1人と1匹   作:takoyaki

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四十二話です。



やっと、リアルでの色々な仕事にひと段落がつきました………


てなわけで、心機一転、どうぞ!






まあ、特に変わった訳でもないですが………


嵐の前の台風

「それにしても賑やかだね」

レイアは、街を見渡しながら言う。

「当然。十年に一度のお祭りだからね」

ローズは、そう答える。

そんなローズにレイアは言う。

「ローズ、どうして、ホームズ達と回らなかったの?」

その質問にローズは、答える。

「ん、まあ、私の知らない時間のホームズが、どう過ごしていたのか知りたいのよ」

「……なるほど。この中じゃ、ホームズと1番仲が良いのは、レイアだもんな」

アルヴィンは、納得する様に言う。

「それなら、ローエンの方が付き合いは長いのではないか?」

ミラが理解出来ないと言うように聞く。

そう、ローエンは、ホームズのお得意様の執事なのだ。

一行の中で1番付き合いが長いと言える。

「まあ、そうなんだけど……あの馬鹿が一緒に行っちゃったからね……できれば、こう言う話は本人のいない所でしたいし……」

ローズは、ため息を吐く。

同じ幼馴染みで苦労している身としては、放って置けない。

レイアは、そう思い口を開く。

「分かった、教えてあげるよ。前払いももらってあるしね」

レイアは、ウィンクをする。

「貴方は、本当に良い人ね。さすが、あんな奴と友達になるだけの事はあるわ」

ローズの微妙な褒め言葉にレイアは、苦笑しながら話し始めた。

 

◇◇◇◇

 

 

 

「と、まあ、こんなところかな」

レイアは、一通り話し終えた。

勿論、ホームズの過去については話していない。

勝手に人の過去をべらべらと喋るような人間ではない。

「へぇー。というか、貴方達ホームズと戦ったんだ……」

ローズは、額に手を当てながら、やれやれと言った風にため息を吐く。

ミラは詫びれもせずに言葉を繋げる。

「ああ。レイアは純粋な勝負だったが、私達の場合は違うぞ。レイア達の勝負が、プライドを賭けた戦いなら、私達の場合は、命を賭けた闘いと言ったところだ」

「……ミラ様、そう言う事を幼馴染み(ローズ)の前で言うのはどうかと思うぜ」

アルヴィンは、頬を引きつらせながら、突っ込む。

うまい事を言ったつもりのミラは、不思議そうに首を傾げている。

「……なんかこう言う気遣いの出来ないところを見ると、本当にマクスウェルなんだな、て思うわ」

ローズも頬を引きつらせている。

「それで、怪我を治すのを手助けするうちに仲良くなったと……」

ローズは、少し唇を尖らせる。ちょっと不満そうだ。

「ううん、違うよ。ホームズは、治療を受けて普通に治したよ」

「………看護師だよね、レイア?」

「うん。でも、その時わたしは、ミラの世話で忙しかったし……」

ローズは、ホームズの事を思うと、なんだか切なくなってきた。

「あのさ……もう少し優しくしてやったら?あいつ、ああ見えて良いところもあるのよ」

自分が、出会い頭に飛び蹴りかました事は、遥か彼方に蹴り飛ばして言う。

「例えば?」

アルヴィンが尋ねる。

その言葉に、思わず口ごもる、ローズ。

「え……っと……」

そう、いざ探すと全く良いところが出てこないのだ。

まあ、ほんのひと時しかいないのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが……

「……おい」

アルヴィンが、痺れを切らす。

「待って」

ローズは、必死に記憶を辿る。

「顔は……別に特別かっこいい訳じゃない……性格は……泣いてた記憶の方が強いわ……」

しかし、出てくるのはロクなものじゃない。

アルヴィンとレイアは、こそこそと話す。

「(おい、ホームズの良いところなんかねーのかよ)」

「(仕事熱心だったよ)」

「(……何かパンチが弱いな……他にないの?)」

「(えーっと……やりたい事がはっきりしている事かな?)」

「(お、それいいんじゃない。というか、ローズ差し置いて、どしどし出してきたねえ……)」

「(だから、言いたくなかったんだよ)」

レイアは、ため息を吐く。

恐らく、ローズが自覚していないだけか、あるいは、あるにはあるが恥ずかしくて言えないだけかのどちらかである。

アルヴィンは、後者の可能性に賭けて少し探りをいれようとする。

しかし、ミラが口を開く。

「ふむ、やはりホームズのいいところは、やりたい事がはっきりしている事だろう。そのためには、迷わないし、止まらない、そして、諦めない。これは、いいところはだろう」

ローズは、ミラの言葉を聞いて、嬉しい様な、悔しい様な、微妙な顔をする。

レイアとアルヴィンは、ため息を吐く。

「ほら、想い人の良いところぐらい、とっと出しな」

アルヴィンの言葉に一度頷きかけて、やめる。

「………想い人じゃない!」

絞り出すようにいう言葉に説得力は、微塵もない。

何かを言おうとするが、顔がどんどん赤くなっていく。

「…………(えがお)

