まだまだ、続くよ、思い出話。
てなわけで、どうぞ。
「え、それが、ホームズとの出会い?」
「うん」
ローズは、さも当然の様に頷く。
「わたし、そんな話聞いてないんだけど…………」
「聞かれなかったら、いわないわよ、あの馬鹿」
間髪入れずに当たり前の様に言う。
「あ、そう……」
目の色を褒められた話をする時ホームズは、とても嬉しそうに話していた。
だから、レイアは、もう少し甘酸っぱい話が聞けるものと考えていた。
その結果がこれだ。何だか、落胆通り越して疲れが出てきた。
とはいえ、ホームズの言葉だけを聞けばどう考えてもそれ以外考えようがない。
「まあ、ファーストコンタクトはそんな感じだったのよ………」
ローズ自身は、改めて思い出して引いている。
「ふむ、今と余り変わらない気がするが………」
「いや、今より大分険悪だよ」
ミラの言葉にレイアが否定する。
何せ、過去の二人は、明らかに両方が毛嫌いしている。
「というより、話盛ってない?ホームズの話し方、小さい頃からそんな話し方してたの?」
「えぇ。ホームズは、昔からずっとこんな感じよ」
レイアは考える。
今でも偶に、ホームズの言い回しにイラっと来る事があるのだ。
その言い回しを子供が使っている。
「仲良くできそうに……ない……です」
エリーゼがポツリと言う。
「しかし、ローズ、お前の言い分は、正しいが、賛成は出来ないな」
ミラは、ローズのホームズに言った言葉を否定する。
「まぁね、これを繰り返してれば争いが永遠に消えないもんね」
ローズは肩をすくめる。
「………それだけじゃなくてさ、気に食わない事があったら殴るっていう、思考回路をやめたら?」
レイアの言葉にローズは、気まずそうに目を逸らす。
『でもさあーそんなに仲悪かったのに、どうして仲よくなったのさ?』
ローズは、ぎくりと身体の動きを止める。
「まあ、そのうち言うから………」
ローズは、顔を赤くし出す。そう、ローズは、こっから先の話をしたくなかったのだ。
「何かそういうところ、ホームズそっくりだね」
「このこのはなしには、続きがあってね………」
ローズは再び話し始めた
◇◇◇◇
私はとても不機嫌だったわ。
良かれと思いやった事が全て否定されたんだもの。
そんな風にイライラしながら、歩いていたわ。
『へーい、カノジョ、どうしたんだい。随分とご機嫌斜めじゃないか』
誰かって?
私の姉さんよ。
『姉さん……仕事は?』
『今ちょうど休みなのだ』
『そうなんだ』
『そうなんだよ。そしたら、ローズちゃんがチンピラの如く肩をいからせ、ものを蹴り飛ばし、舌を打ち鳴らし、痰を吐きながら歩いていたから、気になって声をかけたのだよ』
『やってないよ、そんな事』
話を盛るにも程があるわ。
『まあ、でも、機嫌が悪いんでしょ?』
にかっと笑うと姉さんは、そう言ったわ。
『うん、結構』
隠してもしょうがないので正直に自分の気持ちを言うと姉さんは、満足そうに私の手を引いて喫茶店に向かった。
◇◇◇◇
『ふーん、つまり、あれでしょ、反省はしている後悔はしていないって奴だよね』
私の話を聞くと姉さんは、そう言ったわ。
『ま、まあ、そうなんだけど……』
何だか言い方に引っかかるの物を感じながら私は答えた。
『私の妹が暴力に目覚めてしまった!何と言う事だ!これは、早く誰かに報告を………』
『しなくていい』
私はこめかみが、ヒクつくのを感じながら、返したわ。
姉さんは、少し残念そうな顔をすると、頬杖をつきながら口を開いたわ。
『綺麗な碧い瞳の男の子、か……見てみたいわね。我が妹にそこまで言わせるんだから』
姉さんのニヤニヤ顏が凄く腹立たしかったのを覚えているわ。
『ねぇ、その子かっこいい?』
『本気で言ってる?』
いじめられて膝を抱えている姿をかっこいいとは、言わない。
顔つきだって、かっこいいからは、程遠い所にある。寧ろ、可愛らしいと言った方が正しいだろう。
怪訝そうな顔をしている、私に姉さんは、カラカラと笑う。
