番外編そのさんです。
ええ、本来なら四話なんですがね……
活動報告にもちょろっと書きましたが、インフルになってました。
みなさんも気をつけてください。
人の多い所は極力避けましょう。
自分は、避けられませんでした。
賭けてもいいですが、確実に貰ってきた場所は、成人式だと思います。
幸福と不幸の天秤がこんなに仕事をしたのは、久々でした。
てなわけで長くなりました、どうぞ
「……なんか、リリアルオーブが妙だねぇ……」
とある戦闘後ホームズは、不思議そうにリリアルオーブを見ながら首を傾げる。
「あ、ホームズも?僕も変なんだよね」
ホームズとジュードは、揃って首を傾げる。
「どうしたんだろ?」
「さてな」
ヨルは、そう言って、くあっと欠伸を一つ。
「……まぁ、いっか」
ホームズは、そう頷くとリリアルオーブを仕舞い、今晩の宿へと歩き出した。
後に、これがとんでも無く面倒な事を引き起こすのだが、彼らはまだ知らなかった。
◇◇◇◇
翌朝。
「ん……もう朝かぁ……」
ベッドから起き出すと、辺りをキョロキョロと見回す。
「アレ?ヨルがいない……珍しいこともあるもんだねぇ……」
そうやって呟くと腹をボリボリと書きながら、1人しかいない部屋から出る。
今回泊まった宿はベッドが一部屋に付き一つしかないため、それぞれがバラバラに泊まったのだ。
今日の朝食は、何かと考えていると、前からレイアが歩いてくる。
「……おはよう」
「なんだか、はっきりしない挨拶だなぁ」
「仕方ないだろう、朝からそんなはっきり喋れないよ……」
レイアは、大きく溜息を吐く。
「そんな、ホームズ見たいに喋って無いで、朝ご飯食べてきなよ、
レイアは、そう言って自分の部屋に戻っていった。
「うん」
適当に返事をして食堂に降りていこうとして、足を止める。
「うんんんんんん????!!!」
おかしな発言に盛大に首を傾げる。
そして、廊下にある鏡が目に入る。
そこに映っていたのは、ホームズ・ヴォルマーノではない。
そこに映っていたのは………
「ジュード!?」
黒髪、琥珀色のつり目と、ホームズの特徴が全てないジュードが居た。
「ハァアアアァァァ!?何これ!!」
「ジュード、煩い!」
レイアの言葉を無視して、ジュード(ホームズ)は、ダッシュで本来の自分の部屋に行った。
そして、扉を勢いよく開ける。
「ジュード!!」
しかし、そこには、誰もいなかった。
「まさか……」
ジュード(ホームズ)は、急いで食堂へと降りて行った。
◇◇◇◇
「お、やっときた、寝坊助だねぇ。普段の優等生とはおもえないわ、こりゃ」
アルヴィンは、呆れて溜息をついている。
そこには、ローズとレイアを除く全ての面子が居た。
そう、勿論ホームズもいる。
「君はまさか……」
ジュード(ホームズ)は、恐る恐る指を指す。
「……僕だよ、ジュード・マティスだよ」
先に現実を知った分ホームズ(ジュード)は、落ち着いていた。
「どうなっての!?これ!?」
「ヨルが説明してくれるよ」
ホームズ(ジュード)は、溜息を吐く。
話題を振られたヨルは、欠伸を一つする。
「二度手間だが、まあ、いいだろ……」
ヨルは、尻尾を揺らして話をする。
「簡単な話、お前らはリリアルオーブの不具合で……そのアレだ……ぷっ」
「おい、君今笑ったろう」
「入れ替わったんだ、中身がな」
「あんだって?」
信じられない、いや、信じたくないという顔をするジュード(ホームズ)。
そんな、ジュード(ホームズ)に溜息を一つ吐いて説明を続ける。
「あのなぁ……他に何て説明すんだよ。
今のその状況、何か別の説明をつけられるか?」
ヨルの言葉にうっと言葉を詰まらせてしまい、ジュード(ホームズ)は、何も言えなくなる。
「……確か『不可能を消去して、残ったものが如何に奇妙な物であっても、それが真実となりえる』だったか?」
ますますグゥの音も出ない。
ジュードは、諦めたように溜息を吐くと席に着いて朝食を食べ始めた。
「つーか、君、リリアルオーブに詳しかったんだね、知らなかったよ」
「当たり前だ。お前より何年長く生きてると思ってるんだ」
「殆ど封印されてた癖に何を言ってんだか」
「知ってるか、猫の爪でも鼻フックとやらが出来るらしいぞ」
その言葉を合図にヨルは、爪を、ジュード(ホームズ)は、フォークを構える。
「やめて!それ、僕の身体だから!!」
雲行きの怪しくなった彼らをホームズ(ジュード)が必死に止める。
