドバイスなんて珍しいね」
「毎晩『あー』だの、『うー』だの言って俺の安眠を妨害しなければ、アドバイスするつもりもなかったんだがな」
ヨルは、疲れ切った表情で答える。
いい加減安眠が欲しかったようだ。
ホームズは、肩を竦めてから再び筆を走らせた。
『それはさて置き、こんなに大勢で旅をしたのは、初めてだった。
成り行きで同行したおれだけれど、君達との旅は、きっと……いや、絶対にこの先忘れることはないよ。
まあ、忘れろという方が無茶だけどね。
本当にそれぐらい色々なことがあった。
勿論、楽しいことだけじゃなかった。
辛かったこともあったし、
悲しい別れもあった。
それでもおれは、君達と旅が出来て良かった。
だから、ありがとう。
おれに宝物のような時間をくれて。
今度は、世界の命運とか背負わずに旅をしたいね。
まあ、でもきっと、そんなことになってもまた乗り越えられる気がするけどね。
ホームズ・ヴォルマーノより………』
ホームズは、ペンを置くと肩にヨルの方を振り返る。
「君も書きたまえよ。せっかくだし」
投げて渡されたペンをヨルは、尻尾でキャッチする。
そして、別の紙に試し書きをする。
「君、これが初めてじゃあないだろう?」
鮮やかに書かれた文字にホームズは、驚いたように尋ねる。
「その質問に答えるつもりはない」
ヨルは、そう言いながらホームズの手紙の内容を目で追う。
「随分、ガラでもないことを書いたな。思っていたことは知っているが、お前なら絶対に伝えないだろ」
「手紙ってのは、口では言いづらいことを伝えるのに向いているんだろう?」
ホームズの言葉にヨルは、ニヤリと笑うとペンをくるくると回す。
「にしても、君がこんなことするなんて思わなかったよ。普段なら『何で俺がんなことやらきゃならん』とか言って断るところだろう?」
「お前、声真似だけは上手いよな……」
ヨルは、呆れながらもペンを走らせる。
「ちょっと、伝え忘れたことがあってな」
そう言って、ホームズの書いた手紙の空白に書き込んでいく。
書き込まれるその言葉を見たホームズは、儚く笑う。
「そっか、前は守ってもらえなかったもんね」
「この前と違って期限も作ってないんだ。あいつらには、守ってもらうぞ」
ヨルは、ニヤリと笑って最後に自分の名前を書き込んで完成させた。
ホームズは、書き上げた六通の封を閉じ、白い鳥の背中の手紙用の鞄に入れる。
「エリーゼの分は、私が渡しましょうか?」
ドロッセルの提案にホームズは、首を横に振る。
「……それだと、ここに来たことがバレるので、勘弁してください」
そう返すと、鳥を外に放した。
「それじゃあ、頼んだよ!」
鳥は空高く飛び上がった。
それから数日後、手紙がそれぞれのところに届いた。
ようやく届いたホームズの手紙にため息を吐いて一行は、封を開けて読み進める。
「あっははは」
「ふふふ」
「うん」
「ホッホッホ」
「こちらこそ」
「えぇ」
一行は、ホームズのらしくない感謝の言葉に笑みを浮かべ、そして、ヨルの言葉に頷いた。
『またな。約束だ
─────ヨルより』
終わったー!!!
完結まで持っていけました!!
本当にありがとうございました!!
活動報告でも書きましたが、最終章は、連続投稿を目標に頑張っていました(間に合わなかったけどな!!)
そして、たまたま、ゲーム作りのアニメを見まして、「そっか、当たり前だけど直さなくちゃいけないよな」と思い、書き上げたものを何回も直していました。
おかげで一ヶ月近く更新がありませんでした。申し訳ありません。
それでも、エクシリア編だけとはいえちゃんと完結できて良かったです!
では、もう一個、覚えてもらえてるかわかりませんが、登場人物紹介と後書きを合わせてアップしときますね。
ではでは