1人と1匹   作:takoyaki

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三十話です。



早いものですね………もう三十話。


時の流れを感じた所で、どうぞ


一期一会じゃ終わらない

「ここが、シャン・ドゥ?」

ジュードは、物珍しそうに街を眺めている。

「はい。ア・ジュールは古くから部族間の戦乱が耐えなかった為、この様な場所に街を作ったそうです」

ローエンは、丁寧に説明する。

ミラはその説明を聞きあたりを眺める。

「人間が、生き生きしているな。祭りでもあるのか?」

「さあ?気になるなら聞いてみれば?」

ホームズは、ミラの質問にそう返す。

そんなホームズをからかう様にアルヴィンは、口を開く

「随分とそっけない返事だな。そんなんじゃ、女の子にモテないぜ」

「祭りがあるんじゃないかな」

「ここまで来るといっそ清々しいね……」

ホームズの対応の違いにレイアは、呆れている。

「まあでも、ロクな情報をくれないところが、ホームズらしいね」

精霊の化石の件をふと思い出し、ジュードは、ポロッとこぼす。

ホームズは、見事に心をえぐられ暗い顏をしている。

「……後で覚えてなよ」

「お前こそ、忘れてるんじゃないだろうな、ホームズ」

突然、ジュード達ではない腹の底から、響く様な声がホームズの後ろから聞こえる。

ホームズは、さっきまで顔にあった黒い影と血の気が、一気に引く。

まるで、錆びた歯車の様な音が聞こえてきそうな程ゆっくりとホームズは、顏を後ろに向ける。

そして、予想通りの顏を確認する。

「お、お久しぶりです。マーロウさん……」

「オウ!久しぶりだ……な!」

ホームズの挨拶に返しながら、ホームズの頭にゲンコツを落とす。

「〜〜〜〜!」

ホームズは、声にならない声をあげながらゴロゴロと地面を転がる。

ヨルは避難した様で地面に降り立っている。

そんなヨルにレイアは、身を屈めて、尋ねる。

「だれ?」

「こいつが、世話になった人間だ」

そう言われて改めて、レイアは、改めてその人物を見る。

年齢は、50代前後だろうか、体ががっしりとしていて判別しずらい。浅黒い肌と後ろに束ねた、白髪が印象的だ。

黒い瞳をホームズに一旦向けると、ジュード達の方を向く。口に加えていたキセルを大きく吸って、煙を吐き出す。

「と、驚かせて悪かったな。こうでもしねぇと、このガキなんの挨拶もせずに出て行きそうなんでな」

そう言うとホームズの首根っこを掴む。

「つーわけだ、こいつを少し借りてくぜ。おい、ヨル。お前も来い」

「どういう訳なんだよ…」

ヨルは、そう、もらすと後をついて行った。

ジュード達は、マーロウと呼ばれた男がホームズを連れ去るのを呆然としながら見ていた。

 

「嵐の様な人だね」

 

ジュードは、皆の感想を代表して、言った。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「ほれ、好きなところに座れ」