ホームズ(ジュード)の言葉にジュード(ホームズ)は、フォークをサラダに刺す。
「で、ローエン。このクソ猫の言ってることは本当なのかい?」
「……え、えぇ。私も戦場で偶にそういう人間を見ました」
「なんだい、その容量を得ない返事は?」
ジュード(ホームズ)は、いかぶしむようにローエンを睨みつける。
「いや、ジュードさんの口からクソ猫なんて言葉が出るとは……」
『違和感たっぷりー』
「同じく……です」
ジュード(ホームズ)は、頬引きつらせると無言でサラダを口にほうばる。
「ふぉれでふぉうやったら……」
「飲み込んでから、喋れ。エセ優等生」
アルヴィンの言葉に不満気に眉をしかめると飲み込む。
「それで、どうやったら戻るんだい?」
「別に今日一日だけの話だ。明日の朝日が登れば普通に元通りだ」
ジュード(ホームズ)は、ポカンとした後安堵したように溜息を吐く。
「なんだ、そうだったのか……なら、大したことないじゃん!先に言っておくれよ」
テンションの上がったジュード(ホームズ)に代わりホームズ(ジュード)は、暗い顔をする。
「ところで、唐突だが、今朝一番最初に会話したのは誰だ?」
ヨルの質問の意図が読めずホームズは、首を傾げる。
「……レイアだけど……それがどうしたんだい?」
「なら、レイアには、入れ替わりがバレないようにしろ」
「なんでだい?」
ますます不思議そうに首を傾げながら、紅茶に口を付けるジュード(ホームズ)。
「入れ替わった後、一番最初に会話した奴にこの事がバレると……」
「バレると?」
「一生元に戻らない」
ジュード(ホームズ)は、盛大に紅茶を吹き出す。
「はぁっ?!なにそれ!どういうこだい!!」
「おい、俺の朝飯が紅茶まみれなんだが……」
アルヴィンは、こめかみを引きつらせながら、ジュード(ホームズ)に抗議する。
しかし、ジュード(ホームズ)は、それどころではない。
「言葉のまんまの意味だ」
「待った………」
ジュード(ホームズ)は、顎に手を当てて考える。
その話を聞くと一つの疑問に答えが出る。
すなわち、何故、ローズがこの場にいないのかということだ。
「まさか……ジュード、君が最初に言葉を交わしたのって……」
ホームズ(ジュード)は、目を逸らしながら、答える。
「……うん、ローズ」
ジュード(ホームズ)は、ホームズ(ジュード)の答えを聞くと頭をボリボリとかく。
「つまり、レイアとローズ。この二人には入れ替わりの事はバレちゃいけないんだね」
ジュード(ホームズ)は、それから思い出したように継ぎ足す。
「そう言えばヨルは?君は、おれから離れられないのかい?それとも、おれの皮を被ったジュードから離れられないのかい?」
「後者だ。俺は、ホームズの
つまり、ホームズの肉体の方に拘束力があるんだよ」
「なるへそ」
ジュード(ホームズ)は、ため息とともに現状を確認する。
「まぁ、別にそれなら、大丈夫だろう。おれら二人は部屋にでもこもって、ワイ談でもしてるって言っとけば女の子は、入ってこないだろう?」
ジュード(ホームズ)は、今現在出来ることを並べていく。
対して他の面子は、頬が引きつるのが止まらない。
「おい、ジュードの口からワイ談なんて言葉が飛び出たぞ」
「違和感ありまくりですね」
「……?ワイ談って何ですか……」
「前に本で読んだ。確か……」
「ミラ!教えなくていいから!」
「……まあ、やるだけやってみたらどうだ」
「そうするよ。さ、ジュード!ワイ談だ!」
「はぁ……やるしかないんだね」
自分の顔から聞きたくない言葉が連呼され、ホームズ(ジュード)の精神は大分すり減っていた。
もうどうにでもなれっという顔でジュード(ホームズ)に連れて行かれた。
アルヴィンは、二人が上がっていくのを見送ると、自分のがダメになった為ホームズの食べかけの朝食に手をつけた。
その後しばらくして、階段を下りる二つの足音が聞こえてきた。
ジュード(ホームズ)の作戦を伝えることになると考えるだけで気が重くなる一同だった。
◇◇◇◇
「……で、さっきから無言で考え込んでるんだけど、どうしたのホームズ?」
ホームズ(ジュード)は、ベッドに腰掛けながらジュード(ホームズ)に話しかける。
ジュード(ホームズ)は、組んでいた腕を解く。
「いやね、冷静に考えてみると何かこの作戦、無理があると思ってね」
