1人と1匹   作:takoyaki

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三十三話です。




メンドくさい子の実力や如何に!!


てなわけで、どうぞ


いつかの敵は、今日も敵

「ちゃっちゃっと片付けるわ」

ローズは、ニヤリと笑い、二刀を構える。

「魔人剣・双牙!」

二つの刀から、斬撃が二つ発生し、ランドーゴブリンを捉える。

ローズの攻撃を食らったランドーゴブリンは、動きを

止める。

ローズは、一気に間合いを詰めると、右の刀で薙ぎ払い、魔物に一旦背を向ける。そして、振り返りざまに左のもう一刀で、斬りつける。

「おお、おお。おたくの幼馴染みエラく張り切ってるじゃないの」

アルヴィンは感心する様にホームズに言う。

「そうだねぇ。……まあ、彼女だけじゃないけど……」

そう言って他の連中に目を向けるホームズ。

皆各々の技をぶつけている。

特に、

「『ネガティブゲート!』」

エリーゼとティポのコンビの精霊術は、圧巻だ。

「……やっば連れて来て正解だよね」

ホームズは、ボソッと言う。

「そりゃあ、なあ。我らのお姫様を甘く見てもらっちゃあ困るぜ」

アルヴィンのセリフにホームズは、肩を竦めて答える。

アルヴィンは、それを見てホームズに言う。

「さてと、俺らも行きますか。仕事ってのは、信用が第一だからな」

アルヴィンが、いたずらっぽい笑みを浮かべるとホームズも同じ様な笑みを浮かべる。

「……報酬分は働くのが、プロってもんだねぇ」

「そうゆうこと。話が早くて助かるよ」

そう言うと、ホームズとアルヴィンは駆け出した。

「ジュード!この子弱点は?」

「火だよ。ついでに言うなら、精霊術も使うよ」

「なるほどね」

ホームズは、走りながら呟く。

ランドーゴブリンは、今まさに精霊術を発動させようとしていた。

「ヨル、君の出番だよ」

「言われなくても……な」

一言そう言うと、ヨルは巨大な生首になり、精霊術を丸呑みした。

「倍にして返す!ヨル!」

「やかましい!命令するな!」

悪態を尽きながらもヨルは、黒い球を吐き出す。

それは、ホームズは、蹴り飛ばし黒い煙のような、影のようなものを靴に纏う。

そのまま勢いを殺さずに、ランドーゴブリンの顔面に回し蹴りを叩き込む。

「グゲェ!」

大きく吹き飛んだランドーゴブリンは、そのまま数頭を巻き込んで倒れる。

ふぅっと一息吐いたホームズの後ろから、もう一頭が近づいて来る。

「ヴァリアブルトリガー!」

アルヴィンは、その魔物を察知すると、ホームズに向かって弾丸を放った。

ホームズは、それを首をふってよける。ホームズに当たらなかった弾丸は、今にも飛びかかろうとした、ランドーゴブリンの顔面のど真ん中に当たる。

突然の死角からの攻撃にランドーゴブリンは、大きく後ろに吹き飛ぶ。

「……随分と危ない攻撃をするじゃないか、アルヴィン」

「よく言うぜ。余裕綽々でかわしやがって」

「髪の先焦げたんだけど……」

ホームズは、耳の横の髪の毛を見る。いつもの茶髪が少し黒ずんでいる。

「まあ、無事だったんだから、いいだろ」

「まあね……」

ホームズは、ため息混じりに言うとジュードとミラを見る。

「後は頼んだよ、お二人さん」

ジュードとミラが共鳴(リンク)している。

「任せろ!行くぞジュード!」

「分かった」

みんなが一箇所に集めたランドーゴブリンの中で、 2人は背中合わせで構える。

 

 

2人を中心として、段々と温度が上がっていく。

 

 

「「炎穿陣!」」

 

 

そして、巨大な炎の円陣が、現れる。

炎が弱点のランドーゴブリン達は堪らずに倒れていった。

 

 

円陣が、消える頃立っている魔物は一匹もいなかった。

 

 

