あのサンサンと輝く太陽………恨めしい。
てなわけで、どうぞ
「ジュード、このコの弱点は?」
「水属性だよ」
「一応聞くけど……」
イノシシの様な厳つい魔物、ブルータルをホームズは見る。
「精霊術は使うかい?」
「使う様に見える?」
ホームズは、ヨルの方を見る。
「何だその役立たずを見る様な目は?俺の技は、精霊術を食うだけじゃないぞ」
「あの黒い球だせる?」
「………無理だな」
ヨルは悔しそうに言う。
今空には、お天道様が輝いている。ヨルの得意な暗い場所ではない。精霊術が、食えない以上マナを補給する事も出来ない。
「今回は、正真正銘の役立たずだねぇ」
ホームズはため息を一つ吐く。
すると、それを合図に魔物が襲いかかってきた。
「ホームズ!」
ジュードが、ホームズに叫ぶ。
魔物は、ホームズの目前に迫ろうとしていた。
しかし、彼に辿り着く事は無かった。
無言で、一旦後ろを向きそこから、ポンチョを広げる様に振り向く。そして、その勢いを利用し、回し踵蹴りを魔物の顔面に決める。
魔物は、蹴飛ばされた方向に仰け反る。
どうやら、耐えきれなかった様だ。
しかし、すぐに持ち直すと、ホームズを睨みつける。
「……なんだかエラく怒ってるよ」
「顔が命だったんだろ」
「
「んな事言ってる場合じゃねーだろ!前見ろ、前!」
魔物を指でさしながらヨルに顔を向けて、聞いているホームズに、アルヴィンの突っ込みが冴える。
アルヴィンのいう通り、魔物はホームズ目掛けて一直線に走ってきた。
「悲壮霊活!クイックネス!」
ホームズの身体が身軽になる。
「レイア!?」
突然の事に驚いたホームズは、思わず
しかし、気を取られているのもそれまでだ。
ホームズは、目前に迫った魔物に目線を戻すと、ポンチョを翻し、紙一重で右に避ける。
「サンキュー。助かったよ、レイア」
「どういたしまして」
一言レイアに礼を言うとホームズは、輝き始めた、リリアルオーブを見る。
「やっぱりおたくも持ってたのか……」
アルヴィンは納得する様にホームズを見ている。
そういうアルヴィンのリリアルオーブも輝き始めた。
それを確認すると、ホームズはニヤリと笑い、アルヴィンに向かって駆け出した。
「頼むよ」
「人使いの荒いこった」
ホームズからの要求にアルヴィンは、ため息を一つ吐くとホームズを大剣で、高々と打ち上げた。
「「飛天衝星駆!!」」
そして、天高くからの飛び蹴りを又してもブルータルの顔面にきめた。
今回の攻撃は、さっきと比べ、かなり聞いているようだ。頭をフラフラとしている。
「まさか、ここまで綺麗に
「……ぶっつけ本番とか、達が悪いにも程があんだろ」
呑気な事を言っているホームズに、アルヴィンはため息を吐いている。
なにせ、2人は実質会ってまだ二日経った言っていいのかどうかさえ、微妙なのだ。
息が合わない事の方が珍しくない。
「ちっちっち。甘いゼ、アルヴィン。常に本番と言う心意気でいかなくちゃ」
「まあ、一理あるな」
ホームズの指を振りながらの動作に若干イラッとしながらもアルヴィンは、同意する。
「それに」
「それに?」
ホームズは、なおも言葉を続ける。
「おれの辞書にリハーサルの文字はないんだ」
「今すぐ買い換えて来い、そんな不良品」
ホームズのドヤ顔にアルヴィンは間髪入れずに突っ込む。
「……オイ、ジジイ!何か策はあるのか!」
2人の会話に構わずヨルはローエンに怒鳴り散らす。
エリーゼとティポは、その言い草に少しむっとした顔をしたが、ローエンは気にする事なく、指示をだす。
「ミラさんと私で水属性の精霊術を食らわします。
他の皆さんは、あの右手に見える大きな岩に誘導して下さい。
