1人と1匹   作:takoyaki

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三話です。

流石に緊張しなくなりました。

でも、三人称に慣れません……


窮鼠猫をフルボッコ!!

「さてさて、どうするか」

相手は4人。マクスウェルに、雇われたと言っているから、護衛あるいは最悪の場合、傭兵なんて事もあるかもしれない男が一人。戦う事に気後れしてない、少女が一人。何らかの武術の構えをする少年が一人。

対するこちらは、商人一人と昔の武勇伝だけがいかつい猫が一匹。

過去に悪行の限りを尽くした化物と言っても、封印のせいで基本的なスペックは猫と変わらない。

ホームズも別に弱いつもりはないが、相手が強すぎる。マクスウェルに、どうやって勝てと言うのだ。

………やっぱ逃げよう。

考えをまとめるのに1分とかからなかった。

 

先程置いたカバンを取りに行こう とした瞬間、

弾丸が雨の様にホームズに、降り注いだ。

「うお!!」

何とか、左手の円盤状の盾で防ぎながら、弾丸の雨の中から脱出した。

「なるほど。本当に、優等生の言ったとおりだったな」

「ま、僕らに戦う理由があっても、彼等にはないからね。あの人は『死にたくない』と言っていた。だったら、その手段は戦う以外にもあるって考えるほうが自然でしょっ!!」

アルヴィンに応えながら、ジュードはホームズになぐりかかってきた。盾で受け、ホームズは後ろに下がって間合いを取る。

「何が、猫も喋ればだ。棒は棒でも金棒じゃねーか」

しかし、ジュードは直ぐに間合いを詰めると三散華を打ち込んできた。対するホームズも蹴りで拳をいなす。

「過ぎた事をぐちぐち言っても仕方ないだろう。死にたくなかったら気合い入れろ、ホームズ」

「言われなくても……。ほら、お返しだよ」

ホームズは構え直すと連続で蹴りを放った。

「食らいな、三散華ァ!」

ジュードは三発の蹴りを受け止めると、攻撃を仕掛けた。

「まだまだあるよ」

そう言ってホームズはそれを向かい撃った。

「三散華・追連!!」

先程と同じように、三発蹴ってそれから、軸足を入れ替えて、四発目を……

「バインド!」

ミラに捕まってしまい蹴れなかった。

「くそ、共鳴か!」

「ジュード!大丈夫か!」

「何とかね……エリーゼ!!お願い!」

『……ウネウネ』

詠唱はもう後半に来ていた。ジュードは自分を囮にして、その時間稼ぎをしていたのだ。対するホームズは動けない。

「おい、ヨル!」

「言われなくても……」

ホームズの呼びかけにそう、一言応えると肩からぴょんと跳んだ。

『「ネガティブゲイト」』

エリーゼとティポの詠唱がはもり、精霊術が発動した。

誰もが、決まったと思った。

しかし、ミラだけは違った。脳裏によみがえるのは、あの時、ヨルを封じる戦い。

「まずい!!」

ミラは走った。しかし、間に合わない。

 

精霊術が発動したその時、ヨルの姿が変化した。

「うお!なんじゃありゃ!」

「……!!」

「なんか……」

『怖いよ〜』

「遅かったか…」

 

巨大な黒猫の生首に。そして、

 

「え?!」

「な?!」

「嘘…」

『でしょ〜?!』

「しまった」

 

 

精霊術を………食べた。

 

 