「「は?」」

つぶやくように言った言葉に、アルヴィンとミラは怪訝そうに聞き返す。

「おい、嘘だろ。あんな胡散臭い笑顔の何がいいんだ?」

「う、うるさい!違う!本当に嬉しい時に笑った時の顔よ!誰があんな胡散臭い笑顔を褒めるのよ!」

「ひっでぇ、言い草」

アルヴィンは、バッサリ言い切ったローズに頬を引きつらせる。

ミラは顎に手を当てて考える。

「ふむ、私は胡散臭い笑顔しか見た事がないな。昨日の晩のヨルとローズの話を聞く限りでは、ある様だが………アルヴィンはどうだ?」

「ミラ様も見た事のないものを俺が見た事あるわけないだろ」

アルヴィンは、肩を竦める。

ミラはそれを聞くと納得する。

「という事は、それを知っているのはローズだけか。ある意味見てみたいな」

その言葉を聞くとローズは、少しだけ嬉しそうな顔をする。

『ローズだけ』というところが気に入ったのだろう。

「まあ、滅多に見せないしね。私が見た時も目の色を褒めた時と別れの時の二回だけだし」

完全に嬉しそうな顔になると、とても楽しそうに話す。

もう、ここまで露骨に色々表にだしているのだから隠そうとしなくていいような物なのだが……

 

 

「……で、レイア。さっきから無言だけど、もしかして……」

 

 

 

アルヴィンの言葉にレイアは、申し訳なさそうに頷く。

「………あるよ、見た事……」

そう、レイアは見た事があるのだ。ホームズの事を『友達』と言った時と、レイアが身の上話をした時の合わせて二回。

つまり、ローズと同じだ。

「え……と、き、気を落とさないで?」

どうにか慰めようとするレイア。

「……別にどうって事ないわ」

ローズは、斜め下を見てレイア達と顔を合わせない。明らかに落ち込んでいる。

余計な話を振ったアルヴィンをレイアは、睨む。

完全に気まずい空気になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら、何してんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声に振り返ると、マーロウが近づいてきた。