「お疲れ様」

ホームズは、微笑みながら2人に言う。

「いやあ、危なくなったら出て行こうかと思っていたが、そんな心配なかったな」

ユルゲンス達もやって来た。

ティポは、ふわふわとユルゲンスの前にやって来る。

『あったりまえだよー。えっへん』

ティポは、大威張りだ。

「ははは、すまない。君を見くびっていたようだ」

ユルゲンスのこの一言にティポは、不服そうだ。

『僕だけー?』

「ハハハ。誰が見たってそうだよなあ」

よせば良いのに余計なことを言うアルヴィン。

そんなアルヴィンにエリーゼは、ご立腹だ。

「むー。私の友達バカにしないでください」

「ごめんごめん」

アルヴィンは、ニヤニヤ笑いながら謝る。誠意と言うものが全く感じられない。

「だが、それだけ厳しい戦いなんだ」

一旦間を置くとさらに続ける。

「かつては、部族間の優劣を決めるために殺し合うまで戦っていた大会だ」

「え〜!?」

レイアが、驚きの声を上げる。

「今は大丈夫。現ア・ジュール王が、その制度を禁止したからね」

「ア・ジュール王いいひとー」

ティポが、見た事もないア・ジュール王を褒める。

「それじゃあ、本戦は明日だ。宿の手配をしたから、ゆっくり休んでくれ」

そう言われ、ジュード達一行は、宿を目指す。

「ミラ、ちょっと……」

ホームズは、列から外れてミラを小声で呼ぶ。

「何だ?」

「アルクノアが動いているらしい」

「アルクノアが?」

「うん、だから、気を付けておくれ」

ミラは、無言で頷く

 

◇◇◇◇

 

 

「ぶふぁ、いいお湯だった。そして、疲れた〜」

ホームズは、風呂から上がり、部屋に着くとベッドに倒れこんだ。

「ホームズ、大変だったね……」

ジュードは、同情した様に言う。

ローズには、出会い頭に蹴り飛ばされ、マーロウとやらには拳骨を落とされ、そして、最終的には、返り討ちに合う。

今日は災難としか言い様がない。

まあ、八割方自業自得なのだが……

「このまま寝れそう」

「ちょっと、まだ寝ないで」

ジュードの言葉に不服そうに目を開けるホームズ。

「なんでさ?」

「アルヴィンが、居ないんだ」

「別にいいだろう。ガキじゃあるまいし」

ホームズは、布団にしがみ付く。

「明日の打ち合わせとかもしないといけません。なので……」

「なので?」

ホームズは、ジュードの言葉を引き継いだローエンに聞く。

「探してくれると助かるのですが……」

「……やだなぁ。というか、迷っちゃうかもよ。おれ、ここ十年この街に来てないんだもの」

「そこのところは心配いらないでしょう。貴方は迷わずに私達と合流したのですから。記憶には残っていると思いますよ」

ローエンのもっともな言い分に、屁理屈を封じられたホームズは、ため息を一つ吐くとベッドから立ち上がった。

「行くよ、ヨル」

「雇われの身は辛いな」

馬鹿にする様に鼻で笑ってヨルは言う。

「うるさい」

髭を髭を引っ張るとホームズは、部屋を出て行った。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「ホームズ。ローズと買い出しに行って来て……て、ホームズどこ行ったの?」

ちょうど入れ違いで、レイアが入って来た。

「ホームズなら、アルヴィンを探しに行ったよ。ていうか、レイア、また、変な事考えてるでしょ」

「………」

「……目をそらさないの」

ジュードは、呆れている。

 

◇◇◇◇

 

 

「さてと、アルヴィンはどこかな。ヨル、なんか気配とかで探せない?」

「奴に霊力野(ゲート)があれば、出来なくもないが……」

アルヴィンには、恐らくないだろうと言うのがホームズの結論だ。

「地道に探すしかないか……」

一体何度吐いたか、分からないため息を吐くと歩き始めた。

すると、橋の上でキセルを吹かしている、マーロウを見つけた。

「マーロウさんじゃないですか、何してるんです?こんなところで?」

「見ての通りだ」

そう言って煙を吐く。

「お前らこそ、なにしにきた。リベンジか?」

「してもいいですけど、今回はその為にきたわけじゃないです」

ホームズの言葉にマーロウは、くくくっと面白そうに笑う。

「相変わらず、可愛げのねーガキだな」

「ガキじゃないって言ってるでしょう」

ホームズは、不機嫌そうだ。

一旦深呼吸すると、ホームズはマーロウに尋ねる。

「人を捜してるです。コートを来た大男で、髪の毛が、こんな感じになってる奴見ませんでした」

身振り手振りで、アルヴィンの髪型を再現するホームズ。

マーロウはキセルを咥えている。そして、

「見たぞ。そいつなら、さっきあの家に入って行ったぞ」

有力な情報をくれた。

「サンキュー。助かりました」

そう言ってホームズは、マーロウのキセルの指した方向に歩き出した。

途中まで、行くとくるりと振り返る。

「これで、ローズにおれの事を喋った分は、ちゃらにしてあげますよ」

「へいへい。わーったから、とっと行って来い」

手でシッシッとやるとマーロウは、再びキセルを咥えた。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「ここかな?」

ホームズは、恐る恐ると言う感じでノックをする。

「どちらさん?」

アルヴィンの声が聞こえる。

「……えーと、ホームズだけど」

「……ま、入れ」

少しの間が有ったが、アルヴィンが招き入れてくれた。

「失礼しまーす」

ホームズは、恐る恐る部屋に入る。

「あら、ユリウス君。お久しぶり」

ベッドで寝ている女性がホームズに話しかけてきた。

「いや、おれ、ホームズ……」

「待っててね、今ピーチパイを焼くから」

そのくせ、ベッドから起き上がる気配がない。

ホームズは、気付いた。

この女性が普通の状態では、ない事に。

「アルヴィン。この人は……」

「俺のお袋。今日はまだ安定してる方だ」

ホームズは、促させれて椅子に腰掛ける。

ヨルは、その女性を眺めている。

「治る見込みは……なさそうだな」

「さすが、ヨル。言いづらい事をはっきり言うねえ」

アルヴィンは、力無く笑う。

「もう、俺の顔も分かりゃしない」

アルヴィンのその言葉にホームズは、やっと口を開く。

「……原因は、やっぱりリーゼ・マクシアに閉じ込められた事かい?」

アルヴィンは、ホームズの言葉に少し笑みを浮かべる。

「やっぱ気付いてたか。……いつからだ?」

「1番最初に君と戦った時だよ。あの時、君が使っていたのは、エレンピオスにある武器だよね」

「正解」

「それと、今言っていた、ピーチパイ。あれは、エレンピオスじゃ、割とポピュラーな家庭のお菓子だ。そうだよね」

「正解」

「証拠と言うには不十分だけど、確信を得るには十分だよ」

ホームズは、そう告げる。その口調には、誇らし気なものなどなに一つない。

一歩間違えれば、自分の母親もこうなっていたのだ。

他人事ではない。

「さすが。ジュード君程じゃないけど、なかなかの名探偵っぷりだ」

アルヴィンは、からかう様に言う。

「ホームズの名前は伊達じゃないさ」

ホームズもいつもの様に軽口を返すが、いつもの覇気がない。

アルヴィンは、ポツリポツリと話し始める。

「俺達はジルニトラに乗っていた。そして、まあ、知ってるとは思うが、事故に巻き込まれ、リーゼ・マクシアに閉じ込められた」

ホームズとヨルは黙って聞いている。

「お袋は、帰りたいと願っていた。詳しい事は省くが、段々と心を病んで行って今はこのざまだ」

アルヴィンの話を聞いてホームズは、一つ尋ねる。

これは、絶対に尋ねなければならない事だ。

 

 

「エレンピオスへの帰り方、君は知ってるよね」

 

 

現在分かっているのは、ミラを殺す事だ。

「……まあな」

アルヴィンは、何の感情も出さずに言う。

ホームズは、そんなアルヴィンを真っ直ぐに見据える。

「おれは、君の事を重要な戦力だとおもってるし、仲間だと思っている。前はともかく、ね」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

笑いながら、言うアルヴィン。しかし、目は笑っていない。

どうやら、アルヴィンは次にホームズが、何を言いたいか、予想できてるようだ。

ホームズもその事は、察している。

「……」

「続きは?」

アルヴィンから、感じる威圧感は、いつもの比ではない。

恐らくこのセリフは、ホームズ自身にも覚悟の必要なセリフだ。

だからこそ、彼にも言わねばならない。

薄暗い部屋の中で、ホームズの目には強い覚悟の炎が宿る。

「君はおれの、いや、おれ達の敵だ。そのぐらいの覚悟を決める事だね」

その時ホームズの威圧感は、普段からは、想像も出来ないものだった。

しかし、アルヴィンは、涼しい顔をしている。

コートの懐に手を入れる。

銃を警戒し、身構えるホームズ。

「そう、身構えるなよ。ただ、届けものを渡すだけだ」

そう言って、手紙を一通だす。

その手紙をホームズに投げてよこす。

ホームズは、宛名を見ると。渋い顔をする。

ヨルも目を見開いている。

「こいつ……!」

「マジかい……」

そして、手紙を読む。顔が強張っていく。

アルヴィンは、少し笑い、ホームズに言う。

「お前も覚悟を決めといた方がいいんじゃないのか」

ホームズは、手紙を読み終えると丁寧に引き裂いてバラバラにする。

「……考えて置くよ」

そう言って、ホームズは立ち上がる。ドアのノブに手をかけ少し止まる。

「………と、そうだ。明日の打ち合わせをするから、宿に早く来ておくれ、アルヴィン」

さっきまでの調子とは、打って変わって軽い調子で言う。

「了解。俺もそろそろ出るから、家の前で待っていてくれ」

アルヴィンは、家というとき少し自嘲気味に笑っていた。

なにせ、ここは、本当の家ではないのだ。

ホームズは、それにはあえて気付かないフリをする。

「分かった。それと、今日の事はなかった事にするよ。まだ、君は行動を起こしていないし、それに………」

「それに?」

「それがお互いの為だろうからね」

そう言ってホームズとヨルはアルヴィンの家を後にした。

 

 

 

 

ホームズ達が部屋から出ると、アルヴィンは、荷物を纏め、振り返る。

 

「じゃあ、行って来るよ。母さん」

 

 

返事は、もちろん返ってこない。

 

 

 

アルヴィンは、家を後にした。







実力、よくわからないですね………



まあ、そのうち活躍するでしょう。



では、また、三十四話で( ´ ▽ ` )ノ

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