『まあ、悪い子じゃないと思うけどね』
姉さんは、さらに笑みを深くしていく。
『仲良くしてみたら?きっとその子は、友達思いだよ。断言してもいい』
『冗談でしょ……あんな訳の分からない奴と仲良くなんて出来ないわよ』
吐き捨てる様に言うと姉さんは、笑みを引っ込める。
『まあ、この話はこの辺にして、最初の話に戻そうか………ローズはやり返さないホームズに納得がいかない訳だね』
『うん』
私の返事に姉さんは、話し始めたわ。
『いい事教えてあげる。いじめってのはね、やり返せない奴をターゲットにするの。或いは、やり返せないようにいじめるの。
だからね、ローズの主張は、最初から成り立たないんだよ』
『そう言うもん?』
でも、私はまだ、納得していなかった。
だったら、何故やり返せないんだろう……て、思ってたのよ。
『何故やり返せないのか不思議でしょう?』
姉さんは、心を見透かした様に言って来たわ。
『うん』
『素直でよろしい。では、説明してあげよう』
姉さんは、咳払いをすると話し始めたわ。
『あの子は、行商人の息子。つまり、この街の人間ではない。あっちこっちに旅をしながら、物を売っている、ここまで大丈夫?』
『うん』
『さて、商人にとって、大事な事は、お客様。正確に言うなら、お客様との信頼関係。
行商人なら、特にそうだよね。
身も知らずの信用も出来ないな人の物なんて買いたくない。
そうでしょ?』
『うん』
『さて、では、こうしよう。その例のホームズ君が私の腕を切り落としたしよう』
『例えが、エグいんだけど……』
しかし、姉さんは、どんどん説明を続ける。
『ローズは、その人の母親が売っているものを買いたいと思う?』
ようやく、私は合点が言ったの、その時。
けれど、まだ全部は、納得できていなかった。
『でも、ホームズがいじめられてるんだから………』
『それをいじめっ子の親が信じると思う?どうして、自分の子供よりも、身も知らない、おまけに
姉さんの言葉を聞いて、私、目の前が真っ暗になったわ。
自分が如何に考えなしの大馬鹿野郎なのか、その時にようやく分かった。
『姉さん……』
『なぁに?』
『私、酷い事を言った』
『そうだね』
『酷い事もした』
『そうだね……もうすぐ、紅茶が来るけど、どうする?』
『あげる。お礼よ』
『ふふふ、いってらっしゃい』
私はそのまま後ろを振り返らず走り続けた。
『ま、私のお金だけどね』
姉さんのそんな呟きが聞こえたような気がしたけど取り敢えず無視したわ。
さっきの路地裏まで、行ってみたけどいなかった。
大通りはどう考えたって、いる訳がない。
そう思ってあっちこっち探したの。
『しっかし、あいつ、さいこーだったよな。いつもの如く、目の色の事、馬鹿にしたら、泣きそうな目になりやがってさ』
突然ね、すれちがった時にそいつの言葉が聞こえたの。
私の脳裏にホームズの言葉が蘇ったわ。
──────みんな、殆どぼくの目を馬鹿にすることしかしないからねぇ
『あの顔!泣かないように耐えようとしている顔!ほんとにさいこー』
『それは、言える!にしてもよ、金が手に入らなかったのは惜しいよな』
『あ?バカじゃねーの?ちゃんと手に入ったじゃねーか?』
『いや、あいつの持ってるはした金じゃなくて……』
『ああ、母親から金を盗ませる奴か………でも、代わりに土下座ってのが見れたから、いいじゃねーか。おれ、初めて見た』
『おれも!』
『おれも!』
『確かに!』
『まあ、だからって許さねーけどな』
『あれは、なかなかだったな』
『しっかし、あそこは穴場だな。タイミング見計らえば、大人は、いないし、パッと見ただけじゃ、気づきずらいし』
余りにも下衆な会話をしていて、思わず立ち尽くしたわ。
こんな事を平気でいう奴がいるんだって、信じられなかった。
でも、それよりもあいつらの会話に引っかかる物が合った。
だから、もしかして、と思って船着き場にいってみたわ。
何故かって?
