1人と1匹   作:takoyaki

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番外編そのよんです



もう何年も滑っていないスキーを久々に滑りました。
へとへとになりました。


でも以外に滑れて楽しかったです。



てなわけで、どうぞ




乙女達の疑問

「……ヨルってさ、謎よね」

「………どうしたの、突然?」

ローズは、クリームコロッケパフェを食べながら、そんな事をポツリと呟いた。

対するレイアは、不思議そうに首を傾げる。

「自分の事を化け物って呼んだり、するけど、じゃあ具体的に何かって聞かれると困るじゃない?」

「言われてみれば、そうです」

エリーゼもケーキにフォークを入れながら頷く。

「そこの所は、ホームズも話題をそらすから多分教えてくれないでしょうね」

『なら、せめて、弱点ぐらい知りたいよねー』

「確かに……」

ティポとエリーゼは、こくりと頷く。

日頃失礼な口を利きかれ、ジャリやヌイグルミなど馬鹿にされまくっているエリーゼとしては、是非とも押さえておきたい部分だ。

「確か、強い光属性の精霊術が喰えないっていってたから、それが弱点じゃないの?」

側で話を聞いていた、ジュードは、口を挟む。

すると、ローズ、レイア、エリーゼは、露骨に嫌そうな顔をする。

「……わかってないなぁ、ジュードは」

「野暮を絵で描いたような回答ね」

「そういう話をしてるんじゃない……です」

『ジュードー!バホー!』

女性陣の余りの言い草にジュードは、こめかみを引きつらせると、自分の食事に戻る。

「僕、なんか、変な事を言ったかな?」

「いやぁ、正しかったと思うぜ」

「間違ってはいませんよ」

アルヴィンとローエンは、そう言って、フォローをする。

「……そう言えば、話題の中心のヨルは?」

「……確か、ミラと一緒じゃないか?ほら、この前ホームズとミラが、賭け事してただろ?あの時の、負け分をホームズが払っているはずだ」

「あぁ、あのイカサマがばれた奴」

ジュードは、ため息を吐く。

ホームズが調子に乗ってとんでも無く無茶なイカサマをやったのだが、側で見ていたローズが気付き、ミラに忠告したのだ。

ローズの姉がよくイカサマ勝負をやっていたので、それを見破るのは、慣れっこなのだ。

「……ホームズ、大丈夫かな?」

「財布が軽くなっているに、100ガルド」

「財布が空になっているに、300ガルド」

ジュードの心配にアルヴィンとローエンは、金を賭けていた。

「二人とも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホームズの弱点なら、それこそたくさん出てくるのにね」