「えっ……と」

「マーロウだ」

一生懸命思い出そうとしているレイアにニッと笑いながら言う。

「えっと、レイアです」

「ミラ・マクスウェルだ」

「アルヴィンだ」

マーロウからの自己紹介にそれぞれが返す。

「なるほど。覚えた覚えた。で、お前達はこんな所に何しに来たんだ?」

「……この石像を見に来たんたよな?」

アルヴィンは、ミラに尋ねる。

「気にしないでくれ」

ミラはアルヴィンの問いにそう答える。

マーロウは、少し不思議そうな顔をすると、今度はローズに尋ねる。

「で、お前は何してる」

「………色々あるんです」

ローズは、顔に暗い影を落としながら言う。

そんなローズに大きく息を吐く。

「別にホームズの笑顔を見た奴が何人いようと、どうでもいいじゃねーか」

「そんな事思ってないです!」

しっかり、全部聞いていたマーロウにローズが顔を真っ赤にして怒る。

パンチをしようとするローズの頭を軽々と抑えて、マーロウは、キセルをふかす。

「相変わらず素直じゃねーな。大方、お前ホームズにまだ、悪態しかついてないだろ」

図星を突かれローズは黙る。

そう、ホームズと再会してから、ローズのやった事と言えば、暴力と悪態のみなのだ。

「っとに……うかうかしてると、誰かに取られるぞ」

マーロウのそんな忠告にローズは、さっきとは打って変わって冷静になる。

ローズは、マーロウに冷ややかな視線を送る

「何処にあんな奴を好きになる馬鹿がいるんですか」

全員の視線が、頭を抑えられているローズに注がれる。

ローズは、すっと視線を逸らす。

「あ、あんなとかろにイスラさんだ」

動揺したのだろう。噛んでいる上に、微妙に文章になっていない。

マーロウは、イスラと呼ばれた女性を見ると眉を顰める。

「怪我は良さそうね」

イスラは、近づきながらレイアにそう言った。

「はい。イスラさんのおかげです」

「そう」

不思議に思ったローズは、レイアに尋ねる。

「何があったの?」

レイアは、少し声をひそめると、話しだした。

「この街に来た時にね、落石事故に巻き込まれちゃって……」

「……それって、出かけがけにティポが言っていた?」

「そ。まあ、なんて事なかったんだけど」

イスラは、アルヴィンとマーロウに視線を向ける。

それに、レイアが気付く。

「アルヴィン君と、マーロウさんが、どうかしました?」

「い、いえ」

イスラは、気まずそうに目を逸らす。

「かまわないよ、イスラ先生」

アルヴィンは、ミラに近づきながら、言葉を続ける。

「先生には、母親を診てもらってるんだ」

「お前の母親が?この街にいるのか?」

ミラは少し驚いている。

「ああ。だからアルヴィン君この街について詳しかったんだね」

レイアは、ようやく合点が言ったようだ。

アルヴィンは、少し目を伏せて頭の後ろを掻く。

「ちょっと具合が悪くてね。父親も兄弟もいないから、俺がいない間は、先生に見てもらってるんだ」

そんなアルヴィンにミラは珍しそうに言う。

「今日はやけに自分の事を話すじゃないか。珍しいな、普段は何処か誰かさんの様にはぐらかすくせに」

ミラの言葉にアルヴィンは、肩をすくめる。

「別に気のせいだろう?」

アルヴィンは、そう流す。

そして、さらに言葉を続ける。

「ただ……治してやりたいだけだよ。そんで、故郷に連れて帰ってやりたいんだ」

故郷という言葉にレイアは、誰かさんを思い出す。

「お母さんの故郷遠いの?」

アルヴィンは、シャン・ドゥの青い空を見上げる。

「めちゃくちゃな」

そんなアルヴィンをマーロウは、眉を顰めて見ている。

「そうか。何か手伝える事があれば言ってくれて構わないぞ?」

 

 

『おれは、それ以外の方法を探している。もし、君が例の方法を取ろうと言うなら……』

 

 

「ああ、あればな」

昨夜の事を思い出し、アルヴィンは下を向いて言う。

アルヴィンの後、レイアは、イスラに尋ねる。

「マーロウさんは?」

「俺はこれでも街の重役なんだ。だから、少し緊張したんだろ。な、イスラ?」

「え、え、えぇ。そうよ」

マーロウは、肩をすくめるとイスラに返す。

「ったく、何度も顔を合わせてるんだから、そろそろ慣れて欲しいもんだぜ、イスラ」

「き、気を付けるわ」

少し、その会話に不自然な物をミラは感じた。しかし、それを尋ねる前に、マーロウは、ローズ達に話す。

「つーか、お前らもとっとと、闘技場の方に行っておいた方がいいぞ。いい場所とられちまうからな」

「……なにいってるんですか?」

ローズは、ポカンとしている。

「なにって……闘技大会に決まってるだろ。こんな祭り、十年に一度しかないんだ。見なきゃ損だぜ。つーか、お前が1番分かってるだろ」

ローズは、頭をおさえる。

「もしかして、聞いて無いんですか?私達出場するんですよ」

今度はマーロウがポカンとする番だ。

「……何に?」

「闘技大会に」

「何で?」

「大会で優勝する事がワイバーンを貸してもらう条件だから」

「誰が出る?」

「ここにいるミラとアルヴィンとレイア、それに私。後はホームズを含めた三人」

マーロウは、それを聞くと大きくため息を吐く。

「ンの馬鹿……どうして、そういう大事な事を言わないかね」

これは、由々しき問題だ。

十年という歳月のおかげで成長している為、一部の人間以外には、彼が立ち入り禁止のホームズだとは、気付かない。

しかし、名前が出てしまえば隠しようがない。

マーロウは白いケムリをモクモクと吐き出す。

「取りあえず、奴らを探してくるかね。場所とかわかるか?」

聞かれるが皆顔を横に振る。

しかし、レイアが途中で止める。

「多分、何かケンカしている気配があれば、間違いなくそこにいますよ」

ホームズとヨルの仲の悪さは折り紙付きだ。

マーロウは、にやりと笑う。

「ありがとよ、嬢ちゃん。おら、ローズ、てめーも負けんなよ」

「べ、別に勝っても負けても関係ないです、私には」

「いやいや。負けたらワイバーンを貸してもらえないだろ。何言ってんだ?」

「………あ、そっち」

ローズの言葉にマーロウのニヤニヤが、さらに強くなる。

「そっちねえ……何だと思ったんだ?」

ローズは、迂闊な事を言った自分を絞め殺したくなった。

顔が熱くなってくるのが良く分かる。

「う、うるさい!とっとと行って来い、ジジイ!」

敬語も礼儀も全て吹っ飛ばして、ローズは、マーロウに言う。

マーロウは、その言葉を聞くと大笑いして人混みに消えて行った。

 