「まあ、一日中、ワイ談をやるなんて事自体が無理だからね」
ホームズ(ジュード)は呆れ顔だ。
ジュード(ホームズ)は、頷く。
「それに少しぐらいは、何か話そうかと思ったんだけど……君乗ってきそうにないし……」
「当然だよ」
ホームズ(ジュード)の半眼にジュード(ホームズ)は肩をすくめると窓を指差す。
「そ・こ・で!おれたちが部屋にいると思われてるうちにここから出ようと思うんだけど……どう?」
「……まあ、そっちの方がいいね」
ホームズ(ジュード)の賛同を得ると、ジュード(ホームズ)は、窓の鍵を開けにかかる。
その時、ドアノブの回る音がした。
その時、ジュード(ホームズ)は、思い出した。
鍵をかけ忘れたことに。
「「ホームズ!!」」
憤怒の表情のレイアとローズがなだれ込んできた。
驚いたジュード(ホームズ)は、身構えるが二人が襲いかかったのは……
ホームズ(ジュード)だった。
◇◇◇◇
「上手くいくのかね……」
アルヴィンは、朝食を黙々食べながら、そう呟く。
「上手くいくわけないだろ」
ヨルは、バカにしたように言う。
「あいつの母親に言わせれば、あいつは女心というものが分かっていないらしい……」
「あぁ、まあな」
「否定は、しない……です」
割りと側からその光景を見ていたアルヴィンと、自分もよく言われたエリーゼは納得する。
「つまりだ、女心の分からん阿保が、女心を利用した作戦を立てたんだ。上手くいくわけないだろ」
◇◇◇◇
ヨルの予想通り作戦は失敗し、大騒ぎになっていた。
「あのね!男だからそんな話をするなとは、言わないけど、年下に何しょーもないこと教え込もうとしてんのよ!」
「え、いや、あの」
ローズに襟首を締め上げられ苦しそうにホームズ(ジュード)は、ジュード(ホームズ)は、目を背ける。
(薄情者!)
「おまけに、エリーゼにまで変な言葉覚えさせて!」
これは、レイアだ。
男二人は知らなかったのだが、実はワイ談の事を教えたのはエリーゼだったのだ。
勿論意味は知らない。
「レイア、この馬鹿は私がキツク叱っておくわ。貴方はジュードに言って聞かせておきなさい」
「そうする、おいで、ジュード」
「え?」
「なんで、ホームズが返事するの!ジュードも変な納得してないで、こっちに来る!」
そう言ってレイアは、ジュード(ホームズ)を連れて行った。
「貴方も来なさい!」
「痛い痛い!!」
時間差でホームズ(ジュード)も引っ張られていった。
ローズに耳を掴まれながら……
「……思ったよりも面倒な事になったぞ」
「……どうしましょう……」
「……俺もあいつがまさかここまで、大外れを当てるとは思わなかった……」
隠れて様子を伺っていたアルヴィン、エリーゼ、ヨルは、ホームズの立てた作戦の失敗加減に戦慄していた。
「まあ、アレだ。取り敢えず俺は、元つり目のガキの所に行ってるから」
そう言って、ヨルはホームズ(ジュード)の方へ歩いていった。
◇◇◇◇
ヨルが付いて行かなかった、こちら、ジュード(ホームズ)とレイア。
二人は近くの喫茶店にいた。
テーブル席に二人は、向かい合うように座っている。
ジュード(ホームズ)の方からは、カウンターがよく見える。
カウンターには、所狭しと道具が並べられている。
これでもジュード(ホームズ)は、行商人。そのカウンターに並べられている道具を見れば、一体どれだけ、ここがコーヒーに力を入れているのかが一目瞭然なのだ。
仕事にこだわる人間は、嫌いではないのだが、コーヒーが飲めないのジュード(ホームズ)には、あまり関係がない。
「まったく、ホームズにも困ったもんだよ」
ジュード(ホームズ)が、そんな思考に沈んでいると、レイアは、少し怒りながらメニューを開いた。
「そうだね」
白々しく言うジュード(ホームズ)。
(……ゴメン、ジュード。後で屋台のりんご飴奢るから)
ジュード(ホームズ)は、随分と勝手な等価交換を心の中で誓うと、レイアの方を向く。
「ところで、き……ゴホン、レイアどうしたんだい?こんな所に連れてきて?」
危うくいつもの癖で、『君』と言いかけて慌てて誤魔化し話を進める。
レイアは、面白そうにクスリと笑った後、口を開く。
「『〜だい』って、なんかホームズみたいだね」
その言葉に危うくジュード(ホームズ)は、手にしたメニューを落としそうになる。
「は、ははは、そ、そう?」
(動揺するな!落ち着け!まだ、バレた訳じゃないんだ!)