「ふぅ〜。ごちそうさま。おかげで、全開時の3%はだせそうだ」

ヨルは元の黒猫の姿に戻ると、ホームズの肩に乗り顔を洗いながら言った。

「ごちそうさま…て。一体…なにをしたの⁇」

ジュードは誰もが思う当然の疑問を聞いた。

「見ての通り、精霊術を食べたんだよ」

ヨルは当然の様に応えた。

『嘘つけ〜。そんな話聞いた事ないぞ〜!』

ティポは盛んに叫んだ。

「奴は精霊術を食べ、そして、それを自分のエネルギーにする」

ミラは静かに説明する。

「おいおい、そんなこと本当に可能なのかよ、優等生」

アルヴィンはジュードに聞いた。

「普通は、いや、普通でも出来るかどうか…。というより僕はそんな話聞いたこともないよ!それにどうやってるかも分からない」

自分の周囲の反応を馬鹿にする様にヨルは言った。

「ククク、何いっているんだ、お前ら。オレはバケモノだぞ。お前ら人間共の理屈常識が通じるわけないだろ」

口をあけ、白い牙を見せながら言う。

「化け物ってのはそういうもんだ」

そう言ってジュード達を睨む目は、まごうことなき、化け物の目だった。

これはチャンスだ。ジュード達は突然のことで固まっている。そう考えると、逃げようとした。しかし、

「アサルトダンス!!」

ジュード達が固まっているなか、ミラは、一気に手数の多いわざでホームズに切りかかって来た。

ホームズは突然の事でよけきれず、何発かくらってしまった。

「ぐ、痛ぇ」

切れてしまった肩を抑え呟いた。

そんな、ホームズに剣を向けミラは言った。

「だが、私は、いや、私達はそんな化物を倒して見せる。覚悟しろ!!」

その瞬間、皆の瞳から戸惑いの色が消えた。逆に覚悟の色が現れた。

そんな中ホームズは疑問そうに聞いた。

「化物って俺も?」

「当然だ」

ミラはホームズに切りかかって行った。

「あんな化物を騙し、平気で扱っているやつを化物と呼ばずになんと呼ぶ!」

先程の傷が響いているらしく、動きのキレが悪い。

「ホームズと呼んでおくれよ。仲良くしようゼ」

しかしニヤリと不敵に笑い、盾で受けた剣を押し返すと、回し蹴りを叩き込んだ

「回るゼ!輪敦旋風!」

「ぐっ」

ミラは思いっきり吹っ飛んだ。

「ミラ?!」

ジュードはすぐにレストアでミラを回復させた。

距離を取ると、ヨルが話かけてきた。

「おい、ホームズ」

「なんだい?演説を無視されたことに文句があるの?」

アホ、と一言返すとヨルは続けた。

「あいつ……今、四大精霊がいないんじゃないのか?」

「どうして?マクスウェルはそいつらを従えてるんもんじゃないの?」

「オレが知るか。ただ、四大精霊達を使えばいいようなところでやつはまったく使っていない」

「手加減してるんじゃないの?」

「化物共に手加減しないだろ」

「ああ、そいや俺も化物なんだっけ……涙が出そうだ」

「女に嫌われるなんていつもの事だろう」

「うるさいな…ぐすん、分かってるよ。勝てるかもしれないと、断言出来ないにしても、チャンスだってことだろう…ひっく」

「そうだが……、泣くな気持ち悪い」

「泣いてないもん!ただ、あくびしただけたし。昨日寝不足だったからさ。目がうるんでいるとしたらきっとそのせいだよ。ああ、眠いな……ぐすん」

 

「だったら、永遠にお寝んねさせてやるよ!ジュード!」

「分かった!アルヴィン!」

 

その掛け声と共にアルヴィンは大剣でジュードを高々と打ち上げた。そして、

 

「「飛天翔星駆!!」」

 

天高くから飛び蹴りをかました。

 

「うっ、オェ、ゲッゲ」

タイミング合わせて後ろに下がり衝撃を半減したのだが、

「それで、この威力かよ。大したもんだよ、共鳴術技。朝飯全部でちゃたよ」

ホームズはふらふらと立ち上がる。そこへ、

 

「合わせろよ〜姫様」

 

アルヴィンとエリーゼがたたみかける。

「「ピコ破斬!!」」

 