 

「えっ……と……大丈夫ローズ?」

レイアに尋ねられたローズは肩で息をしている。

「問題ないわ……」

アルヴィンは、ため息を吐くと、年長者として、アドバイスをする。

「ま、アレだ。これから、お前は一緒に旅をするわけだから、それで、色々知っていけばいいだろう」

アルヴィンからの慰めの言葉に少し元気が出たようだ。

花が咲いた様に笑うといつもの様に言う。

「別に私には関係ないわ」

レイアは、そんなローズを見てクスリと笑う。

「言うと思った」

 

そんな会話をしていると、ユルゲンスがローズ達に近づいて来た。

「ユルゲンス?あなた今日は闘技場じゃなかったの?」

イスラは、驚いた様だ。

ユルゲンスに、イスラは、思わず歩み寄る。

「こっちに少し用事があったんだ。……それより君達イスラと知り合いだったのか?」

「うん!あ、でも、ローズは分からないな……」

レイアは、元気良く答えたはいいが、心配そうにローズを見る。

すると、ローズは微笑んで答える。

「知り合いよ。昔、よく遊んでもらったわ」

「へえー」

「私の父と母は、商売をやっていて忙しくてね。年の離れた姉さんもいたんだけど、やっぱり店の手伝いで忙しくて、私にかまってるヒマがなかったの」

そう言って、イスラを見る。

「そりゃあ、寂しくてね。そんな時、いつも相手をしてくれたのがイスラだったのよ」

ローズは、昔を懐かしむ様に流暢に喋る。

恐らく、ローズにとって、とても幸せな記憶なのだろう。

レイアは、ローズの横顔を見ながらそんな事を考えていた。

「なるほど、そんなことが……それにしても、イスラさんとユルゲンスさんって知り合いだったんだ」

ユルゲンスとイスラは、面白そうに微笑む。

「知り合いも何も、イスラは、私の婚約者だよ」

「婚約……?」

ミラは首を傾げている。

「わあ、素敵ですね!」

レイアは、心の底からそう思っているのだろう。

「ははっ、ありがとう」

ユルゲンスはお礼を言う。

「イスラも、おめでとう」

ローズもイスラに祝福の言葉を掛ける。

「ええ、ありがとう」

イスラは、微笑みながら返す。

「イスラ、この人達が我が部族の代表になってくれた人達だ」

「ええ、そうらしいわね。私もさっきローズから聞いたわ」

そして、そんな中傾げていた首をミラは、戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、あれか。結婚という奴だな。お前達もネズミの様にたくさん子供をつくるのだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の爆弾発言にその場にいた面子は、空いた口がふさがらない。

どんな事も涼しく顔してのらりくらりと、やり過ごすアルヴィンですら、そんな感じだ。

「ミラ……」

レイアは、肩を落としながら言う。

ローズはアルヴィンによって尋ねる。

「いつもこんな感じ?」

「だいたいな」

アルヴィンの答えにローズは、自分が旅について行く事を少し、後悔した。

 

 

その時、鐘が街に鳴り響く。

 

 

「闘技大会の鐘だ」

ユルゲンスは、つぶやく。

「ユルゲンス、ごめんなさい。私今日仕事なの」

「そうか……仕方ない。勝利を祈っててくれ」

 

 

そういうとユルゲンスは歩きだした。

 

「さて、俺たちも行くか」

「そうだね」

「うむ」

「よし!」

 

ローズは頬をパンと叩く。

 

 

「んじゃ、ととっと闘技場に行きますか」

 

こうしてミラ達は、闘技場に出発した。









久々に見るとやっぱり面白いなぁと思う金曜日のロードショーです。



個人的には、六作目を見たいですね………


本は全部読んだんですけどね……




さて、それでは次回から闘技大会です!!




頑張れホームズ!働け、ヨル!デレろ!ローズ!



………ってな訳で、今回はこの辺で


ではまた、四十三話で
( ´ ▽ ` )ノ





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