心の中でそう言い聞かせると、ホームズは深呼吸する。
「はぁ、それにしても」
レイアは、ため息を吐く。
「何、どうしたの」
(よし!今の上手くいった)
ジュード(ホームズ)の仮想全世界が、今の演技力に拍手を送っていた。
「いや、ホームズもタイミングが悪いなと思って」
「タイミング?」
「そう、タイミング」
レイアは、そう言ってメニューを机に置く。
「今日はローズからの申し出でね、ホームズにプレゼントを上げようって思ってたんだよ。勿論サプライズでね」
(サップラッイズゥゥーー!!)
心の中で思わず叫ぶジュード(ホームズ)。
(最悪だ……こんなに聞かなきゃ良かったと思った話は久々だ……)
ジュード(ホームズ)は、決死の精神力でこの絶望を押さえつけるとレイアに焦点を合わせる。
「ふーん。それで、何で、お……僕を呼んだの。まさか、ホームズから引き離す為だけってわけじゃないでしょ」
「当然。ジュードにプレゼントの意見を聞こうと思って。同じ男同士だし、ホームズとも年齢が近いしちょうどいいかな?って」
「なるほど」
ジュード(ホームズ)は、うんうんと頷くとレイアと同じようにメニューを机に置く。
レイアは、少しジュード(ホームズ)から目をそらして手をもじもじと動かす。
「……も、もしかして、デートかと思った?」
「まさか。すいませーん、注文お願いします」
レイアの答えにジュード(ホームズ)は、心底どうでも良さそうに返すと、自分の注文をする為店員を呼んだ。
レイアは、そのホームズの言葉にかちんときたようで、ムッとした顔のままケーキを三つ頼んでいた。
「飲み物頼まないと後で後悔すると思うけどね」
そういうと、ジュード(ホームズ)は、ケーキを二つに紅茶を注文した。
レイアは、素直にホームズ従って、紅茶を頼んだ。
「ジュードって、本当にそっけないよね」
「そう?」
(まあ、あの子結構そういう所あるよねぇ……)
口では、そう言いつつレイアの意見に納得する。
「まあ、いいか……それでプレゼントの話なんだけど、計画はね」
(え?まだ続きあるの)
「まず、わたしがジュードの意見を参考にしてそれをローズに伝える。
それの中からデザインとか、色とか、そう言うのをローズのセンスで選んでもらうの。
どう?中々粋な計らいでしょ!」
「本当だね」
(本当に聞きたくなかった……)
顔は笑って心で泣くジュード(ホームズ)。
「……と思ってたんだけど、どうして、ああも出鼻を見事に挫くのかな?」
レイアは、ため息を吐く。
ジュード(ホームズ)は、さあと適当に言いながら、何となくカウンターを見る。
そこには、帽子を被りサングラスをかけている大きめな男と小さな女の子がいた。髪を一つに縛りカバンを背負っている。
どうやら、いつの間にか来ていたようだ。
女の子の方はカウンター席に乗ろうとするのに必死でよじ登っている。
決して帽子の男の力は借りようとしない。
(アレ、降りる方が苦労しそうだなぁ)
そんな事を考えながら、ジュード(ホームズ)は、暇つぶしにメニューに目を通す。
レイアは、文句を一頻り言った後お手洗いに席を立った。
◇◇◇◇
「バレてない……ですよね?」
「堂々としてろって。こう言うのは堂々としていた方がバレねーんだから」
そう言いながら、帽子の男と、長い髪の女の子、アルヴィンとエリーゼはカウンターでこそこそと喋っていた。
余りにも、ジュード(ホームズ)が華麗なるオンゴールを決めたので、心配三割、からかい七割で見に来たのだ。
「後は、ローエンお墨付きのこの盗聴機能のつけられた石を……」
レイアがお手洗いから帰ってくる。
アルヴィンは、音もなくそれをレイアに投げつける。
見事にくっつき、下準備は全て整った。
「よし!」
成功の具合にアルヴィンは指をパチンとすると耳に石をはめる。
エリーゼもそれに習う。
「さてさて、どうなるやら……」
「多分ろくな事にならないと、思います」
◇◇◇◇
「お、きてるね!注文したものが」
レイアは、喜んで席に着く。
ジュード(ホームズ)は、メニューを戻す。
「ちょうどさっき来たところだよ」
「では、頂きます!」
レイアは、ケーキをフォークで切って食べる。
そして口にもごもごと入れながら喋る。
「ふぉれで」
「は?」
ジュード(ホームズ)が首を傾げるとレイアは無理やり飲み込む。
「思うんだけど、ホームズがモテるようになれば、色々変わるとおもうんだよね」
「は?」
更に首を傾げる。
◇◇◇
「……アルヴィン」
「やばい雲行きだな……取り敢えず、エリーゼいつでもいけるように準備しとけ」
アルヴィンは、そう言ってコーヒーに口をつける。
そして盗聴石から聞こえてくる会話に耳を傾ける。
◇◇◇◇
「
ジュード(ホームズ)は眉を潜めるが、自分の気にしてることなので真剣に考える。
(二人?)