「……そりゃどうも」

ホームズは、先程殴られた頭をなでながら、適当に椅子を見つけて座る。

マーロウは、顔に似合わない綺麗なティーカップを二つ用意する。

「で、なんのようです?おれだって、暇じゃないんです。用件をさっさと言って下さい」

マーロウは、ティーカップにお茶を注ぐ手を止め、怪訝そうな顏を浮かべる。

「……かわいげのねぇガキだな、もう少し愛想良くしろ」

「お小遣いちょうだい、おじいちゃん」

酒瓶が、ホームズの頭をかすめる。

「次は当てるぞ」

半端ない凄みにホームズは、ホールドアップをする。

マーロウは、キセルの灰を落とす。

「いくつか、言いたい事と聞きたい事がある」

ホームズは、目を鋭くする。

「どうも、ここ最近アルクノアの動きが激しい」

「……相変わらず、何処でそんな情報仕入れてるんです?」

ホームズは、やれやれという風に言う。

普通アルクノアの存在自体をあまり知らない。

まあ、ホームズの母がバラしたのだが、

「企業秘密だ」

「いつから、情報屋になったんだ」

ヨルが突っ込む。この男は、ただのまとめ役だ。

「まあ、冗談はともかく。それが、どうも気になってな。警戒してたのよ。で……」

マーロウは、ホームズにキセルを向ける。

「そんな矢先にお前らが来た。無関係と言うには、少し無理があるだろ」

「なぜ来たか答えろと?」

ホームズは、口を開く。

「察しがいいじゃねーか。言っとくが、隠し事するんじゃねーぞ」

そう言うと酒瓶を手に取る。

「ワイバーンを借りに来たんですよ」

次の瞬間、再び酒瓶が飛んで来た。

ホームズは、首を振ってかわす。

そのせいでヨルに当たりそうになったが、尻尾でそらす。

「隠し事するなっつたよな」

「嘘は言ってないですよ」

「本当の事もな。そういうところ、母親にそっくりだ」

マーロウは、キセルを口にくわえる。

ホームズは、顎に手を当てると話始めた。

イル・ファンの事、クルスニクの槍の事、霊勢が変化しなくなった為、ファイザバード沼野を越えられなくなった事、そして、ミラの事、報酬の事。

「なるほど、だから、ワイバーンが必要な訳か……しかし、まあ、驚いたな。あの金髪のねーちゃんが、マクスウェルだったとは」

ふぅ、とマーロウは口から煙を吐き出す。

「とりあえず、合点がいった。アルクノアが活発になったのはそういう訳か……」

「多分」

ホームズは、頷いて、紅茶を飲んむ。

アルクノアにとって、マクスウェルは、憎むべき敵であり、倒す事が目的だ。

「しっかし、ラシュガルの王様がそんな物を作ってたとは……お前もまた、メンドくさい事に首を突っ込んだな……」

「いつもの事です」

ホームズは、肩を竦めて返す。

そして、今度はホームズの方から質問をする。

「話は、それで全部です?」

マーロウは、眉を少し上げる。

「ん、まあ、後は報告みたいなものだ。とりあえず、頼まれた事は何とかこなしている。心配するな」

「さすが」

ホームズは、素直に褒める。

そんなホームズにマーロウは、少し渋い顏をする。

「会ってかなくていいのか?」

「……この街には、一応立ち入り禁止の身ですよ、おれは」

ホームズは、少し寂しそうに言う。

「それに、向こうも、おれも10年も経ってれば分かりませんよ」

ホームズの言葉を黙って聞いていたマーロウは、煙を一つ吐くと口を開いた。

「まあ、お前に任せるがね……ワイバーンの件だが、俺の部族のものじゃない。キタル族のものだ。

だから、交渉ならそっちとしな」

「りょーかいです」

ホームズは、そういうと席を立ち、ヨルを肩に乗せて扉の所まで歩いて行った。

「ホームズ」

出ようとすると、マーロウから、声がかかる。

「また来い」

「立ち入り禁止は?」

「誰もお前の事なんて分からんさ。年寄りの茶飲み相手にでもなってくれ」

ホームズは、微笑む。

「考えて起きます」

そう言って、ホームズはマーロウの部屋から出て行った。

「向こうだって覚えていないか……はてさて、どうだろうな」

マーロウは、すっかり冷えた紅茶を飲んでつぶやいた。

 

◇◇◇◇

 

 

「アルクノアが活発化ねぇ……」

「お前も他人事じゃないだろ」

そう、ホームズは不可抗力とはいえ、いくつかアルクノアの拠点を潰している。

「前にも言っただろう?エレンピオスの話を聞きに行くと彼らが、君に驚いて襲って来るんだもの。死にたくないから、抵抗するしかないだろう?」

ホームズとしては、正当防衛を主張するそうだ。

しかし、潰す事は正当防衛とは、言えない。過剰防衛だ。

そんな事を話していると、向こうから、ジュード達が歩いてくるのが見えた。

向こうも、ホームズ達を発見した様だ。

ホームズ目掛けて、真っ直ぐにティポが飛んで来た。

『どこ言ってたのさ〜。こっちはとても大変だったんだぞ!ジュード君達がいたから良かったようなものを!』

余りの剣幕にホームズは、少したじろぐ。

「何があったんだい、ジュード?」

「……ホームズが、連れていかれた後ね、岩が僕らに落ちて来たんだ」

ホームズの脳裏に蘇るのは、先程のマーロウの言葉だ。

『ここ最近アルクノアの動きが激しい』

 