レイアは、紅茶を一口飲みながらそう呟く。

「コーヒーが飲めない、料理が下手、あと船酔いをする……」

「頭は悪くないんだけど……アレね、頭のいい馬鹿って奴ね」

「小さい子の泣き顔が苦手……です」

スラスラと出てくるホームズの弱点。

というか、欠点。

本人がここにいたら、一時間程口を利かないレベルだ。

「……じゃあ、今出たホームズの弱点をヨルに当てはめて考えてみようか」

レイアの提案にローズとエリーゼは、頷く。

「じゃあ、ヨルってコーヒー飲めるのかな?」

「……さぁ?」

ローズは、首を傾げる。

「飲んでるところをまず、見たことないわ」

「じ、じゃあ、ヨルって料理が出来るんでしょうか?」

エリーゼの提案にローズとレイアは、ヨルがフライパンを尻尾で器用に掴み、何かを炒めている姿を想像する。

「……ないわ」

「ないね」

レイアとローズは、こくりと頷く。

「じゃあ、これが弱点……」

エリーゼは、そう言ってだんだんと尻すぼみになって行く。

「……には、ならないですね……」

「……正直だから、何?って話よ」

ヨルが料理が出来ないなど、考えてみれば当たり前だ。

どうと言うことはない。

「じゃあ、船酔い!」

「そう言えばどうなのかしら?」

「しないですよ、ヨルは。

船酔いで苦しんでるホームズの耳元でご飯食べてた……です」

ヨルのタチの悪さに改めて血の気が引くレイアとローズ。

「ホームズも大変だね」

「初めてホームズに同情したわ」

ローズとレイアは、うんうんと頷いている。

そして、注文したスコーンを口に運ぶ。

「後は……頭がいいかどうか、か……」

ローズは、スコーンをモグモグと頬張りながら、思案する。

「長く生きてるだけあって、知識は豊富だよ」

レイアは、クリームコロッケパフェを突きながらそう返す。

「それで、馬鹿かどうかって話だけど……」

ローズは、うーんと唸る。

言動を見る限り決して、馬鹿とは言えない。

「むしろ、ホームズへの突っ込み役だと思う……です」

「あぁ。まぁ、あいつらは両方が突っ込みで、両方がボケみたいなもんだからなぁ……」

そう言って、ローズは、更にスコーンを口に運ぶ。

「でも、馬鹿な的外れな事は、余り言わないわね」

「余りどころか、全く言わないよ」

レイアの言葉に三人は、この弱点案を破棄すると事にした。

「後、ホームズの苦手な事って何だけっけ?」

レイアは、最後の生クリームを食べながら、首を傾げる。

するとエリーゼがおずおずと手を挙げる。

「小さい子のめそめそだって言ってました」

それを聞いた瞬間、レイアとローズは、食べ物を思わずポロっと落としてしまった。

「うっそ……そうなの?」

「エリーゼ、それホームズが言ってたの?」

「そうですよ。というか、さっきも言った筈……です」

驚く二人にエリーゼは、呆れながらそう返す。

「……ホームズにそんな紳士的な一面があったなんて……」

「エリーゼ、何か騙されてない?」

「……二人がホームズの事をどう思ってるかよく分かりました」

真剣な顔をする二人にエリーゼは、半眼で呆れる。

まあ、二人は、顔面を蹴られたり、腹を蹴られたりとロクな目にあっていない。

仕方ないと言えば仕方ないのだが、そうは言っても昔馴染みと、友人の散々な言い草にエリーゼは、僅かばかりとは言え同情を禁じ得ない。

「ま、まぁ、ホームズの事は放っておいて、それがヨルに当てはまるかって問題だけど……」

「ないね」

「ない……です」

『あり得ないー』

「そうよね……」

満場一致だった。

まあ、分かりきった事ではある。

「どっちかっていうと、小さい子が泣いてたら鬱陶しそうに顔を顰めるタイプよ」

因みにホームズもヨルとは違う意味で凄く嫌そうな顔をするのだが、これ以上ホームズの可哀想な評価を引き出さない為にもエリーゼは、黙っておく事にした。

そんな時間が過ぎるとローズは、伸びをする。

「にしても、ホームズにしろヨルにしろ、秘密が多いよね」

「まあ、ホームズはそれがデフォみたいなもんだし……」

「ヨルは……」

エリーゼは、そう言って言葉を止める。

そうヨルは、別にはぐらかすことはにない。

「そう言えば、余りこういう事を聞いてない気がする……」

半ばヨルは、謎なのが当たり前になっているのだ。

「……ねぇ、もうさ、直接聞いてみない?」

レイアの提案にローズとエリーゼは、顔を引きつらせる。

その余りに思い切った手段に二人は、呆れている。

「いや、それは……」

「というか、教えてくれないでしょ……」

そんな事を話していると、ガチャという音がして扉が開かれる。

「帰ったぞ」

その声に振り向くと、そこにはホクホクとした顔のミラとげんなりとした顔で財布の中身を確認するホームズがいた。

「……おかえり」

そんなホームズを見てジュードは、同情の目で声を掛ける。

「……ただいま」

ホームズは、財布から顔を上げると泣きそうな顔で返事をする。

「それでホームズ、財布の中身は?」

アルヴィンの質問にホームズは、遠い目をする。

「料理と言う料理を奢らされて、全部なくなった……」

「そうか……大変だったな……」

「アルヴィン……」

アルヴィンのその真剣な物言いにホームズは、涙を滲ませる。

しんみりとした物言いに今までにない真剣さをアルヴィンから感じる。

 

 

 

 

「つーわけで、ジイさん。賭けは、俺の勝ちだからな」

「ええ。悔しいですが、仕方ないですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

その会話にホームズは、涙を引っ込め半眼で賭け金の配分をしている二人を無言で睨む。

「ホームズ……お疲れ」

哀れなホームズにローズが声をかける。

「ローズ……」

「まあ、自業自得だから、当然と言えば当然よね」

「………」

ローズのその余りに冷たい物言いにホームズの頬を涙が一筋流れる。

イカサマをしてまで勝とうとしていたのだから当然と言えば当然である。

「ちょっとお茶目なイタズラじゃないか……」

「それを10回連続でやって金を巻き上げてれば、それは犯罪のレベルよ」

ホームズのうじうじとした言い訳にローズは、絶対零度の視線を向ける。

「……決めた。おれ、今後デートをする機会があっても決して奢らない」

「決意の方向が明後日すぎるんだけど……」

レイアは、ため息を吐く。

それから、少し経って首を傾げる。

「………デート?」

「今後その機会があったらね」

ホームズは、どうでも良さそうに言う。

(ミラと食事に行ったんだよね……これ、考えようによっちゃあ……)

レイアは、頭をフル回転させる。

「ある意味、デートだよね」

「デートっつーか、デッドだったけどな」

「誰が上手い事言えって言ったんだい、ヨル」

ホームズは、そう言ってどかっと椅子に座る。

その様子を見ていて、レイアは納得する。

「……ローズ」

「その目を止めなさい、レイア」

ローズは、レイアにピシャリと言う。

レイアは、思わず肩を竦める。

その時、ヨルが目に入る。

「あぁ!ヨル」

突然の大声にヨルは面倒くさそうに顔を顰める。

「……やかましいな……さっきから居ただろ」

「聞きたい事があったんだよ!」

「……なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨルの苦手な事ってなに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリーゼとローズは、飲んでいる紅茶を吹き出した。

それは全てホームズに降りかかる。

「……君達」

ホームズは、ハンカチを出して拭く。

しかし、二人はホームズの文句を聞いている場合ではない。

 

 

 

 

(あの……馬鹿!)

 

 

 

 

 

 

ストレートに、そして馬鹿正直に尋ねるレイアにローズは、額を押さえる。

 

 

 

 

「なんだ、突然藪から棒に……」

レイアの質問に心底嫌そうな顔をするヨル。

「さっきまで、ヨルに弱点はないかって話をしてたんだよ」

「ほう」

「とりあえず、試しにホームズの弱点とか欠点とかを当てはめてみたんだけど、ヨルには当てはまらなかったんだよ」

「なるほど……」

「すっげぇ……本人の前でそんなこと言うんだ」

呆れるのを通り越して、半ば感心するホームズ。

「そこで、ヨルに直接聞こうと思ったわけなんだよ」

「そこがおかしい」

ヨルは、我慢の限界だった。

黙ってレイアの言い分を聞いていたのだが、ついに我慢出来なくなった。

「お前、頭おかしいんじゃないか」

「いいから、教えてよ」

「断る。何で自ら進んで自分の弱点を披露しなけれゃならんのだ」

「いいじゃん別に………て、やっぱりあるんだね、弱点」

「前にも言ったろう、強い光属性の精霊術だ。アレは喰えないんだよ」

「そうじゃなくて、なんかこう……ホームズみたいに、コーヒーが飲めないとか、これが怖いとか、なんかあるでしょ」

「ない」

「嘘だ!絶対あるよ」

「どっから、その根拠が出て来るんだ!」

「勘」

「じゃあ、ハズレだな」

「そんなことないでしょ、ホームズなんか知らない?」

「えー……確か、この前ガイアス饅頭が怖いとか言ってなかったかい?」

「……あぁ、言ったなそう言えば」

「……次に怖いのは、熱いお茶とか言うんじゃないよね?」

「……」

「図星!?」

「くそ!まさか、お前がこの話を知ってるとは……」

「ヨル!それどういう意味!?」

「言葉通りだ」

「カチンと来た……でも、誤魔化すってことは、やっぱりあるよね」

「ないと言ったらない」

「嘘つき!」

「やかましい!」

「絶対教えてもらうから!」

「あぁ、もうよるな」

「教えてよ!減るもんじゃないし!」

「やだっつてんだろ!」

「いいでしょ!誰にも言わないから!ほら、わたしたちも友達になった事だし、秘密の共有ぐらい……」

「いつお前と友達になったんだよ!」

「つい最近。わたしのこと名前で呼ぶようになったじゃん」

「くっそ……こんな事になるんなら呼ぶんじゃなかった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ローズ」

「なに?エリーゼ」

うんざりしているヨルとぐいぐい来るレイアの会話を眺めていたエリーゼは、ローズに話しかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨルの苦手なモノ、少し分かった気がする……です」

「同感」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ヨルってば!」

「えぇい、やかましい!いい加減黙れ!レイア」

 







ひたすら、女の子達に会話をさせていました。
そして、ローズの食事量が半端じゃありません。
だって、パフェ食ってスコーン食ってますからね



そしてそんなローズの影に隠れてホームズが地味に可哀想な目にあっています。
まあ、自業自得ですよね


今回の話の解説を少し
ヨルの苦手なものは、本編の方でちょろっと出てます。


勿論、ヨルはレイアに教えるつもりはありません。



そして、ホームズは、だいたい分かっています。



こんな所で、ではまた次回( ´ ▽ ` )ノ


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