心当たりがないジュード(ホームズ)は、必死に頭を悩ませ、レイアの質問に答える。
「二人ってのは、ホームズと、やっぱりあの子〈ジュード〉?」
レイアは、ホームズの言葉に頷く。
「そうだよ、その子〈ローズ〉だよ」
(ジュードか……)
自分が今ジュードの姿だという事をすっかり忘れて、分かりづらい言い回しをしたため、検討違いの場所に着陸してしまった。
(レイアは、ジュードにもっとモテて欲しいのかな?まぁ、それはジュードがいい男だって証拠にもなるのか……)
「なるほど……でもさ、ホームズは、ともかくもう片方〈ジュード〉の方はモテそうなもんだけどね」
「まあ、可愛いしね〈ローズ〉。モテても不思議じゃないと思うけど」
「うん……うん?可愛い?」
自分がジュードだという事を思い出し、頷きかけて止める。
そして、自分が何かミスをした気がするのだが、思い出せない。
(まあ、思い出せないなら、たいしたことじゃないんだろうな)
「どうしたの?ジュード?」
「いや。まあ、褒められれば嬉しいよね」
「うん、ホームズもよく言ってるんだけどね」
(おれがいつそんなこと言った!!)
ジュード(ホームズ)は、思わずフォークを曲げそうになるが驚異の精神力で抑える。
男に可愛い何て絶対言いたくない。
「へ、へぇ……それは知らなかった」
「いや、偶に面と向かって言う時もあるんだけど、全部嫌味っぽいんだよね」
(だから、いつ言ったんだよ!)
「あれだよね、ホームズも結構素直じゃないよね。
多分モテない原因の一つだと思うんだけど、どう思う?」
「本人いないのをいい事に言いたい放題だね」
(この子、普段おれの事そんな風に思ってやがったのか)
◇◇◇
「アルヴィン……これって会話成立してるんですか?」
「……二人ともが違うボールを同時に投げて奇跡的にキャッチ出来てるって感じだな」
「……お腹痛くなってきました……」
◇◇◇
「後さ、ホームズがモテない原因ってさ」
(すげぇ、本人前にしてまだやるんだ……姿はジュードだからしかないんだけど……)
「性格のタチの悪さだよね。結構平気で人の事騙すもん。
しかも何がタチ悪いって、騙す時ホームズ嘘つかないんだよね。
『全部君が勘違いしたんだろう』ってさ」
「……まあ、彼なりの誠意なんじゃない」
「人を騙すのに誠意もクソもないじゃん!」
そう言いながら、レイアはケーキをほうばる。
「色々と注意する様にはなったけど、多分なにか騙されてるんだろうな」
レイアの話が少しそれた。
(………よし!そのまま、モテない話題に戻ってこないでおくれ!)
「後はさ、あの根にもつ性格どうにかした方がいいよね」
(話題が戻ったー!)