まず、見つかりづらい所。
そして、タイミングを見計らえば、大人が居ない。
多分これは、誰かを船に乗せて運んでいる間の事。
まあ、これぐらいしか手がかりしかないから、そこに賭けてみたの。
そしたら、案の定ホームズは、そこにいたわ。
びしょ濡れで。
『あなた、それ………』
余りにも無様な姿を見て声を失ったわ。
『ん、ああ、これ?母さんの金を持って来いていわれて、断ったらここに落とされた』
ここまでされても、ホームズは、やり返せないのだ。
だって、商品が売れなかったら生きていけないのだから。
彼はずっと耐えてたのだ。それに、何にも気付かずに好き勝手な事を言って、好き勝手な事をやってきた私。
何だか突然視界が歪んできた。
『ど、どうしたんだい?君、泣いてるよ』
さっきまでの死んだ様な目が嘘の様に動揺していたわ。
『ごめん………』
ホームズは、私の絞り出すような言葉を聞いて目を丸くしていたわ。
『あなたの事……何も知らないくせに………あんな勝手な事を言って………あんな、酷い事もして………』
思ったように言葉は出て来ない。
もっと別の事を言わなくちゃいけない。
でも、全然うまくいかなかった。
代わりに涙がポロポロと、止まらなかったわ。
泣いて許しを請うなんて、そんな最低な事絶対にしたくなかった。
だから、我慢しようとしたんだけど涙は、余計に出てきて止まらなかった。
『え、え、えっと……ハンカチは、びしょ濡れだ………えっと……』
『気の利いた言葉ぐらい言ったらどうだ?』
『うるさいよ、ヨル』
───悪い子じゃないと思うよ────
姉さんの言葉が蘇る。
ああ、本当にその通りだな、て思った。
自分を傷付けた奴が泣いて謝っているのだ。
なのに、ホームズは、馬鹿にするわけでもなく、一生懸命どうにかしようとあたふたしている。
明らかにホームズは、私のせいで困っていた。
でも、私はホームズを困らせる為にきた訳じゃない。
そう決意すると、涙を思いっきり拭いた。
これからいうセリフには、不要なものだからね。
『私の名前は、ローズ。ローズ・クリスティ。貴方は?』
ホームズは、ポカンとしていたけどヨルに小突かれて名乗りだしたわ。
『えっと、ぼくは、ホームズ。ホームズ・ヴォルマーノ』
───仲良くしてみたら?────
姉さんの言葉に私は無意識に頷いわ。
『ね、ねぇ、私と……友達になってくれない、ホームズ?』
唐突でしょ?今でも思わず笑ってしまうぐらい突然よ。
案の定ホームズは、何が何だかよく分かっていなかった。
でも、あの時は、確かにあいつと友達になりたかった。
いじめられてるのに頑張るあいつと。
目の色を褒められて、とても嬉しそうに笑ったあいつと。
そんなあいつと、私は仲良くしたいと、
友達になりたいと思った。
そして、あいつの事をよく知りたいと思った。
初対面の人間が訳が分からないなんて当たり前だもの。
いっぱいいっぱいだったわ。こんなベタな台詞を言うのに何回つっかかりそうになったか分からないわ………
だっていうのに……
『は?ぼく、今日はもうお金ないけど……』
そんな私の苦労を随分と、すっとぼけた解釈をホームズは、していて何だかイライラしたわ。
『ちっがーう!そんなものはいらないわ。私は、お金と友達に成りたいんじゃないの!貴方と友達に成りたいの!』
気付いたら、思いっきり叫んでいたわ。
ホームズは、最初何を言われてるか分からなかったんでしょうね。
一瞬フリーズすると、少し、照れた様に顔を赤くして、笑ったわ。
『えへへ、嬉しいね。ぼくも君と友達になりたいなぁ』
そう言うとホームズは、手を差し出してきた。
私もそれに応じる様に手を出して、ホームズの手を握り返したわ。
以上が事の顛末なんだけど………
もういい?
何か凄く恥ずかしくて………
『友情』の話を書いているので、自分も友達の話を!!
………仲の良い友人ほど大抵第一印象がよくありません。
…………どうやって仲良くなったんだろ?
短い人生の中の七不思議の一つです。
ではまた、三十六話で( ´ ▽ ` )ノ