本編再開!
てなわけで、どうぞ(^^)
遭い縁奇縁
「はぁー、今日もいい天気だなぁー」
青空の下、 ホームズはそんな事を呟きながら、宿屋ロランドの玄関掃除をしている。
ミラが来てから早いもので、3週間が過ぎた。ミラもリハビリの成果が着実に出て来ており、大分歩ける様になっている。
そして、ホームズも………
「やっと、怪我治ったよ……」
怪我が完治していた。3週間の労働により、治療費は全て払い終えたのだ。
では、何故働いているかというと、答えは簡単、宿泊費分の金がないのだ。そのため。労働により、払っているのだ。
爽やかな日差しの下、ホームズは掃き掃除に勤め、そして、ヨルはホームズの肩で欠伸をする。彼らは地味にル・ロンドの名物となっているようで、近所の人にもよく声を掛けられている。
「ホームズ」
突然の呼び声にホームズは掃き掃除の手を止め、その声の主に尋ねる。
「どうしたんです?ディラック先生?」
「こんな物が届いた」
声を潜めて見せた物はジュードの手配書だった。ホームズは、思わず顔をしかめる。
「君、知っていたな?」
「ええ、まあ、知ってましたよ」
「何故黙ってた?」
静かに、しかし、怒りを押し殺しているようだった。
「言えるわけないでしょう?あなたの息子、指名手配犯になってますよ、なんて」
何処かで言ったようなセリフをディラックにも言う。ディラックは少し、ため息を吐く。
「少し、動揺していたようだ。すまない」
「別に構いませんよ」
ホームズの言葉にディラックは、少し落ち着いたように、もう一度尋ねる。
「君は、私の事を、この手配書で知ったな」
そう言って、ディラックはジュード・『マティス』の部分を指差す。
「そうですよ」
「ジュード達は何をしたんだ?文面を読む限りは、何かを盗んだようだが……」
ホームズはディラックの言葉にホームズは肩を竦める。
「そんな事をおれに聞かれたって困りますよ」
ホームズの言葉に、ディラックは固まる。それもそうだ、自分は一体何をしているのだろうと。いくら、彼がエレンピオス人とは言え、彼自身はエレンピオスの手掛かりを探している、ただの青年だ。そんな、彼が国の話など知っている訳がない。
「……それもそうだな。すまなかった、仕事中に。」
「イイですよ、別に。」
ディラックはその言葉を聞くと、治療院に戻って行った。
その後ろ姿が完全に治療院に消えるとヨルは少し、小馬鹿にした様に鼻を鳴らす。
「何が『そんな事をおれに聞かれたって困りますよ』だ。少しも困っていないだろう、お前」
ホームズはミラからクルスニクの槍の事を聞いている。これで、何も分からない訳がない。どう考えてもそれに関する何か以外考えられない。
そんな、ヨルの思惑を知ってか知らずか、ホームズはヨルの言葉に流し目で、ニヤリと、底冷えのする様な笑みを浮かべる。
「困るさ。だって、嘘をつかなきゃいけなくなるだろう?俺は出来るだけ、嘘はつきたく無いんだ」
そんな、ホームズを見るとヨルは呆れた様に言う。
「いい性格してるよ、お前」
「そりゃどうも……と玄関掃除はこれぐらいかな。後は中の掃除だね」
ヨルの皮肉をどうでも良さそうに返事をすると、ホームズは宿屋ロランドに入って行った。
◇◇◇◇
ホームズはロビーを拭き掃除をしていた。3週間も経っているので、大分上手くなっている。
すっかり、床も机も綺麗になり満足そうに一息付く。
すると、ガラガラと玄関の扉が開く。
「いらっしゃいま……せ?」
レイアと入って来たお客を見て、ホームズは固まる。
「どうしたの?ホームズ?固まっちゃって」
顔面蒼白になって、ホームズは口をパクバクさせて何とか言葉を絞り出す。
「………えーっと」
「ああ、今日一日泊まることになった、ローエンとエリーゼだよ」
「いや、知ってる」
片や得意先の老執事、片や自分を殺しかけた女の子。知らない訳がない。
「しばらく、ジュード達と一緒に旅をしていたんだって」
「お久しぶりですね、ホームズさん」
「え、ええ、お久しぶりです」
『何でお前らがここにいるんだー!』
ローエンの穏やかな挨拶に対して、やたら喧しく叫ぶ、紫のヌイグルミ。
「本当に……何でいる……ですか?」
そして、控え目にエリーゼが聞く。
ホームズは頬を引きつらせながら質問に応える。
「何で、君達は人の話を聞かないし、自分のやった事を忘れてるんだい?」
ジュードの父親に話を聞きに行こうとして、殺されかけ、治療費の借金を背負ったのだ。
その借金をやっと返し終わったところなのだ。
「話が見えないのですが……」
「わたしは、何となく分かったけど……」
不思議そうな顔をしたローエンと察して苦笑いしているレイア。
恐らく、ホームズはいつもの如く誤魔化すので、レイアは先回りして説明する事にした。ヨルの事、ホームズが何故旅をするのか、等々。
「なるほど、ヨルさんにそんな秘密が……いや、お陰で謎が一つ解けましたよ」
「謎?」
「稀に、ホームズさんが1人で喋っている所を見かけることがあったので、一体、誰と喋っているのだろう?と思っていたのですよ」
ローエンの言葉にヨルは馬鹿にする様にホームズに言う。
「どうやら、変質者の仲間入りを果たさずに済んだようだな」
「お陰様でね」
額に青筋を浮かべながらホームズはヨルに返す。
「あの……ヨルは、今は危なく無い……ですか?」
エリーゼの言葉にホームズは苦笑いを浮かべる。
「ああ、まあ、直接的にマナを搾り取るなんて事は出来ないよ」
「どうして……それを…先に言ってくれなかったんですか?」
「言う前に君達が高らかに、討伐宣言して襲ってきたからに決まってるだろう」
ホームズは苛立ちを押し殺す様にエリーゼに即答する。
「で、お前らは何しに来たんだ?」
ヨルは2人に聞く。その言葉を聞いて、ローエンは苦笑いをする。
「……猫が喋るというのは少し、慣れませんね」
ローエンのその言葉にヨルは半眼になる。
「近くでヌイグルミがベラベラ喋ってる癖に何を言ってやがる、ジジイ」
ホームズはヨルの最後の言葉にキッと睨み、アイアンクローを決める。
「すいません、躾がなっていなくて……」
ホームズは平謝りする。
「いえいえ、別にイイですよ」
ローエンは穏やかな笑みを浮かべている。ホームズとしては、得意先の執事にそんな口をきかれると冷や汗ものなのだ。
「ここに来た目的はですね、ミラさんのお見舞いに来たのですよ」
『でも、もう歩ける様になっててビックリしたー』
「もう、明日には出発なんだって。もっとゆっくりしてけばいいのにね」
レイアは少し、残念そうに言う。
瞬間、ホームズの時間が止まった。
「いつ出発だって?」
「明日」
「誰が?」
「ジュードとミラ」
ホームズは現実に戻るまで少し時間がかかった。
「何であの子はそういう大事な事を言わないんだぁーーー!」
現実に戻るとホームズは頭を抱えて、そう叫んだ。
「え、え、え?どうしたのホームズ?」
訳の分からないレイアはホームズに聞く。
ホームズは顔を挙げると困ったような顔をしている。
「おれもミラ達と一緒に旅に行く事になったんだよ!」
「聞いてないよ!わたし!」
ホームズの叫びに負けないぐらいの音量で、レイアは言う。
その言葉にホームズとヨルは顔を見合わせる。
「あれ?言ってなかったけ?」
「こいつの母親には言ってたな」
腕を組んで少し考える、ホームズ。
そして、爽やかな笑みを浮かべると、レイアに言う。
「そゆことだから!」
「誤魔化したね!」
「ごめんなさい!今回はガチで忘れてましたぁ、許して下さい!」
そう言うと頭を抱えて次の小言に耐える準備をする。
しかし、いつまでたっても次の小言は来なかった。
ホームズは恐る恐る顔を挙げるとそこには、何かを考えるレイアがいた。
「レイア?」
ホームズが怪訝そうに聞いたが、レイアは気付かず、あさっての方向を見て、ヨシ、と気合いを入れると。そのまま自分の部屋に戻って行ってしまった。
「どうしたんだろう?」
ホームズは不思議そうにレイアの歩いて行った方角を見ている。
そんなホームズにヨルは欠伸を一つすると、口を開いた。
「さてな。まあ、ろくな事は考えていないだろうな」
「だろうね」
ホームズはため息を一つ吐く。そして、ローエン達の方を振り返る。
「じゃあ、部屋に案内しますね」
「お願いします」
ローエンはそう返事をし、エリーゼはそれに続いてお辞儀をした。
そして、部屋まで案内し終えると、マティス治療院までダッシュで向かった。
◇◇◇◇
「ミ───ラ────!!」
地の底から響き渡る様な声で、ホームズは最後の調整を終えたミラに詰め寄った。
「ホームズ?どうした?」
「『どうした?』じゃない!!どうして、明日出発だっておれに教えてくれないの?」
ミラはその言葉にハッとすると、まっすぐにホームズをみて言う。
「すまない。忘れていた」
そのとても謝っているとは思えない余りの堂々とした様子に、ホームズは、こめかみをひくつかせる。
まあ、見えないだけで、ミラは誠心誠意、謝っているのだが……
「そう言う事はちゃんと言ってね。おれだって出発の用意をしなくちゃいけないし……」
「ちょっと待って……」
ホームズの言葉を手で遮ってジュードは尋ねる。
「何で、ホームズの旅支度に僕らの出発日が関係するの?」
「え……いや、何言ってるんだい?おれたちも一緒に行くからに決まってるだろう」
ホームズは首を傾げながらジュードに言う。
「僕、何も聞いてないよ!!」
そんなホームズにジュードは声を荒げる。
「……ミラ」
「何でも私のせいにするな。お前の責任でもあるだろう。ジュードにちゃんと伝えてない、お前が悪い」
「その言葉、そっくりそのまま返してあげるよ」
睨み合う2人。ジュードはため息を一つ吐く。
「………ホームズもミラもこれからは、ちゃんと報告してね」
「はい……」
「分かった」
ジュードは彼らの口論をそう止めた。
ホームズはその言葉を合図に元来た道を歩いて行く。
「じゃあ、おれは帰るけど、く・れ・ぐ・れ・も、おれを置いて出発、なんて事はしないでね。分かった?」
そう、ジュード達に念を押して。
UAが、6000を超えました(ヒャッホー!)
これも、皆さんのおかげですm(_ _)m
本当にありがとうございます。
それでは、また、二十五話で( ´ ▽ ` )ノ