1人と1匹   作:takoyaki

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番外編そのななですかね?
ゴメンなさい!!本編ではないんです!!
タイトルの通り怪談です!


夏の夜にどうぞ!

※少し修正しました。


怪談

「『私綺麗?』とマスクを付けた女性が突然訪ねるんだよ。

唐突にそんな事を聞かれた、少年は戸惑ったよ、勿論。

まぁ、突然で驚いたとはいえ、綺麗だったので、少年は、『うん』と頷いたそうだ。

すると、その女は、嬉しそうに頷いた後マスクに手をかけ、外したらしい。

 

 

 

 

 

 

『これでも?』

 

 

 

 

 

そう言って現れた口は、マスクの下まで避けていたんだとさ」

ふっと息を吐く音と共に蝋燭の火が消え、そしてからんと何かが倒れる音鳴り響く。

「ぎゃあーーー!!」

「「うわぁ!!」」

突然響き渡った声にレイアとエリーゼは、肩を抱き合って叫んでいた。

明かりをつけジュードは、呆れたように笑いながらアルヴィンを見る。

「中々、演出家だねアルヴィン」

「当然」

アルヴィンは、にっと笑って白い歯を見せる。

「まぁ、怖がってくれればそれはそれで楽しいけどね」

ジュードもクスリと面白そうに笑う。

ようやく落ち着いたレイアは、キッとホームズを睨む。

「ホームズ!!」

「仕方ないだろう!!怖いんだもの!!というか、音を鳴らしたアルヴィンにも文句言ってよ!!」

早鐘を打つ心臓を押さえながらホームズは、喚く。

その言葉に二人は椅子の上に座っているアルヴィンを睨む。

そんな二人の視線にアルヴィンは、肩をすくめてみせる。

「盛り上がる演出を中々、盛り上がる演出だろ?」

そう、只今、ジュード、アルヴィン、レイア、エリーゼ、ホームズの面々は、怪談の真っ最中なのだ。

とある宿に泊まった時、何かしようとレイアの提案で始まった。

ここまでは、良かった。ここまでは。

失敗だったのは、ホームズとアルヴィンを引っ張り込んだことだ。

怪談のオチを邪魔するなんて無粋なことこそしないものの、怪談のオチを数倍にも上げるような演出を先程からアルヴィンが仕掛けてくるのだ。

そして、それにホームズが大声を上げてビビる。

このコンボのおかげで、想像以上のスリルを味わう羽目になり、エリーゼとレイアは、ホームズとアルヴィンを誘った事を後悔していた。

因みにジュードは、怪談に対してはとことんドライなので、大して気にしていない。

そんなジュードとアルヴィンを見るとレイアは、不満そうに口を尖らせる。

「というか、ホームズもなんか話してよ」

「……怖い話嫌いなんだよ」

『でも後話してないのホームズだけだよー!!このビビり』

「……………エリーゼ」

「ティポです、言ったのは」

エリーゼは、ティポの口を押さえながらそっぽを向く。

「というか、怖い話嫌いなの?」

レイアの言葉にホームズは、フッと笑うと遠い目をする。

「母さんに散々聞かされたからねぇ………」

ホームズは、心底嫌そうにそう返しながら、首をひねって考える。

「あれとか、どう?夜中の12時になると一段増える階段とか」

「それは怪談話じゃなくて、階段話じゃん」

ジュードは、やれやれとため息を吐く。

「他って言うと、夜中に一人でに演奏されるピアノとか、笑う理科室の骸骨とか、左から三番目のトイレにいる女の霊とか、そんな感じとか?」

「全部学校の怪談だね……というか、オチから喋っちゃだめじゃん」

色々と上げる微妙な話にレイアは、頬を引きつらせる。

ホームズは、そう言いながら考える。

「特に何も思いつかないし、ここらで終わりにしないかい?」

やる気のないホームズの発言に一同は、こめかみをピクリと動かす。

そして、ティポは、真っ直ぐホームズに噛み付いた。

「いだだだだだだだ!!」

「くだらない事言ってないで話した方がいいよ、ホームズ」

「分かった!話す!話すから、離して!!」

ティポは、すっとホームズから離れる。

とは言え、あまり思い出せない。

沈黙がしばらく続く。

「あ。あったあった」

ホームズは、蝋燭を持ち、明かりを消す。

ボゥっと蝋燭の明かりでぼんやりと面々を映し出す。

雰囲気は出来上がった。

「これは、本当にあった話だよ」

「ベタだね、その出だし。まぁ、いいよ続けて」

レイアの言葉を無視してホームズは、続ける。

「これは、知り合いの女の人から聞いたんだけど」

「はい、ダウト」

「それどういう意味だい?アルヴィン」

ホームズは、こめかみをピクリと動かし、睨みつける。

『いいから話せー!!』

ティポのその言葉に言い返そうとするが直ぐに思い直すともう一度話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

これは、その女性、仮にRさんとしておくか。

Rさんが、まだ学生をやっていた頃の話だ。

年の頃は大体十三歳。

ちょうど、学校が一つ上に上がった頃だね。

Rさんは、学校に入ると四人グループの一員になった。

ほら、女子って何個かグループごとに分かれるだろう?

えーっと、ほら、連れション仲間というか、ランチ仲間というか、なんかそんなの作るだろう?

それだよ。

Rさんは、そんな数あるグループの中の四人の仲良しグループに入ったんだ。

まぁでも、しかしというか、やっぱりというか、そのグループの中でも合う合わないがあってね、一人の女の子が若干ハブられていた。

その女の子は、まぁ、目立たない女の子を言えばそれが丸々当てはまるような子だったんだよ。

その女の子がグループの輪から外れるとその子の悪口大会に花が咲く。

ところが、その女の子が戻ってくるといつものように仲良しの会話が続く。

帰るときもそのグループは、一緒だったんだけど、その女の子の家が一番学校に近くてね、いつも一番最初に別れ道をみんなと逆を選んでいたんだって。

その女の子と別れた瞬間、いつものように悪口大会が繰り広げられていたんだってさ。

そんな日々が続いたとある夕暮れの帰り道。

西の空は、怪しい色をした夕焼けが、空を染め上げ、まるでその後の出来事を暗示しているようだった。

その日もRさんの所属するとグループは、いつもの面子で帰っていた。

そしていつものように地味な女の子が真っ先に分かれ、その子が見えなくなった瞬間、またいつものようにその子の悪口に花が咲く。

そんな中、Rさんは、ふと、財布を落とした事に気が付いた。

そのお金で帰りにお菓子を買おうと考えていたRさんは、グループの人等に先に帰っていてと伝えると急いで来た道を引き返した。

Rさんが財布を見つけて戻る途中、目当てのお菓子屋までたどり着いた。

帰っていいと言ったのに待っていてくれたのか、Rさんは、胸にグッとくるものを感じて駆け足で近づく。

するとそこには、地味な女の子を含めたいつものグループがいた。

三人は、とても楽しそうに話していた。

一体何の話をしているんだろう?

不思議に思って出来るだけ、彼女達にバレないよう、姿を隠しながら近づき、聞き耳を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人は、Rさんの悪口で盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「ふっ」

ホームズは、蝋燭を吹き消した。

「『ふっ』じゃねーよ!!誰がんな話しろっつった!!」

アルヴィンは、演出そっちのけで突っ込みを入れた。

そんなアルヴィンを他所にホームズは、澄まし顔だ。

「結局、怖いのは、幽霊でも化け物でもなく女子なんだよ」

「お前の価値観に興味はねーんだよ!」

「うるさいなぁ、怖いんだってこの話。見たまえ、普段元気なレイアの静かな事」

レイアは、斜め下をうつむいて頭に黒い影を作っている。

エリーゼも若干静かになっていた。

心当たりがないでもないようだ。

「いや、だからって……」

ジュードは、頬を引きつらせる。

「因みにネタばらししとくとRさんって、おれの母さんだよ」

「マジで実話かよ!!」

アルヴィンは、ハァとため息を一つ。

何だか肩落としている面子を見てホームズは、流石に決まり悪くなったようだ。

「じゃあ、もう一個話してあげるよ」

ホームズは、そう言うと再び蝋燭に火をつける。

「君達は、並行世界って知ってるかい?」

「何それ?」

ジュードの言葉にホームズは、指を二本出す。

「もう一つの世界と言えばいいかな?

文字通り並行している世界の事。分かりやすく言うなら、そうだなぁ………」

ホームズは、そう言ってエリーゼに目を向ける。

「エリーゼ、手を上げておくれ」

突然の事にエリーゼは、驚いて右手を上げる。

「そうエリーゼは、今、右手を挙げたね。

でも、左手を挙げた可能性もあるだろう?

そう言うのを並行世界って思ってもらって結構だよ」

ホームズは、そう言ってニヤリと笑う。

「そんな世界があると思うと怖くない?」

『別にー』

ティポは、ふよふよと浮かびながらそう答えた。

「どこも怖くないよ、ホームズ。なんだったらさっきの話の方が倍くらい怖かったよ」

レイアとティポの言葉をホームズは、取り合わない。

蝋燭の火はまだ消えていない。

「エリーゼの挙げる手の選択肢は、二つ………右手か、左手か、それのどちらにも本物や偽物はない」

「まあね」

ジュードは、頷く。

「もしあったら?」

「え?」

ジュードは、戸惑うようにホームズを見る。

ホームズは、顔の表情を消してそう言葉を続けた。

「エリーゼの手を上げた手が右手の世界が本物だっていうなら、問題はない。

ただ、エリーゼの手を上げた手が左手の世界の方が本物だった場合は、おれ達が偽物になる」

信じて、過ごしてきた日々偽物と呼ばれたら、その可能性は、ホームズの声音に込められ静かに響き渡る。

「別に本物偽物に意味はないだろ。なんせ結局何かデメリットがあるわけないから、いいんじゃね?」

アルヴィンの言葉にホームズは、先ほどと同じ、言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もし、あったら、偽物の世界はどうなるんだろうね?」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

ホームズは、パンと手を打って話を終わらせた。

「どうだい?今回の話は?」

「三十点」

アルヴィンの辛口の評価にホームズは、思わずたじろぐ。

「え?なんかダメだったかい?」

「なんか、全体的につまらない」

点数を伝えたアルヴィンにジュードが発言する。

その言葉は、ホームズの胸を刺す。

「なんか、話が難しいよ」

「そっかぁ、レイアには、難しいよねぇ」

「暗に馬鹿にしてる」

「(暗に)馬鹿にしてるつもりなんてないよ」

「その微妙な空白が気になるんだけど…………というか、蝋燭消したら?」

レイアのジト目をホームズは、流し、エリーゼを見る。

「エリーゼは、分かったろう?」

「えぇーっと………」

エリーゼは、小首を傾げながら、確認するように口を開く。

ホームズは、その間に蝋燭に手を伸ばす。今この部屋にある明かりは、蝋燭の灯火だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、ホームズの目が、碧い(・・)バージョンの世界もあるって事ですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その通り」

ホームズは、黒い瞳(・・・)を輝かせながら頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

《分子世界破壊報告書》

 

深度140

偏差0.34

 

 

時歪の因子は、ホームズ・ヴォルマーノ。

時は一年前のジルニトラ戦前。

瞳が黒いというのが正史世界との違いのようだ。

瞳の色が黒い為、イジメに耐えたホームズ・ヴォルマーノは、本来の世界で会うべきもの(・・・・・・)に会っていない。

尚、今回もカナンの道標は、確認出来ず。

今後も捜索していきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなところか」

メッシュの入った青年は、報告書を書き上げ、うーんと伸びをする。

やはり、いくらこの世界とは別とはいえ、顔見知りに武器を突き立てるのは、あまり気分のいいものではない。

「疲れたな……………」

青年は、部屋の明かりを消し、布団に潜り込んだ。

部屋には、ようやく夜の帳降ろされた。

 

 

 

 

 





会うべきものとは?まあ、言うまでもありませんよね。
いなきゃおかしい奴がここにはいませんから。
瞳の色の仕掛けは、文章だから出来る方法ですね。
ゾクっとしていただけたら幸いです。

因みに私が聞いた怖い話は、何やら物音するから、振り返ったらイノシシがいた(突進準備完了)というのもあります。





さて、では次回こそ本編で( ´ ▽ ` )ノ

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