でかいビコピコハンマーが、アルヴィンの大剣に刺さり、それで、ホームズをタコ殴りにした。

最初の一発はかわせたが、後は全部食らった。ヨルも一発もらってしまい、吹っ飛んだ。

ホームズはどうにかこうにか立っているという感じだ。

そんなホームズにアルヴィンは剣を構える。そして、

 

「とどめだ、瞬迅剣!」

アルヴィンはホームズに向かって大剣を向け一直線に突き刺しに来た。

「ホームズ!」

ヨルも、先程の一発が効いている為、叫ぶのが精一杯だ。いや、正直叫ぶのもきつい。けれども、ホームズはなんの反応もせずに、ただつ立っている。

 

そうこうしてるうちにアルヴィンが近づいてくる、

ヨルはもう一度叫んだ。

「しっかりしろ!ホームズ!」

けれども、やはり、反応は無い。

 

もう、大剣は目前だった。

 

 

「おい、いい加減にしろホームズ!お前ここで死んだら、お前の母親にどんな説教くらうと思ってんだ!」

 

 

次の瞬間、ホームズはふらふらとしていた足をは踏ん張り、大剣をいなし、そして右外側に移動した。

流れるように移動すると、最後は右手でアルヴィンの顔を掴み、

 

 

 

思いっきり地面に叩きつけた。

 

「想像したくないな、そんな恐ろしい事」

 

ホームズはそう呟いて伸びているアルヴィンを見た。

すると、ヨルがやってきた。

「危なかったな」

「まあね。危うく母さんに叱られるところだった」

それよりも、と続ける。

「君、回復したの?」

「さっき、手に入れたマナでな」

ヨルはそう言ってホームズの肩に跳び乗ろうした。

しかし……

 

 

「なら、私からもくれてやろう……『フレアボム』!」

ヨルは空中でミラの魔技を食らって吹っ飛んだ。

「なるほど。詠唱なしの魔技なら食う準備をされない。ジュードの言った通りだ」

「ヨル!!」

ゴロゴロと地面を転がっているヨルを見てホームズが駆け寄った。

「人、いや、猫の心配をしている場合ではあるまい」

言われてホームズはふりかえってエリーゼ達を見た。

 

「降り注げ」『元気のモト』

 

「あの詠唱、少し変だけどまさか……」

 

『「ピクシーサークル」』

エリーゼが杖を振り上げた。

すると、後ろでアルヴィンに暖かな光が円陣のなかに降り注いだ。すると、アルヴィンは目を覚まし、立ち上がった。

「お姫様に起こしてもらえるとは光栄だね〜」

ウィンクしながらそう言った

「ア……アルヴィン!!」

『そんなこと言ってるからやられちゃうんだ〜!』

エリーゼが少し照れながらそういうと、ティポが引き継ぐように言った。

 

「 嘘だろ…あの子、回復術も使えるのかい?」

しかし、驚いている場合ではなかった。

「魔神拳!」

ジュードが魔神拳を放って来た。

「ゲッ、マジ?!」

ホームズは先程のダメージが残っている為、もろに食らってしまい、また吹っ飛んでしまった。まあ、その拍子に、木陰にヨルを連れて隠れられたので結果オーライである。

「くそ、一体何回人を吹っ飛ばせば気が済むんだ、あいつらは……」

どうしようとホームズは思った。ヨルの精霊術を食った所を見たばかりの時のあの心の折れかけた彼等になら、どうにかなった。

しかし、今は違うミラの言葉で皆そこから立ち直り怒涛の勢いで攻撃してきた。

おかげで、こちらはホームズもヨルも満身創痍。

元々優勢だったとは言いづらのにさらに悪化した感じだ。

つまり一言でいうなら

 

 

 

「絶対絶命、というやつだね。どうしたもんか……」

 

 

 

 

 

 

 

 




今やってる鎧武……序盤は序盤で面白いと思うんだけどな……
個人的には、2話、4話、5話が好き。


勿論今やってる、重い話も好き。


流石、虚淵さん!

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