「穏やかじゃないね」

 

ホームズは、少し顏を険しくして言う。

ヨルはヨルで何かを探す様に、当たりを見回している。

「おい、あのチャラ男はどうした?」

「チャラ男って………アルヴィンの事?」

相変わらずな人の呼び名に、ジュードは、引きつり笑いをしている。

「アルヴィンなら、ホームズ達が連れてかれて、すぐに何処か行ったよ」

「……ほう」

ヨルは、何か考えがある様に、目を細める。

「ま、アルヴィンはともかく、君たちは、何をしているんだい?」

ホームズは、ヨルの様子を少し気にしながら、ジュードに尋ねる。

「この先にワイバーンがいるらしいからね、見に行こうと思って」

その話を聞いて、ホームズは思い出した様に言う。

「そう言えば、マーロウさんが言っていたけど、ワイバーンは、キタル族の持ち物だってさ」

「なるほど、何処かでキタル族を見つけたら交渉してみましょう」

ローエンは、顎の髭を触りながら言う。

出来れば、族長、いや、それに相当する地位の人間に話を通したいところだ。

「ここで、話をしていても仕方ないし……とりあえず、現物だけでも見に行こうよ」

「それもそうだね」

レイアの提案に賛成して、ホームズが、歩き出そうとしたその時、

 

 

「み〜つ〜け〜た〜!」

 

長い黒い髪を後ろに束ねた女に、ホームズは飛び蹴りを食らった。

 

「〜〜〜っ!何?」

ホームズは、自分に飛び蹴りをかました女を見る。

黒い長い髪に、黒い瞳。分かりづらいが、少しつり上がっている。

羽織の様なデザインの物を羽織っており、袴を動きやすい様に足の方で縛っている。

「『また来るよ』なんて言っといて、よくもまあ、これだけ待たせたもんね。一体どのツラ下げて来たの?」

「知り合い?」

レイアがホームズにボソボソと聞く。

「知らない」

ホームズは、蹴られた腹をなでながら、答える。

そして、飛び蹴り女の方に向き直る。

「あの〜、誰かと勘違いしていない。例えば、元彼とか」

「は?」

ホームズの言葉にギロリと目で返す。

その迫力にビビりながらも、ホームズは、何とか続ける。

「いや、だっておれ達初対面だもん。絶対勘違いしてるって。

その、なんだ、君が過去に何があったかは知らないけどさ、とりあえず、見ず知らずの他人に蹴りをかました事は、謝ろうか」

ホームズとしては、出来るだけ穏やかに言うが、言葉を言えばいう程彼女の顏は、赤くなっていく。

「いや、そんなに顏を真っ赤にして、恥ずかしがらなくても……」

いいよ、と言うホームズのセリフを女は鉄拳で遮る。

「怒りで顔が赤くなる事もあるのよ」

地の底から、響き渡る様な声で言う。

そして、ビシッとホームズを指差す。

「茶髪!アホ毛!たれ目!さらに喋る猫!そして……」

女はホームズの碧い目に指先を向ける。

「見間違う事なき、綺麗な碧い目(。。。。。。)!どう考えても貴方でしょう、ホームズ」

 

 

ホームズは、目を丸くしてその女をまじまじと見る。

 

 

そして、震える指を彼女に向けながら、信じられないという風に言う。

 

「ローズ……?」

 

「久しぶり、ホームズ」

ローズは、しかめっ面をしながら、手をあげる。

 

 

また、一波乱ありそうだ

 

 

ジュード達は心の中でため息を吐いた。

 

 

 

 






遂に、ついについに、オリジナルヒロインの登場です。


ここまで、本当に長かった。


ではまた、三十一話で( ´ ▽ ` )ノ

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