エリーゼさんとレイアさんは、誘導しつつ、状況見ながら、皆さんを回復してあげて下さい」
「了解」
ローエンの指示にそれぞれがそれぞれの返事をすると、ブルータルに向かって言った。
まず、攻撃を仕掛けたのはアルヴィンだ。銃口を魔物に合わせると、引き金を引く。
「ヴァリアブルトリガー!」
ただの弾丸より遥かに威力のある物を魔物は、モロに食らい少し後ろに下がる。そして、そこに、
「瞬迅脚!」
追撃をかけるようにホームズの飛び蹴りが、炸裂する。
ホームズは、蹴りを当てた箇所から、バク転をし、地面に降りる。そして、足を踏み替え、
「輪舞旋風!」
回し蹴りを放つ。連続の攻撃で、身体のバランスの崩れていた、ブルータルは、今の回し蹴りで、転がった。
その転がった先はローエンの指示した、岩の所だった。
しかし、精霊術の詠唱はまだ終わっていない。おまけにまた直ぐに移動しそうだ。
ホームズは体制を立て直している最中なので、間に合わない。
「転泡!」
そんな状況を救ったのはジュードだ。ジュードの下段蹴りが、ブルータルの足を捉える。
それに足を取られたブルータルは、そのまま再び転けた。
それが合図だった。
ミラとローエンの詠唱が完成した。
「スプラッシュ!」
「ブルースフィア!」
水瓶の水と水泡が、ブルータルに全て降り注ぐ。
「ブモォォォォオ!?」
頭から苦手な水をかぶったブルータルは、そのまま一目散に逃げて行った。
「あが………」
なんの役にも立たなかったイバルは、空いた口がふさがらない。
去りゆくブルータルの後ろ姿を見送ると、ホームズはドカッと地べたに座った。
「ふう、やれやれ」
安心しているホームズとは対象的に、アルヴィンとローエンの顔は険しい。
「
「そのはずですが、まさか……!」
心当たりがある様で、ローエンは空を見上げる。
「四大様が、お姿を消した所為で霊勢がほとんど変化しなくなっているんだ」
イバルが今の状況を説明する。
「それじゃあ、ファイザバード沼野を抜けてイル・ファンに行くなんて……」
「不可能だよ。アレを抜けるなんて、無理とか無茶とか、それどころの騒ぎじゃないゼ」
ジュードの呟く様な言葉にホームズは、立ち上がりながら渋い顔をする。昔、通った事のある身としては、そう言わざるをえない。
今でも、なんで生きているのか、よくわからないレベルなのだ。
完全に手詰まりになってしまった。
皆がそれぞれ、渋い表情をしている中、イバルは、バカにした様に言葉を発する。
「ファイザバード沼野を超える?くくく……ハーハッハッハ、これは笑える。こうなっては、ワイバーンでもない限り、イル・ファンには、行けないな」
「………ワイバーン?」
「………ヨル?」
ワイバーンという単語にヨルは反応する。
「昔、俺を攻撃する時に人間共が乗っていた」
さらりと、出てくる人間との争いの歴史にジュード達はなんとも言えない顔をする。
ホームズは、慣れっこなのでなんの反応もしない。
「乗り物なのかい?」
「まあ、そんなところだ。ところで、オイ、クソ巫女」
「ク……クソ!」
今にも殴りかかりそうなイバルに、ヨルは冷めた目で一瞥をくれると、質問をする。
「ワイバーンは、今どこにいる」
その言葉を聞いた瞬間イバルは、さっきまでとは、打って変わって大威張りに胸をそらした。
「俺にだけ、使えるワイバーンが一頭だけいる。
ミラ様と2人だけなら、イル・ファンに行けるぞ!」
「阿呆のデートプランなんざどうでもいい。他の方法を教えろ」
得意満面のイバルの言葉を切り捨てると、ヨルはさらに聞く。
しかし、その言葉は、巫女という仕事を誇りに思っている、イバルの琴線に触れたようだ。顔を真っ赤にして、ぶるぶると震えながら、ヨルに向かって口を開く