「……」
「それを直せば、もう少しホームズも違うと思うだけどな……」
「……そろそろ、プレゼントの話をしようか」
「それもそうだね……ってどうしたの?顔暗いよ?」
「……まあ、色々?」
(……天然って怖いわ〜)
◇◇◇◇
「アルヴィン、戻りませんか……」
「……賛成。暇を潰すどころか心が潰されそうだった……」
アルヴィンがエリーゼに手を貸しエリーゼは、安全に椅子から降りた。
会計をすませると、深いため息と共に喫茶店を後にした。
◇◇◇◇
「……えーっと、ローズ悪かったよ……許して」
こちらホームズ(ジュード)とローズは、宿から移動してペット連れ込みOKの料理屋にいた。
少しでも機嫌を直して貰おうと思ったのだが、ローズに変化はない。
ゴミを見るような目で先程からホームズ(ジュード)を見ている。
「(ヨル、アドバイスとかない?)」
「(あるわけないだろ、阿呆)」
「(ホームズ、いつもこんな状態のローズ相手にしてたのか……)」
「(より正確にいうなら、レイアだがな)」
そんな会話をボソボソと続けていると、トントンと机を叩かれる。
ビクッとしてローズの方を見る。
「……今後は、年下に変な事教えないようにね」
「はい」
ホームズ(ジュード)は、頷く。
不本意ながら。
(ホームズの提案なのになぁ……)
心の中で悪態を吐くと、ため息混じりにローズを見る。
「ところで、ローズ?朝ご飯食べたばかりなのにどうしてこんな所に?」
「……宿のご飯足りなくて……」
ローズは、顔を真っ赤にしてうつむく。
そして、どんとテーブルを叩く。
「『女性用のメニューがありますのでどうぞこちらを』とかいってさ、パっと見華やかなんだけど、量が全然足りないのよ!
あんなんじゃ、力なんか出ないわ!」
「……まあ、ローズ、武道家だもんね」
「てなわけで、食べます。
スミマセーン、注文お願いします」
ローズは、店員を呼ぶ。
ホームズ(ジュード)が決まったとは一言も言ってないのにだ。
店員が来ると着々と自分の注文をするローズ。
「……えっと、私は以上で。
ほら、ホームズも」
「えっ!?えーっと、じゃあ、鮭茶漬けで」
慌ててホームズ(ジュード)も注文する。
そして、注文を終えると話題が見つからず、降りる沈黙。
ホームズ(ジュード)ととしては、このまま黙って時間が過ぎた方がボロが出ずに済むのでありがたいのだが………
(ど、どうしよう……)
ローズは、必死に話題を探していた。
(プレゼント……レイアに任せてはあるけど……一応私も聞いておいた方がいいのよね……)
そして、こっちの方が更にそれより重要だ。
(髪留めの事もあるし、ホームズにはプレゼントを上げたいんだけど……
いや、サプライズだし気づかれないようにしないと)
実は全てホームズが知っているのだが、ローズはそんな事を知る由も無い。
(せめて、平常心でなくては)
「(ヨル、ローズがさっきからずっとおかしいんだけど……)」
「(……気づかないふりしろ)」
ローズは、平常心でいるつもりなのだが、はたから見れば明らかに異常なのがわかる。
「……あ、あのさ」
「何?」
ローズは、顔を赤くしながら目をそらし尋ねる。
(欲しいものは?じゃあストレートすぎるわ……)
頭を何とか働かせて考える。
「何かいらないものない?」
「は?」
出てきたのは、残念ながら何処まで微妙なセリフだった。
「えーっと……パナシーアボトルの空容器」
「ゴミじゃない!」
ローズに見せたパナシーアボトルをホームズ(ジュード)に投げつける。
かんっといい音がする。
(こんなのホームズとレイアは、いつも相手にしてるの!?)
パナシーアボトルをぶつけられたでこを抑えながらホームズ(ジュード)は、何とかローズを見る。
ローズは、しまったという顔をしているところを見ると自分の方が悪いことはわかっているようだ。
「あぁ、えぇっと……」
言葉に詰まっていると、料理が届く。
机の上には、サンドイッチが3皿ほど並んでいた。
お皿には、ボリュームの有りそうなサンドイッチが三つずつあり、それぞれ二つのパンで挟んであったり、三つのパンだったりと様々な種類がある。
対するホームズ(ジュード)の所に来たのは、至って普通の鮭茶漬けだ。
「……ローズ、取り敢えず落ち着いて、食べようか」
「そ、そうね」
もそもそと二人は、食事をする。
ヨルは、そんな二人をじっと見つめるとローズの方を向く。
「おい、小ムスメ、俺にも寄越せ」
「ん?あぁ、いいわよ。でも、サンドイッチなんて上手に食べられるの?くずれない?」
ヨルは、返事の代わりに鼻で笑うと尻尾をサンドイッチに巻きつけると口を開けモグモグと食べていく。
ローズは、サンドイッチを食べるともう一度ホームズ(ジュード)の方を見る。
「……あのさ、ホームズは何か欲しいものとかある?」
「え、どうしたの突然?」
「いいから!!」
さて、ホームズ(ジュード)は、完全に固まってしまった。
勿論、ジュード自身の欲しいものは、本で決まりなのだが、ホームズの欲しいものというと、特に心当たりがない。
(会話を伸ばして考えなきゃ!)
「もしかして、ぼ……おれにプレゼントでもくれるの……かい?」
ローズは、さっとホームズ(ジュード)は目をそらす。
「違うわ。貴方にあげるわけないじゃない」
「あぁ、そうなんだ」
ホームズ(ジュード)は、そう言って会話を続けながらなんと答えるのが、正解かを考える。
対するローズは、あっさり納得したホームズに焦りを隠せないでいた。
(いやいや、せめて悲しそうな顔するとかあるでしょ!何で眉一つ動かさ……あ、動いた、何かを閃いた顔してる)
「おれは、ね……」
「待った」
ローズは、もう計画を全て投げ捨てる覚悟を決める。
「プレゼントあげるわ。何が欲しい?」
「え……?」
ホームズ(ジュード)は、うーんと首をひねる。
「ローズに任せるよ」
「面倒くさがってるわね……」
ローズは、半眼でじとっとホームズ(ジュード)を睨む。
ホームズ(ジュード)は、慌てることなく、にっこりと笑って言った
「違うよ。ローズ〈女の子〉からのプレゼントだったら何でも嬉しいよ」
ホームズ(ジュード)のホームズを分析した一言により空気が凍りつく。
ヨルもローズも食いかけのサンドイッチを落とす。
ローズの顔がどんどん赤く染まっていく。
「ろ、ロ、ローズ?」
ホームズ(ジュード)が、恐る恐る様子を伺うとローズは、何かを喋っている。
「なに?」
「だ、だ、だったら、これがプレゼントよ!ハイ!あ"ーん"!」
「ちょっ!その大きさのサンドイッチは、無理無理」
「うるっさい!やかましい!だまれっ!」
そう言って、ホームズ(ジュード)の口に一口では決して入らないサンドイッチを無理矢理押し込みはじめた。
「ふ、ふごぉ!!」
ヨルに助けを求めるが、ヨルは明後日の方向を見ている。
因みに、ヨルにはホームズならどういう対応をするかは、はっきりと分かっていたのだが……
(面白そうだから黙ってたら、とんでもない地獄絵図になりやがった……)
鮭茶漬けがひっくり返りホームズ(ジュード)は、頭から被り、ローズは机の上に乗って女子が食べるには、そして、一口で食べるには、デカイサンドイッチを年下の男に押し込んでいる。
(えーっと、状況を整理すると……)
もう一度醜い人間達を見る。
(あのホームズが実はつり目のガキで、小ムスメは、それに気づいていなくて、で、ホームズの皮を被ったつり目のガキは、何とかホームズらしい事を言おうとして大事な言葉が抜けていた為、小ムスメがホームズの皮を被ったつり目のガキに照れていつもの事をホームズの皮を被ったつり目のガキにやってるわけか……)
「………メンドクセ」
ヨルはぽつりと呟いた。
◇◇◇◇
翌朝、めでたく戻った二人は机に突っ伏していた。
全ての事情を聞かされた、レイアとローズは、その二人に向かい合うように座っている。
女性二人は、気まずそうに机に突っ伏している男二人から目をそらしている。
因みにサプライズプレゼントは、延期になった。
中止ではないので、まあ望みはあるのだろう。
一番最初に口を開いたのは、ミラだった。
「どうだったんだ、二人とも?昨日は、それを聞く前に寝てしまったし、盗聴していたアルヴィンとエリーゼも気まずそうな顔をして話してくれなかったので、何があったのか、私は知らないのだが……」
ローズとレイアがアルヴィンを睨む。
「やっぱり、あれ君達だったのかぁ……」
ホームズは、顔を上げて左側にいるエリーゼを見る。
エリーゼは、頷く。
「聞き耳は、よくないことだってことがよく分かりました」
「よかったねぇ、賢くなって」
そう言った後、アルヴィンを睨む。
「助けてくれても良かったのに……」
「いや、会話が噛み合わなかったら、止めに行こうとおもったんだけどよ……なんか、会話が奇跡的に噛み合っててよ、止めるに止めらんなかった……」
その言葉でレイアがそらしていた目をアルヴィンに合わせる。
「奇跡的に噛み合ってたってどういう事?」
「別の人物の話してんのに、会話が成立してただろ?」
「待って………」
レイアは、ギギギと古く錆びた扉が開く音を立てながら顔をホームズに向ける。