「貴様侮辱するつもりか!」
「むしろ、褒めるところを教えて欲しい物だ」
そんなイバルをヨルは、鼻を鳴らして小馬鹿にする。
「その辺にしときなよ、ヨル」
いい加減、そろそろ殴ってきそうなのでヨルを止める。
「お前はそうは思わないのか、ホームズ?」
「……おれにふらないでおくれよ」
ホームズは、答えづらい問いに、頬を引きつらせる。
「まあ、でもさ、イバルだっけ?他に方法はないのかい?」
ホームズの言葉にイバルは、答えなかった。
しかし、逸らした目が、何よりも雄弁に語っていた。
そして、それを見逃すミラではない。
「あるのだな。話せ」
ミラに問い詰められて、イバルは、目どころか顔を逸らす。
そして、悔しそうに答える。
「シャン・ドゥの魔物を操る種族が、数頭管理していると聞きます!」
「シャン……ドゥ?」
ホームズは、目を丸くする。
そんなホームズに気づかずアルヴィンは口を開く。
「次の行き先が決まったな」
「ええ、このままシャン・ドゥに向かいましょう」
アルヴィンの言葉にローエンは賛同する。
「助かった、イバル。………イバル?」
ミラの感謝の言葉にもイバルは答えない。
ミラの巫女は、イバル一人。
しかし、今、その役目を果たすのは、自分ではなく、ジュード達なのだ。
イバルは、その悔しさを押し殺す様に震えている。
「……行こっか」
「そうだね……」
レイアとジュードは、なんとなく察し、他のメンバーもそれに習う様に歩きだした。
「ところで、ホームズ」
「なんだい?」
歩き始めると、レイアは最後尾にいたホームズに尋ねる。
「シャン・ドゥに何かあるの?さっき、明らかに反応が違ったよね」
言った瞬間レイアは後悔した。
ホームズのピンと立った人差し指がその証拠だ。
「内緒。男は秘密があった方が恰好いいからね」
久しぶりに聞いたそのセリフに、レイアは大きなため息を吐く。
無駄な事をした後の徒労感に勝てるものがあるだろうか?いや、ない。
レイアは、今まさにそれを感じていた。
「いつか、話してくれるよね」
「……気が向いたらね」
ホームズはウィンクを一つすると、そう返した。
レイアは、またため息を大きく一つ吐くと前の方に戻って行った。
「……逃げ切れないもんだね、過去からは」
ホームズは、進行方向を向きながら呟く。
「起きた事は、記憶であれ、傷跡であれ、記録であれ、歴史であれ、残っていくものだ。それが、過ぎ去った時間、過去ってものだ」
「……つまり?」
「起きた事は変えられない。そんな物との接し方なんて、背負うか向き合うか、ぐらいしかないんだよ」
「忘れるって選択肢は?」
「過去を忘れても、過去に起こった事はなかった事にはならない。そんな事、お前が1番知ってるだろ」
「まあね」
ホームズは肩を竦めながら答える。
ヨルは気だるそうにそう答える。
「分かってるさ、百も承知だよ。なんとなく、いい機会だから君の意見を聞いてみたかったんだよ」
ホームズは、ふふふと笑って空を見上げた。ヨルは後ろにいる、イバルを見つめる。
どうやら、手紙を読んでいる様だ。
(さてさて、あの阿呆はどうなるかねぇ)
イバルを眺めていたヨルは心の中で呟いた。
『過去から、逃げ切るなんて不可能だよ』
『それが、巨大であればある程ね』
『まあ、だから、前を向いていくしかないんだよ』
ヨルは、ホームズ母の言葉を頭の中に思い浮かべながら、ホームズの横顏を見据えた。
ゼスティリア………… PV第三弾だ───────!!
もう、早く出てくれないかなぁ………
そんな事をずっと思ってます。
では、また三十話で( ´ ▽ ` )ノ