「……ホームズは、さ……誰だと思って話してた?」
「え?ジュード」
レイアは、それを聞いてあの時の会話を思い出す。
冷や汗が止まらない。
「レイア?」
ホームズは、不思議そうに首を傾げる。
「い、いや、会話の内容が酷くて……そうだよね、ホームズはジュードに可愛いなんて言ってなかったもんね!アハハハハ」
ソロソロと席を立とうとする。
ホームズは、首を傾げる。
そして、ローズも同じ様に首を傾げ、隣にいるアルヴィンの方を向く。
「ねぇ?何を話してたの?」
「あー……ん、まあ、実はよ……」
アルヴィンとしても、エリーゼとしても、胃痛の種はさっさっと処理してしまいたかったので話す。
全てを聞いた時、ローズはいつの間にか隣にいないレイアに気づく。
宿の出入り口を見るとそこにいた。
「レイアッ!!!」
ダッシュで逃げるレイアとそれを顔を赤くしながら全力で追うローズ。
「朝から賑やかですね……」
女子二名が宿の外に消えるとローエンは、ホッホッホと笑っている。
ホームズは、肩にいるヨルに半眼を向ける。
「なんだ?」
「レイアとローズに話すと戻れなくなるって言ってたけど、アレ……嘘だろう」
その言葉でジュードは、顔をかばっとあげる。
ヨルは目を丸くした後ニヤリと笑う。
「どうしてそう思う?」
「別に。4分の3は、勘」
そう言ってホームズは、トーストにバターを塗る。
「あの時おれは、体が入れ替わった事がヨルの言った通りか、ローエンに確認した。
そして、ローエンはその通りだって言ってた」
「言ってたな」
「でもさ、おれ、その後のレイアとローズと会話しちゃいけないって条件は、確認を取ってないんだよ。だから、もしかして……って、思ったわけ」
ヨルはホームズの言葉を聞くと面白そうに笑う。
「ククク……その通り、正解だ。全部嘘より、真実の中にちぃっとばかし、嘘を入れておくと騙しやすいのはお約束だぜ」
「やれやれ、本当に君はいい性格してるよ。昨日の時点で気づきゃ良かった」
ホームズは、ため息を吐きながらそう言ってトーストに齧り付く。
ヒントがあったのに見抜けなかったというのは、ホームズの中では負けに相当する。
今回は、鍋の時と違い身体的ダメージは、ないので吐き出す息とともに水に流した。
ジュードは、ヨルに怒りたいのだが、全ては過ぎた事今更何を言っても、という奴だ。
「うーん……でもこの行き場のない感情何処にぶつけよう……」
ホームズは、そんなジュードを見るとトーストを皿に置く。
「さて、問題です。実はここにマスタードがあります」
そう言って机の上のマスタードを指差す。
「まあ、ヨルに無理矢理ねじ込むというのも手ですが、それよりも、ローズの食卓をご覧下さい」
そう言って指す誰もいないローズの食卓には、ホットドッグがあった。
「えーっと、……僕は遠慮しておくよ」
「なら、おれが友人と昔馴染みにプレゼントしておこう」
心を傷つけられたり、体を傷つけられたりとホームズも地味に根に持っていた。
運のいいことにレイアは、サンドイッチだった。
ホームズは、トーストを食べながら、もくもくとマスタードをそれぞれの朝食にたっぷりっと見えないように塗りつけた。
「ま、たまにはいいよね?」
ニヤリと笑うホームズを見ると、一行は、ため息を吐く。
『『いい性格してるよ((ます))』』
企画でコレが来たとき、難しいなと思いました。
こう言うのは、絵や声があるから面白いんだよなぁ……と。
しかし、それで諦めては何も始まらない!!
文章から文章なりに面白くしよう!とかなり意気込み、熱浮かされた一時のテンションのアイディアを乗せたりと色々盛り込みまくったらこんなに文字数に……
面白かったかどうかは、分かりませんが、やりたい事は全部注ぎ込みました。
書いててとても大変でしたが楽しかったです!
内容にちょろっと触れるなら、まあ、アレです。
鈍感とデリカシーゼロ男が入れ替わったってロクでもない事しか起きませんよね
ではまた次回( ´ ▽